特例子会社の業務内容は何?設立すれば障害者雇用は解決するのか?

特例子会社の業務内容は何?設立すれば障害者雇用は解決するのか?

2024年03月7日 | 企業の障害者雇用

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障害者雇用を検討しようと考えている企業の方からよく聞かれるのが「特例子会社を設立したほうがいいのか?」ということです。実務面では特例子会社の立ち上げに関わり、学術的な面では博士論文で特例子会社をテーマに量的なアンケート調査や質的なヒアリング調査をしてきた経験から、なぜ企業は特例子会社を立ち上げるのか、特例子会社に見られる特徴、業務内容、成功するポイントについてお伝えしていきます。

なぜ、特例子会社を立ち上げるのか?

障害者雇用を考えるときに、「特例子会社を立ち上げたほうがいいのか?」「そのメリットはどんな点なのか?」とよく聞かれます。特例子会社を立ち上げたほうがいいのか、そうでないのかは、企業の状態や業務などいろいろな要素が関わってくるので、話を聞かないとどうかと答えるのはなかなか難しい問題です。

それでも、「なぜ、特例子会社を立ち上げるのか」という点について言えば、どこの企業でも(多少、表現に関する温度差はあるものの)障害者雇用、障害者雇用率が必要だからという答えに落ち着きます。その中で、本体の障害者雇用が進まないから特例子会社で雇用したほうがいいのではないか、各部門での雇用が難しいので特例子会社で雇用管理を含めておこなったほうが効率的なのでは…といった点が検討され、結果的に特例子会社を設立することを決断する場合もあります。

障害者雇用では定められた法定雇用率を達成できないまま一定の基準を超えると、障害者を雇い入れるための「障害者雇入れ計画作成命令」を提出する必要があります。これは、2年間のうちに雇用しなければならない障害者をどの時期に、何人雇用するかについての計画書を作成するものです。企業の事業担当者が事業計画をたてるのと同じように、障害者を雇用する計画を立てることになります。

なお、この「障害者雇入れ計画作成命令」は作成して終わりというものではなく、ハローワークが定期的に計画通りに進んでいるのかのチェックが入るものとなっています。2年間の雇入れ計画の間に確認があり、予定通りに進んでいない場合には「雇入れ計画の適正実施勧告」や「特別指導」が行われ、それでも障害者雇用が進まない場合には、企業名が公表されることになります。

出典:厚生労働省

なぜ、ハローワークが各企業の障害者雇用の状況を把握できるのかというと、法定雇用率の雇用義務のある企業は、毎年6月1日時点の障害者雇用の状況を報告する義務があります。これはロクイチ調査と呼ばれるもので、これにより行政(ハローワークや労働局)では、各企業が障害者を何人雇用しているのかを把握することができます。そして、これらの結果が厚生労働省でまとめられ、最終的に障害者雇用状況の集計結果として報告されることになります。

企業名公表になるときの最終回避手段となっているのが「特例子会社の設立」です。本来であれば企業名公表がされるべきところを1年以内に特例子会社を作る計画があれば、企業名公表は猶予されることになります。もちろん計画的に特例子会社の設立を進めている場合もありますが、最後の手段として特例子会社を立ち上げる場合もかなり多いと推察されます。

特例子会社に見られる特徴

まず、特例子会社の基本について、簡単に解説しておきたいと思います。特例子会社とは、企業が障害者の雇用に特別の配慮をした子会社を設立した場合、一定の要件を満たすことによって、その子会社に雇用されている労働者を親会社に雇用されているものとみなし、実雇用率を算定することができる制度です。つまり、特例子会社で雇用された障害者は、親会社に所属している従業員に対して必要とされる障害者雇用者数としてカウントすることができます。

一般的に特例子会社は、一般的な職場よりも障害に配慮された設備や環境が整っており、スタッフも障害者雇用に理解や経験のある人材が多く配置されることが多いとされています。そのため特例子会社は、「障害者に理解がある会社」「障害特性に合わせて配慮してくれる会社」「体調に合わせて勤務時間を調整してくれる会社」「個別の相談を定期的にしてくれる会社」「柔軟な人事制度がある会社」と認識されることがあります。

これらはもちろん合っている部分もありますが、「特例子会社」としてこれらの内容をイメージするのは間違っています。それは、「株式会社」と言ったときに大企業から中小企業、歴史のある企業や立ち上げたばかりのベンチャー企業も含まれるように、特例子会社の場合にもいろいろな特例子会社が含まれるからです。

特例子会社の運営は、親会社や関係会社の方針や考え方、業種や従業員規模、仕事内容によって大きく異なります。たとえ同じ業種、同じ規模の従業員数でも企業ごとの社風や在籍する社員の雰囲気が異なるように、特例子会社もそれらは全く異なります。一般の企業とほとんど違いが見られない特例子会社もありますし、障害福祉に近い特例子会社もあります。ただ、特徴や業務内容、スタッフ構成などに関してはいくつかのパターンに分類できるので、それらを少し解説していきます。

なお、特例子会社を設立する企業に共通する点としては、比較的規模の大きな会社が多いという点があります。これは、別会社を設立するとなると、別法人を作るための費用や人員が必要になることが関係しています。それらと設立することのメリットやデメリットなどを総合的に検討して特例子会社の設立を決めることが多くなっています。

特例子会社に見られる経営方針の特徴

大きく分けると2つに分類することができます。1つ目は、親会社が基本的な方針(予算やスタッフの人数など)を決めて、特例子会社がこの方針に枠内でスタッフ人員や業務内容を検討していくタイプです。

このタイプは、親会社やグループ会社内で、ある程度の業務が切り出せる可能性がある企業や、特例子会社を設立してから年数があまり経っていない特例子会社に見られることが多いです。方針の大枠は親会社が決定するため、親会社やグループ会社からの業務を一定程度受注できますが、特例子会社の独自性を積極的に出させるような取り組みはあまり行われていません。

2つ目は、親会社が提示した障害者雇用率と合わせて特例子会社が事業計画を立案し、年間予算を親会社とすりあわせる方法です。これは、親会社やグループ会社内で切り出すことが難しい企業や、設立から一定の年数を経過して新規事業に取り組み始める企業などで見られます。

こちらの場合は、特例子会社自体に、ある程度任された形で事業計画を立てて運用をしていくため、会社運営については自由度が高いものの、親会社やグループ会社を除いた外部からの業務を受注することに加え、新たな取組を行なっていくことが求められます。前者のタイプよりも、資金面の自由度は高いものの、スタッフは障害者と一緒に働くだけでなく、業務の企画力や実施遂行力が求められることになります。

特例子会社に見られる業務の特徴

一般的に特例子会社の業務としては、親会社やグループ企業のサポート業務を行っていることがほとんどです。その中でも、特に事務作業・軽作業・清掃・物流などの業務が切り出される場合が多く見られます。

また、特例子会社の社名自体にも親会社やグループ会社のサポート的な役割を期待してか、「サポート」の他にも「サービス」や「アシスト」という単語が入っていることが多く、社名からもどのような役割をになっているのかがわかります。

特例子会社で行っている業務で多いものは、事務補助、軽作業(メール、印刷などを含む)、清掃などです。

特例子会社の調査でも同様の結果がでています。

事務補助 79.1%(155社)
清掃、管理 50.0%(98社)
その他 30.1%(59社)

出典:障害者雇用及び特例子会社の経営に関する実態調査調査結果(野村総合研究所、2018)

また、その他に分類される業務のほとんどが事務補助、軽作業的なものとなっています。

出典:障害者雇用及び特例子会社の経営に関する実態調査調査結果(野村総合研究所、2018)

また、日本経営者団体連盟が1998年に行っている「特例子会社の経営に関するアンケート調査結果報告」でも、軽作業、印刷、事務(事務補助)、メール、クリーニング、清掃が挙げられていました。軽作業では「部品の組立」や「梱包・包装」などの仕事を行っているケースが多く、会社の業種に関係なく社内のメール配送や仕分け、社員の名刺、工場内の緑化・清掃などの周辺業務を集る特例子会社が多いことが報告されています。

これらの調査では20年間の期間の差がありますが、業務内容的な面で見るとほとんど変わっていないことがわかります。

また、業務については、業務割合の大部分が親会社・グループ会社からのものとなっていることがわかります。

出典:障害者雇用及び特例子会社の経営に関する実態調査調査結果(野村総合研究所、2018)

職域拡大等調査報告書No1 多様化する特例子会社の経営・雇用管理の現状及び課題の把握・分析に関する調査(独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構、2012年)

特例子会社が独自の業務を創り出しているところは少なく、創出できている場合でも、親会社の業務と並行して行っているケースが見られています。

なお、特例子会社の経営課題は、次のような点があげられています。
・指導員の人材確保・育成
・障害者の人材確保・育成
・親会社から発注される業務量の維持・増加

出典:障害者雇用及び特例子会社の経営に関する実態調査調査結果(野村総合研究所、2018)

2012年の調査で上位にあがっていたのは、次の点でした。
・新規事業の展開・開発
・受注量の確保
・障害者の採用拡大

出典:職域拡大等調査報告書No1 多様化する特例子会社の経営・雇用管理の現状及び課題の把握・分析に関する調査(独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構、2012)

また、1998年の特例子会社の経営に関するアンケート調査結果報告(日本経営者団体連盟)では、経営課題としてもっとも多くの会社が選択した項目は「受注の確保・拡大」、次いで 「新規事業の展開・開発」となっていました。 それぞれの調査の実施機関や調査対象者が同じではないので、一概に比較できるものではありませんが、業務量の確保や新規事業についての課題はいつも特例子会社の大きな課題となっています。

特例子会社に見られるスタッフの特徴

特例子会社では障害者を雇用しますが、障害者と一緒に働く社員もいます。この社員の配置の考え方は特例子会社によって異なりますが、多くは2つのパターンに分類することができます。

1つ目のタイプは、特例子会社に親会社の社員が出向者として一定数いるものの、他のスタッフは特例子会社のプロパーの社員というタイプです。特例子会社の規模が比較的大きかったり、拠点が複数あったりする場合に、このようなスタッフ構成になっているケースが多く見られます。

スタッフは親会社で働いていたり、福祉機関や障害者との関わりがある場所で働いたり、あるいはまったく障害者と関わったことのない職場だったりと、さまざまなバックグラウンドをもっているため、スタッフ間の共通理解や認識の浸透を図る工夫が必要と考えている職場が多い傾向にありました。

もう一方のタイプは、特例子会社への出向者となった親会社の社員が、全スタッフの大半を占めているタイプです。この場合、出向しているスタッフは同じ親会社での勤務経験があるため企業理念や組織文化が共有されていることや、特例子会社に切り出される業務の背景についての知識があるため、親会社との関係や特例子会社のスタッフ同士の意思疎通や業務理解が進んでいることが多いです。一方で、障害者と接する機会が今までにないことが多く、はじめは戸惑いを感じることもあるようです。

なお、障害者と一緒に働くスタッフを選ぶときにどのような基準で選任するとよいのかという点については、「特例子会社における知的障害者とともに働く同僚・上司に求められるコンピテンシーに関する研究」(松井優子・小澤温、発達障害研究第40巻3号、2018)に詳しく調査結果をまとめていますが、この調査では、障害に関する専門的な知識は必要かという問いに対して「必要」と回答した企業は1割、「あってもいいが、なくても支障がない」「どちらでもいい」という企業が残りを占めていました。

一方で、特例子会社としては比較的規模の多い従業員が100人以上の企業では、業務の専門性に関しては明確に「必要」と回答しています。これは、従業員数が多くなると単一の業務で雇用することが難しく、いろいろな分野の業務が必要となること、またその業務の専門性や指導レベルが求められることが要因となっていると考えられます。また、この調査以外でも特例子会社に話を聞くときには、これらのことを聞きますが、上手に雇用していると感じる企業ほど「障害に対する経験や知識よりもマネジメントを重視している」と回答が返ってくるのは興味深いことです。

特例子会社を設立すれば障害者雇用は解決するのか?

企業は障害者法定雇用率を達成することが求められています。しかし、業種や企業の規模、その他の状況により、障害者雇用を進めるのが難しいケースも少なくありません。また、行政からの指導や企業名公表が迫っていたりすると「特例子会社」を検討することが多くあります。

特例子会社は、雇用にあたって雇用率のカウントで特例が認められるため、障害者の雇用促進を図ることや、組織として障害者雇用を効果的におこなうというメリットがある一方で、一企業として継続的に運営することが求められます。

特例子会社が設立されるとしばらくは関心をもたれやすく、トップも本体の役員が兼任することが多いため、それなりに組織の中で注目されます。しかし、当初は親会社の理解があって作られたとしても、時間が経過して設立の経緯についての詳細を知っている役員や管理職が入れ替わったり、本体やグループ会社の経営状況が変わってくるなどの変化があります。また、会社としての規模が大きくなったり、設立年数が経過するとともに周囲から求められること、期待されることも変化していきます。親会社や関係会社から業務を受ける特例子会社ではなく、自立した特例子会社になることが求められることも少なくありません。

特例子会社を設立することで、たしかに障害者雇用を促進することはできます。また、一時的に社名公表を免れることもできるでしょう。しかし、気をつけなければならないのは、特例子会社を設立すれば、障害者雇用の問題がすべて解決するわけではないということです。特例子会社は障害者雇用促進法において「特例」とされているものであり、一般の企業と会社運営については変わるところはありません。

特例子会社をつくることは簡単ですが、継続的な経営・運営をしていくことは簡単ではありません。持続的な経営ができることに加え、組織の中で障害者雇用の位置づけ、特例子会社の位置づけを認知されるようにしていかないと経費のかかる別会社と認知されることになってしまいます。特例子会社を設立するときには、設立することのメリットとともに、継続的な経営・運営をするための方法について、しっかり検討していくことが必要です。

さて、ここまで特例子会社の業務や経営について見てきましたが、続いて障害者の個性を活かした雇用をしている一つの特例子会社を紹介したいと思います。

異能の人材を発掘・採用しているデジタルハーツプラス

これまでいろんな特例子会社を見学、ヒアリングしてきましたが、その中でもすばらしい取り組みをしていると感じるのが、株式会社デジタルハーツの特例子会社のデジタルハーツプラスさんです。

業務内容

2019年10月に特例子会社として設立しており、事業内容は、次のとおりです。
・事務補助業務(個人情報管理)
・ゲームのデバック業務、検証業務
・サイバーセキュリティ、セキュリティチェック

事務補助業務では、全国のテスターの個人情報の管理として、紙の履歴書を電子化してファイリングしていきます。また、個人情報管理の業務として期限のある書類の廃棄やそれに付随する業務などをおこなっています。

ゲームのデバック業務、検証作業では、障害者を戦力化することを目指し、親会社と一緒にゲームデバック業務をおこなっています。実際にいろんなゲームを操作しながら不具合を見つけていくという業務です。

システムテスト、サイバーセキュリティの分野は、ゲームのデバック業務、検証作業のできる人材がさらにスキルアップして取り組んでいる業務です。この分野は、社会的なニーズがあり、最も力を入れているそうです。

システムの脆弱性があるとそこからハッキングされてしまう恐れがあるため、そのような点を調べるセキュリティの仕事となっています。ここで経験を積み、難関資格取得もしながら高度な業務ができるようになると、そこから親会社に転籍してさらなるキャリアアップを積めるようになっています。

社風にあった柔軟に対応できる体制づくり

デジタルハーツプラスでは、業務上のやり取りで親会社と特例子会社を行ったり来たりすることが頻繁にあり、相互の行き来に関するハードルがとても低い関係づくりができているそうです。

これには、親会社のデジタルハーツの社風も関係しています。元々デジタルハーツのスタッフは、引きこもり状態にあった人などの未就業者が多かったそうです。長年ゲームなどの機器に慣れ親しんできた人ほど、バグを見つけるという真面目さと緻密さが要求される仕事で、そのような業務に向いている人材が多かったためです。

「ゲーム好き集まれ!」と呼びかけると、まずアルバイトとして登録します。アルバイトは時給制で、週1日からでもOK。いきなりフル雇用を求められないところが、引きこもり歴の長かった当事者にもマッチしたようです。そして、バグを多く見つけられる人は、契約社員、社員へと昇格していきます。契約社員以上は社会保険に加入でき、有給休暇も社員と変わりません。未就業者の人たちも働けるようになり、社員の半数はアルバイトから昇格していったそうです。

このようなバックグラウンドがあったため、社内の中には発達障害傾向のあるスタッフが多く、あえて障害者雇用と言わなくても障害者雇用ができていたそうです。また、障害を特別視するような会社風土がなく、特別な配慮や対応というよりもどんな人が来ても働きやすいようにという配慮ができる雰囲気ができていました。

現在の雇用状況としては、障害種別は手帳の種類で言うと精神が多く、双極性障害、うつ、統合失調症、発達障害でADHD、ASDとか、両方の特性を持っている人がいます。人によっては新しい環境が苦手なこともありますが、「何事もチャレンジしてみて、無理だなというときには、早めに言ってね。我慢しないでね。」と伝え、いろんな可能性を信じてまずチャレンジできるような体制を作っています。

採用ではインターンシップを重視

このような人材を採用するために、インターンシップを重視しています。まず、素質がある人材を発掘するために就労支援機関にeラーニングプログラムを提供し、そこで適性がある人がエントリーできるようにしています。

適性がある人は意欲を確認した上で、2週間の研修「DHサイバーブートキャンプ」と言われる実践的なセキュリティ業務を体験する研修に参加していきます。「この脆弱性を攻撃してみましょう。」と、その場で学んだ知識を活用して取り組んでもらう実践型の研修です。

最終日の試験に合格すると修了証を発行し、一定の知識・スキルがあることを証明する認定書を発行しています。もし、採用に縁がない場合でも、IT系とかセキュリティ系のところに就職活動するときにこれくらいのスキルがあると一定の評価を得られるものになっています。

キャリアアップができる体制づくり

特例子会社から親会社へ転籍できるキャリアアップ制度のある特例子会社というのはとても珍しいですが、これができているのは事業内容の一つであるセキュリティ業務の社会需要が高いということにあります。社会に必要とされる業務であり、組織としても拡大していきたい分野であるという点が重要なポイントになっているでしょう。

また、業務の特性として短期間の研修や実践により一定の仕事がこなせるようになること、その適性の見極めや研修体制ができていることも大きいです。加えて、業務内容と障害特性が合っていることがあげられます。全体を考えたりするのは苦手だけれど、やることが決まっていれば能力を発揮しやすい、徹底的にこだわることについては得意というような障害特性の部分とのマッチングができています。

とはいえ、障害特性のある人が働きやすい体制も整えられています。それは、業務の組み換えが行われているということです。一般的なセキュリティの企業では、効率的に行なうために一人の専門人材で1ヶ月位かけてそのサイトをチェックするそうです。しかし、デジタルハーツプラスでは、セキュリティ診断は複数名のチームで、ダブルチェック、トリプルチェックをしながら行なう体制づくりをしています。

これは、急に誰かが休んでもバックアップできるようにするということもありますが、二重、三重でチェックすることで、一人の専門人材よりも三人の人材のほうが網羅的にチェックすることにより高品質になると考えているからです。

なお、特例子会社で働くスタッフは、親会社のデジタルハーツでグループリーダーやマネジャーをしていた人が中心となってマネジメントに携わっています。スタッフに関しての質問に対しては、次のような回答がありました。

「いろいろな特例子会社さんを見学したり、お話する中で、福祉のバックグラウンドの方に企業的なことを理解してもらうのが早いのか、もともと企業にいる人に福祉のことを学んでもらうのがいいのか聞いたりしたんですけれど、後者ですと言われる方が多かったですね。福祉に思いがある人ほど、営利活動のためにそこを犠牲にしていいのかのように思いが強くなりすぎて、ともすれば過保護になりがちになる傾向が見られるようです。

企業にいる人のほうが、合理的にこういう配慮をしたほうが効果的だとか、必要な知識を身につけるためにどのように教えたり育成するとよいかという視点はあるというのを、現場を見ても実感しています。障害者雇用というと専門的な知識がいると思われそうですが、福祉のバックグラウンドがないとできないということは殆どないと思っています。」

今後の特例子会社の展開

親会社で行っている業務と特例子会社で行っている業務は、内容的に言うと大差はないそうです。ただ、働く体制としては特例子会社のほうが、限定された場所だったり、関わる人が決まっていたりするなど、特性によってコミュニケーションや人間関係で苦手さがある人にとっても働きやすくなっています。

このような環境で仕事をすることで、業務のステップアップや特例子会社から親会社へ転籍する人がでてきています。特例子会社ではキャリアアップしずらいと言われていますが、「キャリアアップ」や「選択肢」を増やすことで、本人の挑戦したいという意欲を尊重できるようになっています。そうはいってもみんながキャリアアップしたいという人ばかりではありません。特性や人によって目指すものは違うため、現状に満足している、安定したいという人の意思も尊重されています。

また、今後については、社会的ニーズの高い業務であり人材が求められていることから、人材育成を行いつつ、親会社と特例子会社で顧客ターゲットを棲み分けして、特例子会社としての経営的な発展も目指しているそうです。

まとめ

特例子会社を設立することは、たしかに障害者雇用を促進することに役立つことがあります。しかし、気をつけなければならないのは、特例子会社を設立すれば、障害者雇用の問題がすべて解決するわけではないということです。特例子会社は障害者雇用促進法において「特例」とされているものであり、一般の企業と会社運営については変わるところはありません。特例子会社をつくることは簡単ですが、継続的な経営・運営をしていくことが求められます。

そのためには別の特例子会社が行っているからと、同じような業務をしていてもうまくいきません。特例子会社は親会社の考えや組織文化、設立するときの合意形成などが大きく関わってきます。また、社会や経営の変化に合わせた業務内容や体制づくりをしていくことが求められます。目先の業務を確保することだけに終始してもその業務は長く続くことはありません。

障害者雇用で主な業務とされてきた事務補助系の業務の多くはITやAIの進歩によって置き換わっていますし、コロナによりリモートワークやテレワークでも仕事ができる体制づくりができるようになったためペーパーレス化、オフィスの縮小化なども進んだことも影響して、事務補助業務だけでなく、清掃や軽作業系の業務も減少傾向にあります。組織全体の中長期的な視点から業務を考えていく必要があります。

特例子会社についてもっと知りたい方は、「特例子会社の設立を考えたら必ず読む本」を参考にしてください。

新規事業の開発や障害者と一緒に働く人材の育成など、企業の障害者雇用に関わるコンサルをしています。関心のある方は、お問い合わせください。

動画で解説

参考

異能の人材を発掘、キャリアアップする特例子会社デジタルハーツプラス(前編)

異能の人材を発掘、キャリアアップする特例子会社デジタルハーツプラス(後編)

特例子会社の経営に関するアンケート調査結果報告(日本経営者団体連盟、1998)

職域拡大等調査報告書No1 多様化する特例子会社の経営・雇用管理の現状及び課題の把握・分析に関する調査(独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構、2012年)

障害者雇用及び特例子会社の経営に関する実態調査調査結果(野村総合研究所、2015)

障害者雇用及び特例子会社の経営に関する実態調査調査結果(野村総合研究所、2017)

障害者雇用及び特例子会社の経営に関する実態調査調査結果(野村総合研究所、2018)

「特例子会社における知的障害者とともに働く同僚・上司に求められるコンピテンシーに関する研究」(松井優子・小澤温、発達障害研究第40巻3号、2018)、

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