中小企業の障害者雇用の現状と課題:業務の切り出しができるかどうかが鍵になる

障害者雇用促進法で義務付けられている障害者の雇用率が、2018年4月に引き上げられましたが、未達成の企業が6割に上ることがわかりました。この調査は人材サービス会社「エン・ジャパン」(東京)が8~9月に従業員50人以上の企業にインターネットで実施したもので、中小企業を中心に480社が回答した結果となります。

積極的に採用したいと考えている企業は4割に達しませんでした。障害者雇用の現状が、中小企業は大企業に比べ厳しいことを示しています。

ここでは、中小企業の障害者雇用の状況とその課題、また課題の理由となる一番の原因【業務の切り出しができるかどうか】について、考えていきたいと思います。

障害者雇用率が上がった結果は・・・

調査結果からは、企業の障害者法定雇用率が4月に2.0%から2.2%に引き上げられましたが、達成は39%にとどまり、61%が未達成という結果になっています。29%は障害者を1人も雇用できていませんでした。また今後「雇用したい」との回答は「積極的に」「法定率に合わせて」で35%となっており、厳しい状況がうかがえます。

エン・ジャパンは、「法定率の引き上げに実際の状況が追いついていない。現場では障害者の奪い合いも起きている」と説明しています。「中小は大手に比べ受け入れ態勢に余裕がなく、障害者に適した業務がないことや、社員の理解不足に悩んでいる」ことが課題となっていることがわかります。

調査結果の内容

障害者雇用率が上がったことの認知

2018年4月から施行された改正障害者雇用促進法により、企業の障害者法定雇用率が2.2%に引き上げられたことを知っていると回答したのは78%でした。障害者雇用促進法の改正によって、雇用の算出対象や企業規模等が変更されたことを「知っている」と回答した企業は、前年の調査結果を上回っており、改正法案自体の認知度が高まったことがうかがえます。

法定雇用率2.2%を達成している企業

一方で、障害者雇用義務のある45.5人以上の企業で、法定雇用率2.2%を達成している企業は37%でした。法律の改正は知っているものの、実際の雇用については追いついていない現状が見られました。

障害者雇用をしていない理由

障害者を雇用していない理由としては、次の回答が多くありました(複数回答)。

・障害者に適した業種・職種ではないから … 55%
・受け入れる施設が未整備だから … 47%
・雇用義務のある企業ではないため … 43%
・障害者雇用に関する知識が不足しているため … 30%
・募集しているが、採用できない … 17%

障害者雇用について今後の予定

障害者雇用の今後の予定については、「法定基準を満たすように雇用したい」が30%、「自社に必要な能力がある障害者がいれば雇用したい」が28%、「社内の受け入れ態勢が整えば雇用したい」が11%でした。

障害者雇用についての悩みや懸念点

障害者雇用についての悩みや懸念点については、次の回答が多くありました(複数回答)。

・障害者に【適した業務】がない … 43%
・設備、施設、危機等、【安全面の配慮】 … 41%
・周囲の社員の【障害者への理解】 … 40%
・雇用した障害者の【障害特性把握】 … 32%
・雇用した障害者の【生活面・健康面のケア】 … 31%

障害者雇用についての意見(自由回答)

自由回答では、中央省庁の雇用水増し問題に「未達成の企業には(事実上の)罰金を科すのに、自ら違反した場合はどうするのか」と厳しい意見が相次いだようです。企業に法律で定めておきながら、国ではかなりずさんな障害者雇用のカウントをしていたことからもこのような不満がでるのは当然と言えるでしょう。

また、雇用法定率についても「業種によって雇用の難易度が違うので、傾斜が必要」「一律に決めるのは行政の押しつけ」との意見があがりました。確かに業種や業務形態によっては障害者雇用をすることが難しい企業があります。もっと柔軟な選択肢がとれるようにしてほしいという意見もよくわかります。

もちろん障害者を雇用する企業の中には、「仕事を一生懸命してくれて、貴重な戦力になっている」「全従業員にとって働きやすく安全な職場になった」と肯定的な意見もありました。障害の有無にかかわらず、社員一人ひとりが活躍できるような仕組みづくりが求められていることがわかります。

参照:障がい者雇用について(エン・ジャパン)

障害者雇用ができない理由は【業務がない】こと

障害者が雇用していない理由、また、障害者雇用の悩みでトップに上がっているものは、障害者の業務についてでした。以前、中小企業で障害者雇用未達成の企業にヒアリング調査を行ったことがありましたが、その時のヒアリング内容でも業務について困っているという意見が圧倒的に多くありました。

大企業では、障害者雇用の業務として、事務補助的な業務として定型的なものをいくつか切り出して1日の業務にすることがあります。しかし、中小企業にとってこの方法は多くの場合、難しいことがあります。

なぜならば、大企業における総務部や人事部、経理部などが担っている管理的な業務については、多くの中小企業では管理部門として総合的な業務として行なっているからです。必然的に複数のマルチタスクが求めることになり、仕事の内容も多岐に渡ることになります。また、大企業で担っているほどの業務量がないことや、限られた人数で業務を効率的に回すことが求められることもありました。

専門的な知識や経験が求められることも多く、それに見合う人材であれば雇用したいという企業はありますが、それができる人材は自分で就職活動ができる人がほとんどです。公的な機関を通して障害者雇用で採用するできる人材の中から見つけ出すことは、かなり難しいと言えるでしょう。

企業全体で業務の見直しを検討し、定型的な業務を切り出す

では、どうしたらよいのでしょうか。まず、おすすめしたいのは、できる限り定型的な業務を社内全体で見直して切り出すことです。これは、部門に関係なく全社で行ないます。障害者雇用を行なうためというよりも、企業としてより効率的にステップアップした仕事をしていくための業務の見直しをこの機会に行なうようにするといいでしょう。

社会では、働き方改革がさかんに言われていますが、多様な雇用のありかたを検討していかないと、今後、企業が生き残っていくのが本当に厳しい時代になっています。在宅で仕事をできるようにすることや、介護しながら働ける体制を整えることは、決して大企業だけが行えばよいものではなく、中小企業を含めたすべての企業が取り組まなければならない状況になりつつあるからです。そういった意味で、業務の見直しを図ることは、障害者雇用にとっても、企業として業務の方法や無駄なことをなくす上でも役にたちます。

まずは会社の方針として、定型的な業務をまず切り出してみる。そして、定型的な業務を担っている社員には、さらに一つ上の段階の業務や仕事の役割を担ってもらうことを行ってみてください。そこで出てきた業務量を見て、障害者の業務量として適当であれば、そこで雇用してみることができるでしょう。

この定型的な業務とは、毎日同じ業務量がなくてもかまいません。毎日ある仕事、週に1回の仕事、月に1回の仕事、年に数回ある仕事、これらをすべて定型的な業務として切り出します。もし、外部に外注している仕事や派遣に依頼している業務があれば、それも含めてください。

情報発信やマーケティングサポートを新たな業務にする

それでも仕事量が足りない場合には、本来あったほうがよいと考えているが、手が回っていない業務を切り出してみます。

例えば、多くの中小企業では、企業のことをよく知ってもらうためにホームページやSNSを活用してマーケティングを行いたいという要望が多くあります。しかし、実際には手がまわっていない状況が多いようです。このような情報発信を提携的な業務として新たに組み込むこともできるでしょう。

まとめ

中小企業の障害者雇用の実態や課題について、人材サービス会社「エン・ジャパン」(東京)が実施した調査結果をもとに見てきました。

中小企業を中心に480社が回答した結果では、積極的に採用したいと考えている企業は4割に満たず、障害者雇用の現状が厳しいことを示しています。中でも業務の切り出しに関する課題を抱えている企業が多くありました。

現状でできていないのであれば、抜本的な見直しをしていく必要があります。企業全体で業務の見直しを検討し、定型的な業務を切り出すことや情報発信やマーケティングサポートを新たな業務にすることなどを検討するとよいでしょう。

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