重度障害者就労の課題:経済活動(就労)で訪問介護サービスが利用できない

重度障害者の雇用(在宅雇用も含め)が少しずつ普及してきていますが、今だに課題となっているのが、就労しているときに訪問介護サービスを利用できないという問題です。

今年の参院選では、れいわ新選組から重度障害のある舩後靖彦、木村英子両氏が初当選したときには、国会活動は歳費を受け取る経済活動と見なされ、訪問介護サービスの対象とならずに、当面は参院の予算で対応することになっています。

そんな中、さいたま市では、重度障害者の就労支援事業を進めています。常時介護が必要な重度障害者の日常生活にかかる支援を在宅就労中に行うことにより、就労を通じた社会参加の機会を促進し、重度障害者の就労機会の拡大を図ることを推進しようとしています。

ここでは、重度訪問介護サービスとはどのようなものなのか、さいたま市の重度障害者就労支援事業などの取り組みについて見ていきたいと思います。

重度訪問介護サービスとは

重度訪問介護サービスは、障害者総合支援法に基づく障害福祉サービスの1つです。費用の1割を自己負担すれば、残りの9割は公費で賄われものとなっており、食事や排せつ、移動といった普段の生活のための「重度訪問介護サービス」を、月額の自己負担3万7200円を上限に受けることができます。

しかし、移動時の介助については、社会生活上必要不可欠な外出や社会参加のための外出に限られており、経済活動を理由とした外出(通勤や職場での支援)は、公費による介助が受けられず、対象外となっています。

つまり、余暇で外出する場合には使えても、会社への通勤や仕事中には使えないものとなっているのです。このような制度自体は、「障害者が働くという概念がなく、考え方が古い」という主張もされています。

重度訪問介護に関する法律の概要

法律:障害者総合支援法第5条 第3項に規定 「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」

対象者 :重度の肢体不自由者 、重度の知的障害若しくは精神障害により行動上著し い困難を有する障害者 で常時介護を要するもの

サービス内容
・介護(入浴・排せつ・食事)
・家事(調理・洗濯・掃除)
・相談・援助(生活全般) などを総合的に援助する

※ 重度訪問介護では、就労中の支援は認められていない

※1 厚生労働省社会保障審議会障害者部会第67回(平成27年7月14日開催)の資料1- 1において、「障害者等の移動の支援について「「通勤、営業活動等の経済活動に係る外出、 通年かつ長期にわたる外出及び社会通念上適当でない外出」を除く」とされている。

※2 平成29年7月21日付けで厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部障害福祉課から 「経済活動に係る支援については認められない」との回答あり。

出所:重度訪問介護の現状

さいたま市の取り組み

さいたま市は今年度、全国の自治体で初めて、勤務中の訪問介護サービス費用を市が支援する制度を試行的に導入しました。さいたま市は当初、国に規制緩和を要望していましたが、結論が先送りされたため、独自支援を決めています。今年度予算に298万円を計上し、在宅で勤務する重度障害者への訪問介護費用を全額負担することにしています。

この就労支援事業では、常時介護が必要な重度障害者の日常生活に係る支援を在宅における就労中にも行うことで、就労を通じた社会参加の機会を促進し、重度障害者の就労機会の拡大を図ることを目的としています。

事業内容としては、法定サービスの「重度訪問介護」を提供しており、就労中の支援に係る時間を算出し、その分を市が費用負担しています。

出所:重度障害者の就労支援事業【概要】

支障事例1:Aさん(20代女性)就労中

診断名:先天性筋繊維型不均等症(筋力が低下する難病)
障害状況 :上肢2級下肢1級 身体障害者手帳1級
身体状況:気管切開、喀痰吸引有、食事・トイレ・移乗・体位変換 等 常時介護が必要

サービス利用状況: 重度訪問介護(夜間)・居宅介護・移動支援
就労状況:在宅でパソコンを使ったテレワーク(営業職の事務を代行)
     就業時間9時~16時 会社とは携帯電話・PC等で業務連絡

支障事例2:Bさん(30代男性)求職中

診断名:肢帯型筋ジストロフィー症(筋力が低下する難病)
障害状況:上肢1級下肢1級 身体障害者手帳1級
身体状況:24時間鼻マスク型人工呼吸器使用 喀痰吸引有、食事・トイレ・体位変換等常時介護が必要

サービス利用状況:重度訪問介護(24時間)
就労状況:求職中、雇用条件等が合わず困難
※平成30年3月から、テレワークの仕事をインターンとして体験中(入院等で中断有)
※就労する場合には、介助者は本人が確保して欲しいと企業側から提示あり。

重度訪問介護の課題と利用可能のメリット

【課題点】
・体幹が弱く、体のバランスを崩したときに介助者がいないと困る。
・介助者がいない時間帯は、トイレを我慢することもある。
・病状が進行しているため、体力があるうちに働きたい。
・貯金を切り崩しながらの生活のため、経済面での不安がある。
・ヘルパーの確保を前提での求人のため、雇用条件が合わない。

【利用可能のメリット】
・就労時間中も支援を受けて安心して仕事ができる 。
・就労による収入が見込め、生活が安定する 。
・求人の幅が広がり、就職しやすくなる。

障害者介助等助成金制度も活用できるが・・・

障害者を雇用する事業主が職場介助者を配置等した場合に費用の一部を助成する制度として活用されている助成金は、【障害者介助等助成金制度】です。

この助成金は、障害者雇用納付金制度(独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構)に基づく助成金の1つです。

障害者介助等助成金制度の概要

対象:事業主(国等除く、特例子会社も可)
支給要件: 週20時間以上勤務年150万円まで、重度障害者等の職場介助者を配置等した場合
助成額:
・職員配置の場合: 月15万円
・委嘱の場合:1回1万円 費用の3/4、認定日から10年間(最長15年間)支給

H28年度実績:
職場介助者の委嘱の場合 :認定4件、支給62件

現行制度の課題

・「重度訪問介護」は、経済活動中(就業中)の支援ができない。
・「障害者介助等助成金」は、週20時間以上の労働時間が必要、事業主に1/4以上の費用負担が求められ、経費増のために採用しづらくなっている。

出所:重度訪問介護の現状

制度改正を求める声は大きくなっているが・・・

通常国会で成立した改正障害者雇用促進法の付帯決議の中では、衆参両院の厚生労働委員会が、通勤に関する障害者への支援などを求める付帯決議をそれぞれ採択しており、「制度の谷間で働く機会を得られない障害者の置かれた現状を解消する」と明記されました。また、厚生労働省は7月、就業する障害者に対する介助の公費負担問題に関する検討チームを立ち上げています。

日常生活で常時介護が必要な重度障害者への支援拡充の検討を進めるとともに、職場で過ごす時間や通勤時の介護も公的支援の対象とする制度改正を行い、障害者の就労機会の拡大を目指していく方向性を示しています。当初は、来夏までに具体策を取りまとめる予定でしたが、制度改正を求める声が国会で広がっていることなどから、対応を急ぐ方針のようです。

また参院選では、れいわ新選組から重度障害のある舩後靖彦、木村英子両氏が初当選し、国会活動は歳費を受け取る経済活動と見なされたためサービスの対象とはならず、当面は参院の予算で対応することになっています。

これに対して、舩後氏らの常時介護費用の負担を決めた参院議院運営委員会理事会では、一般の重度障害者への対応も急ぐよう政府に強く求めており、制度改正を求める声が国会内で大きくなっていることがうかがえます。

一方で、高収入の重度障害者にどの程度自己負担を求めるか、事業主が支払う保険料などを繰り入れている労働保険特別会計から費用を出す場合にフリーランスの人の支援はどうするのか、財源を公費に求める場合は、大企業も含めた個別企業の経済活動への支援に税金を使うことをどのように見るべきかなどの課題も残っているようです。

まとめ

障害者の雇用が進んできている中、重度障害者が職場や在宅雇用で働くことも増えてきています。しかし、現状の法律では、就労しているときに訪問介護サービスを利用できないという課題があります。

そんな中、さいたま市は今年度、全国の自治体で初めて、勤務中の訪問介護サービス費用を市が支援する制度を試行的に導入しています。このように制度が変わっていくことで、重度障害者の就労機会を促進することや、障害者全体の就労機会の拡大、就労での収入を得ることで、経済面での「自立」へもつながっていくではないかと考えます。

さいたま市の先進的な取り組みと、国の福祉施策や制度改正への変化に注目していきたいと思います。

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