【統合失調症】職場や人事担当者が知っておきたい症状と経過

統合失調症の症状には、陽性症状と陰性症状があり、認知機能障害が起こります。発症の経過には大きく分けて5つの段階があり、現れる症状も異なります。今回は統合失調症の症状や経過についてみていきます。

企業で就職する統合失調症の方の多くは、もちろん症状が落ち着いているので就職している場合がほとんどですが、治療は長期的に続ける必要があるとされています。再発のきっかけには、服薬の中断や環境の変化によるストレスがきっかけとなることが多いようです。

一緒に働く職場に統合失調症の人がいる場合、どのようなことに気をつけることができるのか、参考にしていただければと思います。

統合失調症の症状

陽性症状・陰性症状

統合失調症の症状には、陽性症状と陰性症状があり、認知機能障害もあります。はじめに病気に気づくのは、現実にはありえないような訴えをしたり、ひどくイライラして攻撃的になったり、ひきこもりの生活を送るようになったことがきっかけになることが多いようです。

現実離れした言動は、統合失調症の症状である幻覚や妄想によるもので、健康な人にはないものが現れる症状を陽性症状といいます。幻覚や妄想、強いイライラやとても興奮した状態、前後のつながりがない会話などがその例です。

自分の考えが他人に分かってしまうと感じる悟られ体験や、自分で行動しているのに誰かに命令されているように感じるさせられ体験を持つこともあります。

また、健康な人が本来持っているべきものがなくなる症状を陰性症状といいます。興味や関心や意欲が低下する(意欲低下)、生き生きした感情がわからなくなる、または表情が乏しくなる(感情の平板化、感情鈍麻)、友人づき合いが減って引きこもりがちになるなどがあります。

日常生活に影響を与える認知機能障害

認知機能障害とは、知覚したことを処理する能力や、与えられた課題を達成する能力などに支障がでることです。知能や機能の低下が見られたり、認知機能障害があると自立した日常生活や、仕事、学校生活にも影響があります。

外部からの刺激を受けとめる機能に障害が起こることもあります。音や色彩の刺激に敏感になったり、逆にひどく鈍化になったりするのは聴覚や視覚を通じていた情報を、脳内で処理する機能に支障がでるためだと考えられています。

統合失調症の主な症状

【陽性症状】
・幻覚、妄想
・強いイライラ
・興奮
・つながりのない会話【陰性症状】
・表情が乏しい
・意欲が低下する
・思考内容が乏しい
・引きこもる

【認知機能障害】
・知能、記憶力の障害
・実行機能(課題を達成する能力)の障害
・感覚情報処理の障害(知覚過敏や注意の障害)

 

統合失調症の診断基準

統合失調症の診断は、診断基準をベースに行われます。診断基準としては、WHO(世界保健機関)の国際疾病分類である「ICD-10」と、米国精神医学会の「DSM-5」の2つが主に使われています。

これらの診断基準では、統合失調症にみられる症状を記述した診断項目を多数あげて、それらに当てはまる項目がいくつあるかによって決めるようになっています。DSM-5の診断基準では、陽性症状(幻覚や妄想など)や陰性症状(感情の平板化や意欲の低下など)が認められ、社会的・職業的機能の低下した状態が持続する場合に統合失調症が疑われます。

特徴的な症状

(A) 以下のうち2つ以上が、1カ月間ほとんどいつも存在する。
1. 妄想
2. 幻覚
3. まとまりのない発語(例:頻繁な脱線または滅裂)
4. ひどくまとまりのない、または緊張病性の行動
5. 陰性症状(感情の平板化、、思考の貧困、意欲欠如など)

社会的または職業的機能の低下

(B) 障害の始まり以降の期間の大部分で、仕事、対人関係、自己管理などの面で1つ以上の機能のレベルが病前の水準よりも著しく低下している。(小児期や青年期の発症の場合、期待される対人的、学業的、職業的水準にまで達しない)。

(C) 障害の持続的な徴候が少なくとも6カ月間続いている。この6カ月の期間には、基準Aを満たす各症状が1カ月続いている。

(D) 統合失調感情障害と、抑うつ障害または双極性障害、精神病性の特徴を伴うものではない。

(E)乱用薬物や医薬品、他の医学的疾患の生理学的作用によるものではない。

(F) 自閉スペクトラム症や小児期発症のコミュニケーション症の病歴がある場合、統合失調症の追加診断は、顕著な幻覚や妄想が、その他の統合失調症の診断の必須症状に加えて1カ月以上続いている。

統合失調症の経過時期

統合失調症の経過は、「前駆期、急性期、消耗期、回復期、寛解期」と5つの時期に分けられます。発症後の急性期には、陽性症状が比較的急激に現れ、この時期に診断が確定する場合が多いようです。激しい陽性症状がおさまると消耗期となりますが、陰性症状が残ることが通常です。その後に回復期になると少しずつ活動的になっていきます。落ち着いて日常生活を送れるようになるのが寛解期です。

しかし、統合失調症の症状や障害のあらわれかたや経過は個人により様々で、個人差が大きいことが知られています。統合失調症の一般的な症状とされている幻覚や妄想も、すべての統合失調症の人に見られるわけではありません。また、治療によって幻覚や妄想が目立たなくなり、陰性症状や認知機能障害だけが残る場合も多く見られます。

統合失調症になっても、健康な人と同じように通勤通学をしてしている人もいます。自立した社会生活を行なうには、医療者と本人、家族が一体となって治療に取り組むことが求められます。

寛解期になると日常生活を送れるようになりますが、再発には十分な注意が必要になってきます。服薬の中断や環境の変化によるストレスが、再発のきっかけになることがあります。寛解期になると就職する機会も増えてきますので、次に寛解期の状態について見ていきます。

寛解期の状態

薬物療法によって陽性症状が改善し、その後十分に休息し、回復期にリハビリテーションに取り組むことによって落ち着いて日常生活を送れるようになり、社会的活動が可能になってくると情緒的に安定してくる状態のことを寛解期と呼びます。

つまり、陽性症状(幻覚、妄想)、解体症状(まとまりのない会話、行動)、陰性症状(感情鈍麻、自閉、意欲低下)の重症度がいずれも軽くなったり、なくなったりした状態であり、このような状態が6ヶ月以上続いている場合になります。

しかし、完治ではなく「寛解」という言葉を使うのは、普通に日常生活が送れるようになっても多くの場合は陰性症状や認知機能障害がある程度残り、病気になる前と同じ状態にまでは戻らないからです。また、いったん回復しても再発率が高く、継続的な治療が必要なこともあります。

薬をどのぐらいの期間服用することによって再発の危険がなくなるのかという確かなデータはまだありません。精神症状が1回出た後、順調に回復して寛解状態になった後でも治療は長期的に続ける必要があります。高血圧や糖尿病などの人が、生活習慣の改善や薬物療法で検査値が正常化した後も経過観察や継続的な治療を行わないと、再び悪化するのと同じです。

服薬は必要

寛解期になって良い状態で日常生活が送れるようになってくると、長期間薬を服用し続けることへの不安が出てくることが多いようです。処方される薬の量も減ってくると、「こんなに少しの量でうまくやっているので、服用しなくても大丈夫なのでは・・・」という考えが出てきます。そして、だんだん病院から足が遠のくようになり、その後自己判断で服薬を中断する場合もあります。

服薬を中断してすぐに症状が現れることはあまりなく、しばらくはよい状態が続くのでやっぱり大丈夫だったと思いがちです。しかし、服薬を中断しても再発しない人は、全体の10%に満たないとされています。再発は服薬中断から半年ぐらい経ってから起こることが多く、長いと2~3年後という場合もあるので注意が必要になります。

再発のきっかけになること

再発のきっかけになりやすいのは、職場や家庭などの環境の変化や友人関係恋愛問題からのストレスです。職場だけでなく、家族からのプレッシャーも大きなストレスになります。

周囲にもわかる症状として、不眠など睡眠リズムの変化や、イライラしたり、落ち込んだりしているようが見られます。また、表情が穏やかな顔つきから硬いものになります。

このような状況がみられる場合は、主治医にどんな状態かを伝え、薬を調整したり、心身の疲れを取ったりするようにします。プレッシャーになるものがある場合には、その負担を軽くしてあげる必要があります。

統合失調症が再発すると、もう一度急性期→消耗期→回復期→寛解期を通らなければならならなくなるので、再発の症状や傾向が見られた場合には、早めに対処することが必要になります。

【統合失調症の寛解期】
・仕事ができるようになっても、ストレスがたまると再発のリスクが高まります。疲れたときはゆっくり休養するなど、体調管理に注意します。・症状がよくなったように思えても、服薬をやめると再発することが多く見られます。処方された薬をきちんと飲み続けることが大切です。

・再発しそうだと感じたら、早めに主治医に相談します。必要な場合は薬の量を調整してもらいます。

まとめ

統合失調症の症状や経過についてみてきました。統合失調症の症状には、陽性症状と陰性症状があり、認知機能障害があります。発症の経過には大きく分けて5つの段階があり、現れる症状も異なります。

企業で就職する統合失調症の方の多くは、症状が落ち着いている寛解期の時期が多いと思われますが、治療は長期的に続ける必要があるとされています。また、普通に日常生活が送れるようになっても、多くの場合は陰性症状や認知機能障害がある程度残り、病気になる前と同じ状態にまでは戻らないといわれています。

再発のきっかけには、服薬の中断や環境の変化によるストレスがきっかけとなることが多いようです。疲れたときは早めに休養させることが大切です。

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