障害者雇用をするときに、採用面接をおこないます。採用面接は、自社にあった人が採用できるかどうかを判断する上で重要なものです。しかし、障害のことにどれくらい触れてよいものなのかどうか・・・と迷うことがあるかもしれません。
障害者の採用面接をするときには、聞いておくべきこと、聞いてはいけないことについてみていきたいと思います。
障害者雇用の採用面接ポイントとは?
障害者の採用だけに限りませんが、採用面接では、履歴書や職務経歴書などの書類だけではわからないことを、実際に質問や会話を通して、自社に合った人材なのか、求めている仕事ができるスキルがあるのかなどを確認していく場になります。
せっかく採用しても、入社後のミスマッチや、すぐに退職となることがあります。そうならないためには、面接の中で、仕事に対する姿勢や考え方を確認したり、すり合わせを行う大切な機会ともなります。面接の場で必要なのは、面接する人のことを知ろうとすることです。
とは言え、面接の時間は限られています。面接の時間の中で、面接する人をよりよく知るためには、効果的に質問して、相手を知ることが必要です。
障害者の採用面接で聞いておくべきこと
障害に関する情報
障害者雇用をする上で、会社側が障害の状況について把握し、理解しておくことは、働きやすい環境を考えたり、整備していく上でも必要です。また、企業には、合理的配慮と呼ばれる会社にできる配慮を示すことが義務となっています。
そのため、次のような項目については、把握しておいたほうがよいでしょう。
・障害の状況、程度(中途の場合には、発症時期や原因等)
・通院頻度、服薬状況
・調子が悪くなるときはどのようなときか、そのときの対応方法
・会社に希望する配慮
・体調管理で気をつけていること等
働くことに対する意欲をもっているか
障害者雇用の中では、就労訓練に通っている人がいます。このような訓練機関では、訓練できる期間が決まっており、それ以上在籍することができません。例えば、障害者能力開発校では、数ヶ月から1年間(コース等によって異なります)、就労移行支援事業所等では2年間の期限が決まっています。そのため訓練期間が修了する前に就職先が決まるように、就職活動のカリキュラムが組まれます。
もちろん、そのような訓練機関に通うということは、就職したいという意思をもっているからなのですが、就職の状況や時期を考えたときに、本人が希望する仕事内容などではない場合でも、訓練機関やそこのスタッフから薦められることもよくあります。
採用面接に来ているのだから、当然、就職の意欲はあるのだろうと思ってしまいがちですが、本当に本人が就職する意思があるのかどうか、他の人から薦められて断れない状況になっていないかを確認することは大切です。
働く上での基本的な管理が、自分でコントロールできているか
障害者雇用の中では、「職業準備性」と呼ばれる働くための準備が整っているかどうかという点を重視します。
職業準備性は、業種や仕事内容に関わらず、働く上で必要なものとされる基本的なもので、その5つは「健康管理」「日常生活管理」「対人スキル」「基本的労働習慣」「職業適性」を示します。
出所:障害者職業センター
仕事や業務に関するスキルや知識は、入社してから学ぶこともできますが、健康管理や日常生活管理、対人スキル、基本的労働習慣は、入社する前に習得しておいてもらうべき点です。
これらのことを、会社に入ってから教えることは、担当するスタッフにとっても大きな負担となりますし、雇用することが難しくなりがちです。そうならないためにも面接の際に、これらのコントロールが自分でできているかを確認することは必要です。
障害者の採用面接で聞いてはいけないこと
採用選考に当たっては、障害の有無に関係なく、「応募者の基本的人権を尊重すること」と、「応募者の適性・能力のみを基準として行うこと」が、厚生労働省から公平な採用選考をするための考え方として示されています。障害者の採用面接においても、これらの点を守ることが必要となります。
本人に責任のないことについて聞くこと
本人に責任のない、以下の点に聞くことは、採用の場でふさわしくない質問です。
・本籍・出生地に関すること (注:「戸籍謄(抄)本」や本籍が記載された「住民票(写し)」を提出させることはこれに該当します)
・家族に関すること(職業、続柄、健康、病歴、地位、学歴、収入、資産など)(注:家族の仕事の有無・職種・勤務先などや家族構成はこれに該当します)
・住宅状況に関すること(間取り、部屋数、住宅の種類、近郊の施設など)
・生活環境・家庭環境などに関すること
個人の思想信条に関わる、本来自由であるべきことについて聞くこと
以前の面接の場では、愛読書や尊敬する人などについて聞くことがありましたが、今はこれらの質問は、応募者の思想や自由に関するものとして禁止されています。面接で緊張しているときに、場の雰囲気をほぐそうとして質問してしまうことのないように気をつけてください。
・宗教に関すること
・支持政党に関すること
・人生観、生活信条に関すること
・尊敬する人物に関すること
・思想に関すること
・労働組合に関する情報(加入状況や活動歴など)、学生運動など社会運動に関すること
・購読新聞・雑誌・愛読書などに関すること
公正な採用選考の考え方については、下記の資料を参考にしてください。
→ 採用選考自主点検資料(厚生労働省)
動画の解説はこちらから
まとめ
障害者の採用面接で聞いておくべきこと、聞いてはいけないことについて、見てきました。
障害についての質問は、どこまでしてよいのかという相談をいただくことも多いですが、企業側で雇用するときに把握しておく必要があると判断するものであれば、質問していただいて大丈夫です。ただ、表現の仕方や聞き方については、配慮が必要となってきます。
企業には、合理的配慮の責任があり、興味本位に聞いているのではなく、会社として一緒に働くときにどのような配慮やサポートが必要なのかを把握しておきたいなどの理由をはっきり伝えるのであれば、応募者は質問の意図を理解しやすくなるでしょう。
参考
障害者の採用面接で必ず確認しておきたい職業準備性ピラミッドとは?
0コメント