【特例子会社事例:GBOの雇用前編】障がい者雇用を戦略的に考える

【特例子会社事例:GBOの雇用 前編】障がい者雇用を戦略的に考える~特例子会社設立8年目で見えてきたこと~

2021年02月3日 | 企業の障害者雇用

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「障害者雇用促進法」では雇用義務制度があり、これに基づいて、企業の障がい者雇用が進められてきました。しかし、業種や企業の規模などにより、障がい者雇用を進めるのが難しいなどの理由から「特例子会社」を設立することがあります。

グリーでも、特例子会社のグリービジネスオペレーションズ(以下、社名略称のGBOと記載)を2012年5月に設立し、障がい者雇用を進めてきました。精神や発達障がいの方が活躍する特例子会社として有名ですが、そのための組織づくりや仕組みづくりについて、グリーの特例子会社グリービジネスオペレーションズの経営企画室マネージャー竹内稔貴 様からお話をお聞きしました。

注)障害者雇用ドットコムでは、「社会モデル」の考え方を取り入れ、「障害」表記をしていますが、今回は、グリービジネスオペレーションズさんのポリシーに基づき「障がい」表記となっています。

グリービジネスオペレーションズ株式会社の概要

親会社:グリー株式会社

事業内容
・データ作成・入力業務
・総務・人事業務のサポート業務
・ゲームビジネスサポート業務(品質管理、画像加工、市場調査など)
・マッサージルーム運営業務

設立:2012年5月1日

従業員数:55人(精神・発達障がいが約7割)

会社ホームページ

特例子会社の設立経緯と存在意義

Q:特例子会社の設立から8年を迎えて、特例子会社内の障がい者雇用の変化や、親会社との関係について、お聞かせください。(竹内さんは、特例設立時から関わられています。)

A:特例子会社を立ち上げたきっかけは、グリーが上場し、急成長する中で、社員も急増し、法定雇用率を満たしていないというリスクが一気に顕在化してきたことによるものでした。

そこで、経営としては特例子会社の制度を活用して、自立自走できる会社を作り、法定雇用率を達成していこうとしました。特例子会社は、会社として社員の障がい特性に合わせた制度や環境づくりを進めやすいというメリットがあるからです。

当社はグリーグループの事業の柱であるインターネットサービスやゲームとの親和性の高い精神や発達障がいの方の雇用を進めており、その社員達の特性に合わせた環境づくりに取り組んできました。

社員たちの業務については、設立当初、コピーやシュレッダーなどの軽作業を中心に行っておりました。ただ、この頃は法定雇用率を満たしてはいましたが、売上や利益に貢献しているかと言うと、そこまでの直接的な貢献度は低かったというのが実際のところです。つまり、障がい者雇用は、完全にコストとなっていたわけです。

しかし、2013年頃に、グリーグループの経営環境の変化が生じました。コスト構造の見直しを理由とした社内リソースの活用が求められるようになったのです。このタイミングで当社も思い切ってインターネットサービスやゲームなどの事業部門に貢献できる仕事を積極的に受注していく方針に舵を切りました。

始めは経験も実績もないため、もちろん簡単にはいきませんでした。ただ、もともとはグリーグループの事業、ゲームやインターネットとの親和性の高い能力は持っている社員たちが多かったので、基本的な学びとパフォーマンスを発揮するための環境配慮を行えばいろいろな試行錯誤があったものの、戦力化することが可能となりました。

この戦力化のためにはいくつか取り組むべきポイントがありました。

まず、社員それぞれがどのような特性や能力、志向をもっているのかを各上長が1対1の面談でしっかり理解します。必要に応じてはその社員の定着支援をおこなっている支援機関の担当者にも入念にヒアリングを行いました。その上でグリーグループのいろいろな業務の中から、GBOが請け負った方がいいと考えたものは、積極的に現場にGBOへの委託を提案していきました。

次に環境整備です。障がい特性上働きづらさがあったり、本来の能力を発揮するための仕組みづくりが必要な社員たちが多くいます。これも社員たち一人ひとりとのコミュニケーションの上で、丁寧に作り上げていきました。

例えば、休憩室や業務集中スペースなどのハード面でのオフィス環境整備ももちろんですが、進捗管理の方法や業務上でのコミュニケーションの取り方などソフト面の仕組みづくりなども含まれます。このソフト面での仕組みは、会社対社員間だけではなく、お互いに障がいのある社員同士でも作りあげていきました。

業務の変遷について

Q:特例子会社の仕事内容は、どのように変化してきましたか。これからどのように発展されていくことをお考えですか。

A:設立当初はシュレッダーやコピー、スキャニングなどの書類整理周りの軽作業でした。当時、障がい者雇用ノウハウがなく、見学に伺わせていただいた多くの会社が取り組んでおり、導入しやすそうだったためにそのような業務を用意したわけです。しかしこの時に生じた問題は社員の能力と業務とのミスマッチです。

業務が、社員の能力に対して簡単すぎた、かつ長時間集中して手作業をすることに特性上、合わなかったというところがありました。大変残念な話ですが、この当時は「仕事がつまらない」を理由に会社を辞めていく社員が何人もいました。この反省もあり、PCやモバイルデバイスを活用したある程度高度な業務が必要だと考えました。

その後、先に述べたような経営環境の変化のタイミングとあわせ、積極的に営業をかけ、実績をつくることで、グリーの事業の中心となる業務、つまりインターネットサービスやゲーム事業に関わるような業務に移行していきました。

事業部門の業務に移行した際に工夫した点は、依頼元のメリットをきちんと認識し、それを辛抱づよく伝えるように取り組んだことです。

具体的には、以下の点です。

・コストメリット
社外への業務委託や派遣社員雇用のための人件費と比較したコスト優位性を理解してもらいました。

・業務依頼時に発生する担当者負荷軽減
社外であれば業務発注時には、見積り取得や社内稟議、契約書のまき直しなどの工数が多々発生することがあります。これが自社グループ内であれば、ある程度現場判断で柔軟に対応することができるようになります。

・業務環境面について
グループ内であれば同じインフラ、例えば社内のネットワークや共通のシステムを使用することができるため、業務環境整備から始める外部への業務委託よりも環境面を整えやすくなりました。

・業務ノウハウの蓄積
外部にアウトソースすると、業務のノウハウが自社に蓄積されません。そのノウハウを内部に蓄積することができるようになります。

このようなメリットをきちんと説明し、理解されることによって、本社と特例子会社、双方メリットがある形での業務移管が可能になっています。

どこの会社でも、派遣社員や業務委託企業などがおこなっている業務があると思うのですが、これらは社外に出ていくお金です。しかし、これらの仕事を障がいのある自社の社員が担うことができれば、そのほうが経済的メリットも高い上に、広く見れば障がい者の雇用創出といった観点から社会貢献にもつながります。

私たちにとっての障がい者雇用は、CSRではなくCSVを強く意識しています。経済的価値と社会的価値の創出を並行して実現することで、雇用が本当の意味でのサスティナブル(持続的)な取り組みとなると考えています。

補足:CSVとは
CSV (Creating Shared Value)とは、2011年にハーバードビジネススクールの教授であるマイケル・E・ポーター氏とマーク・R・クラマー研究員が発表した論文『Creating Shared Value』(邦題『経済的価値と社会的価値を同時実現する共通価値の戦略』)で提唱されたものです。日本では、「共通価値」「共有価値」などと訳され、CSR(Corporate Social Responsibility)の発展形と言われることもありますが、ポーター教授いわく、CSVとCSRは似て非なるものです。CSVは、企業にとって負担になるものではなく、社会的な課題を自社の強みで解決することで、企業の持続的な成長へとつなげていく差別化戦略なのです。

出典:CSVとCSRの違いは?ネスレも取り組むポーター教授の差別化戦略の本質

特例子会社で働く社員たちについて

Q:特例子会社で働かれる障がい者社員の方たちについてお聞かせください。

A: 現在、雇用している社員のほとんどが、精神、発達の障がいがあります。積極的に雇用し、仕事の戦力となっています。

採用基準は、設立時と現在とでは異なってきました。設立時は一般的な採用で求められがちなスキルや経験といった表面的なところに着目して選考を進めていました。しかし現在では、むしろそれらのベースとなる健康管理や日常生活管理に着目することにしています。

職業準備性ピラミッドをイメージしていただけると分かりやすいのですが、経験やスキルは適性さえあれば、入社後からでも業務に則したものを身につけることができます。しかし働く上で土台となるものがしっかりと築けていなければ、身につける前に働くこと自体に困難な状態が生じてきてしまい、安定して長い間働き続けることができなくなってしまうからです。

補足:職業準備性ピラミッドとは
職業準備性ピラミッドとは、職種や障害の有無を問わず働いていく上で必要となる能力を段階ごとに示したものです。5つの能力は「健康管理」「日常生活管理」「対人スキル」「基本的労働習慣」「職業適性」に分けられます。これらのスキルは、職種、障害の有無を問わず、働く上で必要とされています。

Q:GBOのマネージャーの方々の現職にいたる経緯について教えてください。

A: 現在5名のマネージャーがいますが、グリーグループの管理部門からが3名、事業部門からの配属が2名です。全員、障がい者雇用に関する知見は全くありませんでしたが、配属後に、障害者職業生活相談員やジョブコーチの資格を取得するなど、実務以外のところからのスキル向上も努めています。

また、他社とも積極的に情報交換を行い、各社の好事例から学んでいます。

特例子会社がサスティナブルに生きていくための秘訣とは

Q:特例子会社を運営していく上で大切にしている点についてお聞かせください。

A:特例子会社を運営していく上で大切にしている点は、グリーグループの事業に貢献する会社となることです。特例子会社と言えども、営利企業です。社員を雇用しているからには給与を払う必要があり、そのための費用を自らが稼ぐ必要があります。まずそのことを意識し、達成することが必要だと感じています。

ではそのためにどうするか。それは社員一人一人が、事業に貢献できる仕事を担当し、その仕事を全うすること、そして、企業運営に相当する対価の得られる仕事を行うことだと考えています。

そして自分たちの担当している業務が事業に結びついていると認識できるようにすることです。当社では四半期ごとにグリーグループのIR資料をもとに、全社員向けの経営報告会を行っております。そこではグリーグループの事業の状態や方針、そしてGBOで請け負っている仕事がどこに貢献しているのかを説明しています。

まとめ

グリーの特例子会社、グリービジネスオペレーションズ(GBO)さんの特例子会社の取り組みについて伺いました。「特例子会社を設立すれば、障がい者雇用はなんとかなるのでは・・・」と思われることもありますが、特例子会社がサスティナブルに生き残っていくために必要なことについて、お聞きすることができました。

印象的だったのは、特例子会社の進展に合わせて、業務が進化していったことです。設立当初はシュレッダーやコピー、スキャニングなどの書類整理周りの軽作業が中心でしたが、経営環境の変化のタイミングとあわせ、インターネットサービスやゲーム事業に関わるような業務へと移行してきています。

特例子会社を持続的に運営していくためには、時代や組織に必要とされている業務へどのように転換していくかも大切になっていると感じました。

参考

【GBOの雇用後編】精神・発達社員が活躍するテレワーク3つのポイント

障害者の採用面接で必ず確認しておきたい職業準備性ピラミッドとは?

障害者の採用面接で障害のことについてどのように聞いたらよいか?

障害者の採用面接で聞いておくべきこと、聞いてはいけないこと

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