なぜ、精神障害者の雇用が他の障害者よりも増えているのか

なぜ、精神障害者の雇用が他の障害者よりも増えているのか

2020年09月9日 | 障害別の特性・配慮

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近年、障害者雇用の中でも、精神障害者の雇用が増えています。なぜ、精神障害者の雇用が他の障害に比べて増えているのでしょうか。

その理由について、見ていきたいと思います。

精神障害で働きたい人が増えている

障害者雇用は、これまで順調に雇用人数を増やしてきました。この10年間の推移をみてもそれがよくわかります。平成21年と令和元年のハローワークにおける職業紹介状況を比較してみると、就職の全数は全体としては2.3倍ほどになっています。

また、障害別の割合を見ると、2018年から雇用義務となった精神障害者伸び率がとても高くなっています。その数は、平成21年度の10,929件から令和元年の49,612件と約4.5倍となっており、職業紹介のうちの半数を精神障害者となっています。

出典:労働政策審議会障害者雇用分科会(厚生労働省)

このように精神障害者の雇用の増加した背景には、いくつかの要因があると考えられます。

まず、企業の障害者雇用が進んできて、身体障害、知的障害の雇用がかなり進んでいる、つまり、働ける障害者はすでに働いているケースが多くなっていということです。そのため、障害者雇用の中では進んでこなかった精神障害者の雇用が、増え続けているのです。

また、精神障害者が障害者雇用としてカウントされるようになったのは、平成18年からです。障害者雇用の中では新しいこと、そして、精神障害の方の職場定着は、他の障害種別よりも難しいと言われてきたこと、またすでに社内にメンタル面でサポートの必要な社員がいるなどの理由で敬遠する企業も多かったのですが、精神障害の職場定着の取り組みが進みつつあり、雇用ノウハウも蓄積されてきたことから採用する企業も増えてきつつあります。

このような企業における精神障害者の雇用の増加は、今までは精神障害の手帳を取得しないで就職を目指そうとしていた障害者の方にとっても、一般の就職をするよりも配慮のある障害者枠での就職を目指そうとする人が増えてきています。

特に、精神障害の手帳を持つことで、周りの人から偏見の目で見られたり、精神のレッテルを貼られないようにしてきた人も多くいました。例えば、今は、「統合失調症」と呼ばれる疾患も、以前は「精神分裂症」という名称で呼ばれていました。どのような病気かを知らない人にとっては、その言葉から、何か怖いというイメージができてしまいやすかったのも事実です。そんなこともあり、障害を認めたくないという思いが強かった人も、多かったと思われます。

また、発達障害の社会的認知が広がったこと、発達障害でも精神の手帳取得をして障害者雇用で働ける機会も増えてきたことなどの要因もあり、精神障害者の雇用が増えていると言えます。

障害者雇用の場が増えるということは、それぞれの個人の能力を活かすという意味では望ましいものですが、障害者雇用率は、次のような障害者雇用率算定から計算されています。

そのため働く精神障害者が増えるということは、分母が大きくなることから、障害者雇用率も上がっていくことを見込んでおく必要があります。

精神障害の雇用は、他の障害種別よりも遅れてきた理由

日本の障害者雇用は、身体障害者の雇用から始まっています。身体障害者の雇用が始まったのは、戦争で負傷した傷痍軍人の就職を進めるためでした。障害者法定雇用率は1960年に企業への努力義務として導入され、1976年に義務化されています。義務化された当初は、法定雇用率は1.57%でした。

その後、1988年に1.6%、1998年に1.8%と段階的にあがっています。また、1998年には、知的障害が義務化されています。

そして、2013年には、民間企業が2.0%、国・地方公共団体などが2.3%、都道府県などの教育委員会が2.2%となり、民間企業の法定雇用率が2%台となっています。またこの年に法改正が行われ、2018年4月から精神障害者も雇用義務の対象になることが決まりました。2018年に民間企業で2.2%、国・地方公共団体などで2.5%、都道府県などの教育委員会で2.4%となり、現在に至ります。

出典:労働政策審議会障害者雇用分科会(厚生労働省)

日本の障害者雇用は、身体障害、知的障害、精神障害の順番で進められてきたため、精神障害の雇用は遅れてきました。

また、精神障害の歴史を見てみると、今までは、病気を発症すると精神病院での長期入院となっていて、家族や地域生活と隔離されていた時代が長くありました。今では、地域生活へ移行する施策や就労支援をサポートする機関がたくさんありますが、しばらく前まではこのようなものが殆どなかったということも影響しているでしょう。

しかし、精神障害で働きたい人が増えていますし、医療の進歩により薬の改良も進んでいて、精神障害があっても働ける人は増えています。最近では、通院し、服薬しながら、社会生活(労働も含め)を送ることが推奨されています。

精神障害の雇用事例も多くなってきています。

平成21年度から平成22年度において、厚生労働省が実施した【精神障害者の雇用モデル事業】は精神障害者の雇用促進に取り組む意欲はあるものの経験やノウハウが十分でない事業所を対象として、精神障害者の雇用促進のための取組を委託し、ノウハウを構築する精神障害者雇用促進モデル事業を実施しました。

その成果からも、適切な配慮や適材適所の人材配置をすることによって、障害者雇用をすすめることができることを示すものとなっています。

精神障害者の雇用モデル

モデル事業を実施した10社は、大企業、または、特例子会社が中心となっています。実施した企業と取り組みのポイントを見ていきましょう。

SMBCグリーンサービス 株式会社

取組のポイント
・外部協力を得て、リスクの少ない取り組みを。
・短時間勤務制度と相談できる体制が安定につながる

株式会社 NTTデータだいち

取組のポイント
・ITスキルの高い精神障害者を採用
・人材発掘の困難を乗り越え、次代の人材育成中

株式会社かんでんエルハート

取組のポイント
・定着のベースは病状管理と生活管理
・アセスメントとサポートを徹底重視

清水建設株式会社

取組のポイント
・「雇用」という意識を忘れずに
・定着のためにトレーニング・アセスメントは有効

第一生命チャレンジド株式会社

取組のポイント
・グループ就労は雇用の定着につながるか?
・新事業立ち上げに精神障害者を雇用

株式会社ダイキンサンライズ摂津

取組のポイント
・SOSサインをキャッチして、体調変化にすぐ対応
・十分な実習期間が“成功”のカギ

株式会社 高島屋

取組のポイント
・きめ細かな面接が雇用後のミスマッチを防止
・お互いに何でも話すことで、大きな安心感を

中央労働金庫

取組のポイント
・目で見て、就労支援機関に聞いて“スカウト”採用
・庫内営業が奏功し、多数の業務の切り出しを実現

株式会社日立製作所

取組のポイント
・障害者ではなく、「人財」という視点
・雇用する側の「人財」育成も必要

三菱商事太陽株式会社

取組のポイント
・ステップアップで着実に“戦力”に
・評価することが仕事の原動力になる

それぞれの企業の取り組みは、参考資料から見てください。

まとめ

近年、障害者雇用の中でも、精神障害者の雇用が増えています。なぜ、精神障害者の雇用が他の障害に比べて増えているのかについて見てきました。

精神障害者の取り組みを見ていると、最近では、多くの雇用事例が取り上げられています。様々な工夫がなされていますが、基本は、仕事とのマッチング、本人の障害受容とセルフコントロール、そして、周囲からの適切な配慮と理解だと感じます。

平成21年度から平成22年度において、厚生労働省が実施した【精神障害者の雇用モデル事業】は、精神障害者の雇用促進に取り組む意欲はあるものの経験やノウハウが十分でない事業所を対象としたものとして実施されています。企業の規模や業種などは、異なるかもしれませんが、精神障害者に取り組もうとしている企業、すでに取り組んでいるものの悩みを抱えている企業にとって、考え方や取り組みのヒントなどは得られるものが大きいでしょう。

参考

精神障害者の職場定着は本当に難しいのか?

【職場で一緒に働く】精神障害の特徴と接し方のポイント

精神障害者と一緒に働く職場でストレスを感じると思ったら、考えてみてほしいこと

精神障害者雇用事例集「精神障害者とともに働く」~厚生労働省モデル事業参加企業の取り組み~(厚生労働省)

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