厚生労働省が 「就労パスポート」を作成、配慮とのミスマッチ防げるか

文部科学省が、2020年4月からキャリア・パスポートを導入することを発表しましたが、厚生労働省では【就労パスポート】を作成したことを発表しました。

この【就労パスポート】は、障害者の就職や就職後の職場定着を促す情報共有ツールとして活用されて、障害者を雇用する事業主や就労支援に当たる福祉事業所が、障害者一人ひとりの情報を共有することで、障害者の望む配慮とのミスマッチを防ぐことを目的としているようです。

就労パスポートはどのような経緯があって作られたのか、どのように活用できるのか見ていきたいと思います。

就労パスポート作成の経緯

就労パスポートが作成される経緯は、障害者を雇用する事業主側が厚労省に作成を望んだことから始まりました。近年、精神障害者の企業における雇用数は大幅に増加していますが、職場定着に困難を抱えるケースが多く見られていて、多様な障害特性に応じた職場定着支援をどのように進めるのかが課題となっています。

特に、精神障害者は個人差があり、それに応じた個別性の高い支援を要することが少なくありません。そのような精神障害者の支援の充実を図るため、「今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会」報告書(平成30年7 月30日取りまとめ)を踏まえて、就労パスポートの作成を検討してきました。

このパスポートによって、障害者本人の障害理解や支援機関同士での情報連携等を進めるとともに、事業主による採用選考時の本人理解や就職後の職場環境整備を促すために、就労に向けた情報共有フォーマット(就労パスポート)を整備し、雇入れ時等における利活用の促進を図ろうとしています。

有識者からなる検討会が行われた際には、これを使う障害者、あるいは使わない障害者が不利益を被るのではとの懸念が有識者から挙がりましたが、厚生労働省は「事業主の皆様には使い方を十分周知していきたい」とコメントしています。

精神障害者等の就労パスポート作成に関する検討会

精神障害者等の就労パスポート作成に関する検討会は、2018年12月に1回目が開催され、全部で4回検討会が開かれてきました。

第1回 2018年12月開催
1 検討会の開催について
2 今後の検討会の進め方について
3 既存ツールの概要
4 就労パスポートの記載項目と指標について
5 意見交換

第2回 2019年2月開催
1 就労パスポートの記載項目と指標の改訂案について
2 就労パスポートの活用ガイドラインについて
3 意見交換

第3回 2019年5月開催
1 就労パスポートの記載項目と指標の改訂案について
2 就労パスポートの活用ガイドラインの改訂案について
3 本人向けリーフレット及び活用の手引きについて
4 就労パスポートの試行について
5 意見交換

第4回 2019年9月開催
1 就労パスポートの試行結果を踏まえた様式等の改訂案について
2 意見交換

精神障害者等の就労パスポート作成に関する検討会の議事録、資料はこちらから

就労パスポートの内容

就労パスポートでは、障害者が働く上での自分の特徴やアピールポイント、希望する配慮などを就労支援機関と一緒に整理し、就職や職場定着に向け、職場や支援機関と必要な支援 について話し合う際に活用できる情報共有ツールとして使われることを意図しています。

パスポートは、当初、障害者雇用を行う事業主が見ただけでは分かりにくい精神障害者のために活用することを想定していましたが、結果として障害の種類は問わずに使えるようになっています。

項目としては、次のようなものがあげられています。
・職務経験
・アピールポイント
・体調管理
・希望する働き方
・コミュニケーションに関わること
・作業遂行面に関わること
・就職後の自己チェック
・支援機関の連絡先

記入項目は大きく「職務経験」「体調管理と希望する働き方」「コミュニケーションの特徴」「作業遂行面の特徴」に分けられており、それぞれの項目に用意された選択肢の中から自分に当てはまるものにチェックをつけたり、自由記述ができるようになっています。
記入に際しては、実際に記入する障害者当事者向けに【活用の手引き】が準備されており、就労パスポートの様式の記載方法(記載例)が掲載されています。

また、支援機関や障害者を雇用する事業主向けには、それぞれ【支援機関向け活用ガイドライン】【事業主向け活用ガイドライン】があります。障害者が就労パスポートの作成・更新を行う際、支援機関や事業主はどのような点に留意しながら、具体的にどのような作成支援・かかわりを行うかなどについて解説しています。

詳細に関してはこちらから

就労パスポートの様式、活用の手引きなどのダウンロード(厚生労働省)

就労パスポートの活用場面

就労パスポートは、就職活動や就職しているときに、障害者が自分の特徴を職場などで一緒に働く上司や同僚などに説明することができます。

就職活動をおこなうときには、就労支援機関を複数使うこともあるでしょう。そのような他の支援機関(就労パスポートの作成支援を受けた支援機関とは異なる支援機関)の利用登録時などに、自分にとって必要な支援の内容について、支援者と一緒に検討することができます。また、職場実習前や採用面接時に、職場の担当者へ説明し、職務の設定などの参考にしてもらうこともできます。

就職する際には、現場責任者や上司・同僚などへ説明し、体調把握、作業指示、コミュニケーションなどにおいて参考にしてもらうことができるでしょう。また、就職してからも、仕事内容が変わったり、人事配置が変更されたりすることもあります。就職して一定期間経過後も、就職初期に確認していた配慮が引き続き行われているか、就職後の状況変化に応じた見直しの必要性などについて確認するときにも活用できるでしょう。

出所:就労パスポートの概要(厚生労働省)

まとめ

厚生労働省から発表された【就労パスポート】、どのような経緯があって作られたのか、どのように活用できるのか見てきました。

【就労パスポート】の目的は、障害者の就職や就職後の職場定着を促す情報共有ツールとして活用されて、障害者を雇用する事業主や就労支援に当たる福祉事業所が、障害者一人ひとりの情報を共有することで、障害者の望む配慮とのミスマッチを防ぐことです。採用選考時の必須提出書類ではありませんが、これらを活用することによって障害者の職場定着が図られることが意図されています。

もともと就労パスポートが検討されるきっかけとなったのが、近年、精神障害者の企業における雇用数は大幅に増加しているものの、職場定着に困難を抱えるケースが多く見られていたからです。多様な障害特性に応じた職場定着支援をどのように進めるのかは、今も課題となっています。

このような取り組みが浸透することによって、職場定着が少しでも進むとよいなと思いますが、実際に今回発表されたような就労パスポートは、すでに多くの就労移行支援事業所で行われている取り組みです。ただ、パスポートを作って終わりではなく、実際にどのように活用できるのかを障害者本人、また企業の担当者に具体的に示す必要があるのではないかと感じます。
 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です