障害者雇用が進まない理由としてあげられるのは、「障害者雇用の方法がわからないから」というものです。しかし、最近では、障害者雇用の進め方は、WEBでもたくさんの情報収集ができますし、行政などの研修や支援もかなり整ってきています。情報が足りないということは、ほとんどないと感じています。
一方で、それでも進まないという組織もあります。どんなによい道具や方法があっても、それを使えるスキルや能力がなければ、残念ながら活用することができません。
どのようなスキルを身につけている人材がいると、障害者雇用が進めやすくなるのかについて、考えていきたいと思います。
障害者雇用を進める人材が持っておくべきスキル
社内を把握する力
障害者雇用を企業が行わなければならないという認識は、だいぶ浸透してきたように思います。とは言え、多くの人にとっては、企業がやらなければならないことと認識はしていても、自分が直接担当しなければならないということは、ほとんど想定していません。
そんなところで、「障害者雇用の担当になりました。よろしく。」と伝えても、受け入れる社員は困ってしまったり、戸惑うことが大半です。よほど障害者が社内にいる企業でも、どこかの部署が担当しているものと思っていることが多いのです。
ですから、障害者雇用が社内でどのように認識されているのか、理解されているのかを考えながら、障害者雇用の導入を考えていく必要があります。ここを間違えてしまうと、社内の協力や理解が得られにくくなることがあるため注意が必要です。
障害者雇用を推進する企画力
障害者雇用は、この仕事で人材が足りない、すぐに採用をかけて翌月入社ということはあまりありません。多くの場合、障害者を受け入れる部署の理解を図ったり、どのような仕事をしてもらうのかを検討したり、事前に実習などをおこなって、本当に職場で働けそうかを見ていかないと、職場定着することが難しいからです。
また、障害者雇用は一つの部門や一人の担当者だけで進めるものではなく、本来、組織全体で進めるべきものです。そうすると、他の関連する部門や社内への案内なども必要になってきます。特に、はじめての採用の場合には、他の社員が心配しないようにしっかり準備しておく必要があるでしょう。
全体のスケジュールをたて、それに合わせて計画書を作成し、周知を図りながら、内容を進めていくことが必要になります。
障害者雇用に関する情報を社内に適切に伝えていく発信力
障害者雇用の進め方やスケジュールが決まったら、社内に発信していくことも必要です。影響力のある人であれば、その人が発信したことが社内に大きな影響をすぐに及ぼすこともありますが、それには、実績や経験が必要です。もし、あまり社内に影響力がないと感じるのであれば、繰り返し発信したり、社員が情報をどのようなところで得やすいのかを考えて情報発信していくことが求められます。
発信する側からすると、「障害者雇用について案内している」という気持ちになるのですが、情報を受け取る側は自分に関係のない情報は、見ても聞いても、残念ながらほとんど記憶に残っていません。自分に関係のあるものや、あることだと認識しないと、ほとんど覚えていないと言ってもよいでしょう。
どうしたら社員の記憶や関心を呼び起こすことができるのか、自分ごととして受け取ってもらえるのかを考えながら、情報発信していく必要があります。
周囲に協力してもらえるように巻き込む力
社内で業務を切り出す時、現場の部門で受け入れてもらう時には、周囲からの協力がかかせません。社内で何か困ったときに「あの人にお願いしよう」と、ちょっとお願いできるような関係づくりをしておくことは、とても大切です。
今まであまり関係性が築けていなかったのであれば、これからすぐに築いていきましょう。一人でも頼める人ができると、その人から他の人にネットワークが広がっていきます。協力してもらえると、仕事の進み方がぐっと早くなりますし、進めやすくもなります。
課題を分析し、改善策を考える力
障害者雇用を進めていくには、思うように進むことばかりではありません。それは、自分が頑張っただけでは、なんともできないことも多々生じるからです。
例えば、業務の切り出しに関しては、他の部署の都合や状況によって左右されますし、採用に関しては、外部の支援機関や学校、訓練機関に人材がいるかどうか、また就労できる時期なども限られてきます。
思うように進まないことがあっても、そこで止まってしまわずに、「どうしたら、その問題を打開できるのか」と考えて行動することや、代案を考えること、他の調整を図ることが必要です。
障害者雇用で求められる人材とは
障害者雇用に携わる人材には、いろいろな側面が求められます。
一般的には、障害に詳しい、障害者と接した経験がある人が、障害者雇用に携わる人材として求められていると思われていますが、個人的にはそれよりも、障害者を雇用という立場で業務指導し、マネジメントするということを意識しているほうが重要だと感じています。
障害者雇用の現場を見ると、確かに障害や障害者との経験が長い方もいますが、その方がいることで障害者雇用がうまく回っているかというと、そういうわけでもありません。自社の障害者雇用の状況がどのようなものかを把握した上で、組織にとってどのような障害者雇用が貢献するかを見極め、一人ひとりの障害者の特性と業務をマッチングさせていくことが企業の障害者を進めていく上では必要です。
また、残念ながら、障害に詳しいと言われる人から、「◯◯障害だから、この業務は難しい」というステレオタイプの発言を聞くことも少なくありません。もちろん特性や、今までの経験ではできなかったかもしれませんが、方法を変えることや、経験年数が増えてきたことからできることが増えることも多々あります。
障害者雇用は、障害者のただ居場所をつくることや、何か面倒を見ることではありません。組織に貢献する仕事を特性にあった形で仕事としておこない、それに対して対価である給与を払うものです。どのようにマネジメントすると、彼らの能力やモチベーションを図れるのかを考えていける人は、障害者雇用で求められる人材といえるでしょう。
動画の解説はこちらから
まとめ
障害者雇用の担当者に求められるスキルについて考えてきました。障害者雇用の担当者は、障害や障害者と一緒に働く経験があることは必ずしも必要ではないと感じています。
それよりも組織にとって、彼らがどのように貢献できるのかを考え、担当する業務をこなせるようにするためには、方法を変えたほうがよいのか、何かツールがあればわかりやすいのか・・・など、彼らを変えるのではなく、仕事しやすい環境を整えていくことが求められます。
そのためには、業務に求められる担保すべきことは何か、他の部署との連携、社内への協力してもらいやすくなる告知、社内の社員や障害者社員の気持ちや状況を汲み取ってそれに対応する力などが大事です。それぞれの考え方や気持ちは違ったとしても、それを理解しようとする気持ちは少なくとも必要でしょう。
また、社内だけでなく、外部の支援機関とも連携を取る必要がありますので、適切なコミュニケーション力や、相手の状況を把握する力も大切です。
0コメント