中央省庁の障害者雇用率は半減:障害者雇用水増しは、国の機関の8割超えの27機関に

障害者雇用の水増し問題に関して、政府は中央省庁による障害者雇用の水増しが計3,460人にのぼることを発表しました。国の33機関のうち8割超の27機関が、厚生労働省のガイドラインに沿わない障害者数を過大に計上していたことになります。

中央省庁では、2017年度の障害者雇用については、約6,900人の障害者を雇用していると発表していましたが、その半分超が水増しされていたことになります。また、中央省庁だけでなく、裁判所や地方自治体でも障害者雇用の水増しがあったことが明らかにされています。

ここでは、現段階で公表された昨年度公表されている障害者雇用と水増しが発覚してからの雇用者数の乖離や今回の障害者雇用水増しはなぜ発覚したのか、またなぜ起こったのかについて説明していきます。

昨年度雇用されているとされた障害者雇用数の乖離

中央省庁の職員数に占める障害者の割合は、昨年12月の発表では2.49%と法定雇用率(2.3%)を上回っていました。しかし、実際は法定の約半分の1.19%にとどまり、人数では3,396人が不足していました。

省庁別の水増し人数は、0.5人分とカウントする短期雇用を含めると、国税庁が1022.5人と最も多く、国土交通省が603.5人、法務省が539.5人となっています。制度を所管する厚生労働省でも3.5人を過大計上していました。水増し分を修正すると、職員数に占める障害者の比率は半数超の機関が0%台になりました。


出所:毎日新聞

政府は28日午前の関係閣僚会議で水増し問題の調査結果を報告しました。菅義偉官房長官は「障害のある方の雇用や活躍の場の拡大を民間に率先して進めるべき立場として、あってはならない事態だ」と述べ、10月をめどに再発防止策などを取りまとめる方針を示しています。

障害者雇用のカウント方法は?

厚労省は障害者雇用促進法に基づき、毎年6月1日現在の障害者雇用の達成状況を厚生労働省に報告する義務があります。この障害者雇用率を達成できなかった場合、一定規模以上の企業は不足1人につき月額4万円または5万円を納付金として徴収されます(金額の差は企業規模によります)。しかし、国や自治体では雇用納付金は徴収されません。

障害者雇用のカウントやロクイチ調査についての詳細は、こちらから
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平成29 年障害者雇用状況の集計結果からみた今後の障害者雇用とは

障害者雇用の企業担当者がおそれる社名公表とは

 

今年から障害者法定雇用率は公的機関で2.5%、企業で2.2%となっています(4月から障害者雇用率が上がっています)。これは、平成30年4月より精神障害者の雇用が義務化され、障害者雇用率の算定基礎に精神障害者が加わったためです。近年は、精神障害者の雇用や求職者が増えてきており、これにともなって、企業における障害者雇用率が平成30年3月までの2.0%から引き上げられます。

平成30年4月の障害者法定雇用率についての詳細はこちらから
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平成30年4月からの障害者法定雇用率の引き上げ

障害者雇用水増しは、どのようにしてわかったのか

今回の障害者雇用水増しの判明は、財務省が今年5月11日に、障害者の定義について厚生労働省に問い合わせたことがきっかけだったことが明らかになっています。このときに、国のガイドラインに合わない人が計算に含まれている可能性が浮上したため、厚生労働省が6月に他の省庁にも再調査を依頼して、今回の大幅な水増しが発覚しました。

厚生労働省はガイドラインで雇用率に含められる障害者について原則、身障者手帳や知的障害者の療育手帳、精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている人などとしているが、官公庁の多くが従っていなかったとみられています。

障害者雇用の水増しは、なぜ起こったのか

障害者雇用の水増し問題で、中央省庁の多くの機関で不正が長期間放置されてきたことに。「どうして今まで、気づかなかったのか」と、不思議に思う方も少なくないでしょう。

身体障害者の雇用が義務化されたのは42年前です。この頃は、障害があるとことで就職がとても難しく、就職差別が行われていました。そのため雇用の確保だけでなく、障害者の社会参加を促し、共生社会を実現することを目標として、この制度がスタートしました。

厚生労働省のガイドラインによると、雇用率に算入できるのは障害者手帳を持っている人か、医師の診断書で障害が認められた人に限られています。しかし、今回の障害者雇用水増し事件で発覚したことを見ていくと、国土交通省や総務省などで、手帳交付に至らない障害の程度の軽い職員も含まれていることが常態化していました。制度に対する認識不足があったことは事実でしょう。

一方で、これだけ多くの行政機関で不適切な算入が横行してきたことについて、厚生労働省による制度の周知が不十分だったのではないかとの意見も出ています。障害者の算入をガイドラインに従って実施しているかどうかについて、企業には独立行政法人が3年に1度調査する制度があるが、国の行政機関にはないことも、水増しを見過ごしてきた背景にあるとの指摘もされています。

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中央省庁の障害者雇用水増し問題から見る障害者雇用の考え方

共生社会を目指すために行うべきこと

今回の障害者雇用の水増し問題は中央省庁だけでなく、裁判所や地方自治体でも同様の不適切な参入をしていたことが、次々と明らかになっています。このようなニュースを受けて、多くの障害者団体からは憤りや批判の声が上がっています。

中央省庁が雇用する障害者数を水増ししていた問題で、日本障害者協議会(藤井克徳代表)は27日、「法を順守しなければならない行政による国民への背信行為だ」と非難する声明を発表した。
出所:水増し問題 障害者団体非難「国民への背信」(毎日新聞)

「障害者はあてにならないことを前提にしているのではないか。差別があると思わざるを得ない」。視覚に障害のある日本障害者協議会の藤井克徳代表は今月二十一日の野党ヒアリングで、中央省庁の担当者に直接、指摘した。

同じくヒアリングに出席した、下半身に障害のあるDPI(障害者インターナショナル)日本会議の佐藤聡事務局長は「障害者を含めて第三者委員会を設置して、実態解明を進めてほしい」と中央省庁の担当者に迫った。
出所:障害者雇用 国機関8割で水増し 3460人(東京新聞)

共生社会の実現にむけて、2020年開催の東京五輪・パラリンピックに向けていろいろな取組が行われていますが、まずは本当に働くために必要な施作や仕組みづくりを行うことが必要です。

企業で障害者雇用を進めるために、日々尽力している担当部署や担当者は少なくありません。同じように行政機関でも尽力する必要があるでしょうし、もし難しいのであれば代替案も取り入れていくことも検討できるでしょう。

中小企業や特定の業種などは、どんなに努力しても障害者雇用が難しい状況にあることも少なくありません。そのような場合には、今の制度のように自社で雇用するだけの今のやり方ではなく、障害者雇用をしている企業に仕事を発注することや、障害者の実習を受け入れること、金銭的な負担を担うことで、障害者雇用の促進をサポートすることも検討していく必要があると考えます。

また、働き方改革を進めるのと同時に、柔軟な障害者雇用のあり方についても検討していく必要があるでしょう。40年前に作った制度が現在の雇用状況にあっていないのであれば、そもそも元から見直していくことも見直していくことも大切です。

まとめ

現段階で公表された昨年度公表されている障害者雇用と水増しが発覚してからの雇用者数の乖離や今回の障害者雇用水増しはなぜ発覚したのか、またなぜ起こったのかについてみてきました。

手帳交付に至らない障害の程度の軽い職員をカウントに含めることが常態化しており、制度に対する認識不足があったことや、厚生労働省による制度の周知が不十分だったということは事実でしょう。これらを改善していくことは必要です。

企業に障害者雇用率という数字で障害者雇用を進めてきた結果、障害者雇用は進んできました。大企業を中心に障害者雇用が進められ、障害者の活躍する場も増えてきています。しかし、一方で中小企業や特定の業種などは、どんなに努力しても障害者雇用が難しい状況にあることも少なくありません。企業努力だけでは難しいこともあります。

官公庁、地方自治体の障害者雇用率の状況を見ても、今までと同じような形で障害者雇用を進めていくことに限界があるようにも感じます。40年前に作った制度が現在の雇用状況にあっていないのであれば、働き方改革を進めるのと同時に、柔軟な障害者雇用のあり方についても検討していく必要があるでしょう。

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