うつ病に関連する言葉には、うつ病、うつ状態、抑うつなどの言い方があります。
明確な基準はありませんが、憂鬱になったり、気分が落ち込んだり、うつ病のいくつかの症状を持続している状態をうつ状態ということが多く、このようなうつ状態がある程度の期間続き、うつ病の診断基準が一定数以上ある場合に、うつ病と呼んでいます。
なお、「うつ病」は病気によって引き起こされたものであり、怠けや性格の弱さを示すものではありません。今回は、うつ病、うつ状態の違いや、発症する原因、どのような症状が見られるのか、治療法などについて見ていきます。
「うつ病」と「うつ状態」の違いとは?
うつ病に関連する言葉には、うつ病、うつ状態、抑うつなどのいろいろな言い方があります。
「うつ状態」と「抑うつ状態」というのは基本的には同じ意味ですが、精神医学では抑うつ状態という用語を用いることが多いようです。「うつ病」とは言えないまでも、ある程度精神的なエネルギーが低下し、「うつ病」の症状がいくつか認められる状態を指します。そのため一般的には、「うつ状態」は、「うつ病」よりも軽い状態を指します。
うつ病の診断基準
うつ病の診断には、DSM-5という基準が用いられています。
まず、基本的なうつ病の症状としては、次の2つが上げられ、どちらかの症状が少なくとも1つ当てはまります。
・気持ちが落ち込む
・物事に興味がない、または楽しめない
さらに、以下の症状が合計で5つ以上あり、これらの症状がほとんど1日中、あるいはほとんど毎日あり、2週間続いています。(4つ以下の場合には、うつ状態、抑うつ状態)
・食欲の減退あるいは増加、体重の減少あるいは増加
・不眠あるいは睡眠過多
・将来に対して悲観的な見方をしてしまう
・人生の敗北者のように感じたり、家族に対して申し訳ないと思う
・自分に価値がないと思ったり、自分を不適切に責めたくなってしまう
・集中力や注意力が衰える
・死についての繰り返し考えたり、死んだほうがいいと思ってしまう
うつ病の原因・発症の要因
うつ病には、いろいろな原因がありますが、精神だけでなく、身体にも不調をきたすことも多く、さまざまな身体症状を主訴として受診するケースも多く見られます。
典型的なうつ病といえるのは、内因性うつ病と言われるものです。うつ状態が一定期間持続し、治療しなくても軽くなりますが、治った後にも再発することがあります。このようなケースでは、環境のストレスなどが引き金になる場合もありますが、何も原因となることがないまま起こる場合もあります。セロトニンやノルアドレナリンなどの脳内の神経伝達物質の働きが悪くなっているためと考えられることもあります。
躁状態がある場合は、双極性障害と呼ばれます。心因性うつ病とは、性格や環境がうつ状態に強く関係している場合です。休みの日には比較的元気であるなどといううつ状態では、性格面の影響が大きいことも多いようです。
また、身体因性うつ病とは、アルツハイマー型認知症のような脳の病気、甲状腺機能低下症のような体の病気、副腎皮質ステロイドなどの薬剤がうつ状態の原因となっている場合をいいます。
なお、うつ病の12か月有病率は約2%で、生涯有病率は10%前後といわれています。女性の有病率は男性に比べて約2倍高く、発症しやすい年齢は20~30代といわれていますが、中高年での発症も多く見られます。季節的には、春や秋、女性では月経前後に発病が多く、血縁者に同じ病気の人がいると発病しやすい傾向があります。
うつ病の症状
うつ病の症状は、精神症状と身体症状に分けられます。
うつ病の精神症状
うつ病の精神症状には、次のような症状が見られます。
・抑うつ気分
・興味や喜びの喪失
・思考力が止まったり、イライラや焦燥感
・集中力の低下
・自尊心の喪失や自責感・罪責感
・死や自殺に関して繰り返し起こる考えや自殺の試み
自責感が強まると、お金がない、破産した、入院費が払えないなどの貧困妄想や、罪を犯した、警察に捕まる、重病に罹患しているなどの妄想が見られることもあります。
うつ病の身体症状
うつ病の身体症状には、次のような症状が見られます。
・食欲の低下や体重の減少
・不眠や睡眠障害、早朝覚醒(まれに過眠)
・倦怠感
・疲労感
・性欲の低下
・頭痛、頭重感
・めまい
・便秘、下痢 など
うつ病の治療
うつ病の治療は、病気の時期により急性期治療、継続・維持療法に分けられます。
急性期治療
急性期の治療には、休養と服薬が大切になります。十分な休養をとれるような環境を整え、休みがとれるようにしたり、家事の負担を軽減したりします。必要に応じては、休職することもあるでしょう。
回復までには、数か月程度が必要です。回復するまでには、症状がよくなったり、悪くなったりを繰り返すことがありますので、比較的長めの見通しをたて、一時的に悪化することがあったとしても、焦らずに治療を継続することが大切です。
継続・維持療法
症状が改善し、寛解状態(かんかい:全治とまでは言えないが、病状が治まって穏やかな状態になること)しても、すぐに薬を減らしたり、やめたりすることは、再発のおそれがあります。そのため、副作用などの問題がなければ、寛解後も一定期間、急性期と同用量で維持することが勧められています。
うつ病では病気を繰り返すごとに再発率が上昇するといわれており、反復しているケースでは、回復後も2年以上薬物療法を継続することが勧められています。
学校や仕事、家庭における役割への復帰を検討する時には、少しずつ負荷を増やすようにしていくとよいでしょう。例えば、職場復帰する場合には、短時間勤務からの復帰などがおすすめです。
入院治療
うつ病では、自殺の危険性がある場合には、入院する必要があります。また、水分や食事が摂取できないような状態にある場合も入院治療が必要となります。
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まとめ
うつ病、うつ症状について見てきました。
うつ症状には、憂うつ、もの悲しさ、絶望感、気分の落ち込み、沈みこんだ気持ちが一定期間以上続くことを指し、自分に価値がないという思いが強くなったり、思考力や集中力が低下します。そのため、物事に対する興味や関心が低下し、何もしたくないし、するのも億劫、無理にやってみても楽しめないという状態になります。
悲しいことが起きたとき、つらい思いをしたとき、誰もが抑うつ的な状態になりますが、病気と病気でない場合のうつ状態の区別は、症状が重いか、また、それらの症状のために障害が生じているかにより判断します。
うつ病の診断には、DSM-5という基準が用いられています。これらを参考にしながら、該当する項目や、一定期間以上継続するようであれば、適切な医療機関にいくとよいでしょう。
また、うつ病の治療は、病気の時期により対応が異なります。時期に合わせた適切な治療を受けることが大切です。なお、うつ病は、再発する可能性も高く、学校や仕事への復帰を検討する時には、少しずつ負荷を増やすようにするとよいでしょう。
参考
精神障害の障害者雇用カウントに関するQ&A~休職、障害者把握~
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