障害者の権利に関する条約(障害者権利条約)とは

2014年1月20日、日本は国際連合「障害者の権利に関する条約」(以下、障害者権利条約)を批准しました。この条約は2006年12月に国連総会にて採択され、2008年5月に発効したもので、障害に関するあらゆる差別を禁止するとともに必要な配慮の提供を求めるものとなっています。

日本以外の世界各国が批准をしている中で、日本は2007年9月に署名し、その後批准に必要な国内法の整備に時間がかかり、2014年にようやく140番目の批准国となりました。批准までに時間がかかったのは、この間に障害者基本法の改正や障害者差別解消法の制定などが行われたからです。

ここでは、障害者権利条約とはどのようなものなのか、できるまでの経緯や、権利条約で注目しておくべき内容などについて見ていきたいと思います。

障害者権利条約とは

障害者権利条約は、障害者の人権や基本的自由の享有を確保し、障害者の固有の尊厳の尊重を促進するため、障害者の権利の実現のための措置等を規定した、障害者に関するはじめての国際条約です。市民的・政治的権利、教育・保健・労働・雇用の権利、社会保障、余暇活動へのアクセスなど、様々な分野における取組を締約国に対して求めるものとなっています。

また、障害者権利条約は、はじめて「障害」について明記された条約です。この条約では、「私たち抜きに、私たちのことを決めな いで(Nothing about us, without us)」と いうスローガンをもとに、障害者団体も同席し、発言する機会が設けられ作成されています。それまでは、当事者が関わることはありませんでしたが、この権利条約では、当事者の障害者が一緒になってつくられた条約として画期的なこととされています。

障害者権利条約は前文と 50条の条文から構成されています。内容としては、障害者のために新たに権利を定めたものではなく、今ある基本的な人権及び自由を障害者が有することを改めて保障したものとなります(第1 条)。 また、条約の中には、手話は言語であること(第2条)、インクルーシブ教育が原則であること(第24条)なども含まれています。

「障害者権利条約」に関する詳細はこちらから

障害者の権利に関する条約(略称:障害者権利条約)(Convention on the Rights of Persons with Disabilities)

「障害者の権利に関する条約」ができるまでの経緯

1948年 世界人権宣言 採択
1966年 国際人権規約 採択

1971年 精神遅滞者の権利に関する宣言 採択
1975年 障害者の権利に関する宣言 採択
1981年 国際障害者年 制定
1982年 障害者に関する世界行動計画 策定
1983 〜1992年 国際障害者の10年 制定
1993年 障害者の機会均等化に関する基準規則 採択
2000年 世界障害NGOサミット 開催

国連では、1970年代から障害のある人の権利に関するいくつもの宣言・決議を採択してきましたが、これらの宣言・決議は法的拘束力を持つものではありませんでした。

2001年 メキシコ政府より障害者の権利に関する条約作成の提案
2006年 障害者の権利に関する条約 採択(2008年 発効)
2007年 障害者の権利に関する条約、日本が署名
2011年 障害者基本法 改正
2012年 障害者総合支援法 成立
2013年 障害者差別解消法 成立、障害者雇用促進法 改正
2014年 障害者の権利に関する条約 日本が批准
2016年 障害者差別解消法 施行

日本は2007年9月に署名し、その後批准に必要な国内法の整備をして、2014年に批准しています。この間に、日本国内では、条約の締結に先立ち、国内法の整備を行なっています。

2009年12月、内閣総理大臣を本部長、全閣僚をメンバーとする「障がい者制度改革推進本部」を設立し、国内法制度改革が進められてきました。これを受け、障害者基本法の改正(2011年8月)、障害者総合支援法の成立(2012年6月)、障害者差別解消法の成立および障害者雇用促進法の改正(2013年6月)など、さまざまな法制度整備が行われてきました。

「障害者基本法」(2011年)の改正では、条文の中に社会的な障壁を除去するため「必要かつ合理的な配慮がされなければならない」(第4条第2項)との文言が入り、合理的配慮の提供が国内法にはじめて位置づけられました。

2013年には、「障害者差別解消法」が成立し、「行政機関等は(中略)社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をしなければならない」(第7条第2項)と記載され、国や地方公共団体の他、これらが管轄する施設等での合理的配慮提供に関する法的義務が明確にされています。民間の事業者に対しては「社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をするように努めなければならない」(第8条第2項)との記載があり、一般の事業者であっても努力義務が課せられることになりました。

また、「障害者雇用促進法」の改正により、民間の事業者は、「障害者でない労働者との均等な待遇の確保」のため「必要な施設の整備、援助を行う者の配置その他の必要な措置を講じなければならない」として、合理的配慮提供の義務が課されています。

権利条約と私たちの関わり方

障害を理由とする差別の定義

第2条:「障害を理由とする差別」とは、障害を 理由とするあらゆる区別、排除又は制限であっ て、政治的、経済的、社会的、文化的、市民的 その他のあらゆる分野において、他の者と平等 にすべての人権及び基本的自由を認識し、享有 し、又は行使することを害し、又は妨げる目的 又は効果を有するものをいう。障害を理由とす る差別には、あらゆる形態の差別(合理的配慮 の否定を含む。)を含む。

「障害を理由とする差別」の中に、直接差別、間接差別、合理的配慮の否定が差別にあたるとされています。2013 年6月に成立した「障害者差別解消法」では、 公共機関等に対して、障害を理由とする差別などの行為を禁じています。また、民間企業にも、過重な負担がない範囲での合理的配慮を求めています。

合理的配慮

第2条:「合理的配慮」とは、障害者が他の者と平等にすべての人権及び基本的自由を享有し、 又は行使することを確保するための必要かつ適 当な変更及び調整であって、特別の場合におい て必要とされるものであり、かつ均衡を失した 又は過度の負担を課さないものをいう。

第5条3項:締約国は、平等を促進し、及び差別 を撤廃することを目的として、合理的配慮が提 供されることを確保するためのすべての適当な 措置をとる。

合理的配慮とは、障害者が障害のない人と同じように、権利や自由を持ち、行使するときに、必要とされる適切な変更及び調整を行うことです。人権条約ではじめて規定され、締約国に合理的配慮を提供するための適切な措置をとることが義務づけられています。

例えば、障害があってその場に参加できなかったり、サービスの享受がなされない場合に、手話通訳を配置したり、テレビや映画に音声解説を付与したり、デパートやレストランの入り口にスロープをつけるなどによって、障害者に対する機会の保障を確保するために行う調整や変更のことです。

学校生活などでは、テストを受ける際の試験時間の延長、点字・拡大文字・ルビ振り問題用紙の使用、別室の設定などが合理的配慮とされています。しかし、知的発達に遅れの無い障害の場合、周囲の理解不足のために合理的配慮が行われないことも今までありました。合理的配慮が示されることにより、すべての人が互いを尊重し生活するために、個人だけで努力するのでなく、社会も努力することが求められています。

法の下の平等

第12条1項:締約国は、障害者がすべての場所において法律の前に人として認められる権利を有することを再確認する。

2項:締約国は、障害者が生活のあらゆる側面において他の者と平等に法的能力を享有することを認める。

3項:締約国は、障害者がその法的能力の行使に当たって必要とする支援を利用することができるようにするための適当な措置をとる。

精神障害者や知的障害者は、法的能力がない場合があるとされ、成人後見制度などによって、代理人や後見人による意思決定が行われる場合があります。成年後見制度は障害者や高齢者の方などの権利擁護制度として制定されていますが、この権利条約の条文はその濫用を防止する重要な役割を担っています。条約を締結した国は、障害者がもつ能力を認め、権利を持てるように支援することが求められています。

まとめ

障害者権利条約とはどのようなものなのか、できるまでの経緯や、権利条約で注目しておくべき内容などについて見てきました。

障害者権利条約は、障害者の人権や基本的自由の享有を確保し、障害者の固有の尊厳の尊重を促進するため、障害者の権利の実現のための措置等を規定した、障害者に関するはじめての国際条約です。また、障害者権利条約は、はじめて「障害」について明記された条約となっています。

権利条約の中には、合理的配慮が求められており、障害者が障害のない人と同じように、権利や自由を持ち、行使するときに必要とされる適切な変更及び調整を行うことが求められます。すべての人が互いを尊重し生活するためには、個人だけで努力するのでなく、合理的配慮が示すように社会全体が努力することが求められています。

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