知らないと企業リスクに!企業が知っておくべき障害者虐待防止法と管理

知らないと企業リスクに!企業が知っておくべき障害者虐待防止法と管理

2024年09月10日 | 障害者雇用に関する法律・制度

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障害者の虐待と言われると、福祉施設のニュースを思い浮かべるかもしれません。しかし、企業でも障害者の虐待をしていないか気をつける必要があります。

それは、企業には障害者雇用の義務があり、これには障害者の尊厳と自立を促進する役割が伴うからです。この障害者の尊厳について定めた法律が障害者虐待防止法で、障害者の権利擁護を目的としています。

企業は法律の趣旨を理解し、障害者虐待に関する責任とその具体的な行為を把握することが重要です。ここでは障害者虐待防止法の概要と企業の対応方法について紹介していきます。

障害者虐待防止法の基本

障害者虐待防止法は、障害者が自分の被害を伝えるのが難しい場合や自衛方法を知らないことによる虐待を防ぐための法律です。2011年に制定され、2012年より施行されています。

法律の主目的は、障害者の尊厳を守り、自立や社会参加を促進することです。法律は虐待行為の禁止だけでなく、障害者の権利擁護、虐待の予防や早期発見、障害者を支援する人々への支援策も定めています。

障害者虐待防止法の「障害者」とは、身体的、知的、精神的障害(発達障害を含む)、または日常生活や社会生活において継続的な制限を受ける心身の機能障害を持つ人々を指します。法律はこれらの障害の多様性を考慮し、これらの人々の権利保護と福祉向上を目指しています。

虐待防止は福祉機関のみならず、企業でも意識する必要があります。法律は「養護者による虐待」、「福祉施設職員による虐待」、そして「使用者(企業)による虐待」の防止を規定しています。

養護者は親族や家族を指し、施設職員には障害者支援施設やサービスに関わるスタッフが含まれます。企業における虐待には、事業主や上司、担当者、同僚などが含まれます。工場長、労務管理者、上司などの責任者だけでなく、人事担当者や同僚、障害者と一緒に働くあらゆる社員、職員、スタッフが含まれることに注意が必要です。

企業での障害者虐待はどれくらい起こっている?

令和5年度に障害者虐待の通報・届出のあった事業所数は1,512事業所で、このうち虐待が認められた事業所数は447事業所でした。

通報・届出のあった事業所数は、前年度の1,230事業所数と比べて、22.9%増加しています。また、虐待が認められた事業所数は、前年度の430事業所と比べ4.0%増加しています。

出典:令和5年度使用者による障害者虐待の状況等(厚生労働省)

また、通報・届出の対象となった障害者数は1,854人で、虐待が認められた障害者数は656人でした。
通報・届出の対象となった障害者数は前年度は1,433人で、29.4%増加しています。また、虐待が認められた障害者数は前年度は656人で、16.0%増加しています。


出典:令和5年度使用者による障害者虐待の状況等(厚生労働省)

虐待種別・障害種別障害者数は、次のとおりです。

出典:令和5年度使用者による障害者虐待の状況等(厚生労働省)

虐待にあたることはどんなもの?

虐待には、身体的虐待、性的虐待、ネグレクト、心理的虐待、経済的虐待があります。

1.身体的虐待
身体的虐待は、障害者の身体に直接的な傷害を与える行為を指します。これには、殴打、蹴打、熱物によるやけど、物を投げつけるなどの暴行が含まれます。また、障害者を無理やり拘束する行為も身体的虐待に含まれることがあります。身体的虐待は、障害者に肉体的な傷だけでなく、深刻な心理的トラウマをもたらす可能性があります。
2.性的虐待
性的虐待は、障害者に対する性的な行為、または性的な虐待を行うことを指します。これには、障害者への性的な接触、性的暴行、わいせつな行為や写真の撮影などが含まれます。性的虐待は、障害者の性的な自由と尊厳を侵害する重大な犯罪行為であり、深刻な心理的な影響を及ぼすことがあります。
3.ネグレクト(放任)
放任は、障害者に必要な食事や医療、介護などの基本的な生活支援を提供しないことを指します。これには、栄養不足や衛生状態の悪化、必要な医療や介護の欠如などが含まれます。放任は、障害者の健康や生活の質を著しく低下させる行為です。
4.心理的虐待
心理的虐待は、障害者に対する言葉の暴力や感情的な虐待、威嚇や脅迫など、心理的な苦痛を与える行為を指します。これには、侮辱、蔑視、無視、脅迫などが含まれます。心理的虐待は、障害者の自尊心や自信を低下させ、深刻な精神的なダメージを与えることがあります。
5.経済的虐待
経済的虐待は、障害者の財産を不正に使用、管理することや、経済的な搾取を行うことを指します。これには、障害者のお金や財産を無断で使う、経済的な依存状態を利用した搾取などが含まれます。経済的虐待は、障害者の経済的自立と安定を脅かす行為です。

企業で発生しやすい虐待は、この中の次のものが起こりやすいと言われています。

・ネグレクト
仕事を与えない、意図的に無視する、放置する、住み込みで食事を提供することになっているにもかかわらず食事を与えないなど、健康や安全への配慮を怠ることなど。

・心理的虐待
脅迫する、怒鳴る、悪口を言う、拒絶的な反応を示す、他の社員と違った差別的な扱いをする、意図的に恥をかかせるなど。

・経済的虐待
障害者に賃金を支払わない、賃金額が最低賃金に満たない、強制的に通帳を管理する、本人の了解を得ずに現金を引き出すなど。

報告された企業の虐待事例

企業(使用者)の虐待として報告されているのは、経済的虐待と心理的虐待が最も多くなっています。「令和5年度使用者による障害者虐待の状況等」では、次のような事例が報告されています。

事例1:身体的・心理的・経済的虐待が認められた事例

【通報・届出の概要】
・障害種別:発達障害
・就労形態:正社員
・事業所の規模:30人~49人
・業種:製造業
・内容:障害者の同僚からの通報事案。早出時間外労働に対する賃金の不払いと、所属の上司から、殴る、蹴るなどの暴力を受けているとして、労働基準監督署に相談があった。

労働局は、労働基準部(労働基準監督署)および職業安定部(公共職業安定所)を担当部署として調査を実施した。労働基準監督署、公共職業安定所が合同で事業所を訪問し、所属⾧および被虐待者に事情聴取したところ、同僚からの通報内容をおおむね事実として認めた。

時間外労働に対する賃金不払い(経済的虐待)および、所属の上司による身体的虐待が認められたため、事業主に対し、労働基準監督署は、労働基準法に基づき、時間外労働に対する割増賃金を支払うこと、公共職業安定所は、障害者雇用促進法に基づき、相談体制の整備などの再発防止対策を講じるよう指導した。

事例2:放置等による虐待が認められた事例

【通報・届出の概要】
・障害種別:知的障害
・就労形態:パート・アルバイト
・事業所の規模:5人~29人
・業種:医療、福祉
・内容:障害者本人からの届出事案。同僚の職員から、「障害者だから指示が分からない」という発言や、仕事ができないとして、仕事を取り上げられるという嫌がらせを受け、障害者の家族が管理職に相談するも、何ら対応がなされず放置された。

また、障害者が利用者から身体を触られた時、嫌がらせを続ける職員と管理職はこれを目撃しているにも関わらず、この行為を止めたり、注意をせずに笑っていたとして、労働局に相談があったもの。

労働局は、職業安定部(公共職業安定所)および雇用環境・均等部(室)を担当部署として、調査を実施した。事業主に事情聴取したところ、障害者本人からの届出内容について、管理体制や就業環境整備が不十分であったことに問題があることを認めた。

事業主による放置等による虐待が認められたため、事業主に対し、公共職業安定所は、障害者雇用促進法に基づき、他の労働者への指導・啓発や相談窓口の設置などの再発防止対策を講じること、雇用環境・均等部(室)は、労働施策総合推進法に基づき、ハラスメント相談には迅速かつ適切に対応するよう指導した。処理終了後、労働局は、都道府県に対して情報提供を行った。

事例3:経済的虐待が認められた事例

【通報・届出の概要】
・障害種別:身体障害
・就労形態:正社員
・事業所の規模:5人~29人
・業種:製造業
・内容:労働基準監督署が臨検監督において発見した事案。最低賃金の減額特例許可を受けずに、地域別最低賃金から約20%程度低い約定賃金で支払いを行っていた。減額特例とは、 一般の労働者より著しく労働能力が低いなどの特定の労働者について、使用者が都道府県労働局⾧の許可を受けることを条件として個別に最低賃金の減額の特例が認められる制度。

労働基準監督署が、障害者の勤務実態等を確認した。労務管理資料により、障害者の約定賃金が地域別最低賃金未満であり、事業主による経済的虐待が認められたため、労働基準監督署は、事業主に対し、最低賃金法に基づき、地域別最低賃金額との差額を支払うよう指導した。

企業が果たすべき具体的な責任と役割

全社員に対する障害者虐待防止研修の実施

企業は、全社員に対して障害者虐待防止に関する研修を実施しておくとよいでしょう。この研修の目的は、社員が障害者の人権や職場における虐待のリスクを理解し、適切な行動を取るための知識を習得することです。
職場の中で虐待の兆候を早期に発見し、迅速に対応するための基本的なスキルを身につけることが求められます。これは、社員が気をつけるということも大切ですが、周囲もそれに気づいたときに「おかしい」と気付けるようにすることが必要です。
気をつけたい点は、虐待が発生しているときに、虐待をしている人(虐待者)、虐待を受けている人(被虐待者)に自覚があるとは限らないということです。ときには、虐待をしている人が「指導、しつけ、教育」という名のもとに虐待が行われている場合があります。
また、虐待を受けている人が、障害の特性から自分の受けている行為が虐待だと認識することが難しい場合もあります。そのためこのような状況がおかしい、虐待だと気づくような社員教育を行っておくことが大切です。研修では、障害者の人権、障害特性に応じた対応方法、虐待行為の定義と報告手順などを学べるようにしておくとよいでしょう。

苦情窓口の設置と周知

障害者やその家族からの苦情や相談を受け付けるための窓口を設置し、全社員に対してその存在を周知することが求められます。この窓口は、虐待が疑われる場合や職場環境に関する問題が発生した際に、従業員やその家族が気軽に相談できる場として機能するためです。

また、窓口で受けた相談に迅速かつ適切に対応するための体制を整え、問題が発展する前に解決策を講じることが重要です。

職場内での担当部署や相談役の設置

職場内で障害者虐待を防ぐためには、明確な対応体制を構築することが不可欠です。企業は、障害者の雇用や労働環境に関する問題に対応する専門部署や相談役を設置し、具体的な役割分担を行う必要があります。

例えば、人事部が全体の管理を行い、現場責任者が日々の業務を監督する形を取ることで、職場でのトラブル発生時に迅速に対応できる体制を整えることができるかもしれません。定期的なミーティングやモニタリングを実施することで、障害者が安全に働ける環境を維持できているかをチェックします。

まとめ

企業が障害者を雇用する際、障害者虐待防止法に基づく適切な対応について検討しておく必要があります。障害者の尊厳と権利を守ることは、企業にとっての義務であり、社会的責任となります。

職場における障害者虐待は身体的なものだけでなく、身体的虐待、性的虐待、ネグレクト、心理的虐待、経済的虐待などがありますが、この中で企業で発生しやすい虐待は、ネグレクト、心理的虐待、経済的虐待が起こりやすいと言われています。

職場の虐待を防ぐためには、全社員に対する研修の実施、相談窓口の設置、担当部署の設置と役割分担の明確化が必要です。このような取り組みをすることで、職場での障害者虐待を防ぎ、インクルーシブな環境を構築することができます。また、企業リスクを減らすためにも役立ちます。

参考

企業の担当者が知っておきたい障害者差別解消法と障害者虐待防止法

【障害者】現場で難しい「合理的配慮」の判断基準と対応策とは?

障害者の権利に関する条約(障害者権利条約)とは

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