【障害への配慮】情報のわかりやすさと職場のコミュニケーション

【障害への配慮】情報のわかりやすさと職場のコミュニケーション

2024年08月26日 | 企業の障害者雇用

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あなたは今までに説明したことが「わかりにくい」と言われたことはありませんか。

障害者雇用が進む中で、企業内のコミュニケーションのあり方が重要視されています。特に、知的障害や発達障害を持つ社員に対する情報のわかりやすさは、業務遂行の効率や職場の一体感に大きな影響を与えます。

ここでは、企業が取り組みたい「誰にでもわかりやすいコミュニケーション」のポイントを解説します。これらを実践することで、職場のコミュニケーションが取りやすくなります。

誰にとってもわかりやすい表現

職場では、障害者を含め、高齢者や外国籍の方と一緒に仕事をすることが一般的になっています。今までの説明や書類などが「わかりにくい」「読みにくい」と言われることがあるならば、誰にとってもわかりやすい表現を使うことを意識すると、コミュニケーションが図りやすくなります。

例えば、「もっと大きな字で書いてほしい。」「何が言いたいのか、要点がわかりにくい。」「カタカナの意味がわからない。」「専門用語をわかりやすく表現してほしい。」と言われたことがあるならば、わかりやすく簡単な表現を用いることにより、情報をより多くの人に理解しやすくすることができます。

具体的には、次のようにするとわかりやすくなります。

・簡単な言葉を使用する
専門用語や難解な言葉を避け、日常的に使われる平易な言葉を選びます。

・短い文章で構成する
一文を短くし、複雑な文構造を避けることで、文章全体をわかりやすくします。

・難解な漢字や外来語を避ける
漢字は使うとしても簡単なものに限り、必要であればふりがなをつけるなどの配慮を行います。また、外来語やカタカナ語の使用も控え、代わりに日本語の説明を加えます。

誰にとってもわかりやすい表現にするためのポイント

シンプルな文構造

一文を短くし、主語・述語・目的語の構造を明確にします。たとえば、複数の情報を一文に詰め込むのではなく、情報ごとに文を分けることで、理解しやすくします。これにより、読者が情報を処理する負担を軽減できます。

専門用語やカタカナ語の回避

必要な場合には、専門用語やカタカナ語を避けるか、それらを簡単に説明することで読者の理解を助けます。例えば、「アカウンタビリティ」という言葉を使用する場合には、「説明責任」という日本語の説明を付け加えることで、読者が内容をより理解しやすくします。

ルビの使用

難しい漢字にはふりがな(ルビ)をつけることで、漢字に不慣れな読者でもスムーズに読み進めることができます。特に、障害を持つ社員や日本語学習者にとって、ルビは重要な助けになります。

わかりやすい表現はユニバーサルデザインにつながる

誰にでもわかりやすい表現をすることは、障害の有無に関わらず、すべての人にとってわかりやすくなります。これは、 ユニバーサルデザインの概念とも共通するものです。

ユニバーサルデザインとは、「すべての人が使いやすいように設計されたデザイン」を指します。これは、障害の有無、年齢、性別、言語能力、文化背景などにかかわらず、誰もが平等に利用できる環境や製品を目指す考え方です。

ユニバーサルデザインは、物理的な環境(例えば、バリアフリーデザインや公共交通機関の設計)だけでなく、情報の提供方法(例えば、視覚的・聴覚的メディア、書類やウェブサイトのデザイン)にも適用されます。

わかりやすい表現をすることは、日本語を母語としない外国人や、知的障害や発達障害を持つ人々、または高齢者など、さまざまな理由で複雑な日本語の理解が困難な人々にも理解しやすくなります。その結果、「誰もが理解しやすい情報を受け取る」ことに繋がります。

このような取り組みは社会の中でも、すでに取り入れられています。例えば、公共施設の案内表示やウェブサイト、防災情報の提供などでもみられています。

・公共施設の案内表示やウェブサイト
公共施設や自治体のウェブサイトで、ユニバーサルデザインの一環としてやさしい日本語を使用する例があります。これにより、外国人や高齢者、知的障害のある人々も情報を得やすくなります。

・防災情報の提供
災害時の防災情報をやさしい日本語で提供することで、より多くの人々が迅速に避難行動を取れるようになります。これもユニバーサルデザインの考え方に基づくものです。

このようなわかりやすさは、文字だけでなく、視覚的な要素にも含まれます。

情報を視覚的に表現する図やイラスト

情報を視覚的に表現することは、情報の理解を助ける効果的な方法です。特に発達障害のある人々にとって、テキストのみの情報よりも図解、イラスト、写真を用いた説明のほうが、内容を直感的に理解しやすくなることがあります。

発達障害の人の中には、文章を読み解くことが苦手な人がいますが、視覚的な要素を取り入れることで情報の受け取り方が格段に向上します。例えば、業務手順書にイラストやフローチャートを加えることで、手順の流れを視覚的に示すと、作業内容を迅速に理解できるようになります。

効果的に視覚的要素を活用するためのポイントには、次のような点があります。

・シンプルなデザイン
デザインはできるだけシンプルに保ち、余計な装飾や複雑な要素を避けることで、重要な情報が際立ちます。例えば、ポスターやプレゼンテーションのスライドでは、文字情報を最小限にし、視覚的な要素でメッセージを伝えることで、視覚的な混乱を避け、情報の焦点を明確にします。

・色の選び方
見やすい色と配色を選ぶことが重要です。特に、色弱者への配慮として、同じ色相でも異なる明度や彩度の色を使い、色の識別を助けるよう工夫します。また、背景と文字色のコントラストを強くすることで、情報がよりはっきりと見えるようにします。例えば、暗い背景に白や黄色の文字を使うと、読みやすさが向上します。

・イラストやアイコンの使用
イラストやアイコンは、情報のカテゴリーや重要度を直感的に理解できるようにする効果があります。たとえば、重要な注意事項を伝える際に、警告アイコンを使用することで、視覚的にすぐに注意が必要であることが伝わります。アイコンを統一して使用することで、一貫性が生まれ、情報の整理と理解がしやすくなります。

言語以外のコミュニケーションツール

企業内のコミュニケーションを円滑に進めるためには、文字情報だけでなく、様々なコミュニケーションツールの導入が有効です。特に、障害を持つ社員にとって、音声や視覚を使った補助ツールは、情報へのアクセスを大幅に改善することがあります。

次のようなツールが活用できます。

・音声読み上げソフト
視覚障害のある社員や読字障害を持つ社員に対して、音声読み上げソフトは文字情報を音声に変換し、内容を聞いて理解できるようにします。これにより、書類やメールの内容が迅速に伝わり、作業効率が向上します。

・ビデオ通話の字幕機能
聴覚障害のある社員とのビデオ通話で字幕機能を使用することで、話している内容がリアルタイムでテキスト化され、視覚的に確認できるようになります。これにより、コミュニケーションの正確性が高まり、会話の内容をより明確に理解することができます。

・音声メモや動画マニュアル
口頭での説明や視覚的な情報を補完するために、音声メモや動画マニュアルを利用することも効果的です。動画での視覚的な説明を加えることで、複雑な作業手順や概念の理解を促進します。

最近は、デジタルツールにオプション機能を使用することで、音声とテキストの両方を同時に提供することが、容易にできるようになっています。例えば、プレゼンテーションの内容を音声で説明すると同時に、テキストでも表示することで、聴覚障害者や視覚障害者、あるいは特定の情報伝達方法を好む社員の多様なニーズに対応できます。

このような方法を活用することで、全ての社員が自分に最適な方法で情報を受け取ることができるため、情報の理解度を高めることができます。また、デジタルツールにはインタラクティブな要素を取り入れることができます。クイズ形式や対話型のコンテンツを使用することで、社員が能動的に情報に関わることができ、理解を深めることもできます。

誰にとってもわかりやすい具体事例

わかりやすい表現の例

通常の文章:
「新しいセキュリティポリシーに基づき、全てのパスワードは8文字以上で、少なくとも1つの大文字、1つの小文字、1つの数字、および1つの特殊文字を含む必要があります。」
やさしい日本語の例:
「新しいセキュリティのきまりで、パスワードは8文字以上にしてください。大文字と小文字、数字と特別な文字(例: !, @, # など)を少なくとも1つずつ入れてください。」

業務手順書の例

業務の作業手順書において、作業の流れを図解で示すことで、各ステップの理解が容易になります。例えば、工場で部品の組み立て手順をフローチャート形式で視覚化することで、作業者がどの順序で何をすべきかを一目で把握できるようにします。これにより、誤作業を防ぎ、作業の効率化が図れます。

ウェブサイトの例

企業のウェブサイトで製品やサービスを説明する際、写真やイラストを多用し、ビジュアルで訴求することが効果的です。特に、視覚的な要素をクリックすることで詳細な情報にアクセスできるインタラクティブなデザインにすることで、ユーザーの関心を引き、情報の理解を深めることができます。

誰にでもわかりやすい情報提供をするには、表現を工夫することや視覚的な要素を効果的に活用すること、コミュニケーションツールを活用することができます。これらは障害の有無にかかわらず、誰にとっても理解しやすい情報提供が可能となります。企業では、このようなコミュニケーションを意識することで、全ての社員が安心して情報にアクセスできる環境を作り出すことができます。

まとめ

誰にでもわかりやすい情報提供は、職場におけるコミュニケーションを改善するための重要な要素です。わかりやすい日本語の使用や視覚的な要素の効果的な活用、そして言語以外のコミュニケーションツールの導入は、障害のある社員だけでなく、すべての社員にとって理解しやすい環境を作り出すことに繋がります。
これらの取り組みは、企業がインクルーシブな職場環境を築くための一歩となり、職場全体の生産性向上や社員満足度の向上にもつながります。また、ユニバーサルデザインの考え方に基づくわかりやすい情報提供は、企業にとっても大きなメリットをもたらすでしょう。
障害者雇用を通して誰もが情報にアクセスしやすく、業務に貢献できる環境を整える意識をもつことは、企業の成長やブランディング、社会的責任を果たすうえでも役立ちます。誰にとっても理解しやすいコミュニケーションを意識し、すべての社員が安心して働ける職場を目指しましょう。

動画で解説

参考

色覚異常(色盲、色弱)は就職に影響するのか

障害者雇用で企業が求められている義務とは?配慮と手続きを解説

職場の障害者とコミュニケーションをとるときに大切なこと

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