障害のある社員とのコミュニケーション|配慮と職場の関わり方

障害のある社員とのコミュニケーション|配慮が疎外感に変わらない職場の関わり方

2022年11月23日 | 支援と関わりの工夫

担当者が頑張るほど、 組織が止まる

 

障害者雇用を組織の力に変える5日間

登録者限定レポート
「障害者雇用は、配慮の話ではなく、設計の話だ。」

2026年8月1日更新
障害のある社員へ配慮しようとするほど、管理職や同僚が慎重になりすぎることがあります。

「集中を妨げないように、必要なとき以外は話しかけない」
「研修は負担になるかもしれないので、今回は声をかけない」
「注意すると傷つけるかもしれないので、問題があっても様子を見る」
「障害について何を聞いてよいかわからないので、本人との会話を避ける」

これらは、本人を困らせようとして行われているわけではありません。むしろ、負担を減らしたい、トラブルを避けたいという配慮から生じていることが多いでしょう。しかし、本人へ確認しないまま、情報や参加の機会、仕事上のフィードバックを減らすと、本人には「自分だけ職場から外されている」「何を期待されているのかわからない」と感じられることがあります。

障害のある社員への配慮は、情報や関わりを減らすことではありません。職場の一員として必要な情報、役割、参加の機会、フィードバックを提供したうえで、どのような調整が必要かを本人と確認することが重要です。

この記事でわかること

  • 良かれと思った配慮が、本人との距離につながる理由
  • 配慮と、情報や参加の機会から外すことの違い
  • 障害のある社員にも注意やフィードバックが必要な理由
  • 障害や配慮事項を社内で共有するときの考え方
  • 本人だけでなく、管理職や同僚も相談できる体制の重要性

配慮しているのに、なぜ本人との距離ができるのか

障害のある社員と関わる管理職や同僚は、次のようなことに迷います。

  • どこまで声をかけてよいのか
  • 仕事上の問題を注意してもよいのか
  • 障害について本人へ聞いてもよいのか
  • 会議や研修へ参加してもらってよいのか
  • 配慮事項を誰まで共有してよいのか

判断に迷った結果、「本人から希望が出るまで何もしない」「余計な負担をかけないよう、関わりを減らす」という対応になることがあります。

しかし、周囲が関わりを減らすと、本人が得られる情報も減ります。部署の動きがわからない、仕事の背景を知らされない、新しい業務を経験する機会がない、改善点を伝えてもらえないという状態が続くと、本人は職場の中で自分の位置を判断できなくなります。

配慮によって本人の負担を減らすことと、本人を職場の情報や関係から遠ざけることは、分けて考える必要があります。

障害のある社員を、一人の同僚として扱うとは

「一人の同僚として扱う」というと、障害のない社員とまったく同じ対応をすることだと受け取られる場合があります。

しかし、必要な配慮を行わず、全員に同じ方法だけを求めることが、公平とは限りません。一人の同僚として関わるとは、必要な調整を行いながら、本人にも次の内容を提供することです。

  • 仕事の目的や背景を共有する
  • 担当する役割と期待を伝える
  • 必要な情報を届ける
  • 意見や希望を確認する
  • 仕事上のフィードバックを行う
  • 会議や研修などへの参加機会を示す
  • 今後の業務やキャリアについて話し合う

配慮することは、本人に何も求めないことではありません。本人が役割を果たしやすい方法を確認したうえで、仕事として必要な期待や行動も伝えることが大切です。

職場で起きやすい4つのすれ違い

1.配慮のつもりで、本人への情報を減らす

「担当業務には直接関係がない」「知らせると混乱するかもしれない」と考え、部署の方針や仕事の背景を本人へ伝えないことがあります。

確かに、すべての情報を全員へ同じように伝える必要はありません。ただし、自分の仕事が何につながっているのか、部署で何が変わっているのかがわからないと、本人は状況に応じて行動しにくくなります。

本人へ共有しない場合には、「障害があるから知らせない」のではなく、業務上その情報が必要かどうかで判断します。

2.本人へ確認せず、参加は難しいと判断する

会議、研修、打ち合わせ、新しい業務などについて、「長時間の参加は負担になるだろう」「内容を理解するのは難しいだろう」と周囲だけで判断することがあります。

本人が参加を希望しない場合もありますが、参加の機会そのものを知らせなければ、本人は選ぶことができません。

参加が難しい可能性がある場合には、次のようなことを確認します。

  • 参加を希望しているか
  • どの部分であれば参加できるか
  • 休憩や時間の調整が必要か
  • 事前に資料を共有したほうがよいか
  • 参加しない場合、必要な情報をどう共有するか

本人の参加を必ず求めるのではなく、参加方法を選べる状態をつくることが重要です。

3.注意やフィードバックを避ける

障害のある社員に仕事上の問題を伝えると、「差別になるのではないか」「体調を崩すのではないか」と不安になる管理職もいます。

そのため、ミスや遅れ、周囲への影響があっても、本人へ伝えずに周囲が補うことがあります。しかし、本人に必要なフィードバックをしなければ、何を改善すればよいのか、会社が何を期待しているのかがわかりません。

注意やフィードバックを行うときは、人格や障害特性を責めるのではなく、次の内容を整理します。

  • 実際に起きた行動
  • 仕事や周囲への影響
  • 会社が求める行動
  • 本人が困っていること
  • 必要な配慮や仕事の進め方
  • 次に確認する時期

配慮と指導は、どちらか一方を選ぶものではありません。必要な配慮を確認しながら、仕事上の期待も具体的に伝えます。

4.関わる人を限定しすぎる

障害者雇用担当者や相談担当者を決めることは必要です。一方で、特定の担当者だけが本人と関わるようになると、直属の管理職や同僚との情報共有が少なくなることがあります。

日常の業務を知っているのは現場の管理職や同僚です。相談担当者だけでは、仕事の優先順位や成果、周囲への影響まで判断できないことがあります。

役割を次のように分けておくとよいでしょう。

  • 日常の業務指示を行う人
  • 仕事上のフィードバックを行う人
  • 本人から相談を受ける人
  • 合理的配慮を人事と検討する人
  • 評価や配置を判断する人

本人との関係を一人の担当者へ集めるのではなく、必要な人がそれぞれの役割で関われる体制をつくります。

配慮することと、情報や機会から外すことは違う

職場では、本人への配慮を考える場面が複数あります。

部署内の情報共有

本人の担当業務に必要な情報、仕事の変更、部署の方針などは、本人にも共有します。

情報量が多い場合は、重要な内容を整理する、後から確認できる形で残すなど、伝え方を調整します。

会議や打ち合わせ

本人に関係する仕事について話し合う場合には、参加の必要性や方法を確認します。

本人が参加しない場合も、決まった内容や本人に関係する変更を伝えます。

研修や学習の機会

「難しいだろう」「必要ないだろう」と決める前に、業務上必要な研修か、本人が希望しているかを確認します。

受講時間、資料、進め方などを調整することで参加できる場合もあります。

新しい業務やキャリア形成

障害者雇用では、入社時に決めた補助的な業務を長期間続け、本人の業務が広がらないことがあります。

現在の仕事が安定している場合も、本人の能力、経験、希望を確認し、新しい役割や学習の機会を検討することが必要です。

日常的なコミュニケーション

雑談や交流を全員に強制する必要はありません。ただし、周囲が過度に気を遣い、本人にだけ話しかけない状態になると、業務上必要な相談や質問も行いにくくなります。

本人が参加しやすい関わり方を確認しつつ、仕事上必要なコミュニケーションは確保します。

注意やフィードバックも、職場への参加に含まれる

職場の一員として働くためには、自分の仕事がどのように評価され、何を期待されているのかを知る必要があります。

障害のある社員にだけ評価基準や改善点を伝えないことは、一見するとやさしい対応に見えます。しかし、本人は自分の現在地を知ることができず、業務を広げたり、働き方を改善したりする機会を失います。

フィードバックでは、次のような伝え方を意識します。

  • 性格ではなく、職場で確認できる行動を伝える
  • 業務へどのような影響があったか説明する
  • 次に取ってほしい行動を具体的に示す
  • 本人が困っている点も確認する
  • 会社側で見直すことと、本人に求めることを分ける
  • 一度伝えて終わりにせず、見直す時期を決める

「障害があるから仕方がない」「配慮しているから注意できない」と考えるのではなく、本人が役割を果たすために必要な情報としてフィードバックを行います。

障害や配慮事項は、誰にどこまで共有するのか

本人への配慮を実施するためには、配属先の管理職や関係する社員へ情報を共有する必要がある場合があります。ただし、診断名や病歴などを、必要以上に広く伝えることとは分けて考えます。

共有前には、次の内容を整理します。

  • 何のために共有するのか
  • 誰が知る必要があるのか
  • 仕事上、どの情報が必要なのか
  • 本人へどのように説明するのか
  • 本人はどこまでの共有を希望しているか
  • 共有した情報をどのように扱うのか

診断名を共有しなくても、仕事上必要な対応を伝えられる場合があります。

例えば、

  • 依頼時は期限と優先順位を明確にする
  • 予定変更時は、理由と次の行動を伝える
  • 体調に変化がある場合の相談先を決める
  • 通院のための勤務調整について管理職へ共有する

などです。

本人の個人的な情報を知ることではなく、本人が仕事を進めるために必要な対応を共有することが目的です。

本人へ確認するときに大切なこと

配慮を考えるとき、「何をしてほしいですか」と本人へすべての判断を任せることがあります。

しかし、本人自身も、職場でどのような調整が可能なのか、何を希望すればよいのかわからない場合があります。

本人へ確認するときは、次の内容を一緒に整理します。

  • どの仕事や場面で困っているか
  • 仕事にどのような影響が出ているか
  • 現在の対応は役立っているか
  • 参加しにくい会議や研修はあるか
  • どの情報を誰へ共有してよいか
  • 会社として実施できる方法は何か
  • いつ、どのように見直すか

本人の希望を聞くだけでなく、会社側からも実施可能な選択肢を示します。

また、本人の希望を一度確認して終わりにせず、実際に仕事を進める中で機能しているかを見直します。

周囲の社員にも相談できる場所が必要

障害のある本人だけでなく、管理職や同僚も対応に迷います。

例えば、

  • どこまで声をかければよいかわからない
  • 注意してよい内容か判断できない
  • 本人から相談されたが、自分で決めてよいかわからない
  • 配慮事項を誰へ共有してよいかわからない
  • 本人の仕事を周囲が補い続け、負担が増えている

こうした迷いを個人で抱え込むと、本人へ過剰に配慮する、反対に関わることを避けるなど、対応にばらつきが生じます。管理職や同僚が、人事や障害者雇用担当者へ相談できる流れを決めておくことが必要です。

相談を受けた人がすべてを判断するのではなく、日常の業務は管理職、継続的な配慮は人事、健康に関する専門的な判断は産業保健スタッフなど、それぞれの役割へつなぎます。

職場の関わり方を確認する7つの質問

障害のある社員との関わり方について、次の項目を確認してください。

  • 配慮を理由に、本人への情報を減らしていないか
  • 会議や研修への参加可否を、周囲だけで決めていないか
  • 本人にも仕事上必要なフィードバックを行っているか
  • 特定の担当者だけが、本人と関わる状態になっていないか
  • 配慮事項を共有する目的と範囲を、本人と確認しているか
  • 本人の希望だけでなく、会社として可能な方法も示しているか
  • 管理職や同僚が迷ったときの相談先が決まっているか

複数の項目で答えに迷う場合、本人への接し方だけでなく、情報共有、役割分担、相談の流れを組織として見直す必要があります。

よくある質問

Q:本人へどの程度、日常的に声をかければよいですか

障害名だけで、声をかける頻度を決めることはできません。

本人が集中しやすい環境や、相談しやすい方法を確認しながら、仕事上必要な声かけや情報共有を行います。

周囲が過度に遠慮して、本人にだけ必要な情報が届かない状態にならないことが重要です。

Q:本人が希望していない研修や会議にも、声をかけるべきですか

すべての研修や会議へ参加を求める必要はありません。ただし、業務や今後の役割に関係する機会であれば、周囲だけで参加は難しいと判断せず、本人へ情報を伝えます。

そのうえで、参加の希望、参加できる範囲、必要な調整を確認します。

Q:障害のある社員へ注意やフィードバックをしてもよいですか

仕事上必要な注意やフィードバックは行えます。

人格や障害特性を責めるのではなく、実際に起きた行動、業務への影響、会社が求める行動を具体的に伝えます。

同時に、本人が困っていることや、会社側で調整できることも確認します。

Q:精神障害のある社員へ「頑張って」と励ましてはいけませんか

「頑張って」という言葉を一律に使ってはいけないということではありませんが、本人の状態や受け止め方によっては、負担やプレッシャーにつながる場合があります。

抽象的に励ますだけでなく、現在どの仕事で困っているのか、何が負担になっているのか、会社として調整できることがあるかを具体的に確認します。

必要以上に関わりを避けることも、反対に本人の気持ちや体調を管理職がすべて支えようとすることも適切ではありません。

仕事上の状況を確認し、必要に応じて人事や産業保健スタッフなどへつなぐことが大切です。

Q:配慮事項は、同じ部署の社員全員へ共有すべきですか

必ずしも、部署の全員へ同じ情報を共有する必要はありません。何のために、誰が、どの情報を知る必要があるのかを整理し、本人へ目的と範囲を説明します。

診断名を共有しなくても、仕事上必要な指示方法や相談先などを伝えられる場合があります。

Q:本人が必要な配慮をうまく説明できない場合はどうしますか

本人へ希望を尋ねるだけでなく、具体的な業務場面を一緒に振り返ります。

どの仕事で、何が起きていて、業務へどのような影響があるのかを整理し、会社として実施可能な方法を示します。

必要に応じて、支援機関や産業保健スタッフなどと連携しながら検討します。

まとめ

障害のある社員への配慮は、本人への情報や関わりを減らすことではありません。

本人に確認しないまま、「負担になるだろう」「参加は難しいだろう」と周囲だけで判断すると、必要な情報、仕事の経験、研修、フィードバックなどの機会から本人を外してしまうことがあります。

一方で、本人からの要望をそのまますべて受け入れることが、配慮というわけでもありません。会社として実施可能な方法を整理し、本人に求める役割や仕事上の期待も示したうえで、どのような調整が必要かを本人と確認していくことが重要です。

また、配慮事項を共有するときは、診断名や個人的な情報を広く伝えるのではなく、仕事を進めるために、誰がどの情報を知る必要があるのかを整理します。関わり方を管理職個人の感覚に任せると、必要以上に保護する、全員と同じ対応だけを求める、関わること自体を避けるなど、対応にばらつきが生じます。

本人だけでなく、管理職や同僚も迷ったときに相談できる体制を整え、情報共有、参加機会、フィードバック、配慮の見直し方について、組織として基本的な考え方を共有することが必要です。

配慮することと、職場の一員として関わることを対立させず、本人と周囲の双方が仕事を進めやすい状態をつくることが、安定した職場運営につながります。

配慮と、職場の一員として関わることを分けて考えませんか
障害のある社員への関わり方を管理職個人の感覚に任せると、必要以上に保護する、全員と同じ対応だけを求める、関わることを避けるなど、対応にばらつきが生じます。
配慮、情報共有、フィードバック、参加機会、相談の判断軸をそろえることが、本人と周囲の双方が働きやすい職場につながります。
「違いを活かすマネジメント研修【導入版】」では、障害特性ごとの接し方を覚えるだけでなく、現場で迷ったときに何を確認し、どのように関わり、どこから人事と考えるのかを整理します。

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