障害者雇用では、給与を最低賃金に合わせて設定する企業が少なくありません。最低賃金制度は、国が最低賃金法に基づいて賃金の最低限度を定めている制度になります。
ここでは、最低賃金とは、どのようなものなのか、また現在の最低賃金、最低賃金制度にある減額の特例許可制度について解説していきます。
最低賃金法とは?
最低賃金制度とは、最低賃金法に基づいて、国が賃金の最低限度を定めているものです。これに基づき、雇用者は労働者に最低賃金額以上の賃金を支払わなければなりません。もし、最低賃金額より低い賃金を労働者、使用者双方の合意の上で定めたとしても、それは法律によって無効とされ、最低賃金額と同額の定めをしたものとされます。
最低賃金法は、昭和34年に定められた法律です。最低賃金法には、雇用主が労働者に対して最低賃金額以上の賃金を支払わなければならないことが示されています。
最低賃金法(昭和34年4月15日法律第137号)(抄)
第4条第1項
使用者は、最低賃金の適用を受ける労働者に対し、その最低賃金額以上の賃金を支払わなければならない。第4条 第2項
最低賃金の適用を受ける労働者と使用者との間の労働契約で最低賃金に達しない賃金を定めるものは、その部分については無効とする。この場合において、無効となった部分は、最低賃金と同様の定をしたものとみなす。
また、最低賃金未満の賃金しか支払われない場合には、最低賃金額との差額を支払う必要があります。最低賃金は、地域別に定められています。
最低賃金の金額は時間給となっています。労働者に支払われる賃金にはほかに時間外割増賃金や休日割増賃金、深夜割増賃金、賞与(ボーナス)、精皆勤手当、通勤手当、臨時に支払われる結婚手当、家族手当等などは除外されます。
最低賃金をクリアしているかどうかを判断するには、月給や日給、出来高払い制などでの支給の場合には、時間に換算して時給を算出して見ていきます。月給や日給の場合には、基本給を所定労働時間や平均労働時間で割ると、1時間あたりの時間給の賃金を計算することができます。
地域別最低賃金は、都道府県別に定められており、産業や職種にかかわらず、すべての労働者と使用者に適用されるものです。具体的にいくらになるかは、労働者の生活費や賃金、通常の事業でどのくらい給料を出せるのかなどの要素から、総合的に判断され、決定されています。
最近は、最低賃金の改定が頻繁に行われており、令和3年度の最低賃金改定状況は、下記のとおりです。
出典:令和3年度地域別最低賃金改定状況(厚生労働省)
最低賃金額以上の賃金額を支払われない場合には、最低賃金法に罰則(50万円以下の罰金)が定められ、特定(産業別)最低賃金額以上の賃金額を支払わない場合には、労働基準法に罰則(30万円以下の罰金)が定められています。
減額特例許可制度とは
最低賃金制度には、減額の特例許可制度が設けられています。 雇用者は、原則として、最低賃金額以上の賃金を支払わなければなりませんが、一定の基準を満たした上で、都道府県労働局長の許可を受けた労働者については、最低賃金額を減額する特例が認められています。
減額特例があるのは、労働能力が基準に達していない場合であっても、労働者が働く機会を減らさないためのものとなっています。
減額特例が認められる対象者は、次のようなケースです。
・精神又は身体の障害により著しく労働能力が低い
・試用期間中である
・基礎的な技能及び知識を習得させるための職業訓練を受けている
・軽易な業務に従事する
・断続的労働に従事する
障害者にも適用されることがありますが、単に障害があるだけでは、許可の対象とはなりません。その障害が従事しようとする業務の遂行に直接支障を与えていることが明白である必要があります。また、業務の遂行に直接支障があったとしても、その支障の程度が著しい場合でなければ、許可の対象とはなりません。
減額特例の許可を受けるには、事業所がある管轄の労働基準監督署に許可申請書を提出する必要があります。減額特例許可は申請すれば許可されるというものではなく、減額する理由を明確にし、どのくらい減額するのかを明らかにすることが求められます。
例えば、雇用者が、ある労働者の労働能力が低いと感じるだけではなく、障害者が手帳を持っている場合は、その手帳の写しや、業務遂行に対する支障があることを示すことや、客観的な視点からの情報として、同じ職場で同じような業務を行っている人と比較するなどです。
また、許可された場合でも、許可された業務以外の業務を行う場合は、一般の労働者と同じ最低賃金額が適用されます。
厚生労働省では、「最低賃金法第7条の減額の特例許可事務マニュアル」を作成し、各対象者の許可の判断基準や減額の率、減額後の額等を紹介しています。詳細については、こちらをご覧ください。
最低賃金法第7条の減額の特例許可事務マニュアル(厚生労働省)
なお検討した上で申請を行う場合には、最低賃金の減額の特例許可申請書様式・記入要領は、以下のページを参考にしてください。
最低賃金の減額の特例許可申請書様式・記入要領(厚生労働省)
動画の解説はこちらから
まとめ
障害者の給料は、一般的な給料よりも低いことが多くみられます。その理由は、障害者雇用の業務の多くが、専門性やスキルの求められることが少ない仕事内容に携わることが多いからです。
しかし、国では最低賃金法に基づいて賃金の最低限度を定めています。障害者雇用の場合にも、この制度が適用されます。そのため障害者雇用を行っている企業では、給与を最低賃金に合わせて設定している場合も多く見られます。今回は、最低賃金制度について解説してきました。
最低賃金法は、昭和34年に定められた法律で、雇用主が労働者に対して最低賃金額以上の賃金を支払わなければならないものとなっています。もし、最低賃金額より低い賃金を労働者、使用者双方の合意の上で定めたとしても、それは法律によって無効とされ、最低賃金額と同額の定めをしたものとされます。最低賃金は、都道府県別に定められており、産業や職種にかかわらず、すべての労働者と使用者に適用されるものです。
最低賃金制度には、減額の特例許可制度が設けられています。 雇用者は、原則として、最低賃金額以上の賃金を支払わなければなりませんが、一定の基準を満たした上で、都道府県労働局長の許可を受けた労働者については、最低賃金額を減額する特例が認められています。
障害者の賃金を決定する際には、最低賃金法、減額特例許可制度などについても知った上で検討していくとよいでしょう。
0コメント