障害者雇用の給与は、なぜ安い?~特例子会社のストから考える~

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2021年06月27日 | 障害関連の情報

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障害者雇用の給与は、一般的な雇用よりも安く設定されていることが多くあります。ただ、その安く設定されている理由は、障害者だから安くという単純な理由ではありません。

障害者雇用で担われている業務内容や、障害者を雇用するときに実際に設備投資、人材配置が一般雇用よりも手厚くされたり、いろいろな配慮が必要となってくるために、一般社員を雇用するよりもコストがかかることが多いからです。

ここでは、特例子会社で起こったストについて、また、障害者の平均的な給与と仕事内容、障害者雇用にはどのようなコストが掛かっているのかについてみていきます。

特例子会社で給与に不満の社員がスト

先日、光学機器メーカーオリンパスの特例子会社、オリンパスサポートメイトの社員が生活できる賃金への引き上げを求めて終日ストライキを行いました。特例子会社とは、障害者雇用の促進を図るために設けられた会社で、障害者が働きやすいための設備や人材配置が一般の企業よりも行なわれているのが特徴です。

今回のストでは、特例子会社の社員は「賃金が最低賃金レベルで生活が成り立たない」と話しており、月額1万円の賃上げを求めたようです。

参考:障害者が賃上げスト オリンパス特例子会社「生活できぬ」(毎日新聞 2021.6.22)

ストを行ったのは、労働組合「首都圏青年ユニオン・オリンパスサポートメイト分会」の組合員で、仕事はフルタイムで契約書のデータベース作成や翻訳などの事務的業務をして賃金は月額約17万円、手取りは約14万円。時給に換算すると1126円とのことで、この金額が、仕事内容と比較してみると、それほど低いのかどうかを考えていきたいと思います。

仕事の内容は、親会社オリンパスの契約書をもとに、書かれた内容をデータベース化する作業やドイツ語の論文の翻訳などの事務的業務だ。

元々オリンパス本体で行っていた業務を、特例子会社を作り「外出し」したものだという。精神疾患を持つ組合員たちはこうした高度な仕事に取り組んでいる。

出典:〈働く現場から〉障害ある労働者たちがスト/ジャーナリスト 東海林 智(機関紙連合通信社 2021.6.25)

仕事内容の「データベース化する作業やドイツ語の論文の翻訳」がどの程度のレベルが要求されるものなのか、この業務が主な業務なのか、どれくらいの割合を占めているのか、これだけの情報では把握できませんが、最近では翻訳やIT関連の業務に関してはリモートで比較的安価に仕事を受注する人材が多くなっています。

また、コロナの影響でアメリカをはじめてとしてアジアンヘイトが広がりつつある中で、優秀な人材でも仕事がなく、海外在住の人でリモートの在宅秘書をしている人も増えています。このような環境の変化や場所に関係なく雇用できるような環境の変化があることも見ていく必要があるでしょう。もともと本体でしていたから価値がある仕事であるということが一概に言えなくなってきている状況もあります。

ちなみに一般事務(東京)の手取りの給料は、平均すると一般事務職の平均の手取りは250万〜400万が相場と言われています。一般的には、正社員のほか派遣や契約社員、アルバイトといった雇用形態によって大きな差が出るような職種ではありません。

また、事務職で高収入が得られるようにするには、給与水準の高い業界で働くことや、長く勤務すること、専門性を身に着けることなどが必要です。

事務系の時給は、次のような金額です。
・一般事務 1,210円
・経理事務 1,178円
・営業事務 1,177円
・貿易事務 1,435円
・伝票整理、資料作成 1,157円
・電話応対 1,199円
・コールセンター、テレオペ 1,360円
・事務関連派遣職 1,400円
・秘書 1,290円
・受付(レセプション) 1,155円
・学校事務 1,130円
・その他事務 1,166円

出典:東京都のアルバイト・バイト・パートの平均時給(TOWNWORK)
企画運営する求人情報メディア 『TOWNWORK』『FromA navi』『はたらいく』『とらばーゆ』に掲載された求人情報より、2020年2月に発行された募集時平均時給を集計

実際に障害者雇用の平均給はどれくらいなのか、調査結果から見ていきたいと思います。

障害者雇用の平均給与はいくら?

障害者の平均給与については、厚生労働省が定期的に行っている「障害者雇用実態調査結果」から知ることができます。平成30年に行なわれた調査結果から、障害別の仕事内容と給与の結果を見ていきましょう。

身体障害者の仕事内容と給与

身体障害者の仕事内容を見ると、事務的職業が32.7%と最も多く、次いで生産工程の職業が20.4%、専門的、技術的職業が13.4%の順に多くなっています。

また、1ヵ月の平均賃金は、21万5千円(超過勤務手当を除く所定内給与額は20万4千円)です。週所定労働時間別にみると、通常(30時間以上)が24 万8千円、20時間以上30 時間未満が8万6千円、20時間未満が6万7千円となっています。

知的障害者の仕事内容と給与

知的障害者の仕事内容を見ると、生産工程の職業が37.8%と最も多く、次いでサービスの職業が22.4%、運搬・清掃・包装等の職業が6.3%となっています。

また、1ヵ月の平均賃金は、11万7千円(超過勤務手当を除く所定内給与額は11万4千円) です。 週所定労働時間別にみると、通常(30時間以上)が13 万7千円、20時間以上30時間未満が8万2千円、20時間未満が5万1千円となっています。

精神障害者の仕事内容と給与

精神障害者の仕事内容を見ると、サービスの職業が30.6%と最も多く、次いで事務的職業25.0%、販売の職業19.2%の順に多くなっています。

また、1ヵ月の平均賃金は、12 万5千円(超過勤務手当を除く所定内給与額は 12万2千円)です。週所定労働時間別にみると、通常(30時間以上)が18万9千円、20時間以上30時間未満が7万4千円、20時間未満が5万1千円となっています。

出典:平成30年度障害者雇用実態調査結果(厚生労働省)

障害の有無に関わらず、給与が高いのは、まず業界や職種に係るところが大きいと感じます。一般的に給与水準の高い業界は、金融やIT・情報分野です。また、仕事内容では、企画職や営業、マーケティング、エンジニアなどの何らかの専門性がある職種が高く、バックオフィス業務や労働集約的な業務に関してはあまり高くないのが現状です。

障害者雇用で切り出される業務の多くは、業務内容としてはバックオフィス業務や労働集約的な業務が多くなっており、仕事内容から言っても、妥当な金額になっているのではないかと感じます。

障害者雇用の環境整備には費用がかかる

障害者雇用で業務と給与の関係も大切ですが、障害者が職場で働くための環境整備にも費用がかかっていることを考えておく必要があります。

障害者雇用促進法の考え方も障害者雇用はコストがかかることを理解している

障害者雇用促進法は、障害者の職業の安定を図ることを目的としている法律で、障害の有無にかかわらずそれぞれの希望や能力に応じて、各地域で自立した生活を送ることができる「共生社会の実現」を目指すものです。

この法律の中には、「障害者雇用納付金制度」が設けられています。「障害者雇用納付金制度」は、障害者の雇用にともなう事業主の経済的負担の調整のためにあります。障害者雇用は、設備や施設の充実を図ったり、雇用管理にリソースが必要になったりと、一般の雇用よりもコストがかかることが多く、このような事業主の負担を社会で連帯して負っていくという考えのもとに成り立っています。

そのため、障害者雇用が未達成の企業が納める必要のある「障害者雇用納付金」を徴収し、徴収された納付金は、事業主が障害者雇用を促進するための作業設備や職場環境を改善するための費用や、雇用管理や能力開発をおこなうなどの各種助成金、雇用を多くしている事業主への調整金として支払われています。

つまり、障害者雇用促進法の中でも、障害者雇用は費用がかかるものであることが認識されていることがわかります。

障害者雇用で、企業はどんな環境整備をしているのか

障害者雇用をしている職場では、どのような配慮が行なわれているのでしょうか。

例えば、身体障害者を雇用している職場では、多目的トイレや、車椅子の方が褥瘡にならないように体位を変えられるようなスペースを設けることがあります。

また、精神や発達障害がいる職場では、気が散らないように仕事をする机の上にディスクトップ用のパーテーションで仕切りをつけて、他の人の仕事に注意が妨げられないようにしたり、図書館にあるような個室のワーキングスペースを設ける、疲れやすい社員のために仮眠室の準備や、マッサージチェアも入れるなどの設備投資をしていることもあります。

その他にも、一般の職場よりも人員配置を多めにしている職場も少なくありません。このような障害に配慮している職場では、障害者が働きやすいようにする費用がかかっています。

動画の解説はこちらから

まとめ

特例子会社のストで「給与UP」の要求があったことから、障害者雇用の給与や、仕事内容と比較した給与の比較、障害者が働く環境を整えるために費用がかかっていることなどについて見てきました。

では、障害者の給与を上げていくためには、どうすればよいのでしょうか。これは、雇用する企業の方と、当事者の方とによって考え方や、何をすればよいのかは異なってくると思います。

企業としての立場から考えるのであれば、バックオフィス業務や労働集約的な業務では利益をあげることは非常に難しくなっています。よりプロフィットに直結するような業務を切り出すことや、もし社内に業務がないのであれば、新規事業を考えていく必要があるでしょう。

また、当事者の方が給与を上げたいと思うのであれば、給与水準の高い業界へ転職することや専門性を身につけること、マネジメントに携わることや管理職につくことなどが考えられます。これは、一般の雇用でも、給与を上げたい場合には、同じことを考えていく必要があります。最近では、インターネットを介してアウトソーシング業務も多様化してきており、かなり難易度の高い業務でも安価に外注できる時代になってきています。給与を上げたいのであれば、それに見合う専門性や独自性が求められるようになっていると言えるでしょう。

参考

障害者雇用納付金制度の概要をわかりやすく解説

障害者雇用の給与等の雇用条件をどのように決めたらよいか

障害者雇用されている人がトラブルや困ったときに相談できる労働組合とは?

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2 コメント

  1. 金沢

    障害者雇用にコストがかかることが事実だとして仮定しても、このことを障害者の給与水準の低さと関連づけて語ることは問題が多いと思いますがいかがでしょうか。
    障害を社会モデルとして捉えて社会としてのありかたを見直す、多様性を拡張するという観点でいうと、就業環境の改善や合理的配慮が足りていないことによる業務遂行能力の補佐にかかるコストは企業が払うのが当然であり、障害者自身の給与部分から捻出されるようなことはあってはならないのではないでしょうか。

    返信する
    • 松井 優子

      個人的な意見になりますが、業務遂行能力の補佐にかかるコストの多くは、
      障害者自身の給与には反映されていないことがほとんどです。
      もし、反映しているとすれば、もっと低くなるでしょう。

      本文中に一般的な事務的業務の平均賃金をあげましたが、
      障害者雇用の費用とは、大きな差はありません。

      国でも企業で障害者雇用をすることは、それなりに経済的な負担がかかることを認めており、
      それを補填するために、障害者雇用促進法では、事業主が相互に果たしていく社会連帯責任の理念に立ち、
      事業主間の障害者雇用に伴う経済的負担の調整を図っています。
      それが障害者雇用納付金として納められたものが助成金となり、再分配されています。

      給与水準を上げたいのであれば、業務内容や業務設計、付加価値を
      どのように向上していくのかを考えていく必要があります。

      返信する

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