精神障害者の職場定着は、他の障害種別に比べると低いと言われています。そのような中で、精神障害者を雇用するときに、職場でどのような配慮を示すことができるのでしょうか。
今回は精神障害者を雇用している職場で配慮していることはどのような内容なのか、採用後の職場で具体的に配慮できることについて見ていきます。
精神障害者を雇用している職場では、どのような配慮をしている?
精神障害者を雇用している職場では、業務上の配慮について55.0%が「配慮している」と回答しています(平成30年度障害者雇用実態調査、厚生労働省)。配慮していることとして回答されたもののなかでは、「短時間勤務等勤務時間の配慮」が 70.8%と最も多くなっています。
この他の点としては、次のような配慮があげられています。
・短時間勤務等勤務時間の配慮(70.8%)
・休暇を取得しやすくする、勤務中の休憩を認める等 休養への配慮(50.5%)
・通院・服薬管理等雇用管理上の配慮(52.4%)
・配置転換等人事管理面についての配慮(46.1%)
・能力が発揮できる仕事への配置(45.8%)
出典:平成30年度障害者雇用実態調査(厚生労働省)
実際に職場でどのように配慮すればよいのか?
勤務時間を柔軟にしたり、休暇を取りやすくする
配慮の上位3つにあげられた点は、出退勤時刻、休憩、休暇、通院などに関して、柔軟に対応することがあげられています。
特に精神障害の場合、体調に波があり、定時に出勤することが難しかったり、通院、服薬を必要としたりすることがあります。このような場合には、個別の状況に合わせて適切な配慮が求められます。
心身が疲れやすい傾向にあるため、就業初期は短時間勤務から始め、徐々に勤務時間を延長していくのも一つの方法です。また、通勤ラッシュや人混みが苦手な人も多いので、出勤時間を少し遅めに設定する会社もあります。
休憩時間の規定が「1日 60 分」であれば、「45分」と「15分」というように、本人の希望や状況に応じ、分割して休憩が取れるよう配慮しているケースもあります。
休暇に関しては、当事者の通院などに応じて、有給休暇を1時間単位で取得できるようにするといった対応をしていることもあります。
適切な勤務時間と業務量を設定したり、調整する
勤務時間や仕事内容は無理のない範囲から始め、少しずつ勤務時間や業務量を増やすなど、調整できるようにしておくとよいでしょう。面接などでは、勤務時間は長めにしたいと希望する人も多いですが、実習や実際に勤務してからの様子を見て、初めは少し余裕があるくらいに設定することをおすすめします。
勤務した当初は、緊張感もあり通常以上に頑張ってしまう人もいますが、実力以上のことをしていると、一時的にはできてもそのペースを継続することは難しくなります。当事者にとって無理のないペースかどうか、定期的に確認することも重要です。就労支援機関などに毎日通っていたとしても、職業訓練で通っているのと仕事をするのでは、緊張感や負荷は全く異なることを意識しておくとよいでしょう。
また、精神障害の場合「何事にも手を抜けず頑張りすぎてしまう」「さじ加減がわからない」ということも多く、知らず知らずのうちに疲労やストレスを溜めてしまいがちです。そのため、仕事に関して質問や相談のできる担当者を決めておくとよいでしょう。担当者を決めることで、当事者が働く上で問題になっていることについて、当事者と事業者が互いに認識しやすくなり、必要な対応がとりやすくなります。
そして、定期的に1to1などの面談の場を設けてください。特に採用されたばかりのときは、遠慮していたりして、伝えたい事が伝えきれていない場合も見受けられます。問題がないように見えても、個別で話を聞く時間を設けることで話しやすい場を作ることができます。
一緒に働く人にも理解しやすい場作りをする
精神障害は、外見からはわかりにくい障害です。当事者のプライバシーに配慮した上で、一緒に働く人たちに障害の内容や必要な配慮などを説明しておくことは、当事者に対する職場の理解を助けます。障害特性や、当事者が働くときにどのような困難を感じることがあるのか、どのような配慮が必要かといった点について、職場の人たちに知ってもらうことが望まれます。
場合によっては、専門職のサポートを活用する場合もあります。ジョブコーチ(職場適応援助者)や、就労支援機関などの外部機関にサポートを依頼したり、社内にカウンセラーや保健師、精神保健福祉士、社会福祉士等などの専門家を配置したりすることもできます。
精神障害の職場定着率は低いと言われていますが、働きやすい職場を意識することで定着率は高まります。社内で取り組みやすいことからはじめてください。
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