メンタル面などの不調から社員が休職するような場合も少なくありません。このようなときに、企業や人事部門では、どのように社員の対応をしていくとよいのでしょうか。
社内で休職が必要な社員がいたときに、人事労務担当者が、休職中はどのように関わるとよいのか、また復職するときに見ておくとよいポイントについてお伝えしていきます。
休職の目的とルールを伝える
社員が休職する場合、休養に専念すること、病気や症状がよくなったら復職できることを伝えて、安心してもらうことが必要です。また、合わせて、社内で決められている休職制度について説明をすることができます。
具体的には、休職が可能な期間や、休職から復職の流れ、復職の条件、傷病手当金、社会保険料などの負担についての説明をします。体調が悪い状態だと、説明しても頭に残らない場合もありますので、このような内容は書面でも提示するとよいでしょう。
休職中は、仕事を気にせず、療養に専念してもらう必要があります。そのようにするために会社貸与のパソコンや携帯等は休職する際に一度会社の方で預かり、社内ネットワークへのアクセス制限をしておきます。合わせて復職する時にパソコンや携帯電話を再貸与することを説明しておくとよいでしょう。
休職中は、休職者に負担がかからない範囲で、定期的に休職者に連絡を取っていくようにします。生活状況や健康状態などを確認したり、落ち着いてきたら病状の原因についてヒアリングをすると、職場環境や復職するときの準備に役立ちます。
ただ、メンタル面等で休職に至った場合、職場の人間関係等がストレスとなっている場合もあります。このような場合には、社内の人間と会うことが難しい場合もあるので、状況を見ながら進めていくとよいでしょう。
面談等では、人事部門が関わることも必要ですが、状況に応じて産業医や衛生管理者(衛生推進者)などの産業保健スタッフにも関わってもらうことが有効的な場合もあります。面談の場については、直接会うことが難しい場合には、電話などからはじめ、自宅付近の喫茶店などで行い、慣れてきたら会社に来てもらうことができます。また、本人から情報を得ることが難しい場合には、家族にも協力してもらうことができます。
休職期間の企業の関わり方、どうしている?
「採用後に障害者となった従業員に対する企業の対応や課題」についての調査では、休職期間中の対応で、次のようなことを行なったことが示されています。
・職場復帰に関する本人の希望を聞いた。
・本人や家族に取得可能な休職期間や休業補償、復職支援に関する情報等について説明した。
・職場復帰後の配慮事項や周囲の協力について、事前に現場の理解を求めた。
・会社の担当者(産業保健スタッフも含む)が定期的に本人に接触する機会を設けた。
・関係者(労務担当・職場上司・産業保健スタッフ等)の間で定期的に障害状況等の情報を共有した。
【休職期間中の対応の実施率】
出典:「採用後に障害者となった従業員に対する企業の対応や課題 」(宮澤 史穂、日本労働研究雑誌、2022)
この調査では、身体障害、精神障害を対象としていますが、どちらも「職場復帰に関する本人の希望を聞いた」の選択率が最も高くなっており、その次に「本人や家族に取得可能な休職期間や休業補償、復職支援に関する情報等について説明した」が選択されています。これらの対応は、障害を問わず企業で行われている基本的な対応と言えるでしょう。
また、「本人や家族の了解のもとで主治医と面談して、職場復帰に関する注意事項などの情報を収集した」と「職場復帰後の配慮事項や周囲の協力について、事前に現場の理解や協力を求めた」は,実施率が 10 ポイント以上採用後精神障害者の割合が多い企業の方が高くなっています。この点については、特に精神障害者に対して求められる配慮と考えることができます。
【職場復帰の判断の最重要要素の選択率 】
なお、職場復帰の判断の最重要要素としては、「症状や病気が安定していること」「本人が職場復帰に関して意欲を示していること」「復帰予定の職務の遂行が安定して行え、 遂行上での危険がないこと」が上位に選ばれています。また、精神障害の場合には、「復帰した職務に従事しても、症状や病気が悪くならないこと」の割合が高くなっています。
出典:「採用後に障害者となった従業員に対する企業の対応や課題 」(宮澤 史穂、日本労働研究雑誌、2022)
ただ、「本人が職場復帰に意欲を示していること」に関しては身体障害者の割合が精神障害者の2倍以上と高く、「復帰した職務に従事しても、症状や病気が悪くならないこと」は精神障害者の割合が身体よりも8.2 ポイント高くなっており、精神障害者の症状の不安定さに関する懸念がこの調査結果から表れていると考えられます。
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