「障害者枠で就職活動をしているのになかなか就職できない」という方の相談をお受けしました。
今回の悩みは、多くの就職活動している方に役立つと思いますので、詳細はカットしますが、共通するポイントをお伝えしたいと思います。
発達障害で就職活動中だが進展がない
今回、ご相談いただいた方から、以下のような状況です。
障害者手帳を所持(ADHDや自閉症スペクトラムなどいくつか持って、認定を受けている)しています。就職活動は、就職に向けて、ハローワークから求人票を受け取り、応募するかどうか、支援を受けている就労移行支援事業所で見てもらってから、お墨付きをもらい、応募しています。しかし、書類選考すらもなかなか通らず、どうしたらいいか迷っています。
就職活動が進まないと考えられる理由
まず、原因として考えられる点は2点あります。1つはご本人に関すること、もう1つは支援者側の問題です。
就職の準備ができていない
まず、1点目のご本人に関することから考えられる点を見ていきたいと思います。まず、就職活動には、お互いの求めるところがマッチングして就職が決まるものだということは覚えておいてください。
しかし、10数社以上受けても全く書類選考すら通らないという場合には、就労するだけの準備ができていない、もしくは就職して働くための体力、精神力がないということが、書類の中から判断されている可能性があります。
就職するためのスキルと言うと、わかりやすいパソコンや専門的な知識、資格などで準備しようとしがちですが、就職にもっと必要な点は、他にもあります。例えば、毎日体調を崩さず通勤できること、薬を医療機関に指示された通りにしっかり服薬できることなどです。
こうした「就労するために必要なこと」は『職業準備性』と表現され、働くことについての理解・生活習慣・作業遂行能力や対人関係のスキルなど基礎的な能力のことを指します。これは、職種、障害の有無を問わず、働く上で必要とされます。
職業準備性には5つの能力に分類されます。その5つは「健康管理」「日常生活管理」「対人スキル」「基本的労働習慣」「職業適性」です。この職業準備性をピラミッド図で表したものが「職業準備性ピラミッド」です。
出所:障害者職業センター
大事な点は、これが【ピラミッド】になっているということです。下から順に積み上がっていくことに意味があります。どれかが欠けていると、一時的には大丈夫そうに見えてもどこかで就労に影響が出てしまいます。もし、適性のある職業に就いたとしても、どんなに作業能力が高くても、ピラミッドの底辺から順にしっかりと備わっていないと働き続けることは難しくなります。
また、他に考えられる点は、実力よりも高い企業にばかりエントリーしているということです。企業が求めるスキルや実力がともなっていなければ、いくらエントリーしても就職までに結びつく可能性は限りなく低くなります。
支援者側が適切な就職活動をサポートしてくれない
もう1点は、支援側の問題です。就労支援を行なうところは、就労移行支援事業所をはじめ、職業センター、障害者就業・生活支援センター(ナカポツ)などがあります。
最近では、就労支援を新しく行なう事業所が増えており、それにともない障害者雇用の状況を知らなかったり、経験のない就労支援をするスタッフが増えています。また残念ながら、企業が求めていることを理解できないスタッフの方がいることも見受けられます。
そのために、ご本人が希望するところと企業へのマッチングする力が就職活動をサポートしてくれる支援者側に足りないために、応募できるところが限られる、そして結果的に就職活動が進まないという状況が見られることもあります。こうした場合には、障害者枠の人材紹介会社を活用するという方法もあります。ただし、気をつけなければならないこともあります。
一般的には、ハローワークよりも人材紹介のほうが、職種内容や待遇などもよいことがほとんどですが、それにともない職歴、スキルなども要求されるので、難易度は上がります。身体障害で内部障害など、本当に医療的な配慮だけすれば、活躍できる障害者の方たちと勝負する必要もあります。ハローワークの求人で書類選考が通過できないのであれば、もしかすると今の状況ではちょっと厳しいかもしれません。
しかし、人材紹介会社では就職活動についてのサポートとして選考書類の作成や面接に関してアドバイスをくれることも多いので、活用してみる価値はあるかもしれません。障害者専門の人材紹介にはいろいろなところがあるので、大手ばかりでなく規模が小さいものの就職活動を丁寧にサポートしてくれるところに依頼してみるのも一つの手かなと思います。応募書類を見直して、ご本人の実力と企業が希望する人材にマッチングするところに応募すれば、書類の通過率は上がるはずです。
新型コロナの影響は障害者雇用に影響しているか
私が聞く限りでは、障害者雇用している企業での採用を控えているという話を聞くことは、今までにありません。企業は、障害者雇用率を計算し、計画的に採用していますので、それぞれの企業の従業員数に合わせた障害者雇用はしてくるはずです。また、令和3年3月に雇用率が0.1%上がりましたし、これからも上がっていくことが予想されるので、雇用率に達していない企業は、それを視野に入れた採用をかけてくると思われます。
地域の影響もあると思いますが、東京などの首都圏では常に障害者の売り手市場になっていますし、企業からは「採用したい」という声をよくききます。
ただ、就職や転職活動にはタイミングもあります。もし、今思ったような結果が出ていないのであれば、一人で焦ったところでどうにかなるものではありませんので、チャンスがきたときに、就職活動できるような準備を日々しておくことが大切です。
就職して、仕事をするようになっても自分ではどうにもならないような状況が出てきます。そのようなときに備えて、自分の気持や感情をコントロールできること、ストレスを軽減する方法などを身に着けておくことは、とても重要なことですし、就職活動の時にアピールできる点にもなるでしょう。
動画の解説はこちらから
まとめ
「障害者枠で就職活動をしているのになかなか就職できない」という方の相談から、就職活動をしている方にヒントになる点をお伝えしてきました。
まず、就職活動が進まない理由としては、ご本人の就職の準備ができていないこと、実力よりも高い企業にばかりエントリーしている可能性があります。これらを見直してみるとよいかもしれません。
また、支援を受けている機関やスタッフの経験不足ということも考えられます。このような場合には、障害別の対応をしてくれる人材紹介会社を活用することもできるでしょう。
就職活動で進展がないとついつい焦ってしまいますが、新型コロナの影響も出てき始めているかもしれませんので、必要以上に焦らず、自分のできる準備をまずはしておくように心がけてください。
障害者枠で就職活動の悩みがある方の相談は、こちらで受け付けています。
また、就職活動するときに知っておいてほしいポイントについては、【障害者枠で働きたい人が知っておくべき就活の基本】で紹介していますので、こちらも参考にしてください。
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参考
障害者の採用面接で必ず確認しておきたい職業準備性ピラミッドとは?
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