知的障害とは?どのような業務が向いているかを詳しく解説

知的障害とは?どのような業務が向いているかを詳しく解説

2024年09月11日 | 障害別の特性・配慮

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知的障害は一見複雑で多様な特性を持つため、企業で雇用するのは難しいと感じるかもしれません。しかし、特性にマッチした業務内容と適切な支援や職場環境の提供により、職場で活躍する知的障害者は少なくありません。

今回は、知的障害とはどのような障害なのか、強みを活かせる特性や知的障害者が活躍する具体的な業種や仕事内容について解説していきます。

知的障害について詳しく知る

知的障害とは、発達期において知的機能および適応行動の能力が一般の水準よりも低く、その結果、日常生活や社会生活において持続的な支援が必要とされる状態を指します。

知的障害は、その程度によって軽度、中度、重度、および最重度の4つに分類されます。この分類は、知能指数(IQ)や適応機能の評価を基に行われます。

軽度知的障害: 知能指数(IQ)が50〜70程度の範囲にある場合を指します。このカテゴリーの人々は、基本的な日常生活をある程度自立して行うことができますが、抽象的な思考や複雑な判断を伴う活動には困難を感じることが多いです。

中度知的障害: IQが35〜50程度で、日常生活や社会生活においても部分的に支援が必要です。簡単な指示には従うことができますが、複雑な作業には継続的な支援が求められます。

重度知的障害: IQが20〜35程度の範囲にある人々で、日常生活のほとんどの活動において支援が必要です。言語の発達が非常に遅く、コミュニケーションには非言語的な手段を多く用いる傾向があります。

最重度知的障害: IQが20以下で、日常生活のすべてにおいて全面的な支援が必要です。コミュニケーションは非常に限定的で、自己管理や他者との関係構築にも支援が不可欠です。

続いて、企業の雇用の場で出会うことの多い軽度知的障害について、もう少し見ていきます。

軽度知的障害とは?

軽度知的障害は、知的障害の中でも比較的軽い症状を持つ状態を指し、知的機能および適応行動において実年齢に対して一定の遅れが見られる状態です。軽度知的障害は、適応能力や生活スキルの面で支援が必要なことがあるものの、適切なサポートを受けることで、日常生活や社会生活において比較的自立した生活を送ることが可能です。

軽度知的障害は、一般的に知能指数(IQ)が50から70程度の範囲にある人々を指します。このIQの範囲にいる人々は、知的機能が平均よりも低いものの、簡単な学習や訓練を通じて基本的な生活スキルを習得することが可能です。

・言語理解とコミュニケーション
軽度知的障害者は、言語理解において遅れが見られることがあります。特に抽象的な概念や複雑な指示を理解するのが難しい場合が多いです。そのため、コミュニケーションにおいては、シンプルで具体的な言葉を使用することが効果的です。とはいえ、日常会話や基本的な意思疎通は十分に可能です。

・抽象的な思考の困難さ
数学的な概念や論理的な思考、計画的な作業など、抽象的な内容を理解するのには困難を感じることが多いです。これにより、学業面や職場での複雑な問題解決にはサポートが必要になる場合があります。

・日常生活スキルの自立度
軽度知的障害者は、基本的な日常生活スキル(例: 食事の準備、着替え、排泄など)を自立して行うことができます。これらのスキルは、生活の中で経験を積むことによってさらに向上することが多く、適切な支援があれば、独立した生活を送ることも可能です。

・社会的スキルと対人関係
軽度知的障害者は、社会的スキルや対人関係の構築においても一定の困難を伴うことがあります。特に、他者の感情や社会的なルールを理解するのが難しいことがありますが、基本的な指導や支援を通じて、適切な行動を学び、友人や家族との良好な関係を築くことができます。

・自尊心と依存的な傾向
知的な能力に制約があることで、自尊心が低くなる傾向が見られることがあります。また、自分に自信が持てず、他者に依存する傾向が強くなることがあります。しかし、支援と励ましによって、自信を持って自立した行動を取ることができるようになります。

どのように知的障害は診断されるの?

知的障害の診断は、 知能指数(IQ)テストを使用して、知的機能の水準を測定します。また、適応行動の評価や発達期の症状なども見られます。

適応行動の評価では、日常生活での自立度や社会的なルールの理解、対人関係のスキルなどから判断します。適応行動の評価には、食事や着替え、コミュニケーションスキルなど、生活上の具体的なスキルがどの程度習得されているかを評価することが含まれます。

適応機能は、次のような具体的な能力で評価されます。

・食事: 自分で食事の準備ができるか、あるいは特定の支援が必要か。
・着替え: 衣服の着脱を自分で行えるか、または介助が必要か。
・コミュニケーション: 他者とどの程度意思疎通ができるか、言語および非言語的手段でのコミュニケーション能力。
・社会的スキル: 対人関係を構築し、適切に維持する能力。例: 職場での同僚とのやり取りや、簡単な社会的ルールの理解と遵守。

また、発達期の状態も見ます。知的障害の診断は、発達期(18歳未満)において知的機能の障害が顕著である場合に行われます。発達期において、知的能力や適応行動の遅れなどによって診断されます。

職場では、どんなことができるの?

知的障害者は、適切な支援と環境があれば、多くの業務に従事し、職場で重要な役割を果たすことができます。彼らの特性を理解し、配慮することで、企業は知的障害者の能力を最大限に引き出すことができます。

知的障害者が得意とする業務は、ルーチンワークや定型的な作業が多いです。データ入力、事務補助、製造ラインの軽作業、清掃業務など、手順が明確で繰り返しの作業が求められる業務において高い適応力を発揮します。

一方で、知的障害者が職場で最大限に力を発揮できるようにするためには、サポートと合理的配慮が求められます。視覚的な指示や簡潔なマニュアルの提供、定期的なカウンセリングやメンタリング、作業工程の単純化などの合理的配慮が必要になります。これらのサポートをすることにより、彼らが業務をより理解しやすくなり、ミスを減らし、安定したパフォーマンスを維持することが可能となります。

勘違いされやすい点ですが、知的障害だからといって、すべてのことにサポートが必要なわけではありません。知的障害者が職場で仕事をしていくには、自尊心を高め、自立を促す支援も重要です。できることにまでサポートしてしまうと、逆にできないことが当たり前になってしまいます。職場での成功体験を増やすことや、積極的なフィードバックを通じて、自信を持って業務に取り組むことができる環境を整えることが求められます。

知的障害者の強みを活かせる業務とは?

知的障害者の独自の強みを発揮できるような仕事内容や職場環境であると、企業にとって貴重な人材となり得ます。彼らが持つ特性を理解し、適切な業務に配置することで、企業の生産性向上や職場環境の改善に大きく貢献することができます。
例えば、次のような業務や分野で活躍している人がいます。
・単純作業における高い正確性
知的障害者は、特に単純な繰り返し作業において高い正確性を発揮することが多いです。彼らは一度学んだ手順をしっかりと守り、反復作業において安定したパフォーマンスを維持できます。この特性は、製造業や物流業務、事務補助などの定型的な業務において非常に有用です。単純作業であっても、ミスなく効率的に遂行できる能力は、企業の業務品質向上に寄与します。
・ルーチンワークに対する集中力
知的障害者は、ルーチンワークに対して高い集中力を発揮します。日々の業務がある程度決まったパターンで行われる場合、彼らはそのルーチンに従って効率よく作業を進めることができます。例えば、データ入力や書類の整理、ピッキング作業などのルーチンワークにおいて、高い集中力を発揮し、業務を迅速かつ正確に完了させることができます。
・継続的な作業への忍耐力
知的障害者は、長時間にわたる作業や、定型的な業務を継続することに対する忍耐力が高い傾向があります。彼らは日々の業務を安定してこなすことに長けており、その結果、業務の効率化や生産性向上に貢献することができます。特に製造ラインや清掃業務など、決まった作業を繰り返し行う職種において、この特性は非常に有用です。
具体的な職場としては、次のような場で活躍している人がいます。
・製造ラインでの品質管理の補助
繰り返しの作業が求められる製造ラインにおいて、知的障害者は高い集中力と正確性を発揮します。彼らの安定したパフォーマンスは、製品の品質を一定に保ち、不良品の発生を減らすことに貢献します。
・物流センターでのピッキング作業
定型化された手順に基づいて作業を行うピッキング業務では、知的障害者の強みが活かされます。彼らの慎重な作業ぶりと高い集中力は、商品の正確な選別と梱包を可能にし、物流業務の効率化に寄与します。
・事務作業でのデータ入力とファイリング
事務作業においては、データの正確な入力や書類の整理が重要です。知的障害者の高い正確性と集中力により、これらの業務が迅速かつ正確に行われることで、事務処理のスピードと品質が向上します。

職場にもたらすポジティブな影響

知的障害者の雇用に取り組んだことで、ポジティブな影響があったと感じる企業は少なくありません。次のような影響を感じる企業があります。
・チームの多様性向上
知的障害者の就労は、チームの多様性を高めます。多様なバックグラウンドや能力を持つ人材が集まることで、職場には新しい視点や考え方が生まれ、よりクリエイティブで柔軟な問題解決が可能となります。また、異なる視点を持つ人材との協働は、チーム全体のコミュニケーション能力や協力体制の強化にもつながります。
・職場の雰囲気改善
知的障害者の雇用は、職場の雰囲気を改善する効果もあります。彼らの一生懸命に仕事に取り組む姿勢や、誠実な態度は、他の従業員にも良い影響を与えます。また、障害者と共に働くことで、他の従業員も互いに助け合う精神を育み、職場全体の結束力が強化されることが多いです。
・CSR(企業の社会的責任)と企業イメージの向上
知的障害者を含む障害者の雇用は、企業の社会的責任(CSR)を果たす行動の一つとして評価されます。これにより、企業の社会的評価やブランドイメージの向上につながり、社外からの信頼性を高めることができます。障害者雇用を積極的に推進する企業は、社会全体からも支持されやすくなり、長期的なビジネスの成功に寄与する可能性があります。
知的障害者の持つ特性を活かし、企業が適切なサポートと環境を提供することで、彼らの能力を最大限に引き出し、企業全体の成長に貢献することが可能です。このように、知的障害者の雇用は企業にとっても、多様性の推進や職場環境の向上など、メリットをもたらすことができます。

まとめ

知的障害者、とりわけ軽度知的障害者に対する理解と支援は、彼らが職場や社会で自立し、貢献できる環境を作るために不可欠です。適切な支援や合理的配慮を行うことで、知的障害者が持つ潜在能力を引き出し、企業における重要な役割を果たすことが可能です。
知的障害者、特に軽度知的障害者が強みを活かせる仕事内容や業種は、製造業、梱包作業、商品管理などの作業内容が明確で、繰り返しの多い業務などがあります。また、手順を守ることが求められる業務のクリーニング業、倉庫管理、検品作業などで活躍しているケースもあります。
知的障害の強みを理解し、長所を活かすことは、障害者雇用への取り組みにも役立ちますし、職場にもたらすポジティブな影響を与えることもあります。チームの多様性向上、職場の雰囲気の改善、CSR(企業の社会的責任)と企業イメージの向上などに貢献していると感じる企業が多くいます。

参考

知的障害者手帳の申請方法や手帳取得の判断基準とは?

知的障害はいつわかる?大人になってからの発見ケースとその背景

多数の知的障害者雇用をしている日本理化学工業の強さとは

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