障害者雇用として障害者アスリート雇用をすることのメリット

2020年東京オリンピック・パラリンピック開催で、障害者スポーツに対する関心が高まってきています。一方で、障害者スポーツの認知度は高まっているものの、競技人口やそれをサポートする関係者、活動を運営する資金も少ないといった非常に厳しい状況にあります。

企業では障害者雇用を行うことが法律で定められていますが、障害者のアスリートを雇用することで、雇用率達成を行おうと考える企業も増えてきています。また、実際に、障害者アスリートを人材紹介するところも増えています。

では、実際に障害者アスリートを雇用している企業は、どのようなメリットがあるのでしょうか。また、雇用体系や待遇はどのように設定しているのでしょうか。障害者のアスリート雇用や障害者スポーツについての説明とともに、障害者アスリート雇用の雇用体系や待遇について見ていきたいと思います。

障害者雇用におけるアスリート雇用

障害者スポーツの選手の中には、試合や練習に専念できる「アスリート雇用」を希望する人が増えてきています。この背景には、2020年東京パラリンピック開催で関心を持つ会社が増えたことや、障害者雇用率があがったことがあります。

このアスリート雇用は企業にとってのメリットも大きいですが、雇用されるアスリート社員にとっても大きなメリットがあります。障害者アスリートの多くは、競技環境の確保に苦労していたり、実力がありながらも、アスリート就職ができず、競技活動を辞めざるをえない状況が多くあるからです。競技活動を続けることが難しいために、学校を卒業し就職するタイミングで競技を引退する選手も少なくありません。

また、年々海外の障害者アスリートのレベルも上がってきており、結果を残すためには、より多くの練習や試合をこなしていく必要があります。それには、練習、合宿、国内大会、国際大会などの遠征費用等にもお金がかかります。

スポーツに集中するためにも、企業に就職して収入の基盤を獲得でき、安心して練習や遠征、国際大会に臨むことができる環境があることは、アスリート社員にとっても心強いものとなるでしょう。

実際に、アスリート社員を雇用している企業の事例が紹介されていますが、この中でもアスリート社員と企業側のメリットについて触れられています。

車いす(ウィルチェア)ラグビー日本代表の乗松聖矢(25)は造船会社の子会社で船の設計をしていた。だが週5日のフルタイム勤務で、忙しいと平日の練習時間がとれない。有給休暇が尽きれば遠征への参加は無給扱い。「金銭的に大変だった。昨年初めて強化指定選手となり、練習量を増やさないと生き残るのは厳しいと思った」

そこで4月にSMBC日興証券に転職。人事部に配属、月1回東京の本社へ報告に来る以外は、地元熊本で競技中心の生活だ。健常者の企業アスリートと同様、スポーツを通じて会社の広報活動をしつつ、「練習に集中できるようになった」。

SMBC日興証券はこの春、乗松を含め一気に7人の障害者アスリートを初めて採用した。企業は全社員の2%は障害者を雇用することが法律で義務付けられ、この雇用率は3年後に引き上げられる見込み。社員数が増えた同社は一時2%を切った。目を向けたのが障害者アスリート。「法定雇用率の達成と、目に見える障害者の雇用をやりたかった。社員の障害者に対する意識も変わってくれれば」と同社人事部。

出所:日経新聞 2015年6月9日

※ 2018年4月より雇用率は、2.2%となっています。

また、障害者アスリートの人材紹介をしている企業では、東京パラリンピックが決まってから企業からの問い合わせが4~5倍に増えたことを明らかにしています。障害者アスリート雇用は、障害者雇用にもつながるとともに、社会貢献になり、企業イメージの向上が見込める可能性があることを示しています。

障害者スポーツ

障害者スポーツとは、障害があってもスポーツ活動ができるよう、障害に応じて競技規則や実施方法を変更したり、用具等を用いて障害を補ったりする工夫・適合・開発がされたスポーツのことを指します。

障害者スポーツは、はじめは医学的なリハビリテーションを目的として発展してきましたが、現在では、障害のある人のみならず、障害のない人も一緒に楽しむこともあります。また、パラリンピックをはじめとして、国際大会なども開催されているスポーツがあります。

パラリンピック

パラリンピックは障害のある方たちのスポーツの祭典です。パラリンピックの正式種目は22競技あります。競技の種目はパラリンピックによって異なり、2020年東京大会では、初めて「パラバドミントン」が開催されます。

2020年のパラリンピックでは、以下の22競技が実施されます。
・アーチェリー
・陸上競技
・バトミントン
・ボッチャ
・カヌー
・自転車競技
・馬術
・5人制サッカー
・ゴールボール
・柔道
・パワーリフティング
・ボート
・射撃
・シッティングバレーボール
・トライアスロン
・卓球
・テコンドー
・トライアスロン
・車椅子バスケットボール
・車椅子フェンシング
・ウィルチェアーラグビー
・車椅子テニス

パラリンピック競技一覧はこちらから
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22競技が実施されるパラリンピック

パラリンピック以外の競技

パラリンピック正式種目以外にも、障害者スポーツは多くあります。例えば耳の聞こえない方たちが行う「デフ(ろう)」スポーツ。また、電動車いすサッカーや、アンプティ(切断者)サッカーなど、世界大会などが行われている競技でも、パラリンピック種目ではないものもあります。

障害者アスリート雇用の状況

一般的な障害者雇用や障害者アスリート雇用であっても、一般の雇用と同じように、それぞれの企業で雇用形態や待遇を労働法に抵触しないで決めることができます。

一般的な障害者雇用においても、企業の担当者の方からよく聞かれるのが、障害者の賃金体系や勤務形態に関する雇用の条件面に関することです。しかし、「給与はいくらです」と、答えがあるものではありません。これらの雇用条件は、雇用するそれぞれの企業で仕事内容や求めるもの、環境などが異なるからです。障害者アスリート雇用についても同じことが言えます。

とはいえ、何か参考になるようなものがほしいと思われる担当者の方が多いため、生活(仕事)との両立、活動費や休暇取得などの制度について見ていきたいと思います。

障害者の雇用条件については、以下の記事も参考にしてください。
↓  ↓  ↓
障害者雇用の給与等の雇用条件をどのように決めたらよいか

仕事とスポーツの両立について

大きく分けると、3つのパターンに分けることができます。

まず、1つ目は、基本は通常通りの勤務を行い、パラリンピックなどの国際大会や合宿の際に特別休暇(勤務扱い)とする方法です。これは、社員にとってもいつも一緒に仕事をしているので、社内の障害者アスリートを応援しようという雰囲気が醸し出されるようです。アスリートとしての練習時間はあまり取れませんが、仕事のスキルが身につくので、引退後の不安解消にもつながります。

2つ目は、ほとんど仕事に関しては出勤の無いパターンです。この場合は、アスリートは、在宅勤務として練習に専念し、広報活動や講演活動で会社に貢献することになります。

アスリートにとって練習時間を十分に確保できる点は魅力的ですが、会社への帰属意識が生まれにくい一面があります。また、他の社員にとっても、社内報やニュースリリース、ブログなどでアナウンスすることはしても、どこか遠いところの人、別世界の人となりがちです。

3つ目は、1つ目と2つ目の折衷型のイメージで、週に2~3日の出勤、もしくは時短勤務とする方法です。練習時間をある程度確保しながら、ビジネススキルを身につけることができます。

これらの勤務形態は、どれが良いというものはありません。企業やアスリートの考え方、競技・試合等の状況、ライフスタイルにもよるでしょう。どれか1つと決めないで、状況に合わせてこれらを組み合わせたり、少し変えたりすることによって、企業とアスリート双方にとってそのときに最適な雇用の形を選択することもできるでしょう。

活動費や休暇取得などの制度について

活動費や休暇取得については、まず、アスリート社員のレベルが関係してくるでしょう。世界でトップレベルのアスリート、日本でトップレベルのアスリート、地域でトップレベルのアスリートなど、状況に合わせて対応していることが多いようです。

また、企業のサポート体制と多いのが、大会や代表合宿への参加の際は出勤日として認定することや、国内・国外遠征費用を全部または一部負担する、競技に関する機材の購入費用を全部または一部負担するというものが多いようです。

もちろん、どのようなサポート体制を取るのは、アスリート社員のレベルや企業の判断によりますので、コミュニケーションを図って決めていくとよいでしょう。

雇用のメリット

障害者雇用率のアップ

障害者雇用への思いはあっても、雇用率を達成できていない企業はたくさんあります。仕事の創出、スペース確保、インフラ整備、担当者の育成などがあり、なかなか雇用が難しい状況がある企業も少なくありません。そのようなときに障害者のアスリート社員を雇用することによって、雇用率を達成することができるかもしれません。

もちろんすべての企業に合うものではないと思いますが、出勤の頻度や業務内容を調整することで、自社にあった雇用の仕方を創出しやすい雇用の形となることもあります。

障害者雇用に対する社員への理解促進

障害者雇用をはじめるときに大切なのは、障害者自身への配慮とともに、一緒に働く社員たちの理解を深めることです。障害者と接する機会が少ない場合には、どうしても社員は障害者と一緒に働くということを構えて考えてしまいがちです。これは、一般の社員だけでなく、人事部やマネジメント層も含め、多くの社員に当てはまります。

また、障害者雇用は総論賛成、各論反対になりやすい問題ですが、担当部門や担当者だけが頑張るのではなく、組織として取り組むことが大切です。その点、障害者アスリートが入社すると、その理解が加速度的に進みます。

そして、さまざまな困難を乗り越え、挑戦を続けるアスリートの姿を間近で見ることで、社内の雰囲気がよくなったり、モチベーションが高まることも期待できます。

障害者雇用の理解を社内に浸透させる方法については、こちらから
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社内における障害者雇用の理解を深める方法とは

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広報活動

最近では、障害者スポーツへの注目度が高まっています。そのためパラリンピックで活躍した選手はもちろんですが、そうでない選手にも多くの取材や講演依頼、イベント出演などの機会があります。このような機会には、所属企業の名前が取り上げられますので、メディアや媒体を通して会社名を広く知ってもらう機会となるでしょう。

また、会社のホームページ等で、アスリート社員のインタビューや活躍している様子、競技活動との両立について語る場面を見ることによって、その企業に対するイメージや好感度をあげることにつながることもあります。

アスリート社員自身が、ブログやSNSを通して広報活動していることもあります。口コミや個人発信の情報も大きな影響力となる時代ですので、このような取り組みもばかにはできません。

注意:パラリンピック日本代表選手の場合は、パラリンピックの公式スポンサーとの兼ね合いもあるため、広報活動の際には関係機関への確認が必要となります。

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まとめ

障害者アスリートを雇用している企業は、どのようなメリットがあるのか、また、障害者アスリート雇用の雇用体系や待遇について見てきました。

障害者アスリート雇用は、企業にとって障害者雇用率のアップ、障害者雇用に対する社員への理解促進、広報活動等のメリットが考えられます。また、企業側だけでなく、アスリート社員にとっても、競技環境を確保したり、仕事と競技活動の両立を行えるというメリットがあります。

障害者がスポーツを通して社会への参加、参画を実際的なものとするためには、障害者アスリート雇用を通して、能力を発揮したり、自己実現できるように社会がサポートしていくことも大切だと考えます。

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