最近は以前に比べると、大人の発達障害が広く認識されるようになりました。それにともないさまざまな方法で発達障害に関する情報が入手しやすくなっています。しかし、発達障害についての情報を得ても、発達障害の一部だけの情報で勘違いしている人もいます。
もちろん情報を得て、理解することは大切ですし、発達障害の苦手さをフォローすることによって、いろいろできることは増えます。発達障害をサポートするためにはどのようなサポートができるのか、サポートの考え方や具体的な方法について見ていきたいと思います。
発達障害のサポートは一時的なものではない
発達障害の人にはいろいろな苦手さがあります。しかし、この苦手さを周囲のサポートやツールなどを活用することによって、できることは増えたり、苦手さが目立たなくなります。
それでも、努力をすれば何とかなるか、何でもできるようになるかというと、そういうわけではありません。発達障害は、脳機能の発達の偏りから、さまざまな生活の問題が起きるからです。いずれは機能が発達して、定型発達の人と同等になることもあるかもしれませんが、一般的な人の定型発達よりはかなり時間がかかると考えられています。
あることができたりすると、できない苦手な分野に関しても、周りの人たちが一生懸命努力すれば短期間で一般の人と同じようになると期待したり、考えたりする場合も見られますが、実際には簡単ではないことを認識しておく必要があります。サポートする側は、発達障害の人が問題に対処する姿勢を見守りながら、あせらずにサポートしていくことを考えていくことが必要です。
正しいサポートの方法を知る
発達障害は医療機関を受診して、診断が出されます。もし、何か問題を抱えているのであれば、発達障害専門の医療機関を受診して、サポートを受けることが大切です。
難しい状況に直面しているにも関わらず、自助努力で克服しようとすると、問題が長期にわたることになりますし、サポートする側も適切な方法がわかっていないため、かえって発達障害の人が苦手な部分をクローズアップさせたり、トラブルが起こりやすくなってしまいます。
保護者や家族が発達障害者に対して正しいサポートを行なうためには、医療機関の受診に付き添ったり、医療機関や公的機関で実施しているペアレントトレーニングに参加することが多いようです。
ペアレントトレーニング
保護者や家族などを対象にした、発達障害についての理解を深めるための講座です。専門医や臨床心理士などがセッション形式でレクチャーし、発達障害の当事者との接し方やサポートの方法、薬物療法の注意点などを学ぶことができます。
アスペルガーの事例では、頭の切り替えに時間が少しかかるため、本人の切り替えができるまで待つように保護者にアドバイスしたところ、パニックが減り、精神的に安定してきたなどの報告があり、適切なサポートによる症状の軽減などに役立っています。
このようなペアレントトレーニングは、医療機関や発達障害者支援センターなどの公的機関などで実施されています。
診断名だけで判断しない
発達障害は、医療機関でアスペルガーやADHDと診断されても、その発達障害の特性だけでなく、複数の発達障害の特性が混在していることが多くあります。そのためアスペルガーとしての対応だけをしてしまうと、うまくマッチしないことがあります。大きな問題では診断通りのアスペルガーによるものではあったとしても、ある場面ではADHDの特性によって問題が起こることもあるからです。あくまでも発達障害者本人の特性を知り、個別に対応することが大切です。
アスペルガーやADHDには、それぞれの特性に応じた適切な対処の方法があります。事例を見てみましょう。
ADHDの場合
ADHDの人で動作が遅い、不器用という運動機能の問題がある場合には、物事が達成するまでの時間をかけてることが必要です。「慣れれば早くなるから」「こうすれば早くできるだろう」などと、急がされたりすると失敗することが多くなります。
結果的に、自分はやっぱりダメだと自己肯定感を低下させることにもなりかねません。時間をかけて長い目で見ていくことができるでしょう。
アスペルガーの場合
アスペルガーの人も、十分に時間をかけないと失敗することがあります。1つのことに集中してしまうと、新たな情報や指示を出されても頭の切り替えに時間がかかり、すぐに対応することが難しくなるからです。
本人が十分に理解して切り替えができるまで待つことができるでしょう。できないことを強要したり、トレーニングのつもりで無理をさせたりすると、ストレスから精神的に不安定な状態になることがあります。
見守ることもサポートの一部
サポートといわれると、困っていることを全て何から何まで助けることだと考える人がいますが、実際にはそうではありません。努力しようとする本人を見守り、本人の意欲の継続を応援することも大事なサポートの1つです。
確かに発達障害の人には、「できること」「頑張ればできること」「努力してもできないこと」があります。この中でサポートが必要なのは、「頑張ればできること」「努力してもできないこと」です。
「努力してもできないこと」は、周りの人の全面的なサポートや公的な支援が必要です。「頑張ればできること」は、本人の努力によって訓練を続けることによって、取得することができるかもしれません。特性をよく理解し、どの程度までサポートするのかは、本人と相談しながら判断していくことができるでしょう。
気をつけたいのは、こちらが「こうするのがいいだろう」という推測だけでサポートすると、本人が希望していないサポートをし続けてしまうことです。こちらが気を利かせたつもりのことが、余計なおせっかいになることもあるからです。
また、発達障害の人のなかには、言葉で伝えたことと真意がずれていることがあります。発達障害の人の中には言語機能の問題から、自分の考えをうまく言葉にできず、伝えられないことがあります。そのため本人の言葉を鵜呑みにして対応すると、本人が本当に希望していることと異なっていることがあります。
ゆっくりと話しを聞いて、話す真意を確認したり、サポートを受けているときの反応を見て判断することも、時には必要かもしれません。うまく言葉で伝えることが出来ないときには文章などで書いて伝えるという方法をとることもできます。
動画の解説はこちらから
まとめ
発達障害の人を適切にサポートするためには、発達障害を正しく理解することが大切です。専門医の説明やペアレントトレーニングなどで、正確な知識を得ることもできるでしょう。
また、発達障害を知るとともに、診断名だけで特性を判断しないことも大切です。本人の特性を判断するために得意なこと、不得意なこと、何が理解できないのか、価値観や考え方、感覚過敏や不快に感じる刺激についても知ることができるでしょう。
そのためには問題を整理して必要なサポートを本人と一緒に考えることができます。ただし、全てのことをサポートすればよいというわけではありません。努力してもできないことは全面的なサポートが必要かもしれませんし、努力すればできることはトレーニングやサポートしますが、時には見守ることも大切です。本人が希望していないサポートをし続けてしまわないように気をつけましょう。
参考
発達障害(LD:学習障害)の障害者と一緒に働くときに知っておきたいポイントとは?
発達障害(ADHD:注意欠陥・多動性障害)の障害者と一緒に働くときに知っておきたいポイントとは?
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