障害当事者の悩みとして多いのが、「今までに障害者雇用の経験がある職場だと聞いていたのに、障害への配慮がない」ということです。
採用面接などで、合理的配慮について伝えているのに、「面接で伝えた配慮事項が伝わっていない」ということも珍しくありません。このような状況が起こる原因はどうしてなのでしょうか。
理由の原因とともに、コミュニケーションでトラブルを避けるための3つのポイントについてみていきます。
「障害者への配慮がない」が起こる原因
「障害者への配慮がない」が起こる原因の多くは、障害に関する情報が共有されていないということが原因です。個人情報のこともあり、企業側が本人に配慮しているつもりで、人事や直接の上司など、ごく一部の人にしか伝えていないことが多いのですが、これに当事者は戸惑うことがあります。
ある精神障害の方は、臨機応変に対応することに苦手さがあったため、採用面接時に、業務の中で電話対応は難しいと伝えていました。しかし、このことを知っていたのは、面接に立ち会った人事と直属の上司だけでした。
直属の上司が席にいるときには、電話は出ない配慮をしてもらえていたのですが、上司が席を外しているときには、当然、それを知らない周囲の同僚からは電話に出るように言われて、大きなストレスがかかってしまったそうです。
会社が、障害当事者が求めている合理的配慮を把握しているにも関わらず、それを一緒に働く社員が知らないのであれば、配慮を示すことはできません。このような状況を生まないために、どのような対応ができるのか、ポイントを見ていきます。
コミュニケーションでトラブルを避けるためのポイント
その1:障害についての知識、本人の意向を知っておく
まず、一緒に働く同僚が、障害についての知識や、本人の意向を知らないのであれば、配慮を示すことができません。障害者を配属する部署はもちろんですが、できるだけ多くの社員が障害者雇用や、障害の特性について学べる機会を持つようにしてください。障害者雇用の研修などは、無料で受講できるものもありますので、それらを活用することができるでしょう。
また、障害当事者が、自身の障害についてどこまで、誰に伝えることを希望しているのかを確認しておきましょう。これは、会社側が判断するのではなく、本人の意向を聞くことが大切です。
一緒に働く同僚たちに配慮を求めるのであれば、どのような苦手さがあり、その対応をどうしてほしいのかを伝えることによって、周囲が協力しやすくなることを理解してもらう必要があります。
その2:定期的に面談を行い、信頼関係を築くためのコミュニケーションを取る
そして、定期的に面談を行い、仕事内容や職場環境、人間関係等に問題や課題を抱えていないか、悩みや不安がないかなどを確認していきます。障害特性によっては「大丈夫です」と言っていても、大丈夫でないこともありますので、言葉だけでなく、仕事中や仕事後の表情や態度、日報などで確認するとよいでしょう。
また、説明しても、こちらが意図していたように伝わっていないということもあります。こちらが伝えたことが、しっかり本人に伝わっているのかを確認したり、もし、ニュアンスが伝わっていないときにはフォローすることも必要です。
このように日々のコミュニケーションが取れていくと、信頼関係も築きやすくなります。このようにしておくと、悩みなどがあるときに、本人からも相談しやすくなります。
その3:会社の方針や考え方を伝えていく
また、大切なのは、障害者雇用に対する会社の方針や考え方、時には期待していることなども伝えていくことです。
例えば、会社としては、もっとスキルを上げてほしい、給与を上げたいので勤務時間やマネジメントにも携わってほしいと思っているのに、それを伝えずに、仕事のレベルアップの要求ばかりするとどうなるでしょうか。
障害当事者は、仕事に対する負担やストレスを感じ、悩んだり、不安を感じるかもしれません。時には、パワハラだと勘違いしてしまうことがあるかもしれません。会社側が、時として本人によかれと思って配慮していることでも、それが伝わっていないのであれば、それは時には本人にとって大きな負担になることも少なくありません。
本人の仕事や職場環境などの要望を聞くことは大切ですが、それとともに会社の方針や考え方を伝え、お互いの考えを共有することは大切です。どちらかが一方的であると、気を遣っているつもりでも逆に捉えられてしまっていることもありますので、注意が必要です。
動画での解説はこちらから
参考
プロが教える、障がい者雇用に役立つ「無料研修」2選(HRプロ)
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