双極性障害の治療が難しい理由と薬物治療について

双極性障害は、うつ病より治療が難しいと言われています。そのように言われる理由は、双極性障害は、単極性のうつ病よりも治療が難しく、長期化する傾向にあるからです。しかし、家族や周囲の人の協力を得ながら、気長に治療続けていくことによって、よい方向に向かいます。

ここでは、双極性障害の治療が難しい理由と薬物治療について見ていきます。

双極性障害の治療が難しい理由

本人に自覚がない

双極性障害は、気分爽快、元気いっぱい、意欲満々の【躁状態】と、憂うつ、意欲がない、何かをするのにおっくうで仕方がない【うつ状態】という正反対の状態を繰り返す心の病気です。

うつ状態は、本人が辛さを自覚できますが、躁状態は気力が充実し、多弁になり、どんどん活動できてしまうことから、本人には病気という自覚がありません。周囲の人の目には、いろいろな問題行動が明らかであったとしても、むしろ本人は調子が良いと思っているため、なかなか病院を受診しようとしません。

そのため家族や周囲の人が異変に気づいたら、本人に受診をすすめることが大切です。そして、一緒に病気について理解し、うつや躁になりそうな生活習慣になっていないか気を配ります。本人にも自覚を促し、協力体制を整えていくことが必要です。

双極性障害についての症状については、こちらから
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【双極性障害】躁症状とうつ症状の特徴と周囲への影響

薬を飲み続けられない

双極性障害は、薬の効果が現れるまでに2週間以上かかることや、副作用が出やすいことなどから、薬を飲む意味を実感できず、自己判断でやめてしまう人がいます。

診断がつきにくい

多くの人は、うつ状態の時に受診し、躁状態を経験していても、病気の自覚がないために医師に伝えません。そのため双極性障害が見過ごされることがあります。実際には、双極性障害であるのに、うつの治療を行い続けていたということも珍しくありません。

双極性障害の治療方法

薬物と精神治療は治療の基本です。しかし、それだけでは十分ではありません。症状を誘発する生活習慣の改善や日常生活の注意も重要なポイントになります。主な治療方法は次のようなものがあります。

【精神療法】
主に認知療法中心に行います。本人だけでなく家族にも受けてもらうことがあります。

【薬物療法】
気分安定剤を主体に行います。経過を見て、量や内容を変えたり、抗うつ薬を追加します。

【日常生活】
リズムを整えます。主に睡眠きちんと取る生活リズムを設計し、ものの考え方、周囲の対応について考えていきます。

その他、電気や磁気を使った療法もあります。ここでは、薬物療法について見ていくことにします。

薬物療法

単極性のうつ病の場合は、通常1~2年で治療が終わります。しかし、双極性障害は一般に長期化しやすい傾向があります。再発率が高いため、症状が治まっても再発を予防するために薬を飲む必要があるからです。本人は症状が治まるとすぐに薬をやめたり、職場復帰をしたいと考えがちですが、あせらず時間をかけることが再発予防に大切です。

うつという症状でも、双極性と単極性では治療方法や薬が違います。双極性のうつ状態に安易に抗うつ薬を使うと、さらに症状を難しくしてしまうことがあります。

躁とうつは正反対の症状なので、薬も正反対の作用のものを用いると思われがちです。しかし、これは気分が大きく上下に乱れた状態です。薬で安定させれば、躁にもうつにも効くことになります。これを気分安定薬といいます。気分安定薬は、現在の双極性障害の治療と再発予防で効果が認められている薬です。

単極性うつ病で用いられている抗うつ薬は、基本的に用いられないことが多いようです。抗うつ薬によって躁転を起こす可能性があるためです。ただし、場合によっては、気分安定薬と抗うつ薬を併用することがあります。

症状が落ち着いているときには、薬をやめてしまう人が多くいます。しかし、双極性は単極性うつ病よりも再発率が高いため、効果のあった気分安定薬をそのまま継続することが再発予防につながります。一般的には、症状が落ち着いてから1年ぐらいは薬を飲み続けることが多いようです。

薬をやめる時も、血液中の濃度を確認しながら、量を少しずつ減らします。急激にやめると再発のおそれがあるからです。主な症状状態と薬の種類は、以下になります。

予防 = 気分安定薬、一部の抗精神病
躁 = 気分安定薬、抗精神病
うつ = 気分安定薬 、一部の抗精神病、抗うつ薬
不眠 = 睡眠薬、一部の抗精神病、気分安定薬

 

薬物療法は、双極性障害治療の中心となるものであり、その作用、副作用についてよく知っておく必要があります。これらの薬は、気分の波を小さくし、安定化するのを助けてくれます。双極性障害の躁状態、うつ状態、安定期の時期にかかわらず、基本薬として続けて服用します。

気分安定薬

気分安定薬には、「リチウム」、「バルプロ酸」、「カルバマゼピン」、「ラモトリギン」があります。これらの薬の特徴や副作用を見ていきましょう。

リチウム

リチウム(リーマス)は、塩と同じようなもの(ミネラル)で、人のからだに、元々少量ですが含まれています。リチウムが躁うつ病の特効薬であることが1949年に発見され、たくさんの人がこの薬によって治療してきました。躁状態、うつ状態を改善する効果だけでなく、予防する効果もあります。

この薬を飲むときに気をつけることは、飲む量の調節です。たくさん飲み過ぎると中毒になりますが、少ないと効き目がありません。そのため、ときどき血液検査をして、リチウムの濃度がちょうどいいことを確かめる必要があります。

治療に必要な量を決定するためには、一日の間のリチウムの最低血中濃度を確認することが重要です。リチウムを服用して数時間後に採血検査をすると最高血中濃度になってしまう恐れがあるからです。いつ服薬したらよいか、主治医に確認することが大切です。

【リチウムの副作用】
副作用としては、手の震え、のどの渇きがあります。のどが渇くのは、リチウムの影響で尿がたくさん出るためです。のどが渇いた時には、水分を十分に取り、リチウムの濃度が上がりすぎるのを防ぎます。リチウムの血清濃度が上がりすぎると、下痢をする、吐く、ひどくふらつくなどの中毒症状があらわれます。

また、飲んでいるリチウムの量が変わらなくても、腎臓病などの体の病気の悪化、抗炎症薬など他の薬を一緒に飲むことなどによって、リチウムの血中濃度が上がり、中毒症状が出現することがあります。このような症状が出たときは、すぐ主治医に相談して下さい。

ラモトリギン

ラモトリギン(ラミクタール)は、抗てんかん薬として開発されましたが、躁状態・うつ状態を予防する効果があることが発見され、欧米では10年ほど前から双極性障害の治療に使われてきました。

躁状態・うつ状態を予防する効果があり、特にうつ状態を予防する効果が強いことが特徴です。また、うつ状態を改善する効果もある可能性が示されています。

【ラモトリギンの副作用】
副作用としては、頭痛、眠気、めまい、吐き気、発疹などがあります。まれにですが、皮膚粘膜眼症候群(スチーブン・ジョンソン症候群)や中毒性表皮壊死症(ライエル症候群)などの重篤な皮膚障害が現れることがあります。

パルプロ酸

バルプロ酸(デパケン)は、抗けいれん(てんかん)薬として使われていましたが、躁・うつを予防する効果や躁状態に対する効果があることが発見されました。現在では、バルプロ酸はリチウムとともに、双極性障害の基本的な気分安定薬として多く使われています。

副作用としては、まれですが、体質によっては肝臓に障害が起こる場合があります。そのため、この薬を飲んでいるときも、ときどき血液検査をすることが大切です。

カルバマゼピン

カルバマゼピン(テグレトール)も、抗てんかん薬として使われていましたが、躁・うつを予防する効果や躁状態に対する効果があることが日本で発見されました。体質によっては、全身に発疹がでて、多くの臓器の機能が障害される強い副作用(スティーブンス・ジョンソン症候群)が現れたり、白血球が減るなどの副作用があって、少々使いにくいため、使用頻度がやや減っていますが、効果が期待できる薬です。

リチウムやバルプロ酸だけでコントロールできない場合は、少量からのみ始め、血液検査をしながら服用することで、こうした副作用を最小限にしながらこの薬を利用することができます。

抗精神病薬

オランザピン(ジプレキサ)、アリピプラゾール(エビリファイ)、クエチアピン(セロクエル)、リスペリドン(リスパダール)などがあります。これらは躁状態のいらいらをしずめ、気持ちをおだやかにする作用があります。また、眠る前に飲むことによって、睡眠を助ける働きがあります。

オランザピン、クエチアピン、アリピプラゾールは再発予防効果、オランザピン、クエチアピンは抗うつ効果があるとの報告もあります。日本では、オランザピン(躁状態、うつ状態)とアリプラゾール(躁状態)は、双極性障害が適応症として認められています。その他の薬に関しては、日本ではまだ双極性障害が適応症として認められていません。

オランザピンやクエチアピンは太ってしまうという副作用が生じることがあります。糖尿病と診断された方は服用することができませんし、糖尿病になりやすい体質を持つ方の場合、これらの薬の服用が糖尿病の発症のきっかけとなる場合もあります。

特に躁状態のときは、これらの薬を多めにのまなければならず、眠気がでるときもありますが、躁状態がおさまってくれば量を加減して、眠気を少なくすることができます。まれに、手足がこわばる、舌がもつれる、じっとしていられず手足を動かさないと気がすまない(アカシジアと呼ばれます)といった副作用がでることもありますが、これらは副作用を治す薬(ビペリデン(アキネトン)など)を飲むと治ります。

抗うつ薬

抗うつ薬を飲み続けているうちに、逆に躁状態になってしまったり、躁うつを頻回に繰り返すようになってしまうことがあります。そのため原則として、双極性障害の方は気分安定薬や抗精神病薬なしに抗うつ薬だけを服用すべきではないとされています。

従来の抗うつ薬と比べ、効き目は同じでも副作用が少ない新しい抗うつ薬が使われるようになって来ました。新しい抗うつ薬は、効いてくるのに1~2週間かかります。薬によっては、吐き気がある人もいますが、次第に副作用は治まってきます。また、落ち着かなくなったり、攻撃的になったり、疑い深くなることがあります。これらの薬を急にやめると副作用(知覚障害、焦燥感など)がでる場合があるので、やめるときには主治医によく相談してください。

従来の、副作用の強い抗うつ薬(三環系抗うつ薬)は、は、目がかすむ、のどが渇く、立ちくらみがする、眠気などの副作用があります。24歳以下の方が抗うつ薬を使う場合は、そのメリット・デメリットを充分に検討する必要があるとされています。使用のメリット・デメリットについて、主治医と相談するようにします。

睡眠薬

不眠に対しては、いろいろな睡眠薬が一時的に使われます。寝つきが悪い、朝早く目がさめるなど症状に合わせて、それに合った薬を使います。急にやめると、眠れなくなることが多いため、やめるときはすこしずつやめなければなりません。

薬の服用に関しては、主治医に相談せずに勝手に量を増やしたり、お酒と一緒に飲むと、興奮したり、自分の行動が抑えられないといった思わぬ副作用が出てとても危険です。自己判断をせずに主治医に相談することが大切です。

まとめ

双極性障害の治療が難しい理由と薬物治療について見てきました。

治療が難しい理由として、双極性障害は、気分爽快、元気いっぱい、意欲満々の【躁状態】と、憂うつ、意欲がない、何かをするのにおっくうで仕方がない【うつ状態】という正反対の状態を繰り返すため、本人の自覚がないこと、薬を飲み続けられない、診断がつきにくいことがあげられます。

薬物治療としては、予防、躁、うつ、不眠と状態によって変わるものもありますし、共通するものもあります。中には、効果を感じるまでに時間が係るものや、副作用があるものもありますが、自己判断せずに主治医に相談するようにすることが大切です。

参考資料:双極性障害(躁うつ病)とつきあうために

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