ビジネスのチカラで福祉を変えていく~就労率100%のB型事業所の実践~

ビジネスのチカラで福祉を変えていく その1~工賃10万円、就労率100%のB型事業所の実践~

2021年06月8日 | 企業の障害者雇用

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障害者福祉の就労系障害福祉サービスには、就労移行支援事業の他に、就労継続支援A型事業、就労継続支援B型事業、就労定着支援事業があります。就労継続支援B型は、一般的に雇用されることや、雇用契約に基づく就労が困難な障害者が利用するところという認識があります。

しかし、千葉県富津市にあるAlon Alon Orchid Garden(アロンアロンオーキッドガーデン)では、就労継続支援B型作業所ですが、工賃最高10万円(令和元年 平均工賃16,369円、出典:令和元年度工賃(賃金)の実績について(厚生労働省))、就職率100%(平成23年 就職率1.6%、出典:社会福祉施設等調査)という驚異的な結果を出しています。

どうしてこのような圧倒的な結果を出せるのか、実際にB型作業所を運営していく上での視点や、障害者の方がどのように働いているのかについて、NPO法人AlonAlon理事長 那部智史様にお話をお聞きしました。

インタビューは、全部で5回の記事になっており、今回はその1回目です。1回目では、AlonAlonの事業内容、障害福祉制度の中のB型事業所のビジネスモデルについて、お聞きしていきます。

福祉をビジネスのチカラで変えていく必要があると感じた

Q:AlonAlonさんの事業内容について、お聞かせください。

AlonAlonでは、就労継続支援B型事業所(以下、B型事業所)として胡蝶蘭の栽培を行っています。多くのB型事業所は設備投資をしない中、私たちはあえて何千万も投資してB型事業所の作業場を作りました。これによってB型を作って、翌月には工賃が10万円を実現させています。

私が障害福祉制度について調べた当時(2009年頃)に、B型事業所は全国に1万1千くらいあり、そこには30万人くらいの利用者がいました。その当時の月額工賃は、1万5千円でした(令和元年の平均工賃は、16,369円)。働く意思を持っていて、なおかつ毎日働いても1万5千円、しかも平均値ということは、1,000円の人も5,000円の人もいるということですよね。これはひどいなと思いましたし、何かおかしいなって感じました。

また、国の予算のつけ方や制度設計もおかしいなと思い、こちらも調べてみました。30万人の障害者が1万5千円の工賃をもらって12ヶ月働くと、日本全体の障害者30万人の工賃がでます。

30万人 × 1万5千円 × 12ヶ月 = 540億円

しかし、これにかかる国家予算がどれくらい使われているかというと、年間約4千億円使われているんです。私はビジネスをやっている立場からしたら、これは税金の無駄遣いだと思いました。これが生活介護などの施設維持だったら理解できます。それは、彼らは仕事ができないとご本人でも思っているし、世間もそのように思っている。そういう働く意思のない人の生活介護であれば、4千億使うことに異議はありません。

しかし、就労支援継続B型事業所というのは、福祉的就労ではあるものの、働く意思を持っている人たちが通っているところです。そこで、4千億円使って、540億円の工賃しか出せないんだったらおかしい。また、当時の就労率は1.5%でした。どうして働く意思がある本人が通っているのに、そんなに就労率が低いのかと思って調べたところ、B型事業所のビジネスモデルに行き着いたんです。B型事業所のビジネスモデルは、利用者の数に応じて報酬が決まります。今は、少し見直しもかけられてきて、工賃が少し高いところには、少し厚めの報酬が出るようになっていますが、基本的には利用者の数に応じて報酬が決まるものです。

B型事業所のビジネスモデルに疑問を感じる

はじめは作業する場所に投資しないということが問題じゃないかなと思ったんですが、事業者にとって、B型事業所のビジネスモデルを考えると設備投資はいわゆる机1つでもよくなってしまう。しかし、健常者でも、何の設備投資もしていないような職場で働けと言われたら、働きようがないですよね。テーブル1つ与えられて何かしろと言われても、内職くらいしかできません。これは、障害者の人たちも一緒じゃないって思ったんです。

一方で、事業者にとっては、「どうして設備に投資しなければならないのか」って考え始めます。設備投資してもしなくても変わらないならば、当然ですよね。また、工賃が上がっても自分たちのフィーは増えないので、事業者にとってのインセンティブもモチベーションも働かない。そんな風に思わせる障害者福祉行政はおかしいなと思いました。AlonAlonでは、そんな制度的な矛盾をビジネスのチカラで超えてくことができることを示しています。

また、もう一つは後でも触れますが、胡蝶蘭をよく使う企業さんに、B型作業所の利用者を就職させるというスキームを提供しています。これで、AlonAlonは今月(2021年5月時点)就労率が100%になりました。就労率100とはどういうことかというと、昨年入ってきた利用者と今年就職した利用者の数が同数ということです。一般的な就労継続継続B型の平均就労率は1.5%程度ですから、私たちが100%というのはおそらく全国トップだと思います。

このような活動を通して、社会課題をビジネスの力で解決することをやっています。社会課題、いわゆる厚生労働省が作った制度設計を超えるような結果をだしていく、それは障害者就労の場で工賃をあげること、企業への就労へとつながる道筋をつくっています。

AlonAlonでは、一般的に難しいと思われていること、例えばB型作業所の子たちは就労できないと決めて制度設計していることを「本当にそうなんですか」と問いかけて、いや実はもっと工夫をすれば、彼らが社会的、経済的な自立を果たしていくことは可能だということを示していきたいと思っています。また、B型事業所の設備投資をする、障害者に合った仕事を提供することによって、もっといい障害者のための障害者福祉行政ができるんじゃないかなと思っていますし、それをビジネスの力でできるということを証明していくことも役割だと感じています。

社会課題が、障害者の存在になっていないか?

A:なぜ、AlonAlonさんを立ち上げようと思われたのですか。

Q:もともと私は29歳のときにベンチャー企業を立ち上げ、社員100人くらい、400億円規模の企業に成長させ、そのあと傘下に入っていたホールディングカンパニーを上場させたあと、MBO(マネージメントバイアウト)を行い、数年後に経営していた会社5社を売却しました。そして、その後、今までの経験から、社会課題をビジネスの力で解決したいなと思ったんですね。世の中には社会課題っていっぱいあるじゃないですか。

A:たくさんある社会課題の中から、福祉を選ばれたのはなぜですか。

実は、私の息子が重度の知的障害をもって生まれてきたんです。彼はB型事業所に行ったり、生活介護に行ったりしていました。私自身は福祉の業界にタッチしたことはほとんどなかったんですけれど、自分の息子の視点から世の中を見てみると、これはおそらく生きづらいだろうなと思ったんですね。また、いろんなことが、自分の息子はできるチャンスが失われているなとも感じました。そんなことを思っている中で、日本の福祉というのは社会課題だと感じました。

また、日本の障害者福祉行政というのは、語弊があるかもしれないけれど、障害者の存在を社会課題と捉えているのではないかとも感じています。障害者の存在を社会課題として捉えるのであれば、その障害者の方々のいわゆるハッピーよりも、障害者がいかに社会に順応していくのか、生きていくのかを考えているようにも思えました。

B型事業所の利用者の中には、働ける人がいる

例えば、現在の障害者は大きく2つに分けられています。それは、就職できる人と就職できない人という分断です。実際にB型を運営していてわかったのは、実は就職できない人といわれている人の中には、就職できる人がいるんです。しかし、今の障害福祉制度では、これが分断されているために、法定雇用率などから一部の人は就職できていますが、就職が難しい人に対しては、就職に対する扉が閉じられている、いわゆる蓋をしてしまっているように感じます。ここが、私が一番問題視しているところです。

障害者雇用が進んでいるとは言え、世の中で障害者就労というのは、上澄み部分だけの人です。ただ、私は福祉に関わっている人間なので、できる限り働く意志のある人だったら、その人たちに働くチャンスを与えるべきだと考えています。今は、就労できていない、就職からは遠いと思う場所にいる人たちの中にも、実は「働きたいんだ」「経済的自立を果たしたいんだ」という思いを強く持っている方はいます。そこを解決していくべき課題だと考えます。

胡蝶蘭ビジネスの発想の源泉は、ベンチャー企業の経験から

Q:胡蝶蘭で障害者が働ける場をつくるというビジネスアイデアは、どのようなきっかけから生まれたのでしょうか。

A:先ほど、ベンチャー起業をしていたとお話しましたが、はじめは小さな事務所を借りて、私の他に従業員は2人いて3人でスタートしました。そして、10年後には100名を超える事業体になり子会社ができました。社員が3人から10人になる、10人が30人になり、30人が100人になると、事務所を移転していく必要があります。また、その中で、子会社ができました、新任の取締役が就任しました、といろんなステージやイベントがあるわけですよ。そのときに取引先から山のように胡蝶蘭が送られてくるんです。

当時、私には秘書がいたのですが、秘書が「A社さんは3万円の胡蝶蘭ですね。B社さんは5万円です。C社さんはおそらくディスカウントショップとかで買ってきたんでしょうね、おそらく1万円です。」というような報告が上がってくるわけです。そうするとお祝いをいただいた企業に対しては、同じようなお返しをしていきます。また、ビジネスの世界では胡蝶蘭をディスカウントしたら恥ずかしいという文化があって、そういう権威性が効いているんです。一般的な世の中は値下げとの戦いなのに、値崩れしない商品というのはすばらしいなと思いました。

そんな中で、胡蝶蘭のマーケットってどれくらいあるのかなって調べたんですよ。胡蝶蘭のマーケットは380億円あります。その分の胡蝶蘭が飛び交っているわけですね。調べた当時は福祉をやりたいなんて全く思っていませんでしたが、息子たちのような知的障害の人たちの仕事にしたらステキだなって思ったんですね。これが発端です。

Q:そうすると、ビジネスでよく使われるもの、そしてマーケットの大きさから、これだったら良いビジネスになるんじゃないかなと思われたんですね。

A:あと、値崩れしないというところも大事です。実は、ビジネスで使われているものほど、ディスカウントするです。なぜなら物量をたくさん発注するようになると、当然価格のネゴが入ります。

例えば、うちが胡蝶蘭を100鉢注文しているとすると、当然花屋に対しては、100鉢も注文しているんだから、値下げ要求は必ず入るんですよ。ビジネスの世界では、バイイングパワーが働くんですよね。でも、いわゆる全体のマーケットのうちの上澄みの部分がいわゆる定価で買う層があります。ここは一部真空状態のようなところで、価格競争が発生しないんです。AlonAlonは、そこにターゲットを絞っています。もちろん値下げする層もありますが、そこは対象にしていません。胡蝶蘭もとりあえず送るだけで満足する会社と、いわゆる定価で購入する会社との違いがあるんです。

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参考

ビジネスのチカラで福祉を変えていく その2~工賃10万円、就労率100%のB型事業所の実践~

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