仕事をしていると、話を理解できていないと感じる人と出会うことがあります。そして、その割合や頻度は、障害者雇用の現場にいると、かなりの確率で高くなります。
そのような場面にあった時に、どのように対応することができるのか、考えていきたいと思います。
資格やスキルがあっても、理解力があるとは限らない
障害者雇用に関わっていると、一般的な話をしているときには、コミュニケーションが成立しているように思えるものの、一緒に仕事をしていると、「あれ、話が伝わっていない・・・」と感じることがあります。
また、一般的な社会常識として捉えられていることでも、教えるということをしないと、それがわからなかったりすることもあります。
例えば、就職率が100%のような特別支援学校の学生が、就職して、はじめての夏を迎える時に、こんなことが起こりました。
その新入社員は、夏休みを学校と同じくらいの長さだと思っていたようで、(その会社は、自分で休暇を夏の間に数日感選べることのできるところでした。)数日間の夏季休暇の取得のお知らせを受けた時に驚き、退職することを決めてしまったのです。
その考えや行動に驚いた採用した会社の担当者の方から、連絡を受けました。タイミングが合わずに、その退職してしまった新入社員と直接話をすることができなかったので、退職してしまった理由は、夏期休暇以外のこともあったのかもしれませんが、担当者の方がとにかく驚いていたことがとても印象に残っています。
障害者雇用で働いている知的障害や、発達障害の中には、資格やスキルをたくさんもっていたり、中には運転免許を持っていることもあります。しかし、そのような資格やスキルがあったとしても、話の理解力や場に応じた対応ができるとは、限りません。
「他のコトができているので、これもわかるよね」と、こちらが判断するのではなく、ちょっと話が伝わっていないのでは・・・と感じたのであれば、それに対応することが大切です。
コミュニケーションが通らないときには、配慮を示す
このような傾向が見られるのは、発達障害や知的障害のコミュニケーションが一見得意そうに見える人にも見られます。
例えば、発達障害の場合、特に慣れていない人と仕事をするときに、このようなことが起こりやすいことがあります。人によって、言葉の定義や意味するものが、経歴やバックグラウンドによって違う時に、それを感じることがあるそうです。
でも、このようなことは、障害の有無に関わらず、業種などが違うと、使う言葉の意味が若干異なることもあり、よくあることです。障害者の場合は、それがもう少しわかりやすいような形で顕在化することが多いようです。
もし、話の内容がつかめていないようであれば、周囲が配慮することができるでしょう。また、本人がどのようにしてほしいと伝えられることができそうであれば、それを待つのも1つの手です。
障害別のコミュニケーションの配慮とは
では、具体的にどのようなコミュニケーションの配慮ができるのか、知的障害、発達障害の特徴から見ていきたいと思います。
知的障害の特徴と配慮
知的障害のある方は、コミュニケーションに、次のような特徴があります。
・複雑な話や抽象的な概念は理解しにくい
・人にたずねたり、自分の意見をいうのが苦手な方もいる
・漢字の読み書きや計算が苦手な人もいる
・ひとつの行動に執着したり、同じ質問を繰り返す方もいる
では、どのようにコミニュケーションをするときに、配慮できるでしょうか。
短い文章で「ゆっくり」「ていねいに」「くり返し」説明する
まず、短い文章で「ゆっくり」「ていねいに」「くり返し」説明することができます。これは、一度にたくさんのことを言われると混乱しやすくなるからです。
本人が、内容を理解しているかを確認しながら対応していくとよいでしょう。
具体的に分かりやすく伝える
マニュアルや資料には、抽象的な言葉は避け、絵や図を使って具体的に分かりやすく説明します。
目安も数字などを使ったり、時間を明確に指定するなどの工夫をすると、判断に迷うことがなくなります。
落ち着いて、穏やかに話す
慌ただしい雰囲気や、厳しい口調などで、緊張させてしまうことがあります。落ち着いた、穏やかな口調で話すことによって、落ち着いた状況でコミュニケーションを取りやすくなります。
発達障害特徴と配慮
発達障害のある方は、コミュニケーションに、次のような特徴があります。
・相手の言ったことを繰り返す時は、相手の言っていることが理解できていないことが多い
・遠回しの言い方や曖昧な表現は理解しにくい
・相手の表情・態度やその場の雰囲気を読み取ることが苦手なことが多い
・年齢相応の社会性が身についていないことがある
・関心あることばかり一方的に話す
・全般的な学習能力には問題はないものの、読み・書き・計算など、特定の学習が極端に苦手
・順序だてて話すことが苦手
発達障害のコミニュケーションも、基本的には、知的障害のところでお伝えしたように、短い文章で「ゆっくり」「ていねいに」「くり返し」説明する、抽象的な表現は用いず、出来るだけ具体的に説明することができるでしょう。
また、読む、書くなどの特定の能力が極端に苦手なことも多いので、どのような情報入手の方法がわかりやすいのかを確認して、視覚から入力するのが得意なのであればメモなどで伝えることや、聴覚から入力するのが得意なのであれば、スマホなどで録音して伝えるなどの工夫もできるでしょう。
まとめ
職場で一緒に仕事をしている中で、話を理解できていないと感じた場合に、どのように対応することができるのかを考えてきました。
最近は、一見しただけで障害者とはわからなかったり、一般的なコミュニケーションは問題なくできる人も多くいます。また、資格やスキルがあったり、高学歴の人もいますが、見た目やそれらの経歴で判断するのではなく、ちょっと伝わっていないと感じたのであれば、その人の特性を見極めつつ、配慮することができるでしょう。
伝わっていないとイライラしても、仕事は進みません。それよりも、ちょっとした配慮をこちらからすることで、仕事の問題が起こる可能性をグッと減らすことができますし、お互いが気持ちよく仕事しやすくなります。
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