障害者雇用をしていると、社内でどのように対応したらよいのかと悩む場面が出てくることが少なくありません。特に、企業では合理的配慮が求められているものの、どこまでが合理的配慮なのか、どこからがわがままなのかを判断するのが難しいという声を聞くことがあります。
今回は、具体的なトラブルの例から考えてみたいと思います。
障害者の気になるところ、注意しても良い?
会社で気になることがあるものの、注意してよいのか、迷っているというケースです。
この会社では、精神障害者の方を雇用しています。働いていない時期が長かったので、少し心配もありましたが、本人が仕事内容や勤務時間に「大丈夫です」と自信をもっていたことや、就労支援機関のスタッフの後押しもあり、採用を決めました。
しかし、実際に雇用が始まると、遅刻や欠勤が目立つことや、生活態度の乱れが気になることがありました。また、本人から採用時に示してほしい合理的配慮として、「強く言われると萎縮してしまうことがあるので、やさしく接してほしい」と言われていたこともあり、注意して良いものか、またどのように伝えるとよいのかを迷っているとのことでした。
このような状況は、周囲の社員のほうが気を遣ってしまったり、予定している仕事内容が進まなかったりして、ストレスがたまってしまいました。このような時には、どのように対応するとよいのでしょうか。
合理的配慮の考え方の基本とは
まず、企業には、雇用する障害者に合理的配慮を配慮する義務がありますが、申し出のあったこと全てを必ずしもその通りにしなければならないということではないということを、企業側が理解しておきましょう。雇用して業務を遂行する時に、あきらかに支障があるような内容を障害者から申し出があった場合には、会社や組織としてできることと、できないことを示しておくと良いでしょう。すぐに回答できない場合には、社内で検討してから回答することもできます。
また、会社で行うのは「雇用」です。福祉機関や学校と違い、職業訓練ではありません。仕事をして間違っていたり、求められることが達成できていないのであれば、当然、注意したり、指摘をする必要があるでしょう。もちろん教え方や伝え方は、障害特性などに配慮してわかりやすく提示したり、何回も伝えたりすることは求められることがありますが、仕事として働いたことに対する対価を払うという雇用というスタンスをブレないようにすることは大事です。
仕事が思うようにこなせない場合には、企業側が求めている仕事内容と障害当事者のスキルや実力がミスマッチを起こしていたことも考えられます。企業側では、この時間内に、これくらいの業務量をしてほしいと思って採用しているのに、求めているものがこなせていないということが見られることもあります。このようになる前に、できるだけ採用前の実習をおこない、働く上での基本的なスキルや能力があるのか、求めている業務をこなせるのかを見ておくことができます。
障害者雇用では、仕事のスキル資格、今までの経歴だけでなく、もっと働くために基本的なことを確認することが必要です。例えば、毎日体調を崩さず通勤できること、薬を医療機関に指示された通りにしっかり服薬できることなどです。こうした「就労するために必要なこと」は『職業準備性』と表現され、働くことについての理解・生活習慣・作業遂行能力や対人関係のスキルなど基礎的な能力のことを指します。これは、職種、障害の有無を問わず、働く上で必要とされます。これらの点を実習で見極めることが必要です。
ただし、実習では、限定された期間になります。また、実習生は、就職したいと思って来ている人たちなので、ちょっと厳しいと思っても頑張って実習期間をクリアしてしまうこともあります。しかし、就職すると、同じことを3ヶ月先も、半年後も、1年後も続けていくことが求められます。
今の仕事のペースが、同じように3ヶ月先も、半年後も、1年後も続けられそうかを確認するとよいでしょう。また、実習後には、トライアル雇用などを活用することもおすすめします。
動画での解説はこちらから
まとめ
会社で行うのは「雇用」です。求められることが達成できていないのであれば、当然、注意したり、指摘をする必要があります。もちろん教え方や伝え方は、障害特性などに配慮してわかりやすく提示したり、何回も伝えたりすることは求められることがありますが、仕事として働いたことに対する対価を払うというスタンスをブレないようにしておくとよいでしょう。
また、企業には合理的配慮を示す義務がありますが、申し出のあったこと全てを必ずしもその通りにしなければならないものではないことを、企業側が理解しておきましょう。雇用して業務を遂行する時に、あきらかに支障があるような内容を障害者から申し出があった場合には、会社や組織としてできることと、できないことを示しておきます。
採用のミスマッチをなくすには、実習やトライアル雇用などを活用することができます。採用前の実習をおこない、働く上での基本的なスキルや能力があるのか、求めている業務をこなせるのかを確認することができます。
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