重度身体障害者が働くしくみづくりへの挑戦~クオールアシストの取り組み~

重度身体障害者が働くしくみづくりへの挑戦~クオールアシストの取り組み~

2019年10月19日 | 企業の障害者雇用

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障害者雇用において、障害者が自力で通勤できることが、一般的に採用条件となることが多くあります。そのため重度身体障害者で、自力での通勤が難しい場合には働くことを諦めざるを得ない状況が今までは多くみられていました。

しかし、最近ではテレワークという働き方の認知度が高まり、在宅雇用として重度身体障害者や難病の障害者を雇用する企業も出てきました。通勤や移動が困難だったり、リハビリ・介護・通院などの理由から今まで働けなかった人もテレワークによって在宅雇用されるケースが増えています。

今回は、在宅雇用を進めているクオールアシストさんのお話をお聞きしてきましたので、レポートしたいと思います。クオールアシストで在宅雇用するために必要と考えておられること、また、早くから企業で働くとはどのようなことなのかを生徒に理解してもらうために取り組んでいる遠隔授業についてお伝えしていきたいと思います。

クオールアシスト株式会社とは

クオールアシスト株式会社は、保険調剤薬局の全国チェーンであるクオール株式会社の特例子会社として、2009年に設立されました。クオールアシストでは設立当初から、在宅雇用を積極的に推進してきたそうです。

一般に障害者雇用は、難しいもの、特別なものと思われていることが多く、在宅雇用は、さらにハードルが上がるようにも思いますが、医療に関わる仕事柄ということもあり、特にハードルは感じなかったそうです。代表取締役社長の青木さんによると、「親会社ではそもそも『在宅医療』の用語になじみがあるため『在宅雇用』についても違和感は少なく、医療と支援さえ適切に行われれば雇用はそれほど困難ではない」と確信されていたそうです。

また、障害が重度であっても、難病が進行性であっても「働けないから働けるようにするためにどうやればいいのか」を考え、工夫をするようにされてきたそうです。例えば、ある脳性麻痺の社員が入力のスピードが上がらず、ミスが多いことがありました。そのときに、それを能力の問題としてしまうのではなく、「物理的な負担があるのではないか」と考えて、モニターの角度やキーボードの位置などをOT(作業療法士)と相談しながら、徹底的に社員に合ったものを追求してきました。結果的に、入力スピードも上がり、本人も自信を持つことができたそうです。

在宅雇用で大切なこと

自己管理能力

在宅雇用をするにあたっては、時間的、物理的な配慮はおこなうものの、勤務時間やクオリティへの要求は一般社員の方と同じことを要求しています。仕事をしている中で、自ら「違和感」を感じ、その不便さをどのようにして解決していくのかを追求することが求められ、自分の頭で考えることの大切さが強調されていました。

在宅雇用で必要なことは【自己管理】です。特に自己管理、自己判断、自己完結できることを大事にされているそうです。

自己管理では、自宅で仕事をするので、セルフコントロールができないと難しいだろうというのは、感覚的にわかります。しかし、この自己管理には、実際に自宅で仕事をするため自分の担当する仕事や役割を果たすことに加えて、健康管理や医療措置も含めた自己管理が必要になってきます。特に健康面に関しては、重度の障害者の社員が多いため、直接、命に関わってくることもあるからです。

働き方に関しては、フルフレックス制度を導入していて、生活が土台となって仕事があるという考え方のもとに、通院や生活支援介助が優先しています。社員の状況によっては入院が必要となってくることも珍しいことではないので、長期入院に対する備えをしつつも、経済的負担が軽減できるようにフルタイムで働けるような勤務体制がとられています。

このように基本は自己管理を行い、会社では個々の特徴を把握しながらフォローをしています。例えば、気候の変化があると体調不良の人が多くなるので、その辺の声がけや、車いす利用者には褥瘡(じょくそう)対策の指導、体調不良者や入院などの状況を考慮しつつ、常に業務引継ぎができる体制を組んだりするそうです。

そのもとになるのは、やはりどのような状況かをお互いに理解していることが必要なので、報告、連絡がされていること、自己管理が重要なものになります。会社としては、進行性疾患などについては都度状況を把握したり、褥瘡にならないように体調の変化を把握して、絶対に無理をさせないように、時には会社からストップをかけることもあるそうです。

コミュニケーション

在宅勤務で顔が見えない分、コミュニケーションを文字で伝えることや、相手の反応を察することも必要になってきます。クオールアシストでは、親会社や関係会社だけではなく、それ以外にも外部の顧客もいますが、それらの対応も個々の社員に対応を任せられています。常に誰かの業務のサポートをするのではなく、1対1でコミュニケーションをとり、仕事を遂行していくことが社員の方の自信や誇りにもつながっているようにお話を聞いて感じました。

また、会社と在宅社員との信頼関係構築には本人との関係も必要ですが、家族と支援機関、支援者との関係も大切です。いつもすぐに会社が駆けつけて対応できるわけではないからです。事前に面接、入社前説明を行い、障害状況、身体稼働域、体調管理、在宅ケアなどの就労に関する条件設定はこまめに行っています。また、不安があるときには気軽に相談できるような体制をとっています。

クオールアシストでは、物理的には全国で働く社員がいて離れているものの、このように入社前から支援者を含めた協力体制を築くとともに、コミュニケーションツールとしてメール、電話、Web会議システムなどを活用することにより、コミュニケーションは円滑に図られています。

また、文章と会話でのコミュニケーションを行うことによって、自然とコミュニケーション力がアップしており、お互いの相手への気遣いによって食い違いは防げると感じているそうです。 ちなみに映像は意図的に使用しないようにしているそうです。プライバシーを保護するとともに、余計な気遣いから生じるストレスを避けるためです。

活用しているコミュニケーションツール

コミュニケーションツールとして、【ワークウェルコミュニケータ(WWC)】を活用しています。

【ワークウェルコミュニケータ(WWC)】は、OKIワークウェル(沖電気工業株式会社特例子会社)が開発したコミュニケーションツールです。OKIワークウェルも重度の身体障害者を雇用していることで有名な特例子会社の1つです。

この【ワークウェルコミュニケータ(WWC)】では、バーチャルな会議室があり、複数のプロジェクトが同時に打合せできます。接続しているメンバー全員の名前が表示され、現在どの部屋にいるかのかがひと目でわかるようになっています。

また、メッセージ送信が可能であったり、発声のできない社員がいても対応できるようにワークウェルコミュニケータで応答するための音声補助ツールなどの機能もあります。

ワークウェルコミュニケータについての詳細はこちらから

採用と人材育成

採用は、地域のハローワークや障害者就業・生活支援センターと連携しながら行なっています。そして、実際に職場となる自宅に行って面接し、障害状況や仕事環境などを確認していきます。

面接で重視していることは、本人がイメージ力や準備能力があるかどうかということです。なぜ、このようなスキルを求めているかというと、これらができないことによって、些細なことが大きなことにつながってしまうからだそうです。これは、仕事にも健康管理にも関係していく点だと思いました。

また、業務ができるまでには、2ヶ月間ワンツーマンで教えるそうですが、それ以降は独り立ちしていくことになります。業務は、グループごとに運営されており、リーダーを通して情報管理や受注管理、仕事の割り振り、顧客との打合せを行ない、仕事を進めます。このときには、メール、電話、Webなどの通信手段を活用しながら業務を進める必要があるため、コミュニケーションに関する高いスキルが求められています。

特別支援学校での職場訓練を実施

クオールアシストは、在宅雇用で、重度の障害者が働けるような仕組みが構築されています。しかし、特別支援学校の生徒をみていると、失敗することを過度に恐れて行動することができなかったり、保護者が過保護にしすぎてしまったりする状況があり、採用することが難しいと感じることが多いそうです。そこで、特別支援学校における遠隔授業を積極的に行い、学校の授業の中で実習を体験し、少しでも成功体験を積んでもらう取り組みをしています。

夏には、名古屋市にある特別支援学校に出向いて、商業科の生徒を対象にテレワークを使った体験授業を行うような遠隔授業を開催しています。授業では、パソコンで通話しながらコンビニ店舗のレイアウトや商品の配置について気づいた点や改善点を話し合いました。この授業で目指す課題は、自分の意見を積極的に発言する、時間を守る、役割分担をしてグループワークで課題をクリアすることです。

授業では、コンビニのレイアウト図をみながら、気づいたことを発言していく生徒の姿がみられました。

生徒たちからは、
・店内レイアウトでは日用品は目に入りやすい入口のそばにある
・レジの隣には手軽に食べやすいホットドッグなどが置いてある
・買うものも様々でより行動範囲を少なくするためにレジが二つある
などの意見が出されました。

普段、なんとなく見ているだけでは気づかないことも、売る立場の側から考えることによって、いろいろな気づきや発見があったのではないかと思われます。

在宅雇用の取組み

在宅雇用の取り組みやテレワークの取り組みが評価されて、以下のような賞を受賞しています。

テレワーク推進賞(総務省・日本テレワーク協会)
・2011年第12回テレワーク推進賞 優秀賞 受賞
・2012年第13回テレワーク推進賞 奨励賞 受賞

テレワーク先駆者(総務省)
・2016年度 テレワーク先駆者百選 選出

職場改善好事例(高齢・障害・求職者雇用支援機構)
平成29年度 職場改善好事例 優秀賞 受賞

輝く テレワーク賞(厚生労働省)
2017年度 輝くテレワーク賞 厚生労働大臣賞 特別奨励賞 受賞

KAIKA AWARDS(日本能率協会)
KAIKA AWARDS 2017 優秀賞 受賞

まとめ

仕事のIT化や働き方改革が進み、テレワークという働き方が広がっています。障害者雇用の中でも、在宅雇用として重度身体障害者や難病の障害者を雇用する企業も出てきています。今回は、障害者雇用の中でテレワークに早くから取り組んでいるクオールアシストさんのケースを見ていきました。

在宅雇用の中で重視されている能力は、自己管理能力とコミュニケーション力です。自己管理能力は、自宅で仕事をするため自分の担当する仕事や役割を果たすことに加えて、健康管理や医療措置も含めた自己管理が求められています。健康面に関しては、直接、命に関わってくることもあるからです。

しかし、逆に言えば、このようなスキルを身につけることによって、今まで働くことが難しかった重度の障害者でも働く機会が広がっているということでもあります。知的障害の特別支援学校では職業訓練が重視されてきており、就職率も上がっています。肢体不自由の特別支援学校でもテレワークなどの働き方を視野に入れた進路指導が進められることが期待されます。

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