障害者雇用を進めていくには、採用した人材が離職しないようにすることが大切です。障害者雇用率を達成するには新規採用も大事ですが、採用してもすぐに離職してしまうなら、採用までにかかった時間やマンパワーは無駄になってしまいます。
ここでは、障害者の離職率がどれくらいなのか、障害別の比較を見ていきます。また、障害者の勤続年数や、離職にならないようにすべきことについて見ていきます。
障害者の離職率はどれくらい?
まず、障害者の職場定着率はどれくらいなのか見ていきます。1年以内の定着率を見ると、次のようになっています。
身体障害者 60.8%
知的障害者 68.0%
精神障害者 49.3%
発達障害者 71.5%
出典:障害者の就業状況等に関する調査研究(2017年、障害者職業総合センター)
この結果を見ると、知的障害や発達障害の場合に比較的安定しているのに対して、特に精神障害については定着が困難な者が多い状況となっていることがわかります。
一般的に精神障害者は離職率が高いと言われているので、あまり違和感はないかもしれませんが、なぜ身体障害者の離職率が高いのでしょうか。
その理由は、この調査では障害者求人、一般求人(障害を開示)、一般求人(障害を非開示)が含まれているからです。知的障害者と発達障害では8割以上が障害者求人で応募していますが、身体障害、精神障害は、障害者求人で応募している割合は半数ほどです。
身体障害では、一般求人(障害を開示)が36.5%、一般求人(障害を非開示)が11.1%ですが、精神障害は、一般求人(障害を開示)が16.2%、一般求人(障害を非開示)が32.6%と、障害者であることを伝えていないケースが多いことがわかります。企業としては、障害者とわからなければ合理的配慮などを示すことはありませんし、周囲の人も障害配慮として気にかけることはしないでしょう。このような理由もあり、職場定着率が低くなっています。
出典:障害者の就業状況等に関する調査研究(2017年、障害者職業総合センター)
なお、障害者求人、一般求人(障害を開示)、一般求人(障害を非開示)を障害別に見ると、障害者求人で雇用されている場合には、どの障害においても職場定着率が高くなっています。
出典:障害者の就業状況等に関する調査研究(2017年、障害者職業総合センター)
障害者の勤続年数はどれくらい?
続いて、障害別の勤続年数について見ていきます。「障害者雇用実態調査結果報告書」の平成25年度を見ると、次のようになっています。
身体障害者 10年
知的障害者 7年9ヶ月
精神障害者 4年3ヶ月
障害者雇用実態調査結果報告書は5年ごとに実施されていますが、これまで結果を見ると、平均すると身体障害者は10年程度、知的障害者は8年程度、精神障害者は4年程度となっています。
出典:障害者雇用実態調査結果報告書((平成25年度、厚生労働省)
離職を減らすために必要なこととは?
ここまで、障害者の離職状況について見てきました。離職を減らすためには、何ができるのでしょうか。
障害者とのコミュニケーションを図る
まず、障害者とのコミュニケーションを図ることが大切です。離職原因としてあげられる項目としては、次のようなことがあげられています。
・職場の雰囲気・人間関係
・賃金・労働条件が合わない
・仕事内容が合わない
・疲れやすく体力意欲が続かなかった
・症状が悪化(再発)した
・作業、能率面で適応できなかった
このような状況を事前に把握できていたのであれば、仕事内容の変更や職場環境の改善をはかれたり、離職を防げる可能性が高くなります。しかし、本人がどのようなことを感じたり、考えているのかを把握できなければ、職場としても配慮が必要なことに気づくことはできないでしょう。
まずは、障害者社員が仕事や人間関係、職場環境などで、悩んでいることや困っていないかを確認することが大事です。
社員が障害者雇用や障害について学ぶ機会をつくる
一緒に働く社員が障害者とはどのような特性があるのか、どのようなときに配慮やサポートが必要なのかを知らなければ、どのように対応してよいのかがわかりません。
コミュニケーションの取り方やマネジメント方法などを学ぶことで、必要なことを知り、配慮を示しやすくなります。一緒に働く社員の方が障害特性や配慮を学ぶことで、障害当事者社員からよくあがる「職場の配慮が示されない」という声は減るでしょう。
就労支援機関等との連携をとる
職場定着には、就労支援機関等との連携をとることも大切です。障害者の定着状況については、就労前に職業訓練をしたり、地域の就労支援機関との連携による支援を受けたことがある人のほうが、受けたことのない人よりも定着率が高いことがわかっています。
出典:障害者の就業状況等に関する調査研究(2017年、障害者職業総合センター)
就労訓練をしている機関からの採用することや、就労後も支援機関を活用することは、離職を防ぐことに繋がります。
動画での解説はこちらから
まとめ
障害者の離職率について、障害別の傾向や求人別の傾向、障害者求人、一般求人(障害を開示)、一般求人(障害を非開示)などの点から傾向を見てきました。
障害者の1年以内の職場定着率を見ると、次のようになっています。
身体障害者 60.8%
知的障害者 68.0%
精神障害者 49.3%
発達障害者 71.5%
身体や精神が高くなっていますが、これは障害者求人で応募している割合が半数くらいで、残りの半数は一般求人で応募していることが要因となっています。
離職を減らすために必要なこととは、障害者とのコミュニケーションを図る、社員が障害者雇用や障害について学ぶ機会をつくる、就労支援機関等との連携をとるなどが大切です。特に障害者とのコミュニケーションを図ることは、離職要因となることを対話の中から気づき、それに対応する機会を作ることに繋がります。
また、就労支援機関との連携を図って、就労前に職業訓練をしたり、地域の就労支援機関との連携による支援を受けたことがある人のほうが、受けたことのない人よりも定着率が高いことがわかっていますので、活用することをおすすめします。
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