精神障害の社員を支える職場環境作り~初期対応とサポート体制の構築~

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2024年07月20日 | 障害別の特性・配慮

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障害者雇用では、精神障害の求職者が増えています。精神障害の受け入れは難しいと感じる企業も多いですが、最近の精神障害の求職者は能力やスキルが多様な人も増えています。もちろん働き方や勤務時間などは配慮することもありますが、安心して働ける環境を提供することで人材として活躍している職場が増えています。

今回は精神障害者を職場に受け入れるときにできる具体的な対応方法とサポート体制について紹介していきます。特にはじめの対応が重要となるので、参考にしてください。

障害者雇用の現状と精神障害

民間企業で働く障害者は、令和5年に64万2178.0人となり、前年比4.6%(2万8,220.0人)増加し、過去最多を更新しました。

出典:令和5年 障害者雇用状況の集計結果(厚生労働省)

障害別にみると、身体障害者は360,157.5人(対前年比0.7%増)、知的障害者は 151,722.5人(対前年比3.6%増)、精神障害者は130,298.0人(対前年比18.7%増)と、いずれも前年より増加しています。特に、精神障害の雇用数の伸びに関しては、例年と同じように伸び率が大きくなっています。

また、最近では新規の障害者採用では、半数以上が精神障害手帳を持っている人となっています。

近年、精神障害者の採用が増加した背景には、いくつかの要因があります。まず、企業の障害者雇用が進んでいますが、その中で身体障害、知的障害の雇用がかなり進んできている、つまり、働ける障害者はすでに働いているということです。そのため、障害者雇用の中では進んでこなかった精神障害者の雇用が増え続けています。

また、精神障害者が障害者雇用としてカウントできるようになったのは2006年(平成18年)から、義務化されたのは2018年(平成30年)からです。日本の障害者雇用は、身体障害者、知的障害、精神障害と進んできました。

身体障害者の雇用が始まったのは、戦争で負傷した傷痍軍人の就職を進めるためでした。障害者法定雇用率は1960年に企業への努力義務として導入され、1976年に義務化されていますが、このときの障害者雇用としてカウントされていたのは身体障害だけです。その後、知的障害が1998年雇用義務の対象に含まれるようになりました。

精神障害の雇用は、障害者雇用の中では比較的新しいことが、近年の精神障害の雇用が増えている大きな要因となっています。それに加えて、今までは企業が精神障害の採用を躊躇しているケースも多くありましたが、障害者雇用率のUPなどの状況もあり、受け入れが広がっています。

このような状況の変化は、精神障害の手帳を取得しないでクローズ(障害を開示しない)で働いていた方が、一般枠の就職よりも配慮のある障害者枠での就職を希望するようになってきています。

加えて、発達障害の社会的な理解が広がったことで、大人になってから発達障害に気づき、精神障害手帳を取得する人も増えています。このような理由から、現在の障害者採用では、精神障害手帳を持っている人の求職者が増えています。

精神障害とは?

精神障害とは、思考、感情、行動に影響を与える広範な症状や状態を指します。これらの障害は、個人の日常生活や対人関係、仕事のパフォーマンスに重大な影響を及ぼすことがあります。精神障害は、脳の機能や化学的なバランスの変化によって引き起こされることが多く、遺伝的要因、環境的要因、心理的要因などが複雑に絡み合っています。適切な診断と治療を受けることで、症状の管理や回復が可能です。

精神障害の種類と特徴

精神障害には多くの種類がありますが、ここでは代表的なものとして、うつ病、双極性障害、不安障害の3つについてその特徴を解説します。

うつ病

うつ病は、持続的な悲しみや興味の喪失、エネルギーの低下などを特徴とする障害です。以下のような症状が見られます。

・気分の落ち込み: 長期間にわたって持続する悲しみや無気力感。
・興味の喪失: 以前楽しんでいた活動への興味や喜びの喪失。
・エネルギーの低下: 慢性的な疲労感やエネルギーの欠如。
・睡眠障害: 過剰な睡眠や不眠。
・食欲の変化: 食欲の増加または減少。
・集中力の低下: 集中力や決断力の低下。
・自己評価の低さ: 過度の罪悪感や自己評価の低下。

双極性障害

双極性障害は、気分の高揚(躁状態)と気分の落ち込み(うつ状態)が交互に現れる障害です。

躁状態のときには、異常に高揚した気分、エネルギーの増加、過剰な自信や興奮などがあります。実際の状況として見られるのは、過剰な話し方、アイデアが次々と浮かぶ、睡眠の必要性の減少、衝動的な行動(無計画な支出、危険な行動など)などです。

うつ状態のときには、うつ病と同様の症状が現れます。具体的な状況としては、気分の落ち込み、興味の喪失、エネルギーの低下、睡眠や食欲の変化などが見られます。

不安障害

不安障害は、過度な不安や恐怖を特徴とする障害です。これには、以下のような具体的な障害が含まれます。

・全般性不安障害(GAD): 日常的な出来事に対する過度な不安や心配。未来の出来事に対する過度の心配、筋肉の緊張、集中力の欠如、イライラなどの症状が見られる。
・パニック障害: 突発的なパニック発作を特徴とする障害。突然の強い恐怖感、動悸、発汗、震え、息切れ、死の恐怖などの症状が見られる。
・社交不安障害: 社会的状況や対人関係に対する強い恐怖や不安。公の場で話すことへの恐怖、人前で食事をすることへの恐怖、他人の注目を浴びることへの強い不安などの症状が見られる。

これらの精神障害は、日常生活に重大な影響を与える可能性がありますが、適切な診断と治療を受けることで、症状の管理や改善が可能です。また、精神障害のある社員を理解し、適切に対応することが必要です。そのためには、はじめに受け入れるときの対応がとても重要となります。

精神障害の社員を受け入れるとき、どのように接したらよい?

笑顔で挨拶する

社会人経験がある程度ある人でも、転職や新しい環境に行くときには、多少なりとも緊張するものです。精神障害の人は繊細に物事を感じることが多く、特に新しい環境では不安を感じていることが多いです。

そのため入社時には、他の新入社員を受け入れる時と同じように、まずは声をかけて挨拶をしてください。精神障害があるということで、どのように接したらよいのかわからない、最初から声をかけると緊張してしまうのでは・・・と考えたりする人もいますが、精神障害だからと特別に扱うのではなく、普通に接すれば大丈夫です。

挨拶はコミュニケーションの基本であり、信頼関係の構築の第一歩です。新しい社員が職場に溶け込むためには、周囲から受け入れられていると感じることが重要です。挨拶は、その日のスタートを良いものにし、職場の一員としての意識を持たせる効果があります。

精神障害のある社員は、新しい環境に対して緊張しやすいことがあります。最初の挨拶を通じて、周囲がフレンドリーであることを示すことで、緊張感を和らげることができます。特に、自分から挨拶するのが難しい場合でも、周囲からの温かい挨拶は安心感を与えます。

特に、笑顔での挨拶は、親しみやすさを感じさせ、緊張を解きほぐす効果があります。笑顔は非言語的なコミュニケーションの一環として、相手に対するポジティブな感情を伝える重要な手段です。新しい社員が歓迎されていると感じることで、職場環境に対する安心感が高まります。

フィードバックとオープンなコミュニケーション

精神障害のある社員に対しては、定期的なフィードバックが大切です。これは、彼らが職場でのパフォーマンスを理解し、必要な改善点や成功した点を把握するのに役立ちます。

フィードバックは、ポジティブなものだけでなく、建設的な改善提案を含めることが重要です。オープンなコミュニケーションの環境を整えることで、社員が質問や不安を自由に共有できるようになります。

精神障害のある社員に対しては、過度に積極的に話しかけるのではなく、自然なタイミングでの会話を心がけるようにするとよいでしょう。これにより、彼らがプレッシャーを感じることなく、リラックスしてコミュニケーションを取ることができます。

例えば、ランチタイムや休憩時間など、リラックスした環境での会話が効果的です。ただし人によっては、休憩時間には一人でゆっくりしたい人もいますので、本人の希望を聞くようにしてみてください。また周囲が気を遣って声をかけると、周囲の人も負担に感じたり、本人もなんとなくそれを感じてしまいますので、お互いに無理をしないで自然にするようにしてください。

飲み会やイベントへの誘い方

仕事以外の飲み会やイベントは、同僚と打ち解ける機会になることが多いです。ただし、精神障害のある社員が参加しやすいように、無理のない範囲で誘うことが大切です。例えば、「よかったら一緒に来ませんか?」といった軽い誘い方や、飲み会やイベントの概要を事前に伝えることで、参加するかどうかを決めやすくする工夫が必要です。また、イベント参加中も無理に交流を強制せず、自然なペースで関わることが大切です。

精神障害の社員が職場にスムーズに適応できるようにするためには、はじめの対応が大切です。挨拶やコミュニケーションの取り方に配慮し、安心感や受け入れてもらっていると感じてもらえるような環境を示すことで、お互いに仕事がしやすくなります。

精神障害の社員を受け入れる職場環境の整備

落ち着いた席を配置する

仕事をする配置に配慮できるかもしれません。働く上で、安心感を持ち、ストレスを感じにくい環境を整えることが大切です。デスクワークが多いのであれば、人の移動が少ない席に配置するほうがよいでしょう。

来客の対応や電話応対に対して合理的配慮が必要であれば、物理的にそうした対応が必要にならない席に配置するほうが仕事に集中しやすくなりますし、精神的な負担も軽減されます。

休憩スペースの確保

精神障害の方は、休憩時間は落ち着いたスペースでリラックスしたいと感じる人が多いです。職場の共有の休憩スペースがあれば、それを案内してあげてください。

精神障害や発達障害の社員を雇用している職場では、騒音や視覚的な刺激が少ない場所に静かなスペースを設置したり、快適な椅子やソファ、リラックスできる装飾品(植物など)の配置や個別スペースを設けていることが多いです。

職場にそのようなスペースを設けることが難しいのであれば、昼食時など使われていない会議室があれば使用を許可するなどの代替案などを考えることができるかもしれません。

精神障害の社員を受け入れる柔軟な勤務形態

テレワークやフレックスタイムの導入

精神障害のある社員が自分のペースで働けるように、柔軟な勤務形態を導入している職場があります。柔軟な勤務形態の一環として、テレワークやフレックスタイムを導入できるかもしれません。

テレワークで自宅での勤務を可能にすることで、通勤のストレスを軽減し、働きやすい環境を提供します。必要なIT機器やセキュリティ対策を整えることで、効率的に業務を遂行できるでしょう。また、フレックスタイムの導入することで、社員が自分の生活リズムに合わせて働きやすくなるかもしれません。例えば、朝が苦手な社員は遅めの出勤を選択できるようにするなどです。

休憩時間や休暇の柔軟な取り扱い

社員が必要なときに休憩を取ったり、休暇を取得しやすい環境を整えることで、精神的な健康を保つことができます。例えば、休憩時間を柔軟に取れるようにできるかもしれません。

精神障害の人は疲れが溜まりやすい人がいるので、所定のお昼の休憩時間だけでなく、短時間の休憩を取れるようにしている職場が多くあります。例えば、午後の仕事時間に15時に短時間の休憩を取ったりするなどです。

また、病院への通院のために有給休暇を時間単位で取得できるようにするなどの配慮を行っている職場もあります。このような休暇の取得がしやすい体制を整えることは、障害のある社員だけでなく、他の社員にとっても働きやすい職場環境を提供することに繋がります。

動画で解説

まとめ

精神障害のある社員を職場に受け入れることは、企業が障害者雇用を行う上で重要な課題となっています。近年の障害者雇用の採用では、求職者の多くが精神障害者手帳をもつ人となっているからです。

そのため障害者雇用を成功させるためには、精神障害のある社員が安心して働ける職場環境を整えることが大切です。受け入れ体制や制度を検討することができるでしょう。また、職場に受け入れてもらっていると感じるようにしてください。特に入社時のはじめの印象は重要です。

まず、最初の対応として、他の同僚と同じように笑顔で挨拶をしてください。これは、精神障害の社員が職場に溶け込みやすくするための第一歩となります。特別にするのではなく、他の社員と同じように接することが大切です。また、定期的なフィードバックとオープンなコミュニケーションを心がけ、安心して業務に取り組める環境を提供してください。

参考

なぜ、精神障害者の雇用が他の障害者よりも増えているのか

精神障害者保健福祉手帳の取得方法や判断基準とは?

職場における障害者雇用の合理的配慮、どこまで何をすべきなの?

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