採用面接では、障害の状況やどのような配慮をしてほしいかを伝えることは、継続して働くことを考えたときに、とても大切なことです。
期限の決まっている実習では、だいたい長くても2週間程度、このくらいであれば、ちょっと厳しいかなと感じていても、なんとか無理をして乗り越えられるかもしれません。
しかし、就職するとなると、期限限定のものではなく、半年先も、1年先も、3年先も働くことになります。障害について伝えないで働き始めることもできますが、どこかで無理がでてしまい休職や、退職になってしまうことも少なくありません。
今回は、面接のときに、障害や配慮をどのように伝えたらよいのかについて、考えていきます。
面接で障害をどのように説明すればよいのか
障害者枠で働きたいという方に、企業で配慮してほしいことは、自ら伝える必要があるとお伝えしたところ、次のような答えが返ってきました。
「面接で自分の障害特性や配慮点を伝えるのは、難しいと感じています。実際に、仕事をしてみないと分からないこともありますし、障害や苦手さをどのように伝えてよいのかわかりません。」
自己分析をしっかりして、自分の障害や苦手さ、それに対する合理的配慮についてしっかり説明できる人がいる一方で、自分で説明できないという人もいます。しかし、自分で説明できないことを、相手の人にどのようにしたら理解してもらえというのかと、私は不思議に感じてしまいます。当然、このような答えが返ってくる人は、就職できません。
企業が採用を決めるポイントとは?
企業では、障害者を雇用するときに合理的配慮を提供することが、法的義務として定められています。合理的配慮とは、障害のある人とそうでない人の機会や待遇を平等に確保し、支障となっている状況を改善したり、調整することを意味します。
平成28年4月の改正障害者雇用促進法の施行により、事業主に対し障害のある人への合理的配慮の提供が義務付けられました。そのため企業では、障害者を雇用するときに、特性や職場の状況を考慮し、どのような配慮が必要かを把握するように努力しています。
障害者雇用は、福祉ではありませんので、働くことを前提として採用を決めることになります。企業側も時間やマンパワー、コストをかけて雇用するので、採用を決めるときには、次のようなことを重視します。
長期的に安定的に働き続けられるか
障害者枠で働くには、仕事で求められるスキルや能力の他にも、仕事が続けられる体力や、コントロールできるかが問われます。このようなことに、面接側へ納得感のある転職理由を説明できないと、採用にはつながりません。
そのため、特に転職の場合には、前職をどれくらい続けたのか、またその理由は何かを聞かれることになります。これは、同じような理由で、すぐにまた退職してしまうのではないかと考えるからです。
どのような仕事ができるのか
仕事なので、求められている業務に見合ったスキルや能力が必要です。
今までの仕事経験や、就労支援機関などで身につけたスキルや能力があると、履歴書や職務経歴書から判断でき、それを面接でアピールすることが求められます。
職場の雰囲気や人間関係に合いそうか
仕事はできても、職場の雰囲気や人間関係が合わないと、退職に至るケースも多くあります。退職理由によくあげられる点は、【人間関係】だからです。
一緒に仕事ができる仲間としてやっていきたいと思えるか、身だしなみや、会話をする際の雰囲気、コミュニケーションなどが見られます。
企業に求める障害の配慮はどのようなことか
企業には、障害者に合理的配慮を示す義務があります。
とはいっても、企業には合理的配慮の提供義務があるとは言え、合理的配慮とされる措置が事業主に対して過重な負担を及ぼすこととなる場合は除かれます。つまり、求められる配慮が示せる場合とそうでない場合があるということです。
合理的とは、「道理や論理にかなっているさま」や「むだなく能率的であるさま」を指します。そのため合理的配慮を行なうために、事業活動に多大な影響が出る場合や、過度に社員の負担がかかる、費用負担が非常にかかる場合など明らかに対応することが困難な場合には、該当しません。
どの程度が過度な負担にあたるのかは、企業の規模や財務状況等によると思いますので、一概に言えるものではなく、障害の特性上必要な配慮であっても、受け入れ側の企業が大きな負担になるかどうかは、各企業で判断していくことになります。
例えば、ある企業では、カウンセリングができるような体制があったり、専門職がいるかもしれませんが、別の企業では、先ほどの企業と同じような業種や、従業員数であったとしてもいない場合もあります。
会社で示せる合理的配慮と、応募者が望む合理的配慮があまりにもかけ離れているようであれば、採用は難しいと考えるでしょう。
企業に受け入れられやすい障害の説明方法
障害の内容について説明する
障害の種別や病名、障害者手帳の等級だけでなく、簡単にどのような症状や特性があるのかを伝えるとよいでしょう。
採用担当者は、障害の症状に対して、詳しいことまで熟知しているわけではないので、「できること」「苦手さがあること」を伝えることが必要です。
配慮してほしいこと、必要なサポートについて
仕事をしていく上で配慮してほしいことや、必要なサポートについて伝えます。
「できないこと」「苦手さがあること」については、どのような代替手段があるとできるのか、理解しやすいのかなどを提示することによって、会社側が配慮を示しやすくなります。
もし、自分で伝えるのが難しいと感じたときには、就労支援機関のスタッフに同席してもらって説明をサポートしてもらったり、事前に配慮してほしいことなどをまとめておくこともできます。
どのように伝えたらよいのか
例えば、次のように伝えられるかもしれません。
「視覚障害があり、PCの文字が見えにくいです。音声リーダーや拡大読書器があると、スムーズに対応ができます。」
「発達障害で、文字が判別しにくい時があります。指示は、話して伝えてもらうとわかりやすいです。」
「精神障害で、とっさの対応を求められると、何をしてよいかわからなくなることがあります。定型的な仕事はできますので、その場に応じた対応が求められる電話対応などは、慣れるまで外してもらえると助かります。」
動画の解説はこちらから
まとめ
面接で、企業で配慮してほしいことを伝えるときに、どのように説明したらよいかについて見てきました。まずは、面接でお互いに率直に話し合うことが大切です。また、実際のイメージがつかない場合には、実習などをおこなうことで、仕事のイメージや、職場の雰囲気がつかみやすくなります。
企業には合理的配慮を示す必要があるとは言え、それに対する方針や考え方は、企業や職場によってさまざまです。自分にあっていないと感じるのであれば、無理に企業にあわせるよりも、もっと別の会社や職場を探したほうが、雇用される側にとっても、雇用する側にとってもよいかもしれません。
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