障害者インクルージョンは企業価値を高めることができるのか~Valuable 500の取り組み~

障害者雇用は日本の企業の中でかなり進んできたように感じますが、「法律によって障害者法定雇用率があるから障害者を雇用しなければならない」という印象がまだまだ強いように感じます。

一方で、世界を見ると、違った角度から障害者雇用を見はじめる取り組みが行われています。例えば、アメリカでは、障害者に対応した職場環境を作ることは、倫理的な面だけでなく、ビジネス面でも利益があると見なされることも多いようです。多様性やインクルージョンはイノベーションを生み、より良い製品やサービスにつながると障害者のインクルージョンを評価する動きも見られています。

ここでは、そのような取り組みとして、2019年ダボス会議で発足した「The Valuable 500」の目的や参加資格、また「The Valuable 500」に参画しているJALの取り組みについて見ていきたいと思います。

The Valuable 500とは

Valuable 500は、2019年のダボス会議の中で発足しています。

ダボス会議は、毎年1月に開催される世界経済フォーラムがダボスで開催する年次総会です。1971年に発足し、各国の競争力を指数化し公表してグローバル化に対応した経営環境を推進してきました。この会議では毎年、世界を代表する政治家や実業家が一堂に会し、世界経済や環境問題など幅広いテーマで討議することから、注目されるとともに、世界に強い影響力を持っています。

このValuable 500の目的は、ビジネス・社会・経済において、障害者が活躍し、自らの潜在的な価値を発揮できるようにすることです。そして、そのために、ビジネスリーダーたちが自ら声を上げ、改革を起こしていこうという考え方があります。経済や政治が主に話し合われるダボス会議において、「障害」にフォーカスしたセッションが設けられたのは初めてのことで、世界的な注目が集まっていました。

The Valuable 500の発起人は社会起業家Caroline Caseyさん

発起人はアイルランド出身の社会起業家Caroline Caseyさんで、ご自身も視覚障害者です。Carolineさんの熱意あるプレゼンテーションが応援と共感を呼び、大手企業の著名なビジネスリーダーたちがThe Valuable 500をサポートしています。

TEDで発表する社会起業家Caroline Caseyさん

Caroline Caseyさんのプロフィール

The Valuable 500の参加資格

The Valuable 500への参加資格は、次の要件があります。

The Valuable 500への参加資格は下記のとおり。

・取締役会のアジェンダに、障害に関する内容を盛り込む
・障害インクルージョンに関するアクションを一つ実施する
・そのアクションを、社内外に向けて発信する
・従業員1,000人の企業規模である

引用:障害者インクルージョンが企業価値を高める! 世界的ムーブメント・The Valuable 500とは?(スロウプ)

Valuable500は、これまでに欧米系グローバル企業を中心に240社が参加しているそうで、日本企業の中では、三井化学株式会社、日本航空株式会社、NEC、KNT-CTホールディングス株式会社(クラブツーリズム)、全日本空輸株式会社、SONY、あいおいニッセイ同和損保などが加盟しています。

この中でも積極的に発信しているJALの取り組みを見ていきたいと思います。

JALの取り組み

Valuable500の参加資格として、「障害インクルージョンに関するアクションを一つ実施する」「そのアクションを、社内外に向けて発信する」という点がありますが、これらの取り組みを積極的に行っているのがJALです。

他の企業のプレスリリースと比べると、JALのValuable500加盟に関するプレスリリースはかなり具体的で、実際に取り組んでいる様子が伝わってきます。

JALは、障がい者が多様な価値を発揮できる社会の実現を目指す世界的な活動である「The Valuable 500」に加盟しました。

「The Valuable 500」は、2019年1月に開催された世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)において、「障がい者が社会的活動へ参加できるようになることが、多様な価値を発揮できる社会を創る」という考えのもと、社会起業家のキャロライン・ケーシー氏により立ち上げられた活動です。障がい者が社会、経済にもたらす潜在的な価値を発揮できるような社会づくりを推進することを目的としており、賛同する世界中の企業が加盟し、500社以上の参加を目指しています。

JALはその主旨に賛同し、すべてのお客さまに安心してご旅行いただける環境の整備やさまざまな場面でのアクセシビリティの向上に取り組むことで、障がい者が社会的活動に参加し活躍できる社会づくりを目指し、以下のコミットメントを策定しました。

引用:障がい者の活躍推進に取り組む国際活動「The Valuable 500」へ加盟(日本航空株式会社)

このあとに、JALグループ コミットメントと基本方針、主要な取り組みについてあげられています。

基本方針の中では、多様な人財の活躍推進として、「すべての社員の多様性が尊重され、その個性を活かしあい、新たな価値を生み出すダイバーシティ&インクルージョンを推進」することを掲げています。

また、主な取り組みとしては、「バリアを感じることなく旅を楽しみ、ハード・ソフト両面でアクセシビリティの向上を進めていく」ことや「人財育成ならびに障がいのある社員が活躍できる職場づくりに積極的に取り組んでいく」ことを明らかにしています。

このような社内の取り組み姿勢は、実際のビジネスでも活かされています。例えば、車いすで海外旅行に行くツアーができました。

「ファミリーで行く 車いすde感じるハワイ」ツアー

このツアーでは、「海外でも、家族と一緒に旅行を楽しむ」ことをコンセプトに、車いす利用や歩行に際しサポートが必要な人も楽しめるアクティビティをメインとしたツアーとなっており、ハワイの自然と観光の魅力を満喫できるものになっているようです。また、サーフィンの体験や、さまざまなバリアフリー対応の観光施設やハワイでの過ごし方を提案してくれるサービスもあります。

他の人に気兼ねなく楽しめるように、ホテル-空港間の送迎や観光地の周遊を安心で快適に移動できるリフト付き専用バスや、参加者全員がバリアフリールームで宿泊できるホテルも準備されています。これなら初めて海外に行く人でも安心して旅行を楽しめるものとなっています。

参考:海外行きで初、「ファミリーで行く 車いすde感じるハワイ」ツアーの販売を12月3日(火)より開始(JAPAN AIRLINES)

車椅子ユーザーの人にとっては、国内でも移動するのに心配なことが多いと思いますが、海外ではじめての場所となれば、もっと心配なことも多いでしょう。もちろん海外にアクティブに出かけられる方もいらっしゃいますが、多くの人にとってはなかなか難しいことも多いと思います。

しかし、このようなプログラムを通じて、車椅子ユーザーの方に海外旅行を提供することは、当事者の方にとって、日常では味わえない体験を提供し、楽しいツアーを提供することになります。また、同時に企業にとってもビジネスにつながるきっかけになっています。

アクセシビリティの取り組みが評価され表彰

そして、このような旅行のさまざまな場面でのアクセシビリティの向上に取り組むことが評価され、「Future Travel Experience Global Awards」で「FTEアクセシビリティ・リーダーシップ賞」を受賞しています。

「Future Travel Experience Global Awards」とは、世界の航空会社・空港会社の中で地上・機内で顧客体験を向上させるために優れた取り組みを行った企業を表彰するアワードで、2011年から行われているそうです。

評価された取り組みには、次のようなものがあります。
・すべての方に音が聞こえやすくなる先進的な技術を用いたミライスピーカー®
参考:“音”のバリアフリーを目指して、「ミライスピーカー」を導入(JAPAN AIRLINES)

・遠隔手話通訳サービスの導入
参考:遠隔手話通訳サービスを開始(JAPAN AIRLINES)

・お手伝いを希望されるお客さま向けのWebサイト「JALプライオリティ・ゲストサポート」などを通した幅広い情報発信
参考:「JAL スポーツアンバサダー」誕生(JAPAN AIRLINES)

・お手伝いを希望されるお客さまへ寄り添ったご案内を実現するための全社員向けの教育

まとめ

ここでは、2019年ダボス会議で発足した「The Valuable 500」の目的や参加資格、また「The Valuable 500」に参画しているJALの取り組みについて見てきました。障害者雇用が本当に企業の中に浸透していくため、そして、障害者が戦力化してもらうためには、このような障害者インクルージョンと企業価値を高めることを考え、実行していくことができないと難しいのではないかと感じています。

JALをはじめとして、この「The Valuable 500」に日本の企業も参加しています。これからの取組みに注目していきたいと思っています。

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