企業価値を高める人的資本開示 戦略的アプローチと障害者雇用

企業価値を高める人的資本開示 戦略的アプローチと障害者雇用

2024年01月24日 | 企業の障害者雇用

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企業の価値は単に財務的な指標だけによって判断されるものではありません。近年「人的資本」が企業価値向上に不可欠なものと認識されています。
既に欧米においては人的資本開示が義務化されており、グローバル社会の中で人的資本の情報開示は日本企業にとっても必要なものとなりつつあります。
今回は、人的資本がなぜ重要なのか、また障害者雇用との関連性、企業がどのように対応すべきかについて見ていきます。

人的資本開示とは何?

人的資本開示は、企業が自社の人材に関する情報を公開することです。この中には、従業員の能力やスキル、育成方針、職場環境などに関するデータや指標を社内外に公表することが含まれます。

人的資本開示の目的は、企業が人材を重要な資本として捉え、その価値を最大限に引き出す経営戦略の一環が挙げられます。また、社外のステークホルダーに対して企業が人的資本経営に積極的に取り組んでいることを示す目的もあります。この開示によって、企業は社会的な信頼を得ることができ、従業員のモチベーション向上や人材の確保にも繋げることができます。

このような背景には、企業の経営における人材の価値が高まっている現代のビジネス環境があります。従業員のスキルや知識、モチベーションは、企業の長期的な成功に不可欠な要素となっています。そのため、企業は人的資本の管理と開示を通して、より透明性のある経営を目指し、信頼と評価を得ることが求められています。この透明性は、投資家や顧客、従業員などの関係者に対して、企業が社会的責任を果たしていることを示す重要な要素となります。

人的資本開示の国際基準とその取り組み

人的資本に関する情報開示のガイドラインとして、ISO30414が人的資本の情報開示に関する国際基準となっています。国際標準化機構(ISO)がマネジメントシステム規格として、組織が自社の従業員に関する人的資本の情報について、定量化し、分析し、開示するための国際的な指標を設けています。

日本では、このISO30414の国際基準に沿った取り組みが進められています。2023年3月期決算から、上場企業などを対象に人的資本の情報開示が義務化され、対象企業は「有価証券報告書」を発行する約4,000社の大手企業です。これに伴い、大企業を中心に人的資本の情報開示に関する意識が高まっており、ISO30414のガイドラインに従った情報開示を行っている企業が増えています。

この流れを受けて、日本の有価証券報告書においても、人的資本情報の記載義務がある項目が設けられます。日本企業にとっても人的資本の情報開示は重要な取り組みとなっていく傾向はますます強まるでしょう。

人的資本の情報開示の項目とは?

人的資本の情報開示で求められる項目は、「人材育成」「エンゲージメント」「流動性」「ダイバーシティ」「健康・安全」「労働慣行」「コンプライアンス」の7分野、19項目となっています。

分野1:人材育成

人材育成は、経営戦略に沿った「リーダーシップ」「育成」「スキルと経験」の育成に焦点をが当てられています。具体的には、研修プログラムの種類、対象者、研修時間や費用、研修受講率、人材定着策などが重要な開示項目となっています。

分野2:エンゲージメント

従業員の「エンゲージメント」向上に関する施策と現状を公開する項目です。具体的には、社内コミュニケーションの改善、パーパスの浸透、多様な働き方の推進などが挙げられます。従業員の満足度やエンゲージメントの測定やその改善策が求められます。

分野3:流動性

流動性は、人材の入れ替わりに関する分野です。「採用」「維持」「サクセッション(継承性)」に関する項目があります。採用人数やコスト、定着率、離職者数、後継者計画などが開示項目となっています。人材の流動性が企業の成長と持続可能性にどのように影響するかが重要となります。

分野4:ダイバーシティ

ダイバーシティは「多様性」という意味があり、国籍や性別、年齢、経歴、障害の有無などに関係なく多種多様な人材を受け入れることを指します。この分野では「ダイバーシティ」「非差別」「育児休業」の取り組みについての項目があります。リーダーシップ層の多様性、性別や属性による賃金格差、育児休業制度の利用率や復職率などが開示の対象となります。

分野5:健康・安全

「精神的健康」「身体的健康」「安全」に関する項目があげられます。具体的には、労働災害の発生件数、安全衛生マネジメントの導入、健康促進活動などがあります。

分野6:労働慣行

労働慣行分野では、企業と労働者の関係が公正なものかどうかを示すものとなっています。情報の公開が求められます。項目としては、「労働慣行」「児童労働・強制労働」「賃金の公正性」「福利厚生」「組合との関係」の情報開示が求められます。賃金水準、労働条件、従業員の権利保護に関する情報が含まれます。

分野7:コンプライアンス・倫理

「コンプライアンス・倫理」に関する企業の取り組みを開示します。この項目は、企業が法律を守り、社会的な規範や倫理観に基づいて活動を行っているかどうかを測るものとなります。開示項目としては、ハラスメント防止策、内部通報制度、コンプライアンス研修の実施状況などがあります。

これらの項目は、情報開示の際には、自社が行っている人的資本への投資や採用している人材戦略に関する情報を、分かりやすく伝達することが重要となってきます。また、単に項目を並べるのではなく、経営戦略と結びつけてどのように関連しているのかをストーリーテリングを通じて説明することがポイントとなります。

企業価値向上における人的資本開示の役割とメリット

人的資本を開示することは、企業価値の向上において重要な役割を果たします。まず、企業の人材管理や人材育成戦略を透明にし、投資家やその他のステークホルダーに企業が持つ人材資源の価値を明確に示すことになります。
さらに情報開示することにより、組織内の人的資本の効果的な管理と活用が可能になり、経営戦略と人材戦略の連携が強化され、結果として企業の持続的な成長と競争力の向上に寄与します​​​​。
具体的に得られるメリットには、次のようなものがあります。

従業員のスキルアップと成長促進

人的資本経営は従業員のスキルアップに重点を置きます。結果として、従業員の個人的な成長が促進され、業務の生産性が向上するのに役立ちます。これにより、従業員は自分の仕事に対してより大きな満足感を得やすくなり、それが全体のパフォーマンス向上につながりま​​す。

企業イメージの向上と優秀な人材の獲得

人的資本経営への取り組みにより、企業は人材育成に力を入れる企業として評価が高まります。企業イメージが向上すると、優秀な人材が集まりやすくなり、結果として質の高い人材を獲得しやすくなります。

社会的信頼の獲得と投資家からの関心向上

社会的に責任ある経営を行っていることが評価されると、企業はより広い範囲での社会的信頼を獲得しやすくなります。また、投資家は投資先企業の持続可能な成長に注目しています。財務情報だけでなく、持続的に成長できる企業かを見極めるため、人材に力を注いでいるかどうかによって評価が変わってきます。

従業員のモチベーションと帰属意識の向上

人材に投資することにより、従業員は企業に対してより強い帰属意識を持ち、モチベーションを高めます。これにより、従業員は仕事に対してより積極的に取り組むことになり、結果として企業全体の成果に貢献することになります。

企業活動や社会的価値の向上

人的資本経営は、企業の経済活動と社会的価値の両方を同時に向上させることができます。これにより、企業は持続可能な成長を実現し、より広い社会への貢献が可能になります。

人的資本の戦略的アプローチと障害者雇用

人的資本と障害者雇用の関連性

人的資本と障害者雇用の関連性について考えていきましょう。人的資本開示は、企業が従業員に投資し、その成果を社内外に示すプロセスです。これは、企業の人材戦略や経営戦略を明確にし、それらがどのように連動しているかを示すことになります。
人的資本と障害者雇用の関連では、特に「ダイバーシティ」「コンプライアンス・倫理」「人材育成」の項目に大きな影響があります。障害者雇用をおこなうことは、「ダイバーシティ」つまり「多様性」として国籍や性別、年齢、経歴、障害の有無などに関係なく多種多様な人材を受け入れることを実践していることになります。
障害者雇用は「障害者雇用促進法」で障害者法定雇用率が定められており、これらを遵守することは「コンプライアンス・倫理」という面でも役割も果たします(現在、障害者法定雇用率は2.3%ですが、令和6年度から「2.5%」、令和8年度には「2.7%」まで引き上がることが決まっています)。
「人材育成」という面では、障害当事者の人材育成も大事ですが、障害者と一緒に働く社員のマネジメントスキルの向上や多様性を受け入れ、視野を広げるという意味でも大きな影響があります。実際にある企業では、障害者雇用の担当者となった社員がリーダー的な役割を果たして、とても成長したと喜んでいました。
また、意外に思われるかもしれませんが「エンゲージメント」という点にも大いに関連があります。障害者雇用の研修で講師をすると、家族の中に障害者がいる方にお会いすることも珍しくありません。このような方たちからよく聞くのが、自社の障害者雇用の取り組みをうれしく感じたということや、家族や子どもが社会に出て働けるという希望が見えたなどの感想です。
会社の中で明らかにしてはいないものの、身近なところで障害者と接する従業員は少なくありません。また、直接、家族や身近な人がいなくても、社会に貢献している企業に所属していることに社会的意義や、製品やサービス提供以外の存在価値があると感じる方たちもいます。このような「エンゲージメント」が高まることで、「企業の目標のために貢献しよう」というモチベーションや、業務への責任感の向上につながることがあります。

障害者雇用をどのように戦略的なアプローチにできるのか

障害者雇用を戦略的なアプローチとするには、どのようなことができるのでしょうか。ある企業では、障害者雇用も含めた戦略的な人的資本についての取り組みを進めることにしました。しかし、それには明確なガイドラインとプロセスの構築が必要となります。そこで、経営方針に基づいた人事的資本のダイバーシティの方針を作成することになり、その一環として障害者雇用の取り組みについても見直しも行うことになりました。
社内の中で障害者に担ってもらう業務が見つからないと、障害者代行ビジネスを活用していましたが、これを社内の業務に切り替えていこうとプロジェクトを立ち上げて、様々な部門と連携を図り、本業に関係する業務での雇用を創出しました。障害者代行ビジネスとは、障害者雇用を自社で行なうことが難しい企業に対して、障害者が働くための場所や仕事内容、人材紹介、雇用サポートなどを提供するものです。
このようなサービスを活用することで、自社以外の場所で障害者雇用を行ない、それが障害者雇用としてカウントされることになります。法定雇用率が大幅に未達で行政からの指導を受けている場合や企業名公表が迫っているような時には、一時的に活用することは経営戦略的には活用する意義はあるかもしれません。しかし、継続的に活用しても、障害者雇用の経験値や障害者の人材育成や将来的な投資にならず、コストが継続的にかかります。
実際に障害者代行ビジネスでかかるコストが年々増えていくものの、本業には全く貢献できていない状況から、見直しをはじめたことで、本業のなかで活躍できる分野を創出することができました。さらにその取組が社内の中で広がると、他の部門でも「うちの部門でも、できそうな業務がある」という話が出始めるようになりました。
また、障害者雇用を含めたダイバーシティ的な視点からのプロジェクトとして、他の部門にも関わってもらうことで、全社的な取り組みやさまざまな視点からの意見が反映されてくるようになりました。結果的に、障害者雇用率を達成することができるとともに、自社内での雇用ができるようになります。また、全社的な経営戦略の中のダイバーシティの取り組みとして障害者雇用の方針を周知することができました。
障害者雇用を法律遵守としてしなければならないものと位置づけるのか、企業の多様性と包摂性の取り組みの一環、新たな人材活用やイノベーションの起点として考えるのかによって、大きな違いがでてきます。このような取り組みや障害者雇用を含む人的資本開示は、企業の持続可能な成長にも関係してきます。
障害者雇用をどのようなポジショニングに位置づけるのかによって、イノベーションや生産性の向上や、企業の競争力、長期的な企業価値の向上にも影響してくるのです。

まとめ

人的資本開示とは、企業が従業員の能力やスキル、育成方針、職場環境などの情報を公開するプロセスです。これにより、企業は人材を重要な資本と捉え、その価値を最大限に引き出す経営戦略の一環を実現することができます。また、社会的信頼を獲得し、従業員のモチベーション向上や人材の確保につなげることもできます。
人的資本開示には、「ダイバーシティ」「コンプライアンス・倫理」「人材育成」といった要素がポイントとなります。障害者雇用はこれらの項目に関連性があり、大きな影響を与えるものとなります。多様性の実現やコンプライアンス遵守に寄与することや、従業員のエンゲージメント向上にも関連しており、企業の社会的意義や存在価値の認識を高めます。
また、戦略的なアプローチを考えることにより、企業内で障害者が本業に貢献できる分野を創出し、多様性を活かしたプロジェクトを推進することが可能です。これは、障害者雇用率の達成だけでなく、企業の多様性と包摂性の強化、新たな人材活用やイノベーションの促進に寄与することに繋がります。
障害者雇用を企業の中でどのように位置づけるのかは、長期的な企業価値向上に大きな影響を及ぼすのです。

動画で解説

参考

障がい者雇用率の未達成による「企業名公表」の影響とは?(HRプロ)

「障がい者雇用ビジネス」とは? サービスの仕組みと利用実態を解説【前編】(HRプロ)

「障がい者雇用ビジネス」とは? 企業にとってのメリットは何か【後編】(HRプロ)

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