高次脳機能障害者の仕事内容や配慮について、知っておきたいポイント

高次脳機能障害者の仕事内容や配慮について、知っておきたいポイント

2018年10月11日 | 障害別の特性・配慮

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高次脳機能障害は、事故や病気で脳に損傷を受けたために、その後遺症として記憶や注意、社会的行動などの認知機能が低下した状態をいいます。高次脳機能障害は日常生活の中で現れますが、外見や少しの関わりでは障害があると見えにくいため周りの人には理解しにくい障害と言われています。

ここでは職場における高次脳機能障害者の仕事内容や配慮について、知っておきたいポイントについてお伝えしていきます。具体的な仕事内容や、どのような配慮が必要なのか、就職・復職までの一般的なプロセスについて、また相談窓口を紹介しています。

仕事で見られる高次脳機能障害の特性

高次脳機能障害の就労上における一般的な特性は、以下のようなものがあります。

・新しい作業の工程や留意すべき点が覚えられず、覚えたとしても短時間で忘れてしまう。
・作業内容によって、習得するのに時間がかかる。
・口答のみでの指示が理解しにくい。
・てきぱきと作業を処理することが苦手である。
・自発的な行動が苦手、周囲のことに気が散ってしまう。
・接客や電話応対などでの臨機応変な対応が苦手である。
・同時に複数の作業をこなすことが苦手である。
・集中力が続かない、作業にムラが出やすい。
・周囲の状況に気づけなかったり、逆に余計なことに気が向いてしまうなど、注意の向け方にアンバランスさがある。
・疲れやすい(本人は気づいていないことがある)。
・気持ちの面で意欲が湧かない、気分が沈みがち、イライラしてしまいがちなことがある。
・職場での適切なコミュニケーションが図りにくい。
・会話などで適切な応答が苦手である。
・場の空気を読むことが苦手である。
・発症・受傷前の能力を現状でも維持していると捉えがちで、現在の自身の状況を客観的に把握することが苦手である。

しかし、特性は個別性が高いため、全ての高次脳機能障害に当てはまるわけではありません。あくまでもこれらの特性は一般的な特性を列挙したものとして考えておくとよいでしょう。

高次脳機能障害者がいる職場における雇用管理上の配慮

高次脳機能障害者の雇用管理上の配慮として求められることについて、見ていきましょう。。

全体的なこと

スケジュール帳やメモリーノートの活用

スケジュール帳やメモリーノートを活用することによって、1日のスケジュールや覚えておくべき事項を視覚的に把握することで、いつ何をすべきかが理解されやすくなります。

また、担当者がこれらを活用して対象者と情報共有することで、対象者が記載した事項に間違いがないか、確実に遂行されているかを確認することもできます。

作業の進め方

・ 作業の定型化
・ 作業マニュアルの作成
・ チェック表による作業の確認

作業に対する指示の仕方

作業は1つずつ行うようにする

複数の作業を同時並行で行うことを苦手と感じる対象者が多いです。1つずつていねいに作業を行えるようにしていくとよいでしょう。

口答での指示は、短くかつ明確にする

指示内容を理解しやすくなり、メモを取りやすくなります。

指導担当者を決める(複数でも可)

指導、指示内容に一貫性があることが重要です。はじめのうちはできれば担当者は1人のほうがわかりやすいと思いますが、会議等やTEL、来客応対等が多く席を外すことが多い場合には、複数の担当者を立てておくこともよいでしょう。

作業や仕事ぶりに対するフィードバック をきめ細かく実施する

フィードバックは、評価結果だけではなく、実際の行動や事実のほか、課題点やほめられるべき内容等について、改めてじっくりと話し合ったり、動機づけたりしながら、今後の成長につながるアドバイスを与えましょう。

働きやすい環境づくり

休憩時間の確保、勤務時間について

疲れやすいことが多いので、こまめに休憩を取れるようにしておくとよいでしょう。また、就業時間については、はじめからフルの勤務時間ではなく、対象者の様子を見ながら段階的に延長していくことをおすすめします。

職場の上司、同僚による日常的な声かけ

業務中は仕事に集中させるため、作業中に声をかけるのをできるだけ避け、作業のきりがいいときや休憩の時間などを活用するとよいでしょう。

定期的な面談や相談の実施

不安などを受け止めるほか、できていることをきちんと認めることで自信や安心感を持ってもらうことができます。また、会社の中で役割をきちんとこなしていることをフィードバックすることによって、本人の職場への帰属意識やモチベーションを上げることに繋がります。

指導担当者や相談役などの役割を分担する

業務上の担当者を置くことは大切なことですが、業務における担当、職場全体の相談や面談を行う担当など役割を分担することで、担当者一人(一部署)にかかる負担を軽減することができます。また、対象者にとっても、誰に何を相談するのがよいかを明確にすることで安心感を与えることができますし、職場の他の人とのコミュニケーションを図る機会にもなります。

とはいえ、一般的な対応が全ての高次脳機能障害者に当てはまるわけではないので、対象者の状況や職場環境を見ながら、職場にあった配慮の方法を検討すると良いでしょう。このときにできないことよりもできることに目を向けて(能力や環境も含めて)、何が活用できるのかを考えていくことが大切です。

職務内容をどうするのかは、雇用や職場復帰のポイント

高次脳機能障害者を雇用する、または職場復帰させるに当たり会社が悩まれるポイントの一つに「職務内容の設定」があります。一般的には「手順に沿って一連の流れで遂行できる作業(定型作業)」「判断を伴わないまたは判断基準が明確な作業」が向いています。

とはいえ、雇用管理上の配慮と同様に高次脳機能障害は個別性が高いため「向いている仕事はこれです」と一概には言えません。また、職務経験やスキル、希望する職務を把握して会社側が提供できる職務との関連性の中で決めていくことが大切です。

職務内容を決定する際の判断要因とは?

職務内容を決定する際の判断要因には、次のようなことが上げられます。これらの点を考慮しながら、職務内容を決めていくとよいでしょう。

・障害の状況
・職務経験・スキル
・本人の希望
・会社が提供できる職務

高次脳機能障害者が実際に携わっている業務例

いろいろなことを考慮する必要がありますが、実際に高次脳機能障害者が実際に携わっている業務例を見ていきましょう。

製造関係

・ 手順が定型化した組立作業
・ 梱包容器の組立・解体
・ 袋詰め、判断が明確な分別作業
・ ラベル貼り

事務的な作業

・PCによる定型的なデータ入力(顧客情報、アンケート、出退勤データ、伝票等の入力)
・ 紙媒体の電子データ化(スキャニング)とデータ整理
・ 会議資料のコピー
・ 消耗品や備品等の管理・補充
・ コピー機の用紙補充
・ 郵便物の仕分け・配付・発送
・ ダイレクトメールの封入・封緘
・ スタンプ押し
・ 給茶器や給湯室の管理
・ リサイクルペーパーの仕分け、メモ用紙の作成

その他

・ スーパーマーケットでの品出し作業、バックヤード作業(野菜や惣菜などの
カット・計量・袋詰め・結束・値札シール貼り、段ボール整理など)
・ 衣料店などでの商品出し、バックヤード作業(POPのカット、ハンガーかけ、サイズチップ整理、袋出しなど)
・ 倉庫内作業(ピッキング作業など)
・ 介護補助業務
・ 調理補助業務
・ 印刷補助業務 など

労務系の作業

・会議室や休憩所、駐車場等の清掃
・生花の水やり
・リサイクルペーパー等の回収・分別
・カートやかごの洗浄
・洗車

高次脳機能障害者の就職や職場復帰までのプロセス

治療を終えた後、高次脳機能障害者はどのようなプロセスを経て、就職や職場復帰をするのかを見ていきます。

医学的リハビリテーション

まず、医療機関等で医学的リハビリテーションを受けます。これは、主にリハビリテーション病院などで実施されることが多いでしょう。
・ 薬物治療や外科的治療の実施。
・ 記憶や注意力など認知面の機能の状態を把握し、回復を図る。
・ 認知面で障害が残る場合の代償手段の獲得を目指す。

社会リハビリテーション

次に、社会リハビリテーションで社会生活に必要なスキルや能力を習得していきます。これらは、主に障害者支援施設で実施されます。
・日常生活や社会生活を送る上で必要な能力(調理・洗濯・掃除・公共交通機関の利用)
・金銭管理などの生活に必要な活動)を高める。
・作業等を通して生活リズムの確立や体力の向上を図る。
・他者とのコミュニケーションを通じて対人技能の向上を図る。

職業リハビリテーション

医学的リハビリテーション、社会的リハビリテーションを終えると、就職や復職に向けた職業リハビリテーションを行っていきます。これは、主に就労支援機関で実施します。
・職業訓練、模擬的な作業場面や職場実習を通して職場における課題や配慮事項などの把握代償手段の獲得を目指す。
・適切な職務の選択や職場環境の調整により就職や職場復帰を目指す。
・就職や職場復帰後のフォローアップを実施する。

このプロセスは一般的な例であり、個人の症状や支援の方針、社会資源の状況(地域によって差があります)などによって利用する機関や施設は異なります。また、病院や施設、支援機関によってはこの3つのリハビリテーションのうち、複数を織り交ぜながら実施している場合もあります

リハビリテーションに関わる機関は高次脳機能障害に関する知識や高次脳機能障害者のことを詳しく把握しています。高次脳機能障害者の雇用を検討する場合や職場復帰を進める際には企業だけで悩まず、これらの機関に今後の進め方について積極的に相談していくとよいでしょう。

高次脳機能障害の就職・復職に関する相談窓口

高次脳機能障害の就職・復職に関する相談をする場合には、高次脳機能障害支援拠点機関または地域障害者職業センターへ相談できます。

地域障害者職業センター

独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構が運営し、各都道府県に設置されています。障害者職業カウンセラーが配置され、ハローワーク等の関係機関と密接な連携の下、障害者に対して職業評価、職業指導、職業準備支援、ジョブコーチによる支援事業等の専門的な職業リハビリテーションを、また事業主に対して雇用管理に関する助言等を行っています。

高次脳機能障害支援拠点機関

障害者総合支援法に基づき専門性の高い相談窓口(支援拠点)として、各都道府県のリハビリテーションセンター、大学病院、県立病院等に1箇所~複数箇所設置されています。

支援コーディネーターが配置されており、高次脳機能障害者やその家族、関係機関等からの相談を受け付け、生活や就労などに関して地域の福祉・医療機関等と連携しながら支援したり、高次脳機能障害への理解促進のための普及啓発や、相談支援の実務に役立つ研修等を実施しています。この他、支援拠点機関の中には、医療や福祉と一体的なサービスを行うこととしている機関もあります。

高次脳機能障害支援拠点機関の相談窓口連絡先はこちらから

動画の解説はこちらから

まとめ

職場における高次脳機能障害者の仕事内容や配慮について、知っておきたいポイントとして、どのような配慮が必要なのか、就職・復職までの一般的なプロセスについて、また相談窓口を説明してきました。

近年、医療の進歩により身体の機能が一定程度回復する一方で、高次脳機能障害者は増加しています。事故にあったり脳血管障害を発症して高次脳機能障害者になる可能性は誰にでもあります。高次脳機能障害への理解と一定の配慮があれば戦力となることができますので、相談窓口なども活用しながら検討することができるでしょう。

参考

高次脳機能障害の障害者と一緒に働くときに配慮すべき点とは?

高次脳機能障害とはどのような障害?~原因や特徴~

障害者職業センターと障害者就業・生活支援センターの違いとは?

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