障害者の働く場拡大になるか、水福連携の取り組み

「水福連携」は、農業と福祉の連携による「農福連携」の水産版の取組みです。漁業と福祉施設が連携して商品を作る取り組みなどを行ない、障害者の働く場を広げていくことを目的としています。

農業と同じように漁業も少子高齢化や後継者がいないなどの理由で、人手不足が深刻になっています。各地域において水福連携の取り組みが行われてきている状況について見ていきたいと思います。

農福連携に関する記事はこちらから
 ↓
政府が農福連携の推進計画、農業分野の障害者雇用は進むか

障害者雇用の農業分野における現状と動向

能登かき養殖の水福連携 七尾の取り組み

七尾湾の特産品「能登かき」の産地で知られる石川県七尾市中島町で、水福連携の試みが行われています。就労継続支援事業所を利用する精神障害者や知的障害者がカキの養殖作業の一部を担っているのです。

職場は、水産会社の作業場で、就労継続支援事業所の利用者と水産会社のパート従業員が、長さ3メートルほどの針金にカキの稚貝が付着したホタテガイとパイプを交互に通していきます。これは、カキが育ちやすいよう一定間隔を保つ「種つなぎ」と呼ばれる作業で、10個ほど連ねて海に沈めていきます。この作業は、単純なものの潮の流れに負けると貝が針金から外れてしまうため、大切な作業になるそうです。

今までは、70代の男性アルバイトが担っていましたが、体調を崩し辞めてしまっていました。また、社内にいるパートの多くは60代や70代となっており、若い働き手が確保できず、多様な働き手が必要となっていました。作業はシーズンの11月~5月ごろの期間限定とはなるものの、利用者の就業の幅が広がることが期待されています。

農業分野においては、農業人口が減っており、高齢化が深刻な問題となっていますが、漁業分野でもおなじように漁業人口が減り、高齢化が進んでいます。第一次産業界で若手就業者の確保が難しい中で、障害者の働く場所を増やそうとこのような取り組みが各地で行われています。

水産―福祉―畜産が豚ブランド3者連携 鎌倉の取り組み

神奈川県鎌倉市では、水産―福祉―畜産が連携し、海岸に漂着する海藻を飼料にして新たなブランド豚肉を作る取り組みをはじめました。海藻の回収や飼料に配合しやすいように粉砕する作業は知的障害者が担っています。海藻粉末を給与して育てた豚肉は脂の質が改善され、味に深みが出るということで、関係者は「年末までには商品化したい」と、新しい特産開発を目指しています。

海岸に打ち上げられる海藻の多くは、経費をかけてごみとして処分されています。漂着する海藻は食用にもなるのに、お金をかけて処理されることを知り、畜産と結び付けられないかと考え、この取組みがスタートしました。

とは言え、海藻の回収、乾燥、粉砕を生活介護施設に依頼したのは、健常者に同じ作業をしてもらうと委託料が高く、現実的でないという現状もあるようです。

障害者側は鎌倉漁協から漂着海藻の回収許可を取得し、漁協、障害者、養豚との水―福―畜の連携体制をつくり、障害者が地元社会と結び付き、労働と収入機会を創出することができましたが、これを継続的に運営してビジネス化していくには、もうひと工夫が必要になりそうです。

「地場産業障がい者就労促進事業」の取り組み 北海道

北海道では、人手不足が深刻な地域の水産加工業をはじめとした地場産業の新たな担い手として、障害者の就労を促進し、水福連携など福祉と地場産業との連携により新たな就労の場を創出し、地域での自立を促進する取り組みが行われています。

この「地場産業障がい者就労促進事業」では、次のような事業が行われています。

コーディネーター派遣による地場産業と障害福祉サービス事業者等とのマッチング支援

水産加工業をはじめとした地場産業にコーディネーターを派遣し、障害福祉サービス事業者等とマッチングを支援し、障害者雇用を促進する。

受入事業者に対する障がい者の就労継続支援のための相談サポート

受入事業者を対象に、障害者を継続して雇用するためのノウハウ等をアドバイスし、障害者の就労継続を支援する。

事例報告会の開催

関係事業者、障害者の就労支援機関などを対象とした事例報告会を開催し、事業成果の浸透を図る。

「障がい者雇用事例報告会」は、下記の開催が予定されているようです。

・開催地:網走市・紋別市・苫小牧市
・開催予定時期:令和元年12月中旬(予定)
・報告会内容:
ミニ講和「地場産業における課題と新たな人材」
事業所報告「障がい者雇用の現場から」
総括提起「障がい者のスキルをどう伸ばすか」「障がい者雇用に係る留意点」

出所:北海道の「水福連携」の取組み(㈱ピーアールセンター)

まとめ

農業と福祉の連携による「農福連携」という言葉はかなり浸透してきましたが、漁業でも「水福連携」に取り組むところが出てきています。農福連携と同じように、障害者の働く場を広げていくことを目的として、漁業分野と福祉施設が連携して仕事ができる体制をつくろうとしています。

一方で、働く場所の提供ができるとは言え、あくまでも訓練や就職の準備としての福祉との連携という位置づけになっており、雇用ともいえる状況にもっていくにはまだまだかなりの工夫が必要になってくるでしょう。農福連携もそうですが、働く場所としての確保はともかくとして、それを継続的に行うためのビジネスモデルにすることを目指した取り組みが必要になっていると考えます。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です