発達障害のある人が職場で発揮するためには、いくつかのポイントがあります。例えば、仕事の指示の出し方や指示内容の確認などをちょっと工夫するだけで大きく変わります。
今回は、発達障害を理解した上で配慮したいこと、周囲の人はどのようなサポートをすればお互いによい関係を築くことができるのかについて見ていきます。
発達障害を理解した上で配慮したいこと
弱点のカバーで能力が活かせないか考える
職場でのサポートにおける基本的なスタンスは、発達障害の人の弱点をカバーし、持っている能力を発揮できるように働きかけることです。例えば、判断が必要な業務を任せると困難さがある人でも、ルーチン業務を完璧にこなすなど能力や特性に合わせた業務を任せることで、活躍の度合いは大きく変わります。
一方で、発達障害の人の特性に合わせた業務分担が、周囲の人には「えこひいき」と誤解されることがあります。特定の個人を不当に優遇している等の不平不満が出ないように、職場の中で発達障害に関する理解を深めておくことが重要です。周囲の社員が理解していないと、それが不満につながり、組織全体の仕事へのモチベーションにも影響が出てくることがあります。
意欲を引き出す
発達障害の人の多くは、過去の失敗から自尊感情が低下しています。「がんばっているね。」などのちょっとした声かけをしたり、ときには話を聞いて生きづらさに共感を持ったりすることが本人への励ましになり、意欲を高めることになります。
また、できるようになったから、次はこの仕事を任せるなど、スモールステップで成功体験を積み上げることで、業務の苦手な領域が減り、できることが増えていきます。しっかり仕事ぶりを見ているということを相手に伝わるようにしましょう。
叱るより諭す
業務上の失敗や問題行動に対して、怒りをぶつけたり、責め立てたりしてもマイナスの効果しかありません。怒りは発達障害の人の自尊感情を低下させ、意欲を失わせてしまいます。そして、自信をなくすことで、業務の苦手意識が高まり、同じ失敗を繰り返すことになってしまうこともあります。
また発達障害の人は怒りに気を取られ、肝心の指摘内容に意識を向けることができなくなります。失敗に対しては冷静に諭し、失敗の原因を探り、改善点を話し合うことが大切です。
相談に乗る
ひとつの考えにとらわれ、柔軟な対処ができないことがあります。そのため仕事において、堂々巡りを繰り返すことがあります。なぜ、仕事がうまくいかないのか、対処法が考えられずに悩んでいたり、どういう工夫や努力をすれば、業務を完遂できるのかがイメージできずに困っていたりします。相談を持ちかけられたときには、可能な限り話を聞くようにすると良いでしょう。
指示は簡潔、明確にだし、内容を確認する
発達障害の人は、「だいたい」「すぐに」「早く」など、曖昧な指示は理解しにくいことがあります。「Aの作業はここまで(数でも時間でも工程でもよいが、どの部分までかを明確にする)終わったら中断して、Bの仕事を何時までに仕上げる」といった具体的な指示を出します。
指示自体を簡潔、明確に出すとともに、指示内容や伝達事項の確認も大切です。また、業務の指示でわからない部分は必ず相談に来るよう、指示しておきましょう。
「これぐらい自分で判断できるだろう」と、こちらの思い込みで進めてしまうのではなく、発達障害のある人がどのように感じているのかを知ることが大切です。具体的な例を見ていきましょう。
Cさんは、人とのコミュニケーションをとることができず、指示内容などを自分の勝手な解釈で進めてしまうため、職場のトラブルが絶えませんでした。そこで、職場の上司の勧めで、Cさんは発達障害専門の病院へ来院することにしました。診察を続けるうちに、次のような考え方が職場で問題を生じさせていることがわかりました。
・人に相談したり、聞いたりすることに意義を見出していない。
・自分の考えと、上司の指示との間にズレがあることに無頓着。
問題点がはっきりしたので、人の意見を聞くことでうまくいくという成功体験を積むことを目標として、わからないことは必ず人に聞くこと、また、上司には相談に来るよう指示してもらうことを行ないました。
このようにした結果、少しずつ作業前に上司に相談するようになり、相談がない場合は上司が指示内容の確認を取るようになりました。その結果、人に聞くことに抵抗がなくなり、わからないことは必ず確認するという意識をもつことができたのです。今ではそれが当たり前になり、作業に失敗がなくなり、スムーズにこなすようになりました。
また、人に聞くことができるようになると、連絡や報告もできるようになり、組織の中での役割がこなせるようになったということです。
Cさんは、職場の上司の勧めで、発達障害専門の病院へ来院し、良い結果を得ることができました。しかし、社員に直接伝えることはなかなか難しいことし、信頼関係がしっかり構築されていないとトラブルの元にもなりかねません。もし、受診を勧めるようなことを考えているのであれば、十分に配慮や注意して進めることが必要です。
そんなときに活用できるのが、産業医です。多くの企業では、産業医を配置していると思います。すべての医師が発達障害の詳しい知識を持っているとは限りませんが、発達障害の傾向があると思われることが原因の悩みなどがある場合には、発達障害の専門の病院があることを産業医から伝えてもらうことができるかもしれません。産業医との連携を図ることを大切にしてください。
環境調整を行なう
感覚過敏の人への対応として、光や音など苦手な刺激を軽減するようにします。例えば、音に対して神経過敏がある人をコピー機の側に座らせると、コピー機の音が騒音に聞こえ、仕事に集中できなくなります。このようなときには、席を移動させるなどの必要な対応をとります。
弱点をカバーする能力を引き出すヒント
説明して、本人に納得させる
責め立てたり、まくし立てたりしても、混乱させるだけで、肝心の用件は伝わりません。冷静に何が問題になっているのかを指摘し、納得させることが大切です。その上で、改善策や解決策を話し合い、実行するように指示します。
対人関係を考慮する
発達障害の人には、対人関係が極端に苦手な人がいます。双方から個別に話を聞き、両者の仲介、調整を図るようにしましょう。発達障害のある人が苦手だと考えている人の話が受け入れられない時には、会社や本人のために発言していることを論理的に説明するようにすると良い場合もあります。しかし、あまりにも難しいようであれば、状況に応じて配置転換などを考えることもできます。
得意なこと、不得意なことを把握する
発達障害の人には、特性によるはっきりした得意不得意があります。何ができて、何ができないのか本人から説明を受けます。その上で作業スケジュール表や作業工程表を用意するなど、作業手順の工夫を考えます。また、得意な業務への変更、あるいは配置転換を考えることもできるでしょう。
指示を的確に行なう
「だいたい」「すぐに」「急いで」「早く」など、程度を示す曖昧な言葉が通じにくいので、締め切りの日時や作業内容優先順位などは具体的に指示します。また、「自分で考えて進めてほしい」という指示では、混乱して何もできなくなる人がいます。どのように行なうのか作業手順などをはっきり示すほうがわかりやすくなります。
確認を行なう
こちらからの指示に対して、指示とおりに出来ない場合には、やり方がわからない、勝手な解釈をしているなどの原因が考えられます。このような時には、指示内容の確認を取るようにします。また、わからないことがあれば必ず相談するように指示し、作業合間に困っていることがないか声をかけるようにします。
専門家に相談する
発達障害の特性による問題から、お互いに話をしていても誤解が生じることがあります。そのような場合、発達障害に詳しいカウンセラーや医療関係者に入ってもらうと、問題がスムーズに解決することがあります。
専門家が入ることによって、発達障害のある人に対しては、相手の言いたいことを理解しできるようにわかりやすく伝えることができますし、同僚や上司など一緒に働く人に対しては、問題点について発達障害の特性を踏まえた解決策の提案をすることができます。
動画での解説はこちらから
まとめ
発達障害のある人への職場でのサポートのポイントについて見てきました。発達障害のある人が職場で能力を発揮するためには、いくつかのポイントがあります。発達障害を理解した上で配慮したいこと、強みを引き出すヒントについて示してきましたので、参考にしてください。
また、発達障害の人に対する配慮とともに気をつけたいのが、周囲の社員への理解促進です。発達障害の人の特性に合わせた業務分担が、周囲の人には「不平等な扱い」と誤解されることがないように、また不平不満が出ないように、発達障害について職場の理解を深めておくことが重要です。周囲の社員が理解していないと、それが不満につながり、組織全体の仕事へのモチベーションにも影響が出てしまうことがあります。
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参考
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