【大人の発達障害】ASD診断のカギ「有名心理テスト」から見る特性把握

【大人の発達障害】ASD診断のカギ「有名心理テスト」から見る特性把握

2024年07月4日 | 障害別の特性・配慮

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今回は、発達障害、特に自閉症スペクトラム(ASD)の特性について、職場での理解と対応のために役立つ情報をお届けします。

発達障害は、社会的な相互作用やコミュニケーションに影響を与える特性を持つため、職場での適切な対応が必要となります。ASD診断のカギとなる有名な心理テストである「サリーアン課題」と「アイスクリーム課題」から、発達障害の特性についての理解を深めていきましょう。

発達障害とは?

発達障害は、発達の過程で生じるさまざまな障害の総称であり、知的発達や行動、社会的相互作用に影響を与える特性を持ちます。発達障害は、脳の機能に関連する先天的な要因によるものが多く、後天的な環境要因も影響することがあります。

発達障害の定義と一般的な特性について紹介します。発達障害は、大きく以下の3つに分類されます。

自閉症スペクトラム(ASD)

社会的な相互作用やコミュニケーションに困難を伴い、行動や興味が限られたパターンを示すことが特徴です。ASDの特性は個人差が大きく、軽度から重度までさまざまです。

注意欠陥・多動性障害(ADHD)

注意力の不足や衝動的な行動、多動性が見られます。これにより、日常生活や学業、仕事において困難が生じることがあります。

学習障害(LD)

特定の学習領域において、平均的な知能にもかかわらず、読み書きや計算などに困難を示す障害です。学習における特定の課題に直面することが多いです。

自閉症スペクトラム(ASD)について知る

自閉症スペクトラム(ASD)の特性

自閉症スペクトラム(ASD)の特性を理解するための心理テストを紹介していきますが、まず、自閉症スペクトラム(ASD)について、もう少し詳しく見ていきます。自閉症スペクトラム(ASD)は、社会的な相互作用やコミュニケーションに困難を抱える特性があり、以下のような特徴があります。

・社会的な相互作用の困難
他者の感情や意図を理解するのが難しいため、適切なコミュニケーションが困難になります。視線を合わせることや、共感を示すことが苦手な場合があります。

・限定された興味や反復行動
特定の物事に強い興味を示し、同じ行動を繰り返すことが多いです。環境の変化に対して強い抵抗を示すこともあります。

・感覚の過敏性
音や光、触覚などに対して非常に敏感であることがあります。
ASDは、個々の特性や支援の必要性に応じて軽度から重度までさまざまであり、その特性に応じた適切な支援が求められます。

心理テストの役割

心理テストは、発達障害の特性を理解するための重要な手段です。これらのテストは、個人の認知機能や社会的スキル、コミュニケーション能力を評価することで、特定の障害や特性を明らかにする役割を果たします。

私たちは生活する中で、他人の感情や意図、信念を理解し、それに基づいて行動する能力を使っています。これを心の理論(Theory of Mind)と言います。この能力は、社会的な相互作用やコミュニケーションにおいて非常に重要なものとなっています。心理テストを通して、次のような点を評価していきます。

・他人の視点理解
心の理論を評価するテストでは、被験者が他人の視点を理解できるかどうかを測定します。これにより、他人の感情や意図を正確に推測し、適切に対応する能力を評価します。

・誤信念理解
誤信念課題(False-belief tasks)などのテストを通じて、他人が誤った信念を持っている場合にその視点を理解できるかを確認します。これにより、他人の誤解や誤信念に対する理解力を測定します。

・社会的スキルの評価
心の理論を評価するテストは、社会的スキルやコミュニケーション能力の評価にも役立ちます。これにより、被験者がどの程度他人と効果的に関わることができるかを明らかにします。

・他人の視点や意図を理解する能力の測定
心理テストは、他人の視点や意図を理解する能力を測定するために、さまざまな課題を提供します。これにより、被験者の社会的認知能力を評価し、発達障害の特性を明確にします。

では、実際に心の理論を評価する代表的なテストを見ていきましょう。

サリー・アン課題

まずサリー・アン課題を見ていきましょう。サリーとアンという二人のキャラクターが登場します。

サリーはお気に入りのビー玉を持っています。
サリーはビー玉を籠の中に入れて、そのまま部屋を出ます。
サリーが部屋を出た後、アンは籠の中のビー玉を取り出して、自分の箱の中に隠します。
サリーが部屋に戻ってきて、ビー玉で遊びたくなります。

「サリーはビー玉をどこで探すでしょうか?」

サリーアン課題の正解は「籠の中」です。これは、サリーがビー玉を最後に見た場所が籠の中であり、部屋を出ている間にアンがビー玉を移動させたことをサリーが知らないためです。ASD(自閉症スペクトラム障害)の特性を持つ人々は、この課題において「箱の中」と答える傾向があります。これは、「他者の視点に立つことの難しさ」「自分の知っている情報と他者の知っている情報の区別の難しさ」という理由によります。

・他者の視点に立つことの難しさ
ASDの特性を持つ人は、他人の視点を理解することが難しいため、サリーが知らない情報(ビー玉が箱に移されたこと)を前提に回答してしまいます。

・自分の知っている情報と他者の知っている情報の区別の難しさ
ASDの特性を持つ人は、自分が知っていることを他人も知っていると考える傾向があります。サリーが知らない情報を基に回答するため、正答に至らないことが多いです。

このサリーアン課題は、他者の視点に立てるかを評価します。被験者が他者の視点に立って物事を考える能力を評価することを目的としています。具体的には、サリーがビー玉をどこで探すかを推測することで、被験者が他人の意図や信念を理解できるかどうかを測定すること、被験者が、サリーが誤った信念(ビー玉が籠の中にあるという信念)を持っていることを理解できるかどうかを評価します。

職場ではASDの特性の人と接するときには、このような視点を考えながら、コミュニケーションや支援策を考えることが大切です。自分や一般的な認識では当たり前のことでも、ASDの人にとっては当たり前でないことがあります。多様な視点や認知の違いを理解し、尊重することができるでしょう。

また、明確な指示とフィードバックをおこなうことで誤解や混乱を減らし、業務の効率を向上させることができます。コミュニケーションを取るときには、口頭だけでなく、書面やビジュアルなど、さまざまなコミュニケーション手段を活用したり、情報を伝えるとよいでしょう。

アイスクリーム課題

アイスクリーム課題は、心の理論(Theory of Mind)を評価するために使用されるもう一つの有名な心理テストです。この課題では、他人の視点や意図を理解する能力を二重の視点から測定します。具体的なシナリオは次のようなものです。

ジョンとメアリーという二人のキャラクターが登場します。二人は公園で遊んでいます。
公園にはアイスクリーム屋さんの車が来ています。

メアリーはアイスクリームを買いたいものの、お金を持ってきていません。
そこで、メアリーは家にお金を取りに帰ります。

アイスクリーム屋さんは、売れ行きが悪いので公園から教会の前に移動することを決めます。
移動前に、ジョンにそのことを伝え、公園を出ます。

アイスクリーム屋さんは教会に行く途中でメアリーの家の前を通ります。そして、メアリーに「教会の前に行く」と伝えます。

しばらくしてジョンは宿題のことでメアリーの家に行き、メアリーの母親から「メアリーはアイスクリームを買いに行った」と聞かされます。ジョンはメアリーを追いかけて行きます。

「ジョンはメアリーがどこに行ったと思うか?」

アイスクリーム課題の正解は「公園」です。ジョンはメアリーがアイスクリームを買いに家にお金を取りに帰ったことを知っています。ジョン自身はアイスクリーム屋さんが教会に移動することを知っていますが、メアリーが教会に行く途中のアイスクリーム屋さんから「教会の前に行く」と聞いたことは知りません。ジョンが会ったときに知っているメアリーは、公園にアイスクリーム屋さんがいると思っているメアリーになります。そのためジョンは公園に行くと考えるのです。

ASD(自閉症スペクトラム障害)の特性を持つ人々は、この課題において「教会」と答える傾向があります。これは、次のような理由によります。まず先程のサリーアン課題と同じように「他者の視点に立つことの難しさ」と「自分の知っている情報と他者の知っている情報の区別の難しさ」があります。

この課題における「他者の視点に立つことの難しさ」では、ジョンとメアリーの行動を理解し、彼らがそれぞれどんな情報を持っているかを考える必要があります。ジョンはアイスクリーム屋さんが教会の前に移動したことを知っていますが、メアリーがその情報を得たかどうかは知りません。他者の視点に立つとは、相手がどんな情報を持っているのか、どんな状況にいるのかを想像することです。しかし、これは簡単なことではありません。なぜなら、自分が持っている情報や視点を超えて考える必要があるからです。

例えば、ジョンはメアリーが公園に戻ると考えるかもしれません。これはジョンがメアリーが公園から家に戻ったことを知っているからですが、メアリーが新たにアイスクリーム屋さんが教会の前に移動したことを知ったとは思っていません。

この課題の「自分の知っている情報と他者の知っている情報の区別の難しさ」では、ジョンとメアリーはそれぞれ異なる情報を持っています。ジョンはアイスクリーム屋さんが公園から教会に移動したことを知っていますが、メアリーがそのことを知っているかどうかは分かりません。一方、メアリーはアイスクリーム屋さんが教会の前に行くことを知っていますが、ジョンがそのことを知っているとは限りません。

ASDの特性を持つ人は、自分が知っていることを他人も知っていると考える傾向があります。ジョンが知らない情報(アイスクリーム屋さんがメアリーに教会に行くと伝えたこと)を基に回答するため、正答に至らないことが多くなります。

アイスクリーム課題は「二重の視点理解」を必要とする点で、サリーアン課題よりも複雑になります。「二重の視点理解」について見ていきましょう。

この課題では、メアリーの視点とジョンの視点を同時に理解する必要があります。ジョンの視点に立って考えると、彼はメアリーがアイスクリームを買いに公園に戻ると考えるでしょう。なぜなら、ジョンはアイスクリーム屋さんが教会に移動したことを知っていますが、メアリーがその情報を得たことについては知らないからです。メアリーはアイスクリーム屋さんが教会に行くことを知っていますが、ジョンはそれを知らないという二重の視点を理解しなければなりません。

アイスクリーム課題は、「人はしばしば、自分が知っている情報を他者も知っていると無意識に思い込んでしまう傾向がある」ということを教えてくれます。自分の知っている情報が他者にも共有されているとは限らないということを認識することが大切です。また、この課題を通じて、ASDの特性を持つ人々がどのように情報を処理し、他者との相互作用を理解しているかを知ることができます。

ASD傾向のあるマネジメントのポイント

発達障害、特にASD(自閉症スペクトラム障害)傾向のある人に対して、職場で思わずイラッとしてしまう状況として、次のような場面があるかもしれません。

・上司が「この資料を急いでまとめて」と指示した際、ASD傾向のある従業員は「急いで」の具体的な意味(何時までに、どの程度の詳細が必要か)を理解せず、期限に間に合わなかったり、期待されるクオリティに達しなかったりする。

・チームビルディングのイベントや昼食会で、ASD傾向のある従業員が無口であったり、会話に入れなかったりするため、チームの一体感が欠けると感じられることがある。

・突然の会議や予期しない仕事の依頼に対して、適応するのが難しく、必要以上に時間がかかったり、拒否的な態度を取ってしまったりする。

状況をうまく把握することが難しいために、職場ではふさわしくない対応があるかもしれません。そこで、業務で指示をだすときや、コミュニケーションでは、次のようなマネジメントや対応を心がけてください。

明確で具体的な指示を出す

発達障害を持つ従業員には、明確で具体的な指示を提供することが重要です。曖昧な表現や抽象的な指示は避け、具体的な手順や期待される結果を示します。

フィードバックの頻度と質をあげる

定期的なフィードバックを提供し、業務遂行の状況を確認します。ポジティブなフィードバックを重視し、建設的なアドバイスを提供してください。伝わっていないのは、本人が理解できるような伝え方をしていないことにあります。どのような表現や情報の出し方をすると理解できるのかを考え、伝える質をあげていくことが大切です。

視点の共有と共感

自分が見えていると思う視点で、他の人が見えている、考えているわけではありません。特に発達障害、ASD傾向の人は、他者の視点を理解することが難しい特性があります。このことをを理解し、共感を持って接することが重要です。

まとめ

今回は、発達障害、特に自閉症スペクトラム(ASD)に関する特性を理解するための重要な心理テストであるサリーアン課題とアイスクリーム課題について詳しく見てきました。

このテストは、他人の視点や意図を理解する能力を評価するものであり、ASD特性を持つ人々がどのように情報を処理し、他者との相互作用を理解するのかを示すものです。どのような「見方」や「考え方」をしているのかを理解するのに役立ちます。

そのうえで、発達障害を持つ従業員との効果的なコミュニケーションや支援方法では、周囲にいる人が適切な配慮を示すことが必要です。具体的な指示の提供、フィードバックの質の向上、そして共感を持った対応をすることにより、職場での誤解や摩擦を減らし、全員が安心して働ける環境を作りやすくなります。

心理テストの結果は、発達障害の特性を理解するための一つの指標に過ぎません。この結果が全てではなく、多様な視点からの理解が大切です。発達障害は、一人一人異なる特性や強みがあります。多様な視点からの理解を深め、個別のニーズに対応することが、企業内での効果的な支援とコミュニケーションに繋がります。

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