うつ病のある社員への対応|管理職が確認したい仕事と配慮

うつ病のある社員への職場対応|管理職が確認したい仕事への影響と配慮

2024年07月5日 | 障害別の特性・配慮

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「障害者雇用は、配慮の話ではなく、設計の話だ。」

2026年8月29日更新

社員から「うつ病と診断された」と相談があった。あるいは、休職や通院を経て、会社もうつ病であることを把握している。

このとき管理職は、「仕事を減らした方がよいのだろうか」「どこまで本人に聞いてよいのか」「励ましてはいけないのだろうか」「自分が体調を見ながら判断すべきなのか」と迷うことがあります。

うつ病について基本的な知識を持つことは大切です。しかし、診断名を知っただけでは、職場で必要な対応は決まりません。同じうつ病でも、現在の状態や仕事への影響、必要な調整は人によって異なります。

管理職に必要なのは、本人の病状を診断することではなく、「現在、仕事のどこに影響が出ているのか」を確認し、必要な調整や判断を適切な役割へつなぐことです。

この記事では、うつ病のある社員と働くときに、管理職・人事が職場で確認したいことを整理します。

この記事でわかること
  • 管理職が知っておきたいうつ病の基本的な特徴
  • 診断名だけで仕事や配慮を決めない理由
  • うつ病のある社員について職場で確認したいこと
  • 「とりあえず仕事を減らす」前に考えたいこと
  • 管理職・人事・産業保健や医療の役割の違い

うつ病とは|管理職が知っておきたい最低限の基礎

うつ病では、気分の落ち込みだけでなく、

  • これまで関心があったことへの興味が低下する
  • 疲労感が強くなる
  • 集中しにくくなる
  • 判断や決定に時間がかかる
  • 睡眠や生活リズムに変化が生じる

などが見られることがあります。

ただし、症状の現れ方や程度は一人ひとり異なります。また、治療を受けているからといって、常に同じ状態が続くわけでもありません。

ここで管理職が注意したいのは、「うつ病なら集中できない」「うつ病なら負荷をかけてはいけない」と、診断名から職場での対応を直接決めないことです。

病気について知ることと、その社員にどのような仕事上の調整が必要かを判断することは、別の問題です。

同じ「うつ病」でも、仕事への影響は同じではない

例えば、同じうつ病と診断されている社員でも、通常の勤務時間では働けているが、複数の仕事を同時に進めることが難しい人。集中力は保たれているが、人との調整が多い仕事で疲労が強くなる人。仕事そのものよりも、長時間勤務が続くことで体調への影響が出ている人。など、仕事との関係は異なります。

そのため、「うつ病だから仕事量を半分にする」「うつ病だから電話対応を外す」「うつ病だから在宅勤務にする」と一律に決めるのではなく、現在の仕事のどこで支障が生じているのかを見ることが重要です。

例えば、仕事量なのか。締め切りなのか。複数業務の切り替えなのか。判断の多さなのか。勤務時間なのか。対人調整なのか。によって、必要な対応は変わります。

「症状」と「仕事で起きている事実」を分ける

管理職は、本人の日々の仕事を見ているため、「最近、調子が悪そうだ」「うつ病の症状が出ているのではないか」と感じることがあります。

しかし、管理職が医学的な状態を判断する必要はありません。

職場で確認できるのは、例えば、「提出期限を過ぎることが増えた」「確認漏れが続いている」「遅刻や欠勤が増えている」「以前より仕事の進行に時間がかかっている」「本人から、特定の仕事について負担が大きいという申し出があった」といった事実です。

「集中力が落ちているのは、うつ病が悪化したからだ」と原因まで決めるのではなく、職場で何が起きているのかを具体的に確認し、その情報を本人との対話や必要な専門的判断につなげることが管理職の役割です。

管理職は本人に何を確認すればよいのか

うつ病のある社員と面談するとき、「病気について詳しく聞かなければならない」と考える必要はありません。

管理職として確認したいのは、主に仕事との関係です。

例えば、

  • 現在、仕事で進めにくいことはあるか
  • 特に負担を感じている業務や場面はあるか
  • 今行っている配慮や業務調整は機能しているか
  • 困ったときに誰へ相談できる状態になっているか
  • 就業上の調整について会社に相談したいことがあるか

といった点です。

治療内容や私生活について必要以上に詳しく聞くことではなく、本人の健康情報のうち、仕事を続けるために何を確認する必要があるのかを意識します。

また、本人が話したことをすべて管理職一人で抱える必要もありません。勤務条件や会社としての配慮判断が必要であれば、人事など適切な役割につなぎます。

配慮は「とりあえず仕事を減らす」ことから始めない

うつ病のある社員について相談を受けると、「負担を減らした方がよいだろう」と考えることがあります。状況によっては、業務量や勤務時間の調整が必要な場合もあります。

しかし、「負担を減らす=仕事を減らす」とは限りません。

例えば、複数の仕事を同時に進めることが負担なら、優先順位や進め方を整理する。判断することが多すぎるのであれば、確認する基準や相談先を明確にする。予定変更が重なることで進めにくいのであれば、仕事の渡し方を見直す。という方法もあります。

もちろん、実際に業務量を減らす必要があるケースもあります。

重要なのは、「何を減らすか」から考えるのではなく、「仕事のどこに支障があり、何を変えれば仕事が成立しやすくなるのか」を確認することです。また、一時的に仕事を調整した場合には、そのまま固定せず、状況に応じて見直します。

「頑張ってはいけない」など、禁止ワードだけで考えない

うつ病について、「『頑張って』と言ってはいけない」という話を聞いたことがある人もいるでしょう。本人の状態によっては、励ましの言葉が負担に感じられることがあります。

一方で、特定の言葉を一律に禁止すればコミュニケーションがうまくいくわけでもありません。

例えば、「もう少し頑張って」と抽象的に励ますより、「今、この仕事で一番進めにくいところはどこですか」「この締め切りで進めるのは難しそうですか」「今の業務量について確認したいことはありますか」と、仕事上の状況を具体的に確認する方が、必要な対応につながりやすくなります。

大切なのは、正しい言葉を探すことよりも、本人の状態や仕事の状況を確認しながらコミュニケーションすることです。

管理職だけで健康状態を判断しない

管理職は、本人と日常的に接しているため、仕事上の変化に気づきやすい立場です。

しかし、「働き続けられる状態なのか」「治療上、勤務時間を短くした方がよいのか」「休職が必要な状態なのか」といった医学的な判断を、管理職だけで行うものではありません。

一方で、医療側が職場の具体的な仕事内容をすべて把握しているとも限りません。そのため、それぞれの役割を分けて考えることが重要です。

管理職

日々の仕事、勤怠、業務遂行、職場で起きている変化などを確認します。

人事

勤務制度、休職制度、配置、合理的配慮など、会社としての対応や判断を整理します。

産業保健・医療

健康状態や医学的な観点から、就業上必要な情報や意見を提供します。

誰か一人にすべての判断を任せるのではなく、

それぞれが持っている情報を、会社としての就業判断につなげること

が必要です。

休職・復職が必要な段階では、日常の業務調整とは分けて考える

本人の状態によっては、通常の業務調整だけではなく、休職や職場復帰について検討する場面もあります。

この段階になると、「管理職が仕事を少し減らせばよい」という日常的な対応だけでは扱えません。

休職制度。
主治医・産業医等の意見。
復職可能性。
復職後に任せる仕事。
勤務条件。
職場の受け入れ体制。

など、企業として確認・判断する事項が増えます。

管理職だけで判断を抱えず、人事や必要な専門職へつなぐことが重要です。

うつ病のある社員への対応で、会社として確認したい4つの視点

個別のケースごとに必要な対応は異なります。ただし、会社側では次の4つの視点から整理すると、問題を捉えやすくなります。

1.仕事|何に影響が出ているのか

診断名から仕事を決めるのではなく、実際の業務で何が進めにくくなっているのかを確認します。

2.情報共有|誰が何を知る必要があるのか

健康情報を広く共有する必要はありません。

本人の同意やプライバシーに配慮しながら、仕事や配慮のために必要な情報を、必要な範囲で共有します。

3.判断基準|何を見て業務調整や配慮を決めるのか

本人の希望だけ、管理職の印象だけで決めるのではなく、仕事への影響や会社として実施できることなどを確認します。

4.役割・権限|誰がどこまで判断するのか

管理職が日常的に調整できることと、人事・会社として判断すること、健康面について専門的な確認が必要なことを分けます。

うつ病のある社員への職場対応、自社ではどうでしょうか
  • 「うつ病だから」と診断名から仕事や配慮を決めていませんか
  • 実際にどの仕事で、どのような支障が出ているか確認していますか
  • 本人の状態を管理職だけで判断しようとしていませんか
  • 一度決めた業務調整や配慮を、状況に応じて見直していますか
  • 管理職・人事・産業保健等の役割が分かれていますか
迷う項目が多い場合は、うつ病についての知識だけではなく、仕事・情報共有・判断基準・役割のどこが曖昧なのかを確認してみるとよいでしょう。
管理職が、健康状態や配慮の判断まで抱え込んでいませんか
うつ病などメンタルヘルスに関するケースでは、「どこまで声をかけるのか」「仕事をどう調整するのか」「どこから人事へ相談するのか」など、管理職が判断に迷う場面があります。
障害者雇用のマネジメント研修では、障害特性の知識だけでなく、実際の職場ケースをもとに、管理職が確認すること、現場で調整できること、人事や会社へ判断をつなぐことを整理します。

うつ病のある社員への職場対応についてよくある質問

Q:うつ病と分かったら、最初から仕事量を減らした方がよいですか

一律に仕事量を減らす必要はありません。

まず、現在の仕事のどこに支障が生じているのかを確認します。

実際に業務量の調整が必要な場合もありますが、仕事の優先順位、進め方、判断方法などを変えることで進めやすくなる場合もあります。

診断名ではなく、本人の状態と実際の仕事との関係から考えます。

Q:うつ病のある社員には「頑張って」と言ってはいけませんか

一律に禁止される言葉と考える必要はありません。

ただし、本人の状態によっては、抽象的な励ましが負担になることがあります。

特定の言葉を避けることだけに注意するより、現在の仕事で何に困っているのかを具体的に確認することが重要です。

Q:管理職は、本人の病状や治療についてどこまで聞いてよいですか

管理職が治療内容を詳しく把握したり、医学的な状態を判断したりする必要はありません。

職場では、仕事にどのような影響が出ているのか、就業上どのような調整が必要なのかを中心に確認します。

健康面について専門的な確認が必要な場合は、人事や産業保健等へつなぎます。

Q:本人から希望された配慮は、すべて対応する必要がありますか

本人の希望や困りごとを確認することは重要です。

一方で、希望された方法をそのまま実施することだけが対応ではありません。

何に困っているのか、仕事にどのような影響があるのか、希望された方法で支障が減るのか、会社として実施できるのかなどを確認しながら検討します。

Q:うつ病のある社員に休職を勧めるべきか、管理職が判断してよいですか

管理職だけで医学的な状態や休職の必要性を判断するものではありません。

職場で確認できる勤怠や仕事上の変化を整理し、人事・産業保健等と連携しながら、会社として必要な対応を検討します。

まとめ|うつ病について知ることと、職場で判断することを分ける

うつ病のある社員への対応を考えるとき、病気について知ることは重要です。

しかし、「うつ病だから仕事を減らす」「うつ病だから励ましてはいけない」「うつ病だから特定の仕事は任せない」というように、診断名から対応を決めることはできません。

確認したいのは、現在、仕事のどこに影響が出ているのか。本人は何に困っているのか。今の業務調整は機能しているのか。誰がどこまで判断するのか。健康面について誰へつなぐのか。ということです。

管理職の役割は、うつ病を診断したり治療したりすることではありません。職場で起きている事実を確認し、本人との対話を通じて仕事上必要な情報を整理し、必要な判断へつなぐことです。

そして、配慮を「仕事を減らすこと」と考えるのではなく、本人が仕事を続けるうえで何が支障になっているのかを確認し、必要な部分を調整する。

病気についての知識と、会社としての仕事・判断・役割を分けて考えることが、管理職一人に対応を抱え込ませないためにも重要です。

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