【障害者雇用】災害時の企業の危機管理: 今こそ見直すべき対策とは?

【障害者雇用】災害時の企業の危機管理 今こそ見直すべき対策とは?

2024年08月27日 | 企業の障害者雇用

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近年、自然災害や緊急事態が増加しており、企業における災害対策の重要性が高まっています。8月には日向灘の地震が発生し、その後1週間ほど、「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」発表に伴う政府としての特別な注意の呼びかけがありました。

特に、障害者雇用を行っている企業では、全ての従業員が安全に避難できるような環境整備が求められます。ここでは、障害のある従業員を含めた災害時の危機管理対策の見直すべき点や、日頃からどのような準備をしておくとよいのかについて解説します。

障害者従業員の避難で予想される課題とは?

災害時には迅速かつ的確な避難行動が求められます。しかし、障害のある従業員にとっては特有の課題があります。企業が災害時に考慮すべき主な課題について、障害種類やどのような状況が想定されるのかを見ていきます。

視覚障害

視覚障害者にとって、避難経路の確認は大きな課題です。災害時の混乱の中で、一般的な避難経路をたどることが難しく、通常の視覚的な指示や標識が意味を持たない場合があります。

特に、煙や停電など視界が悪くなる状況では、より一層の困難が生じます。視覚障害者が安全に避難できるよう、点字ブロックや音声案内システムの導入が求められますが、これらの対策が十分に整っていない職場も少なくありません。

聴覚障害

聴覚障害者にとっては、音声によるアラームや避難指示が聞こえないことが大きなリスクとなります。災害時に設置される警報システムや緊急放送は通常、音声が主な手段とされており、聴覚障害者はこれらを認識することができません。そのため、視覚的なシグナルや振動アラームの設置など、聴覚以外の情報伝達手段が必要です。

肢体不自由

肢体不自由の方にとって、階段の使用や急な移動が必要な避難は非常に困難です。エレベーターの使用が禁止される場合や、避難用スロープがない場合には、避難が不可能になるリスクもあります。企業は、バリアフリーな避難経路の確保や、肢体不自由の従業員をサポートするための適切な体制づくりを検討する必要があります。

情報伝達の難しさ

災害時において、重要な情報を迅速かつ確実に伝えることは非常に重要です。しかし、従来の情報伝達手段がすべての従業員に適切に届くとは限りません。視覚や聴覚に頼らない多様な情報伝達手段の必要性が高まっています。

そのため災害時には、音声アラームや緊急放送といった導入だけでなく、視覚や聴覚以外の手段として振動やライトの点滅、モバイルデバイスを使った緊急通知など、様々な情報伝達方法を組み合わせることが重要です。これにより、聴覚障害者や視覚障害者、さらには一時的に注意力が低下している状況にある従業員にも効果的に情報を伝えることができます。

災害時には、状況が刻々と変化します。リアルタイムの情報更新が命に直結することもあります。すべての従業員に最新情報を迅速に伝えるためには、デジタルサイネージやモバイルアプリを活用したリアルタイムの情報更新が効果的かもしれません。特に、個別のニーズに応じたカスタマイズされた通知を行うことで、より効果的な情報伝達が可能になります。

現実の状況を見据えた避難訓練が行われている?

避難訓練を行っている企業は多いですが、実際に災害が起こった際に行動できるかは、事前に障害のある従業員への配慮がどの程度されているかにより大きく変わります。

一般的な避難訓練は、通常、健常者を基準に行われており、障害のある従業員にとって十分に効果的な内容ではない場合が多クみられます。例えば、障害のある従業員が訓練に参加しやすいように配慮された避難訓練になっていることがあります。

視覚障害者が参加する訓練において、通常の視覚的な指示だけではなく、触覚や音声によるガイドを導入しているでしょうか。また、肢体不自由な従業員のための複数の避難ルートの確保や、エスコートするサポート体制の整備なども確認しておくことが必要でしょう。

地震発生時の避難訓練でエレベーターの使用を前提としているのであれば、肢体不自由者の実際の避難行動が訓練されない可能性があります。もし、このような状況があるならば、現実的なシナリオを取り入れた訓練を行うことが重要です。

災害時に備えるは物資だけでなく、心の準備も必要

災害時に必要なのは食料や装備といった物資だけではなく、生き延びるためにどのような行動を取るべきかという知識や心構えであることが、これまでの災害の経験値から強調されています。そのため様々な状況を想定し、シミュレーションを行っておくことが求められます。

なぜ、シミュレーションはそれほど重要なのでしょうか。それは、人間はこれまで経験したことのない未曾有の事態に直面すると、人はしばしば呆然としてしまい、動けなくなるからです。

東日本大震災を学生の時に体験し、その後自衛官になったある男性は、自衛官になって真っ先に上司に告げられたのは、「物と心の両面の準備をするように」という言葉だったそうです。災害時に必要なのは食料や装備だけでなく、生き抜くためにどんな行動を取るべきかの知識や心の準備が必要だというわけです。

また、アメリカのワールドトレードセンターで飛行機の突撃によりビルに閉じ込められた人が取った行動や生存者への調査結果によると、7割の人たちは呆然として動けなくなることが示されていました。

緊急時に人々が取る行動には大きく3つのタイプがあるようです。一つは冷静に状況を判断して行動するタイプで、全体に占める割合は10~15%。別の15%はパニック状態に陥り、叫ぶなどして他者の脱出をも妨害するタイプ。残りの7割は、呆然として動けなくなるタイプです。

また、生き延びるための秘訣についても触れられており、同時多発テロの生存者への調査によると、脱出前に周囲の人と話をして状況を確認した人が7割にのぼったそうです。仲間に声をかけたり、周囲とコミュニケーションを取ることは、自分の命を助けることに繋がり、加えて呆然としてしまう人をサポートすることができます。そして、それは迅速かつ冷静に行動することが大切です。

障害者を含めた全従業員が安全に避難できるためのポイント

企業が災害時にすべての従業員の安全を確保するためには、特に障害のある従業員を考慮した避難対策を講じておくことが必要です。障害者を含めた全従業員が安全に避難できるための具体的な対策として、次の点を確認しておくとよいでしょう。

避難経路のバリアフリー化

災害時の安全な避難を確保するためには、避難経路のバリアフリー化が不可欠です。障害のある従業員もスムーズに避難できるよう、物理的な環境の整備を進めることが求められます。

段差の解消

階段や高い段差がある避難経路は、肢体不自由の方にとっては大きな障害となります。これを解消するために、段差のある場所にはスロープを設置し、車椅子や歩行補助器具を使用する従業員でも安全に通行できるようにします。また、スロープの勾配は緩やかにし、滑りにくい素材を使用することで、転倒などのリスクを減らします。

スロープの設置

スロープは、車椅子利用者や杖を使用する方のための重要な設備です。建物の主要な出入り口や避難経路にスロープを設置することで、物理的な障害を取り除き、安全な避難を可能にします。エレベーターが使用できない状況下でも、スロープを利用することでスムーズな移動が確保されます。

視覚的な誘導標識の改善

視覚障害者のためには、触覚的なガイド(点字ブロックなど)を設置するほか、視覚的に分かりやすい誘導標識を使用することが重要です。標識は大きく、明確な文字とピクトグラムを用い、色のコントラストを強くすることで、視覚に不安のある方や色覚に障害のある方にも認識しやすくします。

多様な情報伝達手段の導入

災害時には迅速かつ確実な情報伝達が必要です。しかし、従来の音声による指示や警報だけでは、全ての従業員に対して十分な対応ができない場合があります。多様な情報伝達手段を導入することで、障害のある従業員にも確実に情報を届けることができます。

視覚的な信号

視覚障害のない従業員に対しては、光を使った信号や表示板などの視覚的な警報システムを設置します。例えば、赤く点滅するライトや、非常口方向を示す矢印ランプなどが考えられます。これにより、聴覚障害者にも避難の必要性を即座に伝えることができます。

触覚フィードバック

聴覚障害のある従業員には、振動するデバイスや、触覚で情報を伝えるフィードバック装置を活用することが効果的です。これらのデバイスを携帯端末やデスクに設置することで、緊急時の避難指示を振動によって通知することができます。

テキストメッセージの活用

すべての従業員が利用できる共通の連絡手段として、スマートフォンやパソコンを通じたテキストメッセージの活用が推奨されます。緊急時の状況報告や避難指示をテキストで配信することで、聴覚障害や視覚障害を持つ従業員にも正確な情報を迅速に伝えることができます。

障害に応じた避難支援チームの編成

災害時には、障害のある従業員が安全に避難できるよう、事前に支援体制を整備しておくことが重要です。障害の特性に応じた避難支援チームを編成することで、緊急時の対応が迅速かつ的確に行われるようにします。

各チームは、災害時にどのような支援が必要かを理解し、日常的に訓練を重ねることで、いざという時に即応できる体制を整えておきます。また、避難支援チームのメンバーには、それぞれの役割を明確に割り当てておきましょう。

例えば、視覚障害者を誘導する役割、肢体不自由の方をサポートする役割、情報の伝達を担当する役割などです。役割を明確にすることで、緊急時の混乱を防ぎ、迅速かつ安全な避難が実現できます。

避難支援チームは、定期的に訓練を行い、実際の災害を想定したシナリオを通じて対応力をつけておきます。訓練の結果を基に、避難計画や支援方法の見直しを行います。これらの対策を講じることで、企業はすべての従業員が安全に避難できる環境を整えることができます。

ある特例子会社における災害時に備えた取り組み

ある特例子会社では、知的障害や精神障害の従業員が多く在籍しています。2011年の東日本大震災の時には、地震が起こった直後にそれぞれの勤務先から帰宅するような状況になりました。

しかし、夜になっても帰宅しなかったスタッフがいて、保護者から会社へ連絡がきました。しかし、本部でも「状況が把握できない」「連絡もつかない」という状態で、翌日まで状況が把握できずに、とても心配したそうです。

結果的にスタッフは、自分で判断して親戚の家に行っており、問題がありませんでしたが、それ以降、帰りのルートがはっきりわからないときには、「スタッフを帰宅させない」という方針を決めたそうです。加えて緊急事態に備えて社内の災害備蓄や、広域避難場所の確認をするようにしています。

非常時の緊急連絡としては、本体、グループ会社も含めた従業員全員に「安否確認サービス」を活用しています。これは、災害が起こったときに、メール配信をして、従業員の安否の確認が集約できるものとなっています。特例子会社では、さらに配信先をスタッフだけでなく、保護者も含めるようにしています。

とは言っても、いざというときに活用できないと困るため、普段から、「メール配信をしっかり見ているか」の確認も3ヶ月に1回ほどの頻度で行っています。練習の時には、抜き打ちで送り、本番のときにもしっかり活用できるようにすることを意識しています。

まとめ

災害時における企業の危機管理は、特に障害者雇用を行っている企業にとって重要な課題です。すべての従業員が安全に避難できる環境を整えるためには、物理的なバリアフリー化だけでなく、多様な情報伝達手段の導入や障害に応じた支援体制の整備が不可欠です。また、定期的な避難訓練とその見直しを行い、従業員のフィードバックをもとに改善を重ねることで、実際の災害時にも迅速かつ適切な対応が可能となります。
さらに、災害時に備えた心の準備や知識も重要です。どのような状況においても冷静に対応できるよう、日頃からシミュレーションを行い、緊急時の行動をあらかじめ考えておくことが求められます。特に、企業としては従業員に対して、自己の安全を最優先に考えるよう常に啓発し、実践的な対策を講じることが大切です。
今回紹介した対策や事例を参考に、今一度、企業内の災害対策を見直し、すべての従業員が安心して働ける環境づくりを進めていきましょう。企業の危機管理は、単なるリスクヘッジにとどまらず、従業員の命と安全を守るための責任ある取り組みであり、社会的な信頼を築くための基盤になります。

動画で解説

参考

企業が取り組んでおきたい障害者のための災害対策

聴覚障害のある人のための災害に備えて企業が準備すべきこと

【障害者支援】災害で備えておきたい対応方法と準備

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