色覚異常(色盲、色弱)は、日本人男性の20人に1人、女性でも500人に1人が該当するもので、国内で300万人以上いると言われており、珍しいものではありません。色覚異常の程度は人によって異なり、検査で指摘されない限り気付かない人もいれば、社会生活に支障を感じる人もいます。
また、以前は学校で行われていた色覚検査が、人権侵害の一つと見られて検査が実施されることもなくなり、色覚異常とは自覚しない人も増えてきています。
多くのケースでは、色覚の異常のため日常生活に困ることはありません。しかし、時には、色の認識の間違いが危険につながることもあります。そのためどのようなときに困難さを生じるのか、対応方法などについて事前に考えておくことは大切です。
ここでは、色覚異常(色盲、色弱)にとはどのようなものなのか、就職への影響などについてみていきます。
色覚異常とは
色覚異常は、かつては「色盲」や「色弱」と呼ばれていました。色覚特性(かつての色盲・色弱)とは目の特性の一つになります。色を識別する錐体細胞が色の認識・識別が多数派と違うタイプとなります。
一般的に赤緑色弱といわれているのは、赤と緑の区別がつきにくいタイプです。世界的にはおよそ2億5000万人の色覚特性を持つ者が存在するといわれています。日本全体では300万人以上存在すると言われており、日本人男性の20人に1人、女性でも500人に1人が該当します。
色覚特性(かつての色盲・色弱)は「石原式色覚異常検査表」という検査方法を用いて、カラフルな大小様々な丸で描かれた何枚かの絵を見ながら数字を読み上げることによって検査を行います。緑が見えにくい人は赤と緑で書かれた数字を読むことが困難となり、どの色に異常があるかがこれによってわかります。広く国際的にも使われている方法となります。
文部科学省は色盲・色弱に関する従来のあり方を社会的差別として認め、1994年以降はこの取り扱いを大幅に変更し、学籍簿の項目から完全除外するようになりました。また、2003年からは小学校での検査も撤廃し、またその間、国公立大学の入学に際し学部制限が除外されるなど、色覚異常による職業上の人権侵害をなくす取り組みも行われてきました。
また、2001年10月に厚生労働省は、労働安全衛生法に基づく省令を改正し、新入社員を対象に実施する健康診断(雇入時健康診断)で義務付けられていた色覚検査を廃止しています。
かつて色覚検査については、危険な場所を色で表示している場合などに、色覚障がいの人を配置するのは不都合があるとして義務づけられていました。しかし、現在では、色覚障がいと判断されても大半は支障なく仕事ができることが明らかになっています。
色覚異常で困ること
色覚検査はなくなりましたが、色覚異常自体がなくなったわけではありません。そのため色覚異常とは自覚しない人も多くなっています。
色の認識の間違いが危険につながることもあります。ときには、自分だけでなく多くの人を巻き込む危険がある場合も考えられます。そのためどのようなときに困難さを生じるのか、対応方法などについて事前に考えておくことは大切です。
・信号の色が見分けにくい。または識別できないので並び順で覚えている。
・夜、車の運転をすると、信号と水銀灯が区別しづらい。
・車のブレーキランプが見づらい。
・晴れているのか、曇っているのか天気がわかりづらい。
・コーヒー牛乳と野菜ジュースを間違えたりする。
・焼き肉を食べるとき、焼けた肉と生肉を間違える。
・緑のインクを赤だと思った。
・色の違うソックスを片方づつ履いていて気付かなかった。
・ゴルフで芝生の上に置いたマーカーが見えなかった。
・麻雀で赤い文字が黒にしか見えない。
・紅葉はどうみても緑にしかみえない。
・洋服を選ぶとき、とんでもない色を選んだことがある。
・テレビの色の調節ができない。
・赤飯が汚い色に見えて食べる気がしない。
・ピンクのスニーカーを水色だと思った。
・緑の中にある赤い花が見えない(見づらい)。
・乳児の便の色が判らない。
・人の顔色の変化が見えない。
・車の色を遠くからでは間違える。
・「非常口」のランプは火事の煙の中ではかえって見にくい。
・赤茶緑等の点で示された分布図などの図が見にくい。社会科の地図が見にくい。特に県別に色分けされているような図は難しい。
・鉄道路線図、特に東京の地下鉄路線図の色分けが見にくい。
・麻雀牌の色がわかりにくい。雀荘は暗いのでさらにわかりにくい。緑一色などの色で揃える手は苦手。
・カードゲーム「UNO」がしにくい。UNOは色以外に判別する記号がないので難しい。
・パステルグリーンと薄い灰色が区別しにくい。同様に淡いピンク色と薄い灰色が区別しにくい。
・手芸店で糸の色の選択が難しい。
・青・紺系の色と紫が区別しにくい。
・暗色の背景に赤色文字が読みにくい。目立たない配色だ。
・黒板の赤チョークの文字が見にくい。先生が強調する場合が多いので困りもの。
・カレンダーで祝日(赤字)を見落とす。特に彩度を落としたおしゃれなカレンダー。
・色だけて表示されたトイレの使用中の表示は分かりにくい。淡い配色のブルーとピンクはつらい。
・赤と黒のボールペンで書かれた文字を読み分けにくい。特に暗いところで細い字ならなおさら。
・ぷよぷよ(ゲーム)で色がそろえにくい。
・赤色のレーザーポインタは見にくい。動かされると追い切れない。緑色のものは見やすい。
・黄色い街灯と赤信号が見分けにくい。
・赤と緑に光り分ける発光ダイオードが見わけにくい。
・夜間、タクシーの空車(緑)と乗車(橙)が直前まで見わけにくい。
・券売機などで黒地に赤のLEDでの料金表示が見にくい。
・Excelのセルを塗りつぶす色の微妙な判別が出来ない。
・テレビの待ち受け時の赤のLEDが見にくい。
・野菜の鮮度が落ち、茶色になっているのがわかりにくい。レタスが腐るのを緑色の濃い色だと勘違いしていた。
・焼肉の焼き具合の判定が苦手。早く焼けたと思ってしまう。
・果物の熟度がわかりにくい。特に夕張メロンは橙色と緑なので境界がはっきりしない。
・乳児のお尻のかぶれに気付きにくい。
・化学の炎色反応がわかりにくい。特に緑系と黄色が難しい。
・夜空の星で赤い星が目立たない。特にアンタレスは大きく見えない。
・桜のうすいピンク色が白っぽく見える。ソメイヨシノのような淡い色は特に。
・血便に気がつかない。血のかたまりが赤く見えず黒く見える。
・緑の自然の中の小さな赤色の花が目立たない。
・顔色で健康状態を判断できない。「顔色が青いね」という感じがあまりよく分からない。
色覚異常と就職
社会的な差別撤廃の機運の高まりとともに、制度的な障害はほとんどなくなっています。就職では、以前は義務づけられていた入社時健康診断の色覚検査が廃止されており、多くの職業で門戸が開かれています。しかし、鉄道関連、航空関連の企業や、その下請けや 納入企業は、健康診断で色覚検査による採用制限を行っているところもありますので、事前に調べておくとよいでしょう。特定の職種、例えば、電車の運転士やパイロットなどは、色覚検査が求められます。
実際に職業を選択する場合には、職業適性の一つとして色覚のことを考慮しておくとよいでしょう。自分の色覚異常は軽度だから大丈夫と思っていたとしても、働きはじめてから問題に気づいて、病院に行くというケースもあるようです。また、もし就職した後に、気づいたのであれば、自分の色覚の異常について伝えられるような人間関係を築くことが理想です。苦手な色については周囲の人から教えてもらうことにより、多くの悩みは解決できるからです。
進学については、多くのところでは問題ありませんが、パイロットや航海士、自衛官など、職業特性上、色覚で適性が決まる職種に関わる学部等では、色覚の制限があります。
公務員採用については、地方自治体・官公庁の事務職、福祉職、労働基準監督官、法務教官、刑務官の採用は色覚についての制限がないとされています。一部の技術職に関して採用の制限がありますので、確認しておくとよいでしょう。
また、警察官、消防官、についてはおおむね業務に支障がないこととされています。自衛隊は戦闘機パイロットと一部の整備士、潜水艦乗組員を除いて色覚制限がありませんが、自衛隊への入隊にはある程度の制限があるようです。これらの職業を希望する場合には、事前に確認しておくとよいでしょう。
色覚以上は障害者手帳の対象になるか
色覚異常(色盲や色弱)は、身体障害者手帳の対象とはなっていません。
色覚異常を補うツール
すべての色は、光の三原色といわれる赤、緑、青の3つの光の組み合わせで作られています。そして、色を感じとる視細胞も、赤、緑、青のそれぞれの色に敏感なタイプに分けることができます。色覚の異常は、この3種類の視細胞のうちのどれかが足りない、十分機能しないために起こります。
つまり色覚特性(色盲・色弱)は、色の刺激を受ける3色のアンバランスから生じているため、このバランスを揃えることによって、一般色覚者と同じバランスの色調を感じることができるようになります。色覚特性(色盲・色弱)のための補正レンズを使用することによって、得意な色はそのままに、苦手な色を補正することができます。
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まとめ
色覚異常(色盲、色弱)にとはどのようなものなのか、就職への影響などについてみてきました。
色覚特性(色盲・色弱)は、色の刺激を受ける3色の細胞のアンバランスから生じるものです。しかし、バランスを揃えることによって、一般色覚者と同じバランスの色調を感じることができるようになります。現在は、色覚特性(色盲・色弱)のための補正レンズがありますので、必要な場合にはこれらを活用するとよいでしょう。
2003年頃までは色覚異常の人の入学を制限していた大学や専門学校が多くありましたが、近年では特殊な大学や専門学校を除き制限がなくなったことや入社時の健康診断でも色覚検査を行わないところが増えています。しかし、特定の職種、例えば、電車の運転士やパイロットなどは、色覚検査が求められます。また、鉄道関連、航空関連の企業などは、色覚検査による採用制限を行っているところもありますので、事前に調べておく必要があるでしょう。
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