障害者雇用の壁 企業が乗り越えるべき3つの要因と解決策

障害者雇用の壁 企業が乗り越えるべき3つの要因と解決策

2024年09月4日 | 企業の障害者雇用

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障害者雇用は、企業の社会的責任や多様性推進の観点から重要視されてきています。企業が障害者を雇用することは、単に法律の遵守にとどまらず、多様な視点や能力を持つ人材を取り入れることで、企業のイノベーションや成長を促進する要素ともなります。

また、障害者が社会の一員として活躍できる場を提供することは、社会全体の包摂性を高めるための重要な一歩でもあります。一方で、障害者雇用を推進する企業にとって、さまざまな課題が存在します。

今回は障害者雇用における主な壁となる3つの要因について具体的に解説し、それぞれの課題を乗り越えるための解決策をお伝えしていきます。

障害者雇用の壁要因1: 障害に対する理解不足

障害に対する理解不足が起こる理由

企業において障害者雇用を進める際、しばしば障害に対する理解不足が大きな障壁となることがあります。これは、企業の中で障害についての知識が十分に共有されていないために、従業員や経営陣の中に誤解や偏見が根強く残っていることが原因です。

例えば、障害を持つ人々がどのような能力を持ち、どのようなサポートが必要であるかを正確に理解していないと、彼らの能力を正当に評価できず、適切な職務配置が行われないことがあります。また、障害者が働くことで職場の生産性や業績が下がるといった偏見が、無意識のうちに差別的な行動や態度を生む原因につながることもあります。

このような理解不足は、障害者にとって不公平な職場環境を作り出すだけでなく、彼らが持つ潜在的な能力を最大限に引き出す機会を奪うことにもつながります。さらに、障害者自身が職場で孤立感や疎外感を感じ、結果的に離職率の増加や職場での定着が困難になるケースも少なくありません。

障害に対する理解不足に対する解決策

障害に対する理解不足を解消するためには、企業内での教育や研修の実施が不可欠です。まず、障害に関する基本的な知識や、それぞれの障害の特性、必要なサポートや合理的配慮について学ぶ機会を提供することで、従業員や経営陣の意識を向上させることができます。

このような研修は、1回、2回しただけですぐに理解できるものではありません。定期的なフォローアップ研修としても実施することが望ましいです。これにより、企業全体での継続的な学びと理解の深化が図られます。

また、社内の研修も有効的ですが、外部の研修を従業員に受講してもらうことも大変有効的です。社内の研修では、自社のことしかわかりませんが、他の企業も参加するような研修に参加することで、他の企業でも障害者雇用に取り組んでいることを実感することができるからです。
外部の無料で受講できる研修としては、「障害者職業生活相談員研修」と「精神・発達障害者しごとサポーター研修」がおすすめです。

「障害者職業生活相談員研修」は、企業が障害者を雇用する際に重要な役割を果たす障害者職業生活相談員(職業生活に関する相談やサポートを行う担当者)を対象とした研修となっています。

企業内で障害者の雇用管理や就業支援を担当する人が必要な知識とスキルを2日間程度の時間で一通り学ぶことができ、障害者が働きやすい職場環境を整え、障害者の職業生活の質を向上させる方法について学ぶことができます。

研修の内容は、以下のようなことが含まれます。

・障害者雇用の基本知識: 障害者雇用に関する法令や制度(障害者雇用促進法など)についての理解を深める。
・障害の種類と特性の理解: 障害の種類(身体障害、知的障害、精神障害など)や特性に応じた対応方法の理解。
・雇用支援の方法: 障害者の就労支援や職場適応に関する具体的な方法論(例:合理的配慮の提供、職場環境の調整)。
・コミュニケーションスキル: 障害者との効果的なコミュニケーション方法や相談技術の習得。
・ケーススタディと実践: 実際のケーススタディを通じて、問題解決能力や実践的なスキルを養成する。

もう一つの「精神・発達障害者しごとサポーター研修」は、職場で精神障害や発達障害のある人をサポートするための研修プログラムです。この研修は、職場の同僚や管理職が、精神・発達障害者の特性を理解し、適切なサポーターとなることを目的としています。

この「しごとサポーター」は、特別な「専門的支援者」というよりも、サッカーチームのサポーターを想起させるものとなっています。つまり、サポーターとしての応援者を職場に増やすことで、障害の有無に関わらず、職場の雰囲気や人間関係がよくなり、精神障害、発達障害者を含め、誰にとっても働きやすい職場環境を広げることが意図されています。

そのため受講したことで、特別な役割を求めるものでもありませんし、特別な資格制度でもありません。しかし、講座を受講したことにより、職場で精神障害や発達障害のある従業員をサポートするという意識や文化に貢献するものとなっています。

「精神・発達障害者しごとサポーター研修」では、次のような内容を学ぶことができます。

・精神・発達障害の基本知識: 精神障害(うつ病、統合失調症など)や発達障害(自閉スペクトラム症、ADHDなど)の特性について学びます。これには、それぞれの障害の基本的な症状や特性、職場での配慮すべき点が含まれます。

・職場での具体的な支援方法: 障害のある従業員が職場でどのようなサポートを必要とするかを学びます。これには、仕事の進め方の工夫や、コミュニケーション方法の調整、合理的配慮の提供などが含まれます。

・理解と共感を深めるための演習: ケーススタディやロールプレイを通じて、参加者が障害のある従業員の立場を理解し、実際の職場でどのように支援を行うかを実践的に学びます。
・職場内での情報共有と連携方法: 障害のある従業員をサポートするために、職場内での情報共有や連携の重要性について学びます。これは、上司や同僚間でのコミュニケーションを円滑にするための方法論を含みます。

このような研修を効果的に活用することで企業内での障害に対する理解を深めることができます。

障害者雇用の壁要因2: 合理的配慮のハードルの高さ

合理的配慮のハードルが高くなる理由

障害者雇用を進める企業が直面する別の大きな課題は、「合理的配慮」の実践に関するハードルの高さです。合理的配慮とは、障害者がその能力を十分に発揮できるようにするために、職場環境や業務の進め方を調整することを指します。

しかし、企業にとっては、どのような配慮が「合理的」であるのか、またその範囲がどこまで及ぶのかが明確でない場合が多く、これが障害者雇用の推進を阻む要因となっています。

例えば、どの程度の費用をかけて職場のバリアフリー化を進めるべきか、どのようなサポートを提供するのが適切なのかといった具体的な対応策が明確でないため、企業は必要以上に負担を感じてしまうことがあるかもしれません。

また、合理的配慮の提供が法的に義務づけられているものの、何を持って「合理的」とするかの判断が難しく、企業側が無意識のうちに偏見や先入観に基づく不十分な対応をしてしまうリスクも存在します。このような不確実性は、障害者が必要とするサポートが適切に提供されない原因となり、結果的に障害者の働きやすさや職場での定着に悪影響を及ぼすことがあります。

合理的配慮のハードルの高さへの解決策

合理的配慮の実践へのハードルを下げるためには、企業が示せる合理的配慮についてイメージしやすいように社内に提示し、具体的な指針やサポート体制を整備するとよいでしょう。その一つの方法として、「合理的配慮の具体例を示したガイドライン」を整理するとよいでしょう。

社内で合理的配慮として行っている事例があれば、それを共有することで、どの程度の合理的配慮が求められているのかについて従業員が理解しやすくなります。そのため障害の特性についての一般的な困難さやそれに対する合理的配慮の事例を具体的に示すことは役にたつでしょう。

しかし、同じ障害名や障害程度であっても、障害に求める配慮はそれぞれ異なります。どのような配慮が求められるのかについては、個別に見ていくことが必要になってきます。その点も含めて伝えておくことが大切です。

障害者雇用の壁要因3:社内コミュニケーションの課題

社内コミュニケーションの課題が起こる理由

障害者雇用を効果的に進めるためには、障害者と他の従業員との間で円滑なコミュニケーションが不可欠となります。しかし、多くの企業において、障害者と健常者の間でコミュニケーションが不足していたり、お互いにどのように接すればよいのか分からないという不安が存在しているケースが見られます。このような状況は、職場の一体感や協力関係を阻害し、障害者が職場で孤立する原因となることがあります。

特に、障害の種類や程度に応じたコミュニケーションの方法が分からないため、健常者が無意識のうちに障害者との接触を避けたり、障害者自身が他の従業員に対して遠慮する傾向が見られます。結果として、障害者が職場でのコミュニケーションにおいて十分なサポートを受けられず、自分の意見やニーズを表現しづらい状況が生じ、これが業務上のストレスや不安感を増大させることにつながっていることがあります。

社内コミュニケーションの解決策

社内コミュニケーションの課題を解決するためには、まずオープンなコミュニケーション文化の促進が必要です。企業全体で障害者とのコミュニケーションを積極的に取り、互いに理解を深める姿勢を醸成することが重要です。これを実現するためには、障害に関する研修やワークショップを通じて、従業員が障害に対する正しい知識と理解を持ち、偏見や誤解を解消する場を提供することが有効です。

また、特に採用してからしばらくの間は、1on1(個別面談)を定期的に行いましょう。1on1(個別面談)を実施していても、単に障害者従業員の個人的な話を聞いて終わりにしてしまっているケースも見られます。もちろん仕事をする上で必要な情報を得ることは重要ですが、勤務時間中に行なう個別面談は、コミュニケーションを取ることや雑談に終始しないように気をつけるべきです。

障害者のマネジメントを担当する従業員が1on1(個別面談)の方法や目的を理解していないと、単に話して終わりになってしまうことがあります。1on1の目的は、部下のパフォーマンスの向上や目標達成に重点をおきながら、組織の目標や方針に沿った意思決定を進めることです。部下とのコミュニケーションを深め、意見や気持ちを理解することで、生産性やモチベーションの向上に繋がりますし、自己成長を促します。

まずは、マネジメントにあたる従業員がこれらのことを理解しているのか、また理解できていないのであれば、1on1(個別面談)の方法やそれに対するフィードバックを行うようにしてください。このようにすることで、マネジメントに携わる従業員のスキルも身につきますし、全体的な組織力アップにも繋がります。

なお、1on1(個別面談)は、職場のマネジメントとして行うものです。心理的な問題やストレス、トラウマなどについての支援をすることを目的とするカウンセリングとは目的が異なりますし、それをマネジメントを担う人が行うことになると、大きな負担になります。役割分担は明確にしておくとよいでしょう。

まとめ

障害者雇用を推進するためには、企業はいくつかの壁を乗り越える必要があります。特に「障害に対する理解不足」、「合理的配慮のハードルの高さ」、そして「社内コミュニケーションの課題」を解決しないと、一時的には雇用できたとしてもうまくいくことはありません。

まず、障害に対する理解不足を解消するためには、企業内での研修や教育を通じて、障害についての正しい知識を従業員全体に浸透させることが重要です。また、外部の研修を活用することで、他の企業の事例から学び、より広い視野で障害者雇用を進めることができます。

次に、合理的配慮のハードルを下げるためには、企業内での理解を深めることが必要です。個々の障害に応じた配慮の方法を明確にし、それぞれのケースに応じた柔軟な対応が求められます。イメージできるガイドラインを作成するとよいでしょう。

さらに、社内コミュニケーションの改善も不可欠です。オープンなコミュニケーション文化を育て、障害者と他の従業員が相互に理解し合える環境を整えることが、職場全体の協力関係を強化します。定期的な1on1ミーティングを通じて、個々のニーズを把握し、障害者が安心して働ける環境を整備することも有効です。

動画で解説

参考

障害者雇用が進まない、社内理解を進めるためには何をすればよい?

障害者雇用の業務切り出しがうまくいかない企業の3つの特徴

【障害への配慮】情報のわかりやすさと職場のコミュニケーション

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