障害者を雇用する企業では、どのようにしたら障害者が働きやすく、定着できる職場をつくれるのか・・・と考えているかもしれません。
障害者が働きやすい職場とは、2つの視点から見ていくことができます。それは、物理的な環境を整備することのハード面と、障害者に対する理解や業務がしやすいように配慮をすることなどのソフト面が含まれます。どのような視点をもっていると、働きやすい職場をつくることができるのかを見ていきたいと思います。
環境を整備するハード面での工夫
働きやすい職場にするためには、まず、ハード面の工夫をすることができます。これは、障害者が、職場で業務するときや移動するとき、休憩をするときなどに使う物理的な環境を整備することが含まれます。
例えば、つまずかないように段差をなくすことや、床にでているケーブルなどを床下にいれること、誰でも見やすいように文字を大きく表示する、色分けして見やすくするなどの工夫ができるかもしれません。これらは、障害者だけでなく誰にとっても怪我をする可能性を減らすことや、わかりやすくなることに貢献します。
また、特定の障害があり、その障害を補完するための機器等を使うことによって、環境を整備することもできます。視覚障害者は、全く見えない盲の人もいますが、弱視で視力が低い状態にはある人もいますし、見える範囲が狭い、明るいところでは見えるが暗いところでは見えにくい等の人もいます。拡大読書機や点字ディスプレイ、画面上の文字を読み上げるソフトを用いてパソコンを活用することによって、問題なく情報を得ることができる人もいます。
最近は、精神障害の雇用も増えています。精神的な障害を抱えている人の中は、休憩時間などは、他の人といると緊張していて休めないので、一人で落ち着きたいという人も少なくありません。このような場合には、カウンセリングルームや休憩室を設置することができるかもしれません。少し横になれるような場所を確保している企業もあります。
わざわざ別室をつくることが難しい場合でも、会議室を昼休み中は、休憩室として活用することを許可するなどして、代替手段を取ることであればできるかもしれません。障害によってどのようなことが難しいのか、またそれを補完したり、緩和するための環境整備ができないかを考えるとよいでしょう。
障害者に対する理解や業務への配慮などのソフト面での工夫
働きやすい職場をつくるためには、ハード面とともにソフト面の工夫も必要です。このソフト面の工夫には、業務の指示などに関する工夫とともに、業務設計の見直しや、一緒に働く上司や同僚、また、直接関わらないとしても、同じ組織にいる社員の理解や協力も含まれます。それぞれについて見ていきたいと思います。
業務の配慮
業務は、わかりやすく端的に示すことができるでしょう。業務の優先順位、目標、業務指示、スケジュールなどを明確にし、指示を一つずつ出す、作業手順を分かりやすくしたマニュアルを作成するなどの対応を行なうと、伝わりやすくなります。
「仕事ができない」という評価を得ている場合でも、よくよく話を聞いてみると、指示の出し方が曖昧だったり、支持される人によって内容が変わっていたりと、業務上の配慮が足りないために仕事ができないと判断されてしまっていることがあります。本当にその業務を遂行する能力がないのか、それとも指示がうまく伝わっていないのかを確認するようにしてください。
また、発達障害者で、例えば自閉症の方の中には、いわゆる暗黙のルールの理解が苦手であったり、言葉を文字どおりに受け取る傾向があります。このようなときには、作業の流れや手順を決めて、できるだけ具体的かつ簡潔な指示を出すような配慮を行うようにしましょう。
次のような配慮ができるかもしれません。
配慮例(精神障害)
【業務の優先順位を明確にする】
・毎日、作業内容が変わることから、次にやるべき仕事、いつまでに終わらせるかなど細かい内容について、その都度指示している。
・ホワイトボードなどを活用して、個人別にその日や週ごとの作業を掲示している。
【作業手順をマニュアル化する】
・写真などを活用したマニュアルを作成し、目につきやすい箇所に掲示している。
・使用する機械に番号を貼り付ける。清掃箇所により使う用具を色分けしている。
・マニュアルをポケットに入れられるカード型にし、いつでもチェックできるようにしている。
配慮例(発達障害)
【業務指示を明確にする】
・口頭で、「午前中はこの仕事をしてください」と時間を区切って指示したり、「Aが終了したら、次はBです」と業務の完結を持って区切ることや、「きれいになったら次のものを洗う」ではなく、「10回洗ったら次のものを洗う」など、具体的な時間や回数などで作業方法を指示している。
・各部署の指導担当者が普段から情報交換をして、本人に対する指示の出し方に統一性を持たせている。
【スケジュールを明確にする】
・ホワイトボードにその日のスケジュールを貼り出している。
・予定の変更があれば、わかった時点ですぐに伝えて、気持ちの切り替えができるようにする。
業務設計の見直し
必要に応じて業務分解をすることもできます。もしかしたら、今まで他の社員がおこなっていた業務をそのまま障害者社員に行なうことを想定すると難しい場合もあるかもしれません。そのようなときには、業務を分解するといくつかのプロセスに分け、その中の一部分だけを切り出して障害者の業務にすることもできます。
また、考えていた業務があまり適していないと思えるのであれば、ジョブローテーションで他の業務を任せていたり、勤務時間や業務量を調整しながら、障害者の能力と、その職務に必要とされる基準との要件との調整を図ることができるかもしれません。
しかし、これらは雇用してから行なうというよりも、採用前に実習などを通して、お互いが確認し合うことも大切です。もちろん、実習でうまくいったからといって、必ずしも雇用後に問題が起きないわけではありませんが、このように事前にお互いが確認し合うことで、採用後のミスマッチはかなりの割合で防げるはずです。
社内に障害者雇用に対する理解促進を図る
社内で障害者雇用を進めていくために、また、障害者と一緒に働く体制をつくるためには、一緒に働く上司や同僚はもちろんですが、合わせて社内の社員たちに障害者雇用に対する理解を浸透させていくことも重要です。
この時に伝えておいたほうがよい点は、一般的な障害特性や業務の説明や指示をする際に留意しておいたほうがよい点などです。また、直接一緒に働く上司や同僚の場合には、もう少し詳しく、本人の特性(得意なこと、得意でないこと)、対応上の留意点(例:指示、注意するときは穏やかに話すこと、一つずつ指示を出すことなど)や、昼休みや休憩時の関わり方などについて説明をすると、一緒に働く社員は、イメージしやすいでしょう。
ただし、個人情報については、どこまで、誰に開示するのかは、事前に障害当事者と確認しておくことをおすすめします。
動画の解説はこちらから
まとめ
障害者が働きやすい職場をつくるために必要なことについて見てきました。ハード面、ソフト面の視点から働きやすい職場にするための方法をいくつかあげましたので、参考にしていただければと思います。
とはいえ、障害の種類や程度は一人ひとり異なります。もちろん全ての社員の要望どおりにすることは難しいかもしれませんが、働きやすい環境をつくることは、障害者社員だけでなく、一般の社員にとっても働きやすくなることもありますので、前向きに検討する価値は大いにあります。
また、障害者当事者からは、「障害者として雇用されたものの、配慮がない」という声もしばしば聞きます。社内で障害者雇用を進めていくためには、一緒に働く上司や同僚はもちろんですが、合わせて社内の社員たちに障害者雇用に対する理解を浸透させていくことも重要です。
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