障害のある大学生の採用~インターンシップでキャリア可能性を広げる~ 

障害のある大学生の採用~インターンシップでキャリア可能性を広げる~マイナビパートナーズ編

2024年07月24日 | 障害関連の情報

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令和6年度から差別解消法の合理的配慮が国や地方公共団体以外でも法的義務となりました。大学でも合理的配慮の認識や取り組みは高まってきています。一方で、大学での授業や生活における合理的配慮は進みつつありますが、就職やキャリア支援にはこれから・・・というところが多いようです。

将来のキャリア選択に悩んでいる大学生の可能性を広げる取り組みとして、長期有給インターンシップ「Career Create Program」をスタートした株式会社マイナビパートナーズ(株式会社マイナビ特例子会社)の守屋様と髙橋様からお話をお聞きしました。

DEIソリューション事業部 事業部長 守屋優氏
株式会社マイナビにて新卒入社後、法人新規営業、新卒採用コンサルティング業務に従事。大手企業での新卒採用に関わっていたときに、障害者雇用でも新卒採用をしたいという企業側からの要望の中で障害者雇用の課題や偏見などを目の当たりにし、そのソリューションを提供したいという思いからサービスに関わる。

東京キャリアデザイン課 課長 髙橋利佳氏
株式会社マイナビパートナーズに2017年に入社後、精神・発達・身体障害のマネジメントに6年間関わる。その後、2023年10月から長期有給インターンシップに関わっている。チューターとして日々、インターンシップ生のマネジメントや成長をサポートしている。


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株式会社マイナビパートナーズ概要
親会社:株式会社マイナビ
事業内容
・オフィスサポート事業(マイナビグループを中心とした事務業務代行業)
・障害者人材紹介事業
・障害者雇用コンサルティング
・ヘルスケア事業
設立年数:2016年6月
従業員数:全体の従業員数281名(障害者220名:身体12%、精神87%、知的1.5%)※2024年6月現在
ホームページ
インターンシップ概要
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Q:マイナビパートナーズさんの事業内容や概要についてお聞かせください。

A:マイナビパートナーズは、2016年9月に特例子会社認定を受けています。それ以前は、オフィスセンターとして各事業部門からの事務業務代行を担うマイナビ内の一部門でした。

当時、マイナビが成長期を迎えて組織が拡大していく中で、障害当事者の社員もあわせて増加。担当する業務領域も広がっていき、障害当事者の社員に特化した人事制度や環境整備などの必要性を感じて、特例子会社の立ち上げに至りました。特例子会社の認定後は、障害者向けの人材紹介をはじめ事業領域をさらに広げています。

主な事業内容としては、2つあります。1つは、パートナー雇用開発事業です。こちらでは、オフィスセンターとして、マイナビグループからの事務系の業務を受託しています。内容は、パンフレットのデザインやデータ入力、就職イベントの準備、WEBサイトチェックなど多岐にわたります。また、福利厚生や健康経営の一環として、視覚障害のあるヘルスキーパーが社員向けのマッサージを行っています。

もう1つは、DEIソリューション事業です。こちらでは、障害者人材紹介、法人向けコンサルティング、そして障害学生の育成事業として「長期有給インターンシップ Career Create Program」を行っています。

マイナビパートナーズの社員は2024年6月現在で281名、そのうち障害当事者の方が220名います。内訳としては精神・発達障害の方が非常に多く、精神手帳の方が87%となっています。

Q:長期有給インターンシップ「Career Create Program」をはじめた背景や経緯などをお聞かせください。

A:障害者の法定雇用率が引き上げられ、障害者雇用は促進されています。一方で、大卒の方の就職が売り手市場にも関わらず難しいことや、就職できないまま卒業してしまう人数が多いことが課題だと感じていました。私は大学生の未来を作るための仕事に長らく関わってきましたが、こんなにも多くの学生が社会に移行できていないことを非常に問題だと思っています。

このように障害者手帳をもつ学生が活躍できる環境や機会が不十分であったり、自身の障害理解が進まず、将来のキャリア選択に悩みや不安を抱く方に何ができるのかを考えたときに、マイナビの特例子会社であるマイナビパートナーズだからできる就業へのきっかけづくりとなるインターンシップとして「Career Create Program」を立ち上げました。

就労が難しい背景には、就労準備性が担保できていないということがあげられます。そのため障害のある学生の得意を見つける場、やりたいことを見つける場、あるいは得意なことを見つけ、それが見つかったらそれを伸ばす場を提供し、実践で鍛える場を作ることが大切だと思っています。しかし、社会にはまだまだこのような機会がありません。それで、このインターンシップを通して、社会に出る準備をしてほしいと考えています。

また、同時に大切にしていきたいのが「企業側の歩み寄り」です。まだ多様性の理解が進んでいないところや、人事担当の方で精神障害や発達障害についてよくご存じでない方に出会うこともあります。企業の方でも、現場も含めた障害理解や受け入れ体制の強化はしていく必要があると感じています。

Q:インターンシップの具体的な内容についてお聞かせください。

A:インターンシップの期間は12ヶ月以上としています。対象者は、障害者手帳をお持ち(申請中)の大学生と大学院生、卒業3年以内の方です。

内容は、社会人に求められるビジネスマナー、ビジネスにおけるコミュニケーションスキル、基礎的なパソコンスキルといったビジネスの基礎が学べるプログラムとなっています。パソコンスキルに関しては1人1台のパソコンを支給して、マイナビから委託された業務を行うため、インターンシップの業務は模擬ではなく実践的なものになります。

全てがリアルな業務になるので、予定していない突発的な欠勤はマイナビの依頼者やマイナビの取引先であるクライアント企業にまで迷惑がかかることや、仕事の中でその業務がどのように関わっているのかなど自分視点ではなく、常に相手視点で考えられるようにお伝えしています。

また、プログラムの中では、得意や強みを伸ばすのはもちろんですが、逆に自分は何が苦手で、その苦手をどのようにアプローチしたらよいのかという点についても、チューターがついて日々のフィードバックをしています。ご本人たちの可能性の幅を広げることが私たちの使命だと思っているので、日々の業務での得意や苦手の把握、苦手さはどのように改善したらいいのかという点についても話します。

加えてキャリア支援として、キャリアアドバイザーや企業担当のリクルーティングアドバイザーと自己分析や企業研究についての話をすることで、自分に向いていることは一体どんなことなのか気づいてもらい、希望する業界の理解を深めるサポートもしていきます。

インターンシップの時間は、平日9:30-17:30までの中で1日4時間以上の勤務を想定しています。ただし学期中は授業スケジュールもあるので、フレキシブルに参加できるようになっています (週3日以上、1日あたり4時間以上の勤務を目安)。募集期間は、年4回(2月、4 月、7月、9月)に行っています。

長期有給インターンシップ「 Career Create Program」に応募する

Q:今回二期の募集をされていらっしゃいますが、第一期生のインターンシップの様子をお聞かせください。

A:2 月、4月からスタートした人たちが一期生となり、合わせて11名でスタートしました。年に4回のタイミングで募集をしていますが、それぞれの時期に特定のプログラムがスタートするのではなく、インターンシップをスタートするタイミングが4回あるということになります。実務を重視するインターンシップとなっており、その参加状況は学生の授業状況や学年などによって異なります。

インターンシップでは、必ず毎日の業務が終わったあとにフィードバックを行っています。その中で、「◯◯さんの働きは、こういうところが非常に良かったけど、この点は少し気になったからちょっと改善してみよう」とか、「あの時なんで、あのような発言をしたんだっけ」という問いかけを行いながら進めています。

Q:大学生が仕事でフィードバックを受ける機会は限られていると思いますが、実際にインターンシップに参加されている学生さんの反応はいかがですか。

A: ある方の場合、いつも自分の意見に固執しがちなところがありました。自分の主張を強く押し通そうとする姿勢があり、これは社会に出たときに課題になるのではと感じました。他のチューターたちも同じように感じていたようです。そこで、日々のフィードバックの際に何度もご本人と話をしましたが、ご本人の腑に落ちるまでに多くの時間を要しました。こちらとしてもできる限り早く気がついて欲しいと思い、特性が強く出る場面があった際はその場で指摘もしました。

その方自身も、なぜ複数のチューターから同じことを指摘されるのかを疑問に感じていたようで、その後自分の考え方を変えないといけないことに気がつき、徐々に自己理解が深まり、ようやく私たちの指摘している意味が分かってくれました。それを機にひと回り成長したように感じます。

また、別の方の場合、就職が決まらないまま卒業を迎えた後のインターンシップ参加となりました。社会に出る準備としてまずは勤怠を安定させることを目指し、最初のシフトは週3回、午後のみの短時間勤務から始まりました。3ヶ月ごとにシフトの見直しを行っていますが、この方は少しずつ働き方を調整し、連続勤務や午前中からの勤務に対応できるようになっていきました。直近ではフルタイムでの勤務が安定してできるようになり、就職へのステップを踏み出すことができています。

このように日々サポートしながら、生活の変化や人間関係の問題にも対処しています。時には学生の気持ちが不安定になることもありますが、その際には適切なアドバイスや相談を通じて、無理のない範囲での働き方を一緒に考えていきます。

Q:インターンシップの時間などは、柔軟に対応していただけるんですね。

A:大学3年生春からのスタートの場合には、授業の関係もあり両立できるように考えていきますが、3年生2月スタートだと単位がしっかり取得できていることが多いので、フルタイムで一週間の勤務頻度が多い方もいます。

インターンシップに参加する方のほとんどはアルバイトなどの経験がなく、このプログラムで初めて働いた経験をしたという方です。アルバイトも含めて、なかなか働く経験をするチャンスがなかったと言われる方は多いですね。「こういった機会(インターンシップで働くこと)が本当にないので、すごく貴重な体験になった。」とよく言われます。

インターンは3ヶ月毎に目標設定や見直しをしながら、1年間のインターンシップをしていきます。1年後にキャリア選択をして卒業という形をイメージしています。まだ、今年の2月からのスタートなので1年間以上のインターンシップ経験者がでていませんが、在学中の場合や継続の希望があれば、その後も継続できるようにしていきたいと思っています。

インターンシップの一番の目的はご自身のキャリアデザインをしていくことですが、ご縁があればマイナビパートナーズに入社する人がでてくることもあると考えています。また、ご本人のキャリアの方向性や考えが固まったのであれば、それに合わせてサポートできるリソースが揃っているので、新卒紹介や企業紹介などのサポートもしていきます。

人によっては、就職活動は難易度が高い活動になるので、インターンシップに参加いただいた方には、その点についてはしっかり伴走していきます。インターンシップではチューターがついてサポートしていますが、就職活動については、キャリアアドバイザーや企業担当のリクルーティングアドバイザーと連携して進めていくことになります。

Q:インターンシップをスタートする時には、進路についてはどのように考えている方が多いですか。

A:インターンシップに応募される方の大半はこのプログラムを経験して少しでも社会に近づいてみたい、仕事とはどのようなものか経験してみたいという方が多いです。中には就職を意識して来られる方もいますが、全体から見るとそういう方は少ないです。また、キャリアについてのアドバイスや就職活動についてのサポートはできるのでそうお伝えすると、ぜひサポートを受けたいと言われます。

インターン生は手帳を取得(エントリー時には申請中も可)している方になりますが、やはり障害やその特性への向き合う深さについてはかなり差があります。そんな中で関わっていくので、信頼関係を築きながら、「社会ではこんなことが必要になります」とか、このままでは社会にでたら絶対につまずいてしまうと感じる点については、私たちがご本人たちに伝えていくことがとても大事だと思っています。

もちろん本人たちが大事に感じていないことや問題意識がない状態の中で、私たちが指摘したり注意したりすることもあるので、なかなか話が噛み合わないこともありますが・・・、それも含めてこの仕事の醍醐味かなとも思っています。

Q:インターンシップ制度を2月からスタートしての手応えなどはいかがでしょうか。

A:マイナビパートナーズでは、障害者雇用は「配慮はするけど、遠慮はしない」とい合言葉があります。その中でどのようにしたら自分のパフォーマンスを発揮できるのかを考える環境があるので、「自分のことを知る」とか「自分はここまでチャレンジできるんだ」と発見できるインターン生がでてきてうれしいですね。

特に業務においては、マイナビから切り出された業務を行ってもらっていますが、「こんなにもできるんだ!」と、いい意味での驚き、発見がありました。もっともっとできると感じているので、より難しい業務案件も必要になるなと感じています。

一方で、就職活動のサポートとしては想定していたよりもサポートが必要かなと思うところもあります。例えば、エントリーシートの添削も、かなりしっかり関わってサポートが必要になるという点が見えてきました。

千差万別でさまざまなタイプの方がいるので、その1人1人に カスタマイズしてこちらもサポートしないといけないなということが、スタートしてみてからの気づきです。でも、あまりこちらが介入しすぎると主体性を奪ってしまうことにもなりかねないので・・・、その辺のバランスと舵取りが大切だと思います。

インターンシップのプログラム中には、20本ほどの研修を組み込んでいます。例えば、報連相研修などの一般的なものもあれば、問題解決技能トレーニングと言って、自分が問題課題だと思っていることに対して、他の人の意見を聞きながらどうやったらうまくいくだろうと考えていくセッション型のトレーニングや社会人の先輩から話を聞くなどのメニューもあります。

インターン生たちには業務の終わりに日報をつけてもらっていますが、そのような研修をした後の感想を見ると、「大学生活では経験できない気づきがあった。」という感想がよくみられます。いずれ社会人になったら気づくことではあると思いますが、実践的なインターンシップを通して早めに学べる機会があると、その準備ができます。

インターンシップ自体は、正直いうと、私たち自身も結構厳しい内容のインターンシップだと思っています。オンラインではなく実際に通ってくる必要があるし、評価もしっかりします。インターンシップでお客さん扱いや持ち上げるというよりも「グッド&モア」と言っていますが、良かった点だけではなく、もっとこういう風にして欲しいというリクエストや改善点を示す形のフィードバックも多かったりするんです。敢えて厳しい要求をすることもありますが、みんな頑張って、真面目についてきてくれているという感覚はありますね。

Q:これからの取り組みとして、どのような展開や構想をされていらっしゃいますか。

A:今後の取り組みとしては、関東の方ではインターンシップの人数を30名以上に広げていくこと、また関西でもこの「Career Create Program」を近い将来行うことを予定しています。

一方で、企業側の方を見ると特定の障害種別に関しては、まだ採用に消極的な企業さんが多いので、コンサルティングを通して一緒に業務を考えていきたいと思っています。研修を1回だけ実施したり、誰かの話を聞いたのでは変わりません。企業経営者、幹部、人事担当の方たちとディスカッションをしながら、多様な人が活躍できる組織を作っていく旗振りをして欲しいと考えています。そして、そのパートナーとして我々と一緒に職域を開拓し、障害者同士の方が働きやすい職場を考えて作って、そこに若い人が加われるといいなと思っています。

Q:最後に一言、お願いします。

A:髙橋さん
どのような障害者雇用がいいのか、何がベストかという点については、私自身も模索中ですが、配慮を必要とする側も配慮をする側も同じ空間で敷居を感じずに働けるような世界になればいいなと感じています。2017年に入社した時には、私も敷居を感じていましたが、そういうことを感じない世界になればいいなと思いながら、日々、目の前 にいるインターン生と一緒に働いています。

A:守屋さん
僕らの会社のミッションの中に「誰もが活躍するための道を拓き」という言葉があります。「誰もが活躍するための道」が今の日本にはまだまだ不足していると感じておりますので、そこを開いていく活動として必要なことが人材紹介であり、この「Career Create Program」だと信じています。誰もが活躍するための道を拓いていくことをマイナビパートナーズとして進めていきたいと思います。

まとめ

障害者雇用率が上がり、今までの障害者採用や雇用の方法では法定雇用率を達成するのが難しいと感じている企業は少なくありません。そのような中でインターンシップのルールやインターンシップの定義が変更され、学生のキャリア形成支援における産学協働の取り組みが始まりました。障害者採用でもインターンシップ(企業実習)を通して大学の新卒採用を進める企業が増えています。今回は、マイナビの特例子会社マイナビパートナーズさんのインターンシップの取り組みについて紹介しました。

障害のある大学生は、すでに多くの大学に在籍しています。障害者差別解消法の合理的配慮が2014年(平成16年)に行政機関などを中心に適用されたことにより(民間企業の義務化は2024年から)、大学の中では障害のある学生たちの受け入れや支援がおこなわれています。また国立大学等をはじめとして、多くの大学では障害学生支援室を開設するなどの対応をしています。このような流れの中で、これまで外資系企業や一部の大企業などが行っていた大学新卒の採用は、今後このようなインターンシップを取り入れて増えていくと考えられます。障害者採用が思うように進んでいないようであれば、違った層からの採用を検討してみることができます。

参考

大学生のインターンシップ、新卒採用にどのように影響する?

なぜ企業は障害者雇用を行うべきなのか? 持続可能な成長を支える戦略

【2024年度版】障害者雇用の今後と対策~企業が考えるべきアップデート~

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