東洋経済から、「障害者の雇用」に積極的な企業ランキング100が発表されました。対象は2021年度のCSR企業総覧(雇用・人材活用編)2022年版に掲載された1631社のうち、2020年度に障害者を3人以上雇用している企業となっています。
どのような企業が、障害者雇用に積極的なのか、見ていきたいと思います。
障害者雇用に積極的な企業ランキングが発表
まずは、障害者雇用に積極的な企業の1位~10位までの企業名と雇用率、人数を見ていきます。
順位 | 社名 | 雇用率(前年) | 雇用人数(前年) |
1位 | ゼネラルパートナーズ | 17.90%(17.86%) | 39人(37人) |
2位 | エフピコ | 12.70%(13.35%) | 362人(358人) |
3位 | エイベックス | 7.40%(10.00%) | 14人(24人) |
4位 | MRKホールディングス | 6.90%(8.62%) | 4人(5人) |
5位 | キトー | 6.80%(7.09%) | 34人(36人) |
6位 | JSP | 5.54%(5.54%) | 49人(48人) |
7位 | 関通 | 5.4%(5.33%) | 31人(25人) |
8位 | ファーストリテイリング | 4.71%(5.02%) | 1101人(1167人) |
9位 | デコボコベース | 4.42%(ー%) | 5人(-人) |
10位 | AOKIホールディングズ | 4.40%(5.00%) | 5人(6人) |
障害者雇用に積極的な企業の事業内容とは
1位 ゼネラルパートナーズ
1位のゼネラルパートナーズでは、雇用率が17.9%、雇用人数は39人です。5年連続で1位となっています。
障害者の雇用サービスを提供している企業で、障害者の総合就職・転職サービス、就労移行支援事業、就労定着支援事業などを手掛けています。精神障害者の雇用創出のために、菌床シイタケ生産販売事業所を運営していたり、障害者の経済的自立と安定就業へのサポート、一般企業への就職や復帰のためのリハビリテーションの場を作っています。
また、障害者雇用に関する調査・研究やダイバーシティ関連情報に特化したオウンドメディアを複数運営したり、子会社でシングルマザー支援事業を行うなど、社会課題解決型の事業を広く展開しているようです。
2位 エフピコ
2位のエフピコは、雇用率が12.7%、障害雇用者数は362人です。こちらのランキングには、昨年に引き続きランクインしています。
スーパーやコンビニなどで使用される食品トレー容器のリーディングカンパニーで、食品トレー、弁当・総菜容器最大手です。障害者は、基幹業務である「食品トレー容器の生産」と「リサイクル」の仕事を中心に活躍しているようです。
食品トレー容器の生産事業では、食品トレー容器の成形・組立加工や検品、包装を担当し、リサイクル事業では、使用済みトレーの選別業務を行っています。
また、特例子会社のエフピコダックスや、就労継続支援A型事業のエフピコ愛パックなどを中心に、全国21カ所の事業所で取り組んでいます。工場見学なども積極的に実施しています。
3位 エイベックス
3位はエイベックスは、雇用率が7.40%、障害雇用者数は14人です。こちらのランキングには、昨年に引き続きランクインしています。ただ、雇用者人数は、昨年の24人から14人に減少しています。
バリアフリーのサテライトオフィスがあったり、障害者アスリート雇用にも取り組んでおり、選手の活動状況をウェブサイトで発信するなど、広報活動にも積極的に取り組んでいるようです。
4位 MRKホールディングス
4位のMRKホールディングスは、雇用率が6.90%、障害者雇用数は4人です。
結果にコミットするパーソナルジムで有名なRIZAPグループの会社で、女性用体型補整下着、化粧品、サプリなどを販売しています。多様性を受け入れ、1人ひとりが活躍できる環境を目指し、障害者雇用にも積極的に取り組んでいるようです。こちらのランキングには、昨年に引き続きランクインしています。
5位 キトー
5位のキトーは、工場用搬送機器メーカーで、障害者雇用率が6.8%、障害雇用数は34人です。
5カ年計画を策定して障害者雇用を推進しているそうで、山梨本社工場で設備のバリアフリー化や、聴覚障害者向けの手話通訳派遣や支援機器導入にも取り組んでいます。
また、平成 29 年度の「障害者雇用優良事業所等の厚生労働大臣表彰」で、障害者雇用職場改善好事例の最優秀賞(厚生労働大臣賞)を受賞しています。
聴覚障害者・肢体不自由者の雇用管理上の課題を分析した上で、手話ボードや自動ドア・ スロープの設置など障害特性に応じた支援が個別かつ体系的になされている点、および、「障がい者雇 用マスタープラン」の策定や、障害のある社員を含めた推進委員会の開催等により、相互のコミュニ ケーションやキャリアアップに向けた取組を充実させるなど、企業の組織的・継続的な対応がなされていることが評価されたようです。
こちらのランキングには、昨年に引き続きランクインしています。
6位 JSP
6位はJSPで、障害者雇用率は5.54%、障害雇用者数は49名です。
JSPは樹脂発泡素材の専業大手です。特例子会社もあり、特例子会社JSPモールディングを中心に障害者雇用に取り組んでいます。
「平成27年度優先発注企業等の厚生労働大臣表彰」の受賞者に選ばれています。この表彰は、障害者就労施設等が供給する物品及び役務について、長年にわたり積極的な発注に取り組んでいる企業を表彰するものとなっています。
JSPモールディング株式会社は、平成16年から過去10年以上に渡り、障害者就労施設である社会福祉法人「希望の家」に自動車部品二次加工業務(役務)をはじめ様々な業務発注等を実施しています。
7位 関通
7位はEC・通販物流支援サービスを手がける関通です。障害者雇用率は5.40%、障害雇用者数が31人となっています。
また、企業の社会貢献活動(CSR)の一環として、発達障害放課後等デイサービス『ハッピーテラス 俊徳道教室』をオープンしています。
8位 ファーストリテイリング
8位はファーストリテイリングで、障害者雇用率は4.71%、障害雇用者数が1101人となっています。昨年は9位でしたが、今年は8位とランキングがあがっています。
「1店舗1人以上の障害者雇用を目指す」という目標が掲げられていて、店長・地域正社員を中心に障害者の受け入れ研修を実施しています。国内の約9割の店舗で障害のあるスタッフが働いているそうです。職場での課題等については、人事部内に障害者雇用専任者を配置して、採用や現場の課題に対応できるサポート体制を構築しています。2013年から精神障害者雇用にも力を入れており、山口本社で8人が採用されています。
また、知的障害者にスポーツの機会を提供する「スペシャルオリンピックス日本」のナショナルパートナーを務めており、ユニフォームの寄贈や運営支援も行っています。
障害者が社会、ビジネス、経済における潜在的な価値を発揮できるような改革をビジネスリーダーが主導していくという趣旨に賛同し、「The Valuable 500」にも加盟しています。障害者雇用は日本だけでなくグローバルでもおこなわれており、約1,500名のスタッフが世界中で働いているそうです。
9位 デコボコベース
9位はデコボコベースで、障害者雇用率は4.42%、障害雇用者数は5人です。
放課後等デイサービスなどの障害児通所支援事業や障害者の就労・自立支援を手がけており、ハッピーテラス、ディーキャリア、ディーキャリアワーク、ジョブサポートなどを自社運営、FC展開しています。
個人の特性を生かし、パフォーマンスを重視するという基本理念のもと、自社の障害者雇用率についても中長期目標を設定して取り組んでいるようです。
10位 AOKIホールディングス
10位はAOKIホールディングスで、障害者雇用率は4.40%、障害雇用者数は5人です。
AOKIグループのファッション事業では、全国5か所ある障害者雇用専門オフィスにおいて店舗運営をサポートする業務を行っています。また、アニヴェルセル・ブライダル事業およびエンターテイメント事業では、店舗内外の清掃業務を行っています。
AOKIでは、障害者雇用が決してうまくいっていたわけではありません。不足人数が増大し、労働局から特別指導を受け、常用雇用人数が年500 人以上増加が続いていたこともありました。年間数人の障害者採用では不足人員解消に至らず、不足人員が30数人となった2013年に「あと半年以内にこれを解消できなければ企業名公表」というところまできたそうです。
しかし、そこから社内で50人が従事できる業務を切り出し、神奈川・埼玉・愛知の拠点で障害者を雇用する職場をつくり、2013年12月に法定雇用率を達成しています。
【株式会社 AOKI 障がい者雇用事例ご紹介】には、障害者雇用の軌跡が書かれています。
動画の解説はこちらから
まとめ
障害者雇用に積極的な企業について見てきました。障害者雇用に積極的な企業として紹介されている企業でも、たくさん情報提供している企業とそうでない企業があります。
障害者雇用の企業の事例を知りたい場合には、独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構の障害者雇用事例リファレントサービスを活用するとよいでしょう。障害者雇用リファレントサービスでは、業種、障害種別、従業員規模などから検索がかけられるようになっており、全国の障害者雇用の事例をすぐに調べることができます。
同じく機構から、障害者雇用の職場改善好事例集が出されています。毎年テーマが出されており、ある年は、精神障害や発達障害の職域拡大、職場定着について、また別の年は、身体障害、難病のある方の雇用促進についてなど、年ごとによってテーマが異なりますが、いずれも職場を改善した好事例が掲載されており、具体的な取り組みや参考になりそうなツールなども紹介されています。
また、今回10位にランキングされたAOKIは、もう少しで企業名公表というところまできたものの、雇用率達成ができるまでの取り組みを構築しています。その軌跡がまとめられていますので、参考にすることができるでしょう。
参考
障害者アスリート雇用をしている企業の事例~エイベックス、Yahoo! JAPAN~
障害者インクルージョンは企業価値を高めることができるのか~Valuable 500の取り組み~
「障害者雇用率が高い会社」ランキングTOP100社(東洋経済ONLINE)
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