精神障害者とはどんな人?企業が理解すべき特性と雇用のポイント

精神障害者とはどんな人?企業が理解すべき特性と雇用のポイント

2025年01月31日 | 障害別の特性・配慮

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法定雇用率の引き上げにより、多くの企業が障害者雇用の拡大に向けた取り組みを進める必要を感じています。特に2018年の法改正により、精神障害者が法定雇用率の対象に含まれるようになり、障害者枠で働く精神障害者が増えています。

しかし、「精神障害者の特性が分からない」「どのような配慮が必要なのか不安」といった声が企業の採用担当者や現場の管理職から多く聞かれます。

精神障害者の雇用を適切に進めるために必要なポイントや、知っておきたい特性について解説していきます。

障害者雇用は支援ではなく「マネジメント」

障害者を雇用することに対して、多くの企業が「支援」が必要というイメージをもっていることがあります。しかし、企業が雇用する以上、障害者も組織の一員として成果を生み出すことを重視することが大切です。つまり、「支援する対象」としてではなく、仕事を通じて組織に貢献する存在と捉えて、マネジメントしていくことが重要です。

もちろん企業には、障害者に対して合理的配慮をすることが求められていますが、それは業務を行うことへの合理的配慮であって、配慮が最優先されるものではありません。適切なマネジメントを行うことで、彼らが自立して業務を遂行できる環境を整えていくことが大切です。

ピーター・ドラッカーは、マネジメントとは成果を上げるための仕組みであると定義しています。

「組織で成果を上げさせるための道具、機能、機関」
「マネジメント = 成果をあげること」
「マネージャー = 成果の責任者」

これは、障害者雇用にも当てはまります。企業における障害者雇用は、単なる「雇用義務の達成」や「社会貢献」ではなく、組織全体の生産性を向上させるマネジメントの一環として考える必要があります。したがって、企業のマネージャーは、障害の有無に関わらず、全ての従業員が成果を上げることができる環境を整備し、仕組みを作ることを考えていく必要があります。

障害者雇用において、実際にマネジメントするうえで意識すべきことは、「仕組みをつくること」と「業務遂行のために必要な要素を整備すること」です。

仕組みをつくる

「仕組みをつくる」とは、つまり一人で業務を遂行できる環境を整備することです。障害者雇用において重要なのは、常に誰かがサポートしなければ業務が進まない状況を作らないことです。一人で業務ができる仕組みを構築するには、次のようなことができます。

・業務フローの標準化とマニュアル化
業務の流れを見える化し、標準的な作業手順をマニュアル化することができます。文章だけでなく、イラストやフローチャートを活用すると、直感的に理解しやすい形にできます。

・チェックや質問の方法を工夫する
いつでも業務のチェックや質問を受けていると、マネジメントしている人の業務が止まってしまうことがあります。業務の流れなどを考えながら、チェックや質問の方法や時間を設定するとよいでしょう。

業務遂行のために何が必要かを考える

業務遂行を行うのに、何が必要なのかを考えます。例えば、業務の指示方法や提示の仕方を工夫することができます。業務のマニュアルなどを整備していてもうまく進まない場合には、ツールや補助的なサポートを活用します。タスク管理ツールを導入し、業務進捗を見える化することや、文字入力が難しい場合は、音声入力ツールを活用するなどができるかもしれません。

精神障害とは?基本的な定義と種類

業務を行うことへの合理的配慮が求められるときに知っておきたいのが、障害特性やその配慮です。最近増えている精神障害とはどのような障害なのかを見ていきます。

精神障害とは、精神的な疾患や障害が原因で、日常生活や社会活動に支障をきたす状態を指します。厚生労働省やWHO(世界保健機関)では、精神疾患を「脳の機能障害や心理的な要因により、思考・感情・行動に影響を及ぼし、生活や仕事に困難が生じる状態」と定義しています。精神障害にはさまざまな種類がありますが、特に職場で配慮が求められる代表的な障害を紹介します。
・統合失調症
統合失調症は、思考や認知機能に影響を及ぼし、幻覚や妄想、注意力の低下がみられる精神疾患です。100人に1人程度が発症するといわれ、10代後半から20代に発症することが多い疾患です。
統合失調症は、統合失調症には「陽性症状」と「陰性症状」があります。陽性症状としては、幻覚・妄想、実際には存在しない声が聞こえる幻聴などがありますが、就労を目指す人の多くは陽性症状がおさまり、陰性症状になってから働く人が多いです。陰性症状の主な症状としては、話の内容がまとまりにくい、論理的な思考が難しくなるなどの思考の混乱、表情が乏しくなり、感情の起伏が少なくなる感情表現の減少などが見られます。
そのため職場での配慮としては、突然の業務変更を減らし、業務の流れを明確にすることや、シンプルで具体的な指示を心がける、静かな作業スペースを確保するなどの対応をしています。
・うつ病(気分障害)
うつ病は、抑うつ気分や意欲低下、集中力の低下が長期間続く精神疾患です。過度なストレスや環境の変化が発症の要因となることがあります。
主な症状としては、気分の落ち込みが続き、喜びや興味を感じにくくなる抑うつ感、業務へのモチベーションが著しく下がる意欲・集中力の低下、睡眠障害、食欲不振・体調不良などが見られます。
職場での配慮としては、過度なプレッシャーをかけない、スケジュール管理をサポートし、適切な休憩時間を確保する、短時間勤務やテレワークの導入などができます。
・双極性障害(躁うつ病)
双極性障害は、過活動モードの躁状態と意欲低下モードの抑うつ状態が交互にあらわれる病気です。主な症状として、躁状態では、過度に明るく活発になる、睡眠時間が短くても元気に活動できる、大きなアイデアを思いつき、突発的な行動が増えるなどが見られます。
また、抑うつ状態(意欲低下モード)では、気分の落ち込みが激しくなる、仕事への関心が薄れ、集中力が低下する、強い自己否定感が生じるなどがあります。
職場での配慮としては、気分の波が大きいため、業務量の調整が必要です。特に躁状態では、突発的な行動をすることがあるので、指示や報告の仕組みを明確にするとよいでしょう。長時間労働を避け、生活リズムの管理ができる勤務時間にしておくことも必要です。

企業が知っておきたい精神障害者と働くうえでのポイント

精神障害者が職場で安定して働くために、特におさえておきたいポイントとして、「ストレス耐性の違い」「コミュニケーションの取り方の特性」「環境の影響を受けやすい」という3つの視点から解説します。

ストレス耐性の違い

精神障害者は、環境や業務負荷によってストレスの影響を受けやすい傾向があります。特に、突発的な出来事や急な業務変更があると、適応が難しくなることがあります。そのため、企業側はストレスを軽減できるような業務設計や職場環境の整備をしておきます。
・環境や業務負荷によってストレスの影響を受けやすい
突然の業務変更や急な指示があると、不安を感じやすくなります。業務については、内容や締切、優先順位などを明確に示すようにします。精神的な負荷が高まると、体調を崩しやすくなることがあります。そのため決まったルーティンや事前にスケジュールが明確な仕事の方が安定しやすくなります。
変更が必要な場合は、可能な限り前もって通知し、心の準備をする時間を確保できるようにします。事前に業務計画を共有することが重要です。
・長時間労働やプレッシャーのかかる仕事が難しい場合がある
納期が厳しい業務や、対人ストレスの多い職種は、体調に影響を及ぼす可能性があります。仕事の負荷を適切に分散し、無理のないスケジュールで進めることが大切です。そのため、特にはじめは短時間勤務からはじめ、慣れてきて大丈夫であれば様子を見て時間を伸ばしていくようにします。

コミュニケーションの取り方

精神障害者の中には、情報を処理するスピードや、他者とのコミュニケーションに困難を感じる方もいます。そのため、企業側は適切な伝え方を工夫し、できるだけ誤解のない形で業務を伝達することが重要です。
・指示を具体的に伝えることが重要
大まかな説明ではなく、具体的な内容を明確に伝えるようにします。可能であれば、指示内容を文章化したり、チェックリストなどを準備することもできます。
・視覚的なサポートを活用する
一度に大量の口頭指示をすると混乱することがあるため、視覚的な情報としてマニュアル、チェックリスト、スケジュール表を活用します。業務フローを整理し、見える化することで作業の進め方が明確になります。また、何をいつまでにすればよいのかがわかるようにすることで、不安を軽減することもできます。
・話し方を工夫する
長い説明よりも、シンプルで簡潔な伝え方が効果的に伝えられます。結論から先に話すことで、話の意図をつかみやすくなります。また、ゆっくりと、はっきり話すことで理解しやすくなります。

環境の影響を受けやすい

精神障害者の中には、職場の物理的な環境や人間関係がストレスの要因となる場合があります。過度なストレスは業務パフォーマンスの低下や体調不良の原因となるため、企業は働きやすい環境づくりを意識することが大切です。
・過度な対人接触がストレス要因になる
対人接触が多すぎる業務は、ストレス要因になりやすく、人の話し声が気になることで、集中力が低下する場合があります。静かなスペースや個別の作業環境を整備することで落ち着いて業務に取り組めます。
職場の配置では、パーティションや仕切りを活用し、落ち着いた作業スペースを確保したり、在宅勤務やリモートワークを選択できる制度を整えることができます。

・疲れやすいため、適度な休憩を取れるようにする
疲れやすく、無理をするとその影響が長く続くため、疲れ切ってしまう前に適度な休憩ができるようにします。休憩スペースやリラックスできる場所を提供したり、短時間のリフレッシュ時間を確保しておくとよいでしょう。
「いつでも好きな時間に休憩をとっていい」を気を遣って言ってくださる企業も多いですが、休憩時間をいつ取るのかで悩んでしまったり、他の人の目を気にして休憩を取れない人もいます。特に入社したてで職場に慣れるまでは、時間を決めておいたほうが休憩をとりやすいこともあります。

まとめ

精神障害者の特性や職場での配慮ポイントについて解説しました。企業で障害者雇用を進めるときには「支援」ではなく「マネジメント」という視点が重要です。企業が適切な環境を整備することで、精神障害者が持つ能力を活かし、組織の一員として成果を上げることが可能です。

企業が取り組むべきポイントとして、以下の点が挙げられます。
・「支援」ではなく「マネジメント」の視点を持つ
 - 精神障害者も企業の一員として組織に貢献できるようにすることをイメージする
 - 成果を上げるための仕組みを構築する
・業務の標準化と仕組みづくりを行う
 - 業務フローの可視化、マニュアル化を進める
 - 質問やフィードバックの仕組みを整え、業務遂行を円滑にする
・業務遂行のための適切な環境を整備する
 - 指示の出し方を工夫(具体的・シンプル・視覚的なサポート)する
 - ストレスを軽減できる働き方(短時間勤務、在宅勤務等)を導入する
・精神障害の特性を理解し、適切な配慮を行う
 - シンプルな指示、静かな作業環境を提供する
 - 業務負荷を調整、適度な休憩を確保する

精神障害者の雇用を成功させるためには、一時的な支援ではなく、長期的な視点で「働きやすい環境」と「成果を生み出せる仕組み」を構築することが求められます。

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