障害者雇用をこれまでに取り組んできた会社に就職したのに、想像していたよりも理解や配慮がなかったという声をよく聞きます。中には、障害者雇用を行なう積極的なイメージがあった特例子会社にも関わらず、「障害者にやさしくない」「障害理解がない」と感じてしまう当事者の方もいるようです。
特例子会社は障害者雇用を推進するのに積極的なイメージがあり、実際にもそういうところが多いのですが、なぜこのようなことが生じてしまうのでしょうか。その理由や、特例子会社について見ていきたいと思います。
特例子会社とは?
特例子会社とは、企業が障害者の雇用に特別の配慮をした子会社を設立した場合、一定の要件を満たすことによって、その子会社に雇用されている労働者を親会社に雇用されているものとみなし、実雇用率を算定することができる制度です。
つまり、特例子会社で雇用された障害者は、親会社に所属している従業員に対して必要とされる障害者雇用者数としてカウントすることができます。
一般的に特例子会社は、一般的の職場よりも障害に配慮された設備や環境が整っており、スタッフも障害者雇用に理解や経験のある人材が多く配置されています。しかし、特例子会社と言っても、その運営に関しては、特例子会社の親会社や関係会社の方針や考え方、業種や従業員規模、仕事内容によっても大きく変わってきます。
そのため特例子会社イコール、あなたが考えている障害者にやさしい会社とは限らないことがあります。
障害者にやさしい会社のイメージは、人によって異なる
ところで、一般的に言われる「障害者にやさしい会社」のイメージ、あなたはどのようなものを想像しますか。
人によっては、「障害特性に合わせて配慮してくれる会社」「体調に合わせて勤務時間を調整してくれる会社」「個別の相談を定期的にしてくれる会社」「柔軟な人事制度がある会社」「障害の有無に関係なく仕事のキャリアアップができる会社」など、いろいろな答えが出てくるでしょう。
つまり、「障害者にやさしい会社」とは、その持つイメージは人によって違うものなのです。
また、障害者枠で働くときに、企業が障害者雇用についてどのような考え方をしているのかを知ることも大切です。障害者雇用は、「障害者雇用促進法」に基づいて行われています。
この法律の中では、障害者法定雇用率が定められており、事業主には身体的・知的・精神的に障害をもっている方の雇用が義務づけられています。現在の障害者雇用率は2.3%で、従業員43.5人に対して1人の障害者を雇用することが定められています。
企業では、このような障害者雇用を進めるべき理由があって行っています。しかし、業種や規模などさまざまな理由から、障害者雇用の促進が難しい状況にある場合に、「特例子会社」を設立して障害者雇用を進めようと考える企業が多いのです。
障害者雇用と聞くと、福祉や教育を受けるのと同じような感覚で配慮を求める人がいますが、そもそも雇用ですので、会社に役立つ仕事をして、それに対する対価(給与)をもらうこと、そして、障害者雇用率が法律で定められていることなどを理解しておくことが必要です。
障害者雇用を進める企業の目的を確認することは大事
障害者雇用を行なうことが企業に求められているとはいえ、それをどのような方針で行なうのかは企業によって大きく異なります。
ある企業では、障害の有無に関係なくキャリアアップして欲しいと考えるところもありますし、別の企業では、障害者雇用率が達成できていないものの、それほど任せられる仕事がないと感じているかもしれません。
障害の有無に関係なくキャリアアップして欲しいと考えている企業であれば、仕事をどんどん任せてくれたり、成長する機会が与えられるかもしれません。しかし、障害者雇用だからあまり責任ある仕事を任せられると不安や負担になると感じる人がこのような会社に勤めてしまうと、働くことが大きなストレスになるでしょう。
また、障害者雇用率を達成するために最低限の仕事をしてもらえばよいと考えている企業であれば、定型的な仕事を、もしかして体調が悪く休まれても影響が出ないようにしておこうとするかもしれません。このような企業に、キャリアアップしたい、仕事をどんどん任せて欲しいと思っている人が働いてしまうならば、とても単調で、仕事に対してやりがいを感じることはないでしょう。
特例子会社だから、大きな会社だから、有名な会社だから・・・などの理由で、仕事を決めてしまうと、思っていたことと違うということになりかねません。あなたの考えている仕事への想いや希望と、就職しようとしている会社が同じ方向性を向いているのかを確認することは大切です。
障害者雇用は給与が安いと言われることが多いですが、これは仕事内容や働く環境への設備、人材などにどれくらいコストをかけているのかによっても異なります。
当然、仕事内容が誰でもできるものであったり、障害者に対する配慮として設備や人材に大きく投資しているのであれば、そのような配慮がありお金をかけている分、給与にも反映されてきてしまうからです。特例子会社に限らず、障害者雇用枠で行っている業務の内容と、一般的な業務内容の相場を比較してみると、大きな差はあまり見られないように感じます。
この点に関しては、この本文の参考にも示した「障害者雇用の給与は、なぜ安いのか~特例子会社のストから考える~」の記事の中で解説していますので、詳細はこちらを御覧ください。
また、企業により差は若干あるものの、一般的に見ると、特例子会社では、定型的な業務で長く働きたいという人には合っていると思いますが、どんどんキャリアップしたい、給与をあげていきたいという希望があるのであれば、特例子会社以外での就職を目指したほうがよいかもしれません。
これらはできれば事前に就職する前に確認しておきたい点です。どのような方針や業務内容で障害者雇用をしているのかを見たり、実際の面接で確認することによって、思っていたのと違うというリスクはぐっと減らすことができます。
まとめ
障害者雇用に積極的に取り組んでいる企業という評判がある会社に就職したのに、思っていたよりも理解や配慮がなかったという声をよく聞きます。なぜ、そのようなことが起こってしまうのか、ここでは、企業が障害者雇用をどのように考え、取り組んでいるのかについて説明してきました。
そもそも「障害者にやさしい」という表現はとても主観的なもので、あなたが考えているやさしいと思っていることと、企業が考えていることが違うことがあることを知っておくとよいでしょう。
また、ここでは障害者雇用の特徴的な考え方を紹介しましたので、就職したいと思っている企業がどのようなスタンスなのかを就職前に確認しておくことも大切です。そのようにすることで、思っていたのと全然違ったということになることのリスクはかなり減らせるはずです。
参考
障害者雇用の給与は、なぜ安いのか~特例子会社のストから考える~
障害者雇用されている人がトラブルや困ったときに相談できる労働組合とは?
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