障害者雇用を進める中で、多くの組織が課題としているのが、障害者の仕事をどのように作っていくのかということです。障害者雇用の業務切り出しに役立つ視点についてお伝えする機会がよくありますが、その中で業務を切り出せる場合とそうでない場合があります。
その原因は、どんな点にあるのでしょうか。障害者雇用の業務が見つからない主な理由やその解決策について見ていきます。
障害者雇用の業務が見つからないの主な理由
業務を切り出す範囲が狭い
障害者雇用の業務が見つからないと言われる多くの場合、担当者が所属する部門や部署などの限られた範囲で業務を切り出そうとしていることが原因の1つとなっていることがあります。
例えば、人事や総務部などの管理部系の部署という限られた範囲では、それほど多くの業務はありません。特に中小企業では、さらに難しくなってきます。このような場合には、もっと多くの他の部署の仕事を見て検討することが必要です。従業員が300人以下の企業では、全社をあげて検討するくらいでないと難しいでしょう。
バックオフィス業務は、やることや仕事量がある程度決まっていますし、クリエイティブに動くことによって仕事が増える部門ではありません。できるだけ、仕事が増える部門での業務を検討することが大切です。
営業部門やマーケティングなどは、仕事を増やすことができる部門の1つです。例えば、営業部門で新規顧客を開拓する必要があるのであれば、1件でも新しい新規顧客にアプローチするためのリサーチやリストづくりをしたいと思うでしょう。また、このような仕事は、量が増えれば増えるほど、会社に貢献する仕事になり得ます。
このように自分の関わる部門以外のところでどのような仕事があるのかを把握していると、仕事を増やしやすくすることができます。
担当者が事業内容を把握しておらず、発言権がない
業務を切り出せないと言われる多くの場合、担当者が社内全体の事業内容を把握できていなかったり、社内のキーパーソンとの人間関係ができていないことが原因の場合があります。限られた範囲の業務しか知らないのであれば、当然、他の業務の切り出しをすることは難しいですし、社内のキーパーソンとの人脈が築けていないと協力を得にくくなります。
障害者雇用のメンバーをアサインする時には、マネジメント経験のある人材や役職者を入れておくことが望ましいですが、難しい場合でも、少なくとも自分から課題を見つけて動ける人材を入れておくと、業務の切り出しは進みやすくなります。
事業内容や事業形態により社内に仕事がそもそもない
障害者雇用の雇用率は、一律に決められていますが、業種や事業形態によっては、障害者雇用をすることが難しい会社もあります。
特に、人材派遣などを主な業務としている場合は、雇用する必要のある人数が多いものの、社内に仕事がほとんど見つからないというケースも少なくありません。人材派遣や警備会社、IT関連の企業などは、社員を顧客先に送り込み、そこで仕事をおこなうことで収益を上げるビジネスモデルをとっています。このような企業では、そもそも社内でおこなう業務自体が少ないために仕事を作ることは、さらに厳しくなります。
障害者雇用の業務が見つからないを解決する方法
特定の部署ではなく、社内全体から業務を切り出す
まず、障害者の業務を切り出す時には、特定の部署だけでなく、できるだけ多くの部署から業務を出すことを考えましょう。特に、中小企業の場合には、全社的に取り組むことが大事です。
社員たちに協力してもらうためには、障害者雇用に対する理解や協力を得ておくことが必要です。事前に組織として障害者雇用をおこなうことを何らかの形で示しておくことは有効的でしょう。
障害者雇用の業務を切り出すときに注意すべき点は、今、業務を担っている社員たちに自分の仕事が取られてしまうと感じさせないようにすることです。ある企業では、業務の切り出しについて協力依頼するときに、社員たちに自分の業務が障害者に代わってしまうと感じるような伝え方をしたために業務の切り出しどころか、社員たちから協力されない雰囲気を作ってしまいました。どのような声掛けをしていくべきなのかを考えながら、進めることは大切です。
組織の事業内容を把握し、事業のマネジメント経験のある人材を入れる
残念ながら企業の中で障害者雇用における優先順位は低く、なかなか人材を投入できないというところは少なくありません。しかし、組織における仕事の流れを把握していない社員が担当していても、業務の切り出しはごく限られたものになります。現状で難しい場合には、組織の事業全体を見通せる人材や事業運営で発言権のある人材が関わることも必要です。
ある企業では、障がい者雇用の業務切り出しに事業部に関わる責任者が関わり、障がい者社員がどのような特性や能力をもっているのかを理解したうえで、社内全体の業務の中からマッチングできる分野を見つけています。外注するよりもコストが安いなどの経済的なメリットを提示することや納期面での柔軟な対応ができることなどを示すことで、事業部の社員たちは障がい者に業務を任せることのメリットなどを認識しやすくなり、依頼業務も増えたそうです。
これができたのは、事業部やプロフィット部門の人たちの考えを理解し、ニーズとうまくマッチングさせているからです。しかし、そんな人材を障害者雇用の担当にできないと感じるかもしれません。すべての業務としておこなう必要はありません。全体の業務の2割~3割程度の範囲で参加してもらうようにすることもできます。
障がい者のおこなう業務を「障がい者ができる仕事は何か」という点から業務を切り出そうとしても新たな業務を創出することはできません。組織に必要とされる業務、求められる仕事という視点から仕事を考えていくことが大切です。これらの視点から考えることができるためには、組織の事業全体を見通せることが必要となってきます。
新規事業を検討する
人材派遣や警備会社、IT関連の企業などの外部に人材を送り出すことによって収益を上げている企業では、そもそも社内にあまり業務がありません。このような場合には、新たな新規業務や新規事業を検討することが必要です。
最近では、ビジネスモデルやコンセプト、切り口がよければ、ビジネスやサービスを提供できる分野も広がっています。会社の経営方針や事業の拡大などを総合的に検討し、新規事業を考えていくことができるでしょう。また、新規事業を検討するような場合には、特に自ら考えて動ける人材をアサインすることは、進めていく上でも重要になります。
まとめ
障害者雇用を進める中で、多くの組織が課題としているのが、障害者の仕事をどのように作っていくのかということです。今回は、障害者雇用の業務が見つからない主な理由やその解決策について見てきました。
業務が見当たらない、切り出す方法がわからない、マンパワーが足りないなどの、組織によっていろいろな課題があることはわかりますが、その状態が1年以上続いているのであれば、これからも状況はほとんど変わらないでしょう。
そのような時には、現状で難しい場合には、組織の事業全体を見通せる人材や事業運営で発言権のある人材を投入することが必要です。すべての業務として障害者雇用の業務をおこなうことはできなくても、全体の業務の2割~3割程度の範囲で関わるだけでも全然違った結果になるでしょう。うまくいかないのであれば、その原因を調べて対応していくことが、障害者雇用にも求められます。
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