現場の心理的ハードルを下げる!障害理解研修の再設計ポイント

現場の心理的ハードルを下げる!障害理解研修の再設計ポイント

2025年08月10日 | よくある悩みと対応ヒント

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近年、企業の人事部が主導して「障害理解研修」を企画・実施するケースは着実に増えています。法定雇用率の引き上げやダイバーシティ推進の流れもあり、障害者雇用に関する知識や配慮方法を社員に学ばせる機会は、以前よりも確実に増えてきました。
しかし、その一方でこんな声も少なくありません。
「研修はやったけれど、現場の対応や意識はあまり変わっていない」
「受講したはずなのに、実際の関わり方になると戸惑いが残っている」
これは、単に研修を実施したこと自体が目的化してしまい、内容や進め方が現場のニーズや状況に合っていない可能性を示しています。言い換えれば、「学んだことが、実際の現場で使える形になっていない」というギャップが存在しているのです。

なぜ理解が進まないのか

障害理解研修が形だけになってしまう背景には、いくつかの共通した理由があります。
まず多いのは、研修の目的が「障害への理解」や「配慮の方法」に偏っていることです。もちろん、それらは重要な要素ですが、現場での行動変化や成果につながる内容になっていない場合、学びはその場限りで終わってしまいます。
さらに、研修の進め方が「正しい対応方法を学ぶ」という一方向の情報提供にとどまってしまい、受講者が自分の業務やチームの状況に置き換えて考える機会が少ないことも課題です。結果として、「勉強になった」で終わり、日常のマネジメントに落とし込めません。
また、受講者によっては「配慮=特別扱い」という誤解が生まれやすく、「間違えたら差別だと言われるかもしれない」という不安を逆に刺激してしているようなことも見られます。結果的に、この心理的ハードルをあげることが、障害のある社員との距離を広げてしまう原因につながっていることがあります。
つまり、理解が進まない原因は、内容と進め方が現場に響かず、学びを行動に移せる設計になっていないことにあります。

視点の転換:障害理解を「マネジメント研修」へ

こうした行動変化につながらない状況を解消するためには、研修の位置づけそのものを見直す必要があります。 ポイントは、「障害のある社員への特別な配慮を学ぶ研修」から、「多様な部下と成果を出すためのマネジメント研修」へと発想を転換することです。
障害者雇用を“特別枠”として切り離して考えると、現場の心理的ハードルは高くなります。 一方で、日常のマネジメントの延長線上に位置づけると、受講者は「自分が普段やっている部下指導の一部」として理解しやすくなります。
この視点転換によって、研修は「配慮の仕方を覚える場」から「部下の特性を理解し、力を引き出す方法を身につける場」へと変わります。 結果として、障害の有無にかかわらず、あらゆるメンバーに対応できるスキルが磨かれ、チーム全体のパフォーマンス向上にもつながります。
言い換えれば、障害理解研修は“人事施策”ではなく、“組織マネジメントの強化策”として設計し直すことが鍵となります。

研修効果の分岐点:マネジメント経験の有無だった

実際に複数の企業で研修を行ってみると、同じ内容でも、受講者のマネジメント経験の有無によって吸収度や行動変化に大きな差が出ることがわかります。
マネジメント経験がある受講者は、これまでの部下指導や業務管理の経験をベースに、障害特性や対応の工夫をすぐに自分のやり方に結びつけられます。「この特性なら、こう説明すれば動きやすいはずだ」といった具合に、既存のスキルに“応用の引き出し”を加える感覚です。
一方、マネジメント経験が浅い受講者は、「特別扱いしないといけないのでは?」「何かあったら自分の責任になるかも…」といった不安が先立ち、受け入れに時間がかかる傾向があります。結果として、学んだ内容を現場で試すまでにハードルを感じやすくなっているようです。
この差が教えてくれていることは、障害者雇用の受け入れや定着をスムーズに進めるカギは、日常のマネジメント力そのものだということです。

障害者雇用は組織の力を高める

障害のある社員が活躍できる職場は、他の社員にとっても働きやすい職場となります。言い換えれば、障害者雇用の現場は、組織の成熟度やマネジメント力を映し出す鏡のような存在となっています。
これからの障害者雇用は、ひとりの熱意ある上司が気合と根性で支えるやり方では、長く続きません。必要なのは、組織全体に根付くマネジメントスキルという土台と、受け入れを前提とした組織文化です。
この二つが揃えば、「配慮」は単なる特別対応ではなく、本来の意味での「合理的配慮」となります。そして「多様性」は理念やスローガンではなく、現場で実践される日常の働き方に変わります。
障害者雇用は、法定雇用率の達成だけが目的ではありません。一部の人の努力ではなく、組織全体の力を問うテーマです。だからこそ、人事担当者がマネジメントの視点から研修を企画することは、“障害者のため”だけではなく、組織全体の底力を引き上げることにつながっていきます。

まとめ

障害理解研修は、「実施すること」自体が目的になってしまうと、現場の行動変化や意識の定着にはつながりません。大切なのは、研修を通じて日常のマネジメントに落とし込める力を育てることです。
そのためには、
・研修のゴールを「配慮の方法」から「多様な部下と成果を出すマネジメント力」に置き換える
・障害者雇用を“特別枠”ではなく、日常の人材マネジメントの一部として捉える
・受講者の経験値に合わせた内容・事例を設計する
といった視点が欠かせません。
障害者雇用をマネジメント研修として取り組むことは、単なる法令対応ではなく、組織全体のパフォーマンス向上につながる戦略的施策です。この視点を持ち、現場が自然に動ける研修設計を行うことで、障害者雇用は“配慮が必要な特別な取り組み”から、“組織の底力を引き出す取り組み”へと変わります。

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