2011年に発生した東日本大震災、2016年に発生した熊本地震、2018年6月28日から発生した台風第7号や梅雨前線の影響により西日本を中心に発生した平成30年7月豪雨、2019年の台風19号と、近年、日本では自然災害が多くなっています。
世界で発生する大地震の約20%が日本で起こっており、いつ地震や津波、また台風や大雨の自然災害に襲われても不思議ではない状況です。しかし、このような状況は事前に準備できることがありますし、どのような対応ができるかを事前に考えておくことによって、もしものときに適切な対応を取ることができます。
ここでは、なぜ、災害時に障害者の支援が必要なのか、また、地震や津波、台風や大雨のときに事前に準備できることと、それに対する対応について見ていきます。
なぜ、災害時に障害者の支援が大切なのか
2011年の東日本大震災では、障害者手帳を持つ人の死亡率は、全住民の死亡率の2倍に上ったことがNHKの調査からわかっています。これは、NHKが東日本大震災で10人以上が亡くなった東北3県の沿岸部自治体を調査して、明らかになっている数字です。
今後も南海トラフ地震や首都直下型地震などの大規模な災害が起きる可能性が示唆されており、国は2013年に災害基本法を改正して、各自治体に、高齢者や障害者などの“避難行動要支援者“を把握するための名簿作成を義務づけています。そして、さらにその名簿をもとに、一人一人について、具体的に支援者を決め、避難を支援するための“個別避難計画”をつくることを推奨しています。
しかし、この取り組みは、なかなか進んでいないのが現状です。NHKが2015年12月~2016年1月にかけて行ったアンケートでは、「名簿は必要な人をカバーできていない」と回答した自治体が77%にものぼったそうです。また、要支援者対策の課題として、「支援者の確保が難しい」が74%となり、「個人情報の開示が壁となっている」や「支援対象者の絞り込みが難しい」などを大きく上回っています。
もちろん自治体等での整備を進めることは大切ですが、それとともに会社や家庭でも事前に災害に備えた準備を進めておくことは必要なことです。
参考資料:災害時の高齢者・障害者の避難 「2倍の死亡率」を繰り返さないためには?
地震
事前に準備できること
飲料水や食料、電池などの確保
大地震が起こると、いつもと同じ生活をすることができなくなることがあります。停電になってしまい電気が止まったり、水道やガスが止まってしまうこともあります。地震によって道路が壊れたり、緊急車両が優先される状態が続くと、お店に商品が届かなくなり、スーパーや飲食店が閉まることもあります。
このような場合に備えて、食料品や飲料水を準備しておくことができます。料理しなくても食べられる缶詰などの食品や水(1日に1人2Lくらい)などを常備しておくとよいでしょう。
また、電気が止まると、電化製品は使うことができません。TVやスマートフォンが使えなくなることもあるので、電池で動くラジオや懐中電灯と一緒に電池などを準備しておくことができます。
地震に備えて、家の中を補強する
建築基準が1981年から変わっています。それ以前の建物は強度が十分でないこともあります。家の強度の基準が満たされているか専門家に調べてもらったり、もし、満たされていないのであれば、それに備えて工事することもできます。
また、本棚や大きな家具、電化製品などが、地震で倒れたり動いたりしないようにすることも必要です。転倒防止の金具や突っ張り棒などが、ホームセンター等で売っていますので、それらを使うことができます。寝室には、大きな家具を置かないようにするとよいでしょう。
家具などの下に滑り止めを防ぐマットや、窓ガラスにフィルムを貼って、ガラスが割っても周りに飛ばないようにするものも役にたちます。
地震がおこったときにとるべき行動
家にいるとき
上からものが落ちてきたり、本棚や家具が倒れたりする危険があるので、安全な場所で揺れが止まるまで待ちます。火を使っているときには、消しましょう。ただ、揺れているときにに火を消そうとするとやけどをする危険があるので、注意してください。
家から避難するときには、ブレーカーのスイッチを切って、電気が流れないようにしておきましょう。大きな地震が起こった時には停電になることがあります。停電が回復したときに、自動でスイッチがはいって火事などになることを防ぐことができます。
外にいるとき
ビルの近くなどにいると、窓ガラスや看板などが落ちてくることがあります。かばんなどで頭を守りながら、安全な場所に避難します。ブロックの塀や自動販売機などは倒れやすいので、近くにいると危険です。
安全な場所に避難する
大地震が起こると、電車やバスなどの交通機関が止まることがあります。無理に家に帰ろうとするのではなく、会社や避難所など安全な場所で待つことも時には必要です。大勢の人が帰ろうとして道や駅が混んでいることもあります。状況を見ながら行動するとよいでしょう。
また、地震の時には、沢山の人が電話をかけるためにつながりにくくなります。災害用伝言ダイヤルは「171」に電話すると、伝言を録音したり、聞いたりすることができます。電話がつながりにくいときには、電話よりもメールやSNSのほうがつながりやすいこともあります。事前に使い方をしっておくとよいでしょう。
津波
事前に準備できること
津波の知識を得ておく
津波は、海の底で大きな地震があると、発生する可能性があります。津波の高さは、10メートル以上になることもあります。津波にはとても強い力があります。わずか50センチの高さでも人が流される力があります。また、津波が来るスピードはとても早く、津波が見えてから逃げても間に合いません。津波の警報や注意報が出た場合、津波が来る可能性がある場合はすぐに避難する必要があります。
津波が来る前に海の表面が低くなることがありますが、突然くる場合もあります。川を逆流して海から遠い場所まで津波が発生することもあります。海や川の近くには行かないことが大切です。
避難経路や避難場所を決めておく
どこに避難するかを事前に決めておきましょう。避難するときは、できるだけ早く安全な場所に逃げる必要があります。どこに避難するか、どの道を通って避難するかなどを決めておくと、いざというときに迷わなくてすみます。
津波がくるとき、家族が一緒でないこともあります。会社にいるとき、通勤途中のとき、家にいるときなど、いくつかの場面を想定して、それぞれどこに避難するか話し合って決めておきましょう。
津波がおこったときにとるべき行動
すぐ避難する必要があります。海の近くにいるとき地震にあったら、津波が来るかもしれないので、すぐ避難します。避難するときには、できるだけ海岸から離れて、高い場所に逃げます。高い場所が見つからないときには、丈夫な建物を見つけて、できるだけ上の階に逃げます。津波は何度も来ますので、津波がこなくなったように見えても戻らずに、安全な場所にいます。
台風・大雨
事前に準備できること
雨の強さと災害についての目安を知る
雨の強さと災害の目安を知っておきましょう。
1時間に30ミリ以上の雨が降ると、道に水がたまって川のようになったり、山などが崩れやすくなったりします。1時間に50ミリ以上降ると、雨が滝のように降り、マンホールから水が吹き上げたり、低い土地に水が溜まって、地下街に水が入ってきたりします。1時間に80ミリ以上になると、大きな災害が起こりやすくなります。雨の強さのニュースなどを見て、早く避難することを判断することができます。
また、短い時間にとてもたくさんの雨が降ると、川の水が急に増えてあふれることがあります。今いる場所で雨が降っていなくても、川上の方でたくさんの雨が降っていると、水があふれる場合があります。川の近くに行かないようにします。
ハザードマップを見ておく
ハザードマップは雨がたくさん降った時に水があふれそうな場所や土砂災害が起きるかもしれない場所などを示した地図のことです。県や市などの自治体のウェブサイトなどで紹介されています。ハザードマップを見て、働いている場所、通勤経路、住んでいる場所等について事前に調べておきましょう。
避難先などを確認しておく
大雨注意報、洪水注意報、氾濫注意情報が出たときには、雨がたくさん降って災害が起こる可能性があります。避難するときに備えて、どこへどのように避難するかを確認しておきましょう。
台風・大雨がおこったときにとるべき行動
大雨が降ると地盤が緩んで、土砂災害が起こりやすくなります。土砂災害では、山などが崩れることがあります。山などからいつもと違う音がしたり、小さい石が落ちてきたり、斜面にヒビができて割れたり、突然水が出てきたりする状態は、土砂災害の前によく見られる兆候なので、いつもと違う様子を見つけたらすぐに安全な場所に避難します。逃げることができない場合には、壊れにくい建物の2階以上で山から遠い部屋にいるようにします。
避難をするタイミングとしては、国や自治体から発表される情報に注意しておきましょう。
避難指示や避難勧告、土砂災害警戒情報、氾濫危険情報が出たときは、災害が今すぐ起こるかもしれない危険な状況です。すぐに避難しましょう。何らかの災害が既に既に発生している状況もありますので、場合によっては避難することが危険なときもあります。そのような場合には、命を守ることを1番に考えて行動します。
例えば、避難が遅れてしまい、大雨で道が川のようになってしまい、外に避難することができない場合には、建物の2階以上に行き、山から遠い場所にいるようにしましょう。
動画の解説はこちらから
まとめ
近年、日本は自然災害が増えています。ここでは、災害に備えてできる障害者の支援と準備について見てきました。
2011年の東日本大震災では、障害者手帳を持つ人の死亡率は、全住民の死亡率の2倍に上ったことがNHKの調査からわかっています。国は2013年に災害基本法を改正して、各自治体に、高齢者や障害者などの“避難行動要支援者“を把握するための名簿作成を義務づけて、一人一人について、具体的に支援者を決め、避難を支援するための“個別避難計画”をつくることを推奨しています。しかし、その取り組みは、なかなか進んでいないのが現状です。
自治体等での整備を進めることはもちろん大切ですが、それとともに会社や家庭でも事前に災害に備えた準備を進めておくことは必要なことです。
災害の被害は、事前に災害の知識がなかったことにより、準備や行動が遅れてしまい、危険な状況になることも少なくありません。地震、津波、台風や大雨の状況について理解しておき、事前に災害が起こったときにどのような状況が想定されるのか、そのときにどのような行動をとることができるのかを考えておくことは大切なことです。
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